撮影カメラは何がいい?
● 寄れる、絞れる、これで人形が身近に感じられる。
簡単なことですが、お人形の大きさが人間と同じならばカメラはどんなものでもOKです。小さな人形やフィギュアになればなるほど、撮影条件はシビアになってきます。これは純
粋にカメラとレンズの性能に左右される物理的な問題です。
カメラカタログで目に付くのは画素数とズーム倍率でしょうけど、それ以外はどういったところに注意して購入したら良いのでしょう? ここでは結果のわかりきっている画素数とズ
ーム倍率以外の要素について考えてゆきたいと思います。
途中難しくて分からない・・・・という方は最後までとばすと、結論が書いてあります。
このあと登場するカメラたちの紹介
は人間の眼に近い感覚で撮影できます。35mm以下を広角レンズといい、小さく、遠方は圧縮されて写ります。70mm以上は中望遠、望遠レンズといい、大きく写りますがピントの 合う範囲は狭くなります。
*)ズーム機能という言葉が出てきますが、このコーナーで言っているのは光学ズームのことです。
画質・表現力
以下の写真については絞り解放(最も明るくして)で撮影してあります。焦点距離も35mmから39mmにそろえ、できるかぎり同じ条件で撮影しています。
また画質は明度のみ補正し、あとは一切手を加えていません。また上段はすべて320×720、下段は300×300ピクセルに統一してありますので、画素数でなく純粋に画質が比較
できると思います。
白赤黒が目立つ画像で、20Wの蛍光灯3本というあまり明るくない状況下での撮影。結構カメラによって差の出やすい状況だと思います。
画質はレンズ、センサー、画像エンジンなどの要素で決まります。その評価は新製品ならばカメラ専門誌に掲載されますが、販売されているものすべてを把握するのは困難です。 言えることは、やっぱり値段の高い方がいいということ、あとはCCDの小さなもの(1/3インチ以下)はさけた方が良いでしょう。CCDは以前のカメラで言えばフィルムにあたるもの、小 さいとやはり表現力に余裕がないように思います。 とりあえず携帯のカメラのようなものでなければきちんと写真はとれます。ただし贅沢を言えばきりがない・・・、というところでしょうか。みなさんだったらどうします? 私の場合に は我慢できずに買ってしまいましたが・・・。
最短撮影距離(マクロ)
sakuraは身長52cm、1/3スケールの球体間接人形です。以下の画像はすべて距離40cmで撮影したものをトリミングして、ほぼ同じサイズの画像になるように操作しました。
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最初に用語の解説で「通常35mmから70mmのレンズを標準レンズといい、写真は人間の眼に近い感覚で撮影できます」と書きました。 上の写真もこれに近い感覚で写っている
のではないでしょうか。
まずは40cmの距離で撮影した意味です。
実際に人間の胸から上の部分程度を撮影するためには、標準レンズといわれる50mmレンズの場合、おおむね1.2mほど離れた場所から撮ることになります。さて当然のことなが
ら、人形の場合には人より小さいのでもっと近寄らなければなりません。1/3スケールの人形であれば、その距離も1/3となるわけです。
上の写真は若干のトリミングがありますので、おおむね50mmのレンズで1.2m離れた場所から人を撮ったのと同じ関係が成り立っています。つまり40cmの距離とは1/3スケール
の人形の上半身を撮る距離ということになります。同時にこれは1/6スケールの人形にとっては全身が写る距離でもあります。
通常のスナップ写真では1.2mの距離はごくありふれた撮影距離ですが、40cmとなるとマクロ撮影域になり、カメラによってはかなり厳しくなります。Panasonic AS30は60cm以内
がマクロ域ということですが、なんとマクロスイッチを入れるとピントが10cmに固定されてしまうのです。つまり10cmから60cmの間にはピントは合わない! マクロが限定的にしか 扱えないカメラは簡易タイプや携帯のカメラに多いようで、要注意です。いずれにせよこの時点でPanasonic AS30は脱落です。
次は20cmの距離です。これは1/3スケールの人形ではバストショット、1/6スケールの人形にとっては上半身の写真を撮る距離となります。
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接近して撮影すると、どうしても歪みを感じる写真になってしまいます。世の中にはポートレートレンズというものがあって、焦点距離が85mmから100mm程度の中望遠レンズが該
当します。接近した場合、この程度の焦点距離の方が違和感を感じないのです。そのためレンズ交換式カメラの世界では、この焦点距離のレンズは接写用としても多く開発されて います。
Konica KD-500Z は焦点距離が39-117mmですから、早速望遠側へズーム・・・・・。ところがだめなんです。広角側は最短6.0cmまで接近できますが、望遠側は50cmまでしか
寄れないのです。実際、ズーム全域でマクロ撮影のできるコンパクトサイズカメラはかなりすくないのではないでしょうか。
では全くアップの写真が撮れないかというと可能性はあります。
@最も良いのはテレコンバーターレンズを装着することです。これは焦点距離を1.5から2.0倍にするもので、比較的安価にグレードアップできます。
A次はデジタルズームを使うこと。但し画質は劣ります。デジタルズームで×3にしたら300万画素も実質100万画素になります。600万画素カメラなどで、余裕のある人向け。
Bまた広角側で接近できるカメラなら、とりあえずそのまま撮影し、歪みはフォトレタッチで修正するという方法もあります。(Konica KD-500Zもこれに該当します)
・・・・でもまあ、「これはいかに綺麗に撮るか」というテーマですすめているわけで、近寄れないカメラでも「トリミングしてあとで拡大するからいいや!」という人は気にしなくっていい
でしょう。精細に綺麗に撮りたいという人だけ気にしてください。
人形撮影における最大の敵は近接撮影であるということがお分かりいただけたでしょうか?
