撮影距離とディフーザー

● 照明器具の近づけすぎに注意。

 まずは2枚の写真をごらんいただきましょう。 どちらの写真もデジタル一眼レフカメラ OLYMPUS E410 で撮影したものです。
明るさの調整はカメラ任せですが、この2枚はものすごく違いますね。いったい何が原因でしょう?
  

 実は左の写真は人形のほんの15cmから照明(電球タイプの蛍光灯)をあてたものです。顔は白とびをおこしている一方で、足下は明らかに明るさが不足しています。
右側はずっと照明を離して撮影したものです。ほぼ均一に光がまわっています。ではどれだけ離したかというと・・・。



照明の距離が違うとこれだけの差が出ます。 
明るさは照明からの距離の2乗に反比例します。
分かりやすくいうと、左の写真では顔と足下では明るさに10倍程度の違いがあり、
     一方で右の写真は全体の光の量こそ減りますが、明るさの違いは2倍にも満たないのです。

よくヤフオクを利用するのですが、もうちょっときれいに写るのにな〜、と思うことがよくあります。
 そのなかでも照明が暗いので近づけすぎてしまう、というミスが一番多いように思います。


point1 照明は近づけすぎない
 人間の目はカメラなんかよりずっと性能がいいです。
至近距離から無限遠方まで瞬時にピント合わせするし、カメラがとっても写せないような暗いところでも、逆にものすごく明るいところでもすぐに調整してくれます。
ですから見た目はOK! でもカメラはそうはゆきません。いざ撮影したら、真っ白の部分と、黒くつぶれた部分が・・・なんてことがよくあります。
とくにコンパクトデジカメは明るさの変化についてゆけないことが多いです。
 ですから照明はできるだけ離して、明るさが全体が均一になるようにしましょう。
経験上、上の写真のように人形の身長の2倍程度離せば、距離による明るさの違いは気にならなくなります。




 さてここで問題があります。 1/6スケールの人形なら50cmから60cmほど離せば良いのですが、1/3だとその距離は最低でも1mということになります。
つまり高さ60cmの人形を床に置いた場合には撮影者の頭の高さから、人形を高さ70cmのテーブルの上に置いたときには天井の高さから照らすということになります。
しかも人形から照明を離しているので、かなりの明るさが必要になります。反射板(レフ板)を使うのが安価で良いのですが、それでも室内照明に加えて、クリップライトに組み込んだ
20W蛍光灯が3個は必要です。(2−4照明編2参照) 
 なんとかもう少しコンパクトにきれいな写真を撮ることはできないのでしょうか?

 ここでディフーザーの使用をおすすめします。ディフーザーとは光を拡散させ、全体を一様な明るさにするものです。
市販品には「撮影ステージ」として下のような製品が売られています。ドーム型の白い布がディフーザーのはたらきをしています。


 ただ60cmサイズの人形がおさまるようなものは見かけません、あってもとても高価なものになってしまうと思います。
構造が簡単なので、白い布で自作できますが住宅事情を考えるとちょっと・・・。
 ということで2−3照明編1で登場したディフーザーを再度紹介します。半透明のアクリル板が光をやわらげてくれます。
反射板との併用で市販の「撮影ステージ」と同様な効果が得られます。


 もっと簡単にすませるなら、ティッシュペーパーを2枚にはがして照明の前にセロハンテープで貼り付けます。
これでも効果は変わりません。
 

 実際に試してみたのが下の写真です。左が何もしないもの、右がティッシュペーパーを使用したものです。
ここからも分かるように、ティッシュペーパーは強い光の反射をおさえ、濃い影がでるのもおさえます。
  


point2 ディフーザーで光と影のコントロールをしよう
 直接光でなくディフーザーを通した光は柔らかく、強い反射や濃い影ができるのをおさえます。
光を拡散させるので、結果として照明までの距離を近づけることができます。
私も必要に応じて反射板とティッシュペーパーを使い分けています。





ポイントは以上です・・・。
でもちょっとでもきれいに撮りたくて、今でもいろいろ照明をいじっています。

 室内照明に加えて、クリップライトに組み込んだ20W蛍光灯が3個が最低限ですが、本当はもっとたくさんあった方がいいです。
それはどうしても影の出方にくせが出てしまうからです。
 下の写真でも足下から伸びる影が気に入らない・・・。



 そしてカメラ関係の雑誌を参考にして照明を増設、全部で6灯にしました。


どうでしょう、気に入らなかった足下の影がほぼなくなりました。
明るくなったので全体の色彩もぐっと良くなりました。


ただ・・・。
 撮影風景として、薄曇りの日の表現ならこれでOKなのですが、晴れた明るい日を表現するには太陽光の代わりになる照明が欲しいところです。
特に画像合成をすることの多い私の場合には欠かせません。
 そこで購入したのが次の画像の照明です。
 

 スタンド部分は最長220cm、光源はE26口金が5つ・・・通常の電球型の蛍光管が5つ付けられます。ディフーザーとなるカバーもついています。12000円程度で購入しましたが、
人形や小物専用でなく、一般的なスタジオでも使用できる照明スタンドです。
 明るさは500W級で十分。裏面に個々の電球のスイッチがついており、全部点灯するととってもまぶしいです。もともとの照明を加えると、ほとんど昼間のような明るさになります。
カメラは基本的に日中に使用するのを標準としていますので、この明るさによって本来の性能を発揮できます。


通常の6灯で撮影しました。



スタンド照明も加えてみます。晴れた日中の雰囲気が出ているかな?



いろいろと研究しましたが、照明については本当にきりがないので、この辺で妥協しようと思います。
きれいな写真は、素材、カメラ、光の3つが整っていなくてはなりません。もし5万円のお金があって写真を撮ろうと思うなら、カメラに全てをつぎ込むより、半分を照明にあてた方がず
っと良い結果になるように思います。