球体人形の製作
How to make a doll?

第1シリーズは「球体人形の製作編」です。
 週2日、1日2時間程度の作業で3ヶ月以内には完成すると思います。総費用は5000円以内になると思います。
 興味がおありでしたら、一緒につくってみませんか? 最初はうまくはゆきません、けど修正を重ねるうちに形はしだいに整えられてゆきます。
また行き詰まりになりそうな難しい部分では、その「逃げ道」となる説明を加えてゆきたいと考えています。




●2007.01.20 天気:雨ちょっとだけ雪
 世間では大学センター入試、例年通り雪交じりの天気。今日から、新しい球体関節人形をつ
くります。まずは方眼入りの模造紙その他を買いにゆきます。いつもunidyかtokaiで買い物す
るのですが、最近では手芸コーナーに出入りするのも慣れてきました。たまに「なんであんた
がこんなところに?」みたいな視線を感じることもありますが、まあ悪いことをしているわけでは
ありませんので気にしないようにしています。
           ▲いくら暖冬とはいえ富士山は雪

1−1 基本的な構想
 どのような人形をつくるのかを考えます。サイズとしては1/3スケール(50cmから60cm程度)
が最もつくりやすいと思います。
パターンとしては次の3つぐらいかな。
   A) リアルな人形
   B) SD、MSD、DDなど市販の衣装の着せられる人形
   C) デフォルメされた人形(人型とはまったく違う人形・・・今回の解説からは外れます)
 私の場合、人形のいる日常的な情景を写真として作品化するのが最終目的なので、リアル
さを第一に考えています。一方で本当は服まで自作したいのですが、時間的な制約あってな
かなかそこまで手がまわりません。幸いなことに27cmから70cmサイズの人形については、
素敵なお洋服をつくられる方がたくさんおられます。できればこういった方々の作品を活用した
いと思っています。 これまで球体関節人形は5体つくりましたが、いずれもリアルさを追求し
ながらSDの服が着せられることを条件にボディを作り上げてきました。
 今回は8等身でDDの服を着せられる人形、そして関節の自由度のできるかぎり高いものをつ
くろうと考えています。
 さてどのような人形を作るかが決まれば、あとは資料集めです。
A) リアル系ならば、モデルさんがいればベスト。いなければ市販されているポーズ集(A)、
Shade(B)やPoser(C)のデータなど。たくさん出版されている写真集(D)のなかでは、Sports 
Illustrated(E)(女性アスリートの写真集)は骨格や筋肉の付き方が分かって参考になります。
また下着のカタログ(F)は自然なポーズで正面から撮影したものが多く、デッサンするのに重宝
でおすすめです。
B) SD、MSD、DDなどの衣装を着せられる人形をつくりたいのであれば、SD、MSD、DDそのも
のか、その採寸データ、もしくはそれらの写真等が最低限必要になります。
 なお私のように両方の要素を取り入れるのであれば、もちろんそれぞれの資料が必要です。
吉田先生や恋月姫さんの写真集も持っていますが、制作中に見ようとは思いません。見てし
まうと影響を受けて、自分の人形でなく、物まねになってしまいそうな気がするので・・・。
 なおリアル系とSD・DD系の一番の違いはヘッドです。他の部分は多少の調整で衣装の共用
も可能ですが、ヘッドだけは大きさに2倍の違いがあるのでどうしようもありません。リアルな人
形に市販の洋服セットを買ってあげると・・・オーバーサイズの帽子がどんどんたまることになり
ます。
今回使用したもの:写真集等の資料
今回の作業のために購入したもの・・・特になし 累計   0円
今回の作業時間=1.0時間 累計  1.0時間








●2007.01.26 天気:晴れ
 ちょっと間が開きましたが、今日はデッサンに入ります。
 私の場合、自分のつくる人形にはまず可愛さ・美しさと人としてのリアル
さを求めます。たとえ人形であっても、女の子は愛すべき存在であり、美し
く、自分にないものを持つ魅惑的な?存在であってほしいと考えているか
らです。

*)写真左は初めてお目にかけるkiraちゃんとnanaちゃんです。最初の頃
の球体関節人形はこの娘たちを参考にしてつくっています。写真右は
maya、今回はDDに近いものということで彼女に登場してもらいます。
        ▲左からkira、nana                  ▲maya

1−2 デッサン
 人形作りの構想ができあがったら、デッサンを行いま
す。これが次につくる「型」の設計図となります。美術が
苦手だったり、デッサンなどしたことがない人でも大丈夫
です。難しいと思ったら補足の1・2を見てね。
 右の画像が今回の人形のもととなるデッサンです。用
紙は1mm間隔で方眼の入っている模造紙です。デッサ
ンは正面図と側面図が最低限必要で、腕の部分は胴か
ら離れたポーズの方が良いと思います。2色の線が引か
れていますが、青はDD2のライン、黒はこれから造ろうと
する人形のラインです。
 今回はDD2の洋服を着せられるという条件でつくります
ので青のラインを書き入れましたが、もちろん完全オリジ
ナルでSD、MSD、DDなどの衣装を着せるつもりがなけれ
ば不要です。
 なおヘッドの部分に青のラインがありませんが、これは
標準DDヘッドと全くサイズが異なるヘッドをつくるつもりな
ので書きませんでした。
 また足の長さを初めとして両者の異なる部分が多いこ
とに気づかれるでしょう。青から黒ラインが離れることは
洋服がぴったりでなくなってゆくということですが、実際の
ところ、よほどタイトなものでない限り1cm以内の変位に
よって着ることが困難になることはありません。
1 DD2を模造紙の上に置き、真上から光を当てます。
 そして鉛筆で影の輪郭をなぞってゆきます。このとき 
 ひんぱんにライトの位置を変え、常に真上から光があ
 たるようにしましょう。でないとかなりの誤差を生じま 
 す。
2 青のラインで清書してゆきます。このラインを目安と 
 して次の段階にすすみます。なお今回は青ラインはわ
 ざと強調してありますが、本当はかすかに見える程度
 の濃さ太さでいいです。あとでごちゃごちゃして分から
 なくなってしまいますから。
3 この上に自分の理想とするラインを、写真集等を参 
 考に鉛筆で書いてゆきます(補足1参照)。青のライン
 はあまり意識する必要はありません。1cm以内であれ
 ばはずれていても大丈夫。青ラインはあくまでのDD2 
 と同サイズの人形をつくる目安です。



