撮影アングルのはなし

● 人形はしゃべらない、でも何かを語りかけているよう感じる。

「月曜の朝の公園、砂場には雨に濡れる人形が一人で座っている・・・。いったい誰が忘れていったのかな?」
 このシーンをどのように撮影しますか?

 おそらくは、ほとんどの人が人形を見下ろす視線で撮影するに違いありません。それはそのほうが人形の弱い立場や寂しそうな表情を強調できると思うからです。私たちは本能的
に、もしくはそれまでの経験から、視線の高さが相手との関係を意識させるようにできているようです。
 しゃべることのない人形に、何かを語らせる第一歩は、視線を演出することだと思います。

1 人形を見下ろす
 存在の小ささを強調します。弱さを表現するのに適しています。また離れて撮ることで
小ささ、弱さはより強調されます。
 また一方で人間が優位の視線となりますから、その写真を見る人は人形を支配する
感覚を持つことにもなります。「かわいい」「守ってあげたい」などの気持ちを表現するに
も良いと思われます。
*)人形は小さいですから、何も考えずに撮影すると、ついついこの見下ろす視線で撮影
してしまします。でもそれでは人形の持つ優しさや強さの表現はできません、その場合
には他のアングルに変えてみるべきです。

2 人形と同じ目の高さ
 人形を人間と同じ大きさに表現します。人と人形は対等な関係となります。
 人形が一番身近に感じられます。人形の持つ優しさ、愛情、喜びや悲しみ、苦しみと
いった感情が最も伝わりやすいと思います。人形写真の基本かと思います。人形に
近寄ることでより親近感が増します。

3 人形を見上げる       
 実際より人形を大きく見せます。人形の持つ強さやたくましさ、凛々しさ、一方で威圧
感などを表現するのに適しています。また人形が優位の視線となりますから、その写真
を見る人は自らの弱さや人形に支配されている感覚を持つこともあるでしょう。
 さらに出来る限り近づくことで、これらの効果はより強調されます。
 かなりのローアングルになりますので、液晶画面の回転できないデジカメの場合、鏡
を使うなどの工夫が必要になります。

 まだまだ完璧ではありませんが、視線を演出することで、撮影者と人形との関係が感じられるようになり、人形に何かを語らせることができると思います。 その方法についてみな
さんもお考え下さい。