ズーム全域で20cmまで接近できるというのは7万円以上の高級一体型カメラでもほとんど存在しないと思います。一般的なコンパクトカメラで、ゆがみなく撮るつもりなら、1/3スケ
ールの人形ではバストショット、1/6スケールの人形にとっては上半身の写真が限界でしょう。
またレンズ交換式カメラにおいても、一般的なズームレンズで20cmに寄れるものはこれまでありませんでした。 sigma DC17-70は人形を撮影するにはベストのレンズであると言
っていいと思います。但しこのレンズでも1/6スケールの人形の顔のアップは撮れません。もしこれ以上を望むのであれば50から100mmのマクロレンズを購入してください。理想を 言うならF=2.8クラスの明るい単焦点のレンズで、かつ最短撮影距離が20cm未満のものを、異なった焦点距離で数本用意するのがいいと思います。もちろんものすごーくお金がか かります。
絞り・シャッタースピード(撮影モード)
上の写真で背景がぼけているのは、レンズの絞りを解放しているためです。でないと背景がはっきり写ってしまい、主役のはっきりしない写真になってしまうでしょう。後方がきれ
いにぼかせる条件は次の通りです。
@開放F値が小さなカメラやレンズを使用する。(できればF=2.8以下)
Aそのうえでマニュアルモードや絞り優先モードがあれば絞り開放にセットする。なければスポーツモードにしてシャッタースピードを最大限に上げる。
また明るいカメラやレンズを使うことには別な意味があります。
人形写真を室内で撮ることは多いでしょうが、ふつうのコンパクトカメラの場合、室内の蛍光灯だけでは1/30秒程度のシャッタースピードが精一杯かと思われます。ストロボを使え
ばいいのですが、うまく使わないとのっぺりした写真になってしまうし、接近すればするほど変な陰が写ってうまくゆかない。実際にはストロボを使わず三脚を使えば良いのですが、 カメラによっては低速シャッターが切れなかったり、ノイズが混じったりするのでやっかいです。
明るいカメラやレンズであればこんな悩みもかなりの部分で解決します。
絞りは写真のピントの合う範囲を決めます。今度は逆に出来る限り絞って(ピントの合う範囲を広くして)みたいと思います。
絞りの値を高めることでピントの合う範囲はひろくなります。上の写真のように被写体が手前から奥にのびている場合や、写したいものが近くにも遠くにもある場合には、非常に有
効です。
手前から奥まではっきり写せる条件は次の通りです。
@できるだけ明るい条件で撮影する。(室内ならば照明をかき集める)
Aそのうえでマニュアルモードや絞り優先モードがあれば絞りを11以上にセットする。なければ風景モードにしてシャッタースピードを極力落とす。
おそらく高級なレンズ一体型デジカメやレンズ交換式カメラなら大丈夫でしょう。コンパクトカメラはカタログで撮影モードを確認してね。
まとめ
カメラの基本性能は人形写真を撮るうえでどう関係するのでしょうか、以下が私のまとめです。
結論としては、お金はかかりますが、レンズ交換式カメラのボディーのみと、明るく寄れるレンズを1本買うのがベストです。(06/07現在13万円ぐらいになっちゃいますけど)
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