補足1) 写真からデッサン
 いきなり写真集や画像から理想のラインを引くことは難
しいと思います。そこで少々手間はかかりますが、もとに
なる写真や画像からデッサンの基準点とってゆく方法を紹
介します。
 右の参考画像の左側は、わかりやすくするために、モデ
ルの画像から輪郭線を抽出したものです。
 たとえばつくりたい人形の胴の長さが190mm、この画像
に写ったモデルの胴の長さが89mmだったとします。する
と倍率は190÷89=2.8倍となります。あとは様々な部分
を物差しで測り、すべてを2.8倍して模造紙に書き写して
ゆけば良いわけです。
 点がとれたらあとはこれを結んでゆきます。ただこれもあ
くまでも目安なので、最終的にスムースで美しいラインは
自らの手で引き直すことが大切です。

補足2) poser
 Shadeは高品位な3DCGソフトウエアですが、poserはその名の通り3DCG機能を人間のモデルに
特化したもので、これまでデッサンなどしたことのない人には、とてもありがたいソフトウエアかと思
います(定価¥10000、キャンペーン版があれば\5000強で購入可能かも)。私も最初は活用させて
いただきました。
 性別・年齢を初めとする様々なパラメーターを入力することで比較的容易に自分の作りたいキャラ
クターを3DCGにすることができます。また人の顔写真から、その人の顔の3DCGをつくることも可
能、さらにはアニメーションにも対応しているという優れものです。
 写真の左の列が1/3Doll anneの元になった画像。右の列はこれをワイヤフレームとしたものです。

今回使用したもの:写真集等の資料、DD2、青マーカー、鉛筆、ボールペン、スタンドライト他
今回の作業のために購入したもの:模造紙(方眼入り¥168) 累計  168円
今回の作業時間=2.5時間 累計  3.5時間









●2007.02.01 天気:晴れ
 さて以前から思っていたのですが、人は昔から、美術品として石こうやブロンズの彫刻を作り
続けてきました。でもどうして色を塗らないのでしょう?大昔なら適当な絵具がなかったから、と
いう理由もありますが、優れた塗料がある現在、ミケランジェロが生きていたら、いったいどうす
るでしょう?やっぱり塗らないのかな?

 前回まででデッサンが完成したので、次に関節部分の設計をします。
       ▲我が家で「ネズミ」と呼ばれているハムスター

1−3 関節の設計
 人形を稼働させるためには関節となる球を組み込む必
要があります。そのためには、まず人形に合った様々な
サイズの球を取りそろえる必要があります。参考までに
お話しすると、今回の私の設計では、DDサイズの人形を
つくるために直径38、25、18、12mmの球が必要でした。
 右図が今回の完成図で、関節となる球体が組み込ま
れています。球の選択にあたっての注意点としては
@基本的には球の外側に最低2mmの粘土層が確保で
きること。(輪郭を示す黒ラインと球を示す円の間に2mm
の間隔を、最低限あけること)
A膝の後側と肩、腕の内側、手首、股関節の全面は球
が露出していてかまわない。

といったところです
(この点はいくつか完成品の人形を観察してみるといいと
思います)

1 ともかくたくさんの球を集めます。球であれば何でも
 良いですが、発泡スチロール等の柔らかく変形するも
 のは避けましょう。
2 組み込むのに最適な球を探します。合うものがあれ
 ばその直径(半径)を測っておきます。
3 基本的に最適な球とは、球の外側に2〜3mmの
 粘土層を確保できるものです。下図では球と膝の輪 
 郭線の間に2mmの間隔があります。一方、膝裏に粘
 土層はなく、球は露出しています。これは膝下を後方
 に可動させるためです。このように球が露出してかま
 わないのは膝の裏側、肩、腕の内側、手首の部分で
 す。

4 当てはまる球を探したら、球の中心になるところに印
 をつけます。次につけた印の間隔を測りましょう。下図
 では股関節と膝の中心点の間隔は131mmでした。
5 正面図でも測定してみます。131mmでなかったら、
 球の中心を調整して下さい。この作業を膝−足首、股
 関節−肩、肩−首・・・と同様に繰り返します。
6 調整が終わったら、球の直径に合わせて円を引きま
 す。

7 パーツの分割線を入れてゆきます。基本は軸に対し
 て垂直です(この項の最初の図を参照)。但し膝と股関
 節は違います。膝の場合45°の角度をつけます。
8 正面図では分割線はこのような形状になります。


9 股関節は傾き30°ぐらい。
10 股関節の側面図です。


今回使用したもの:直径38、25、18、12mmの球、物差し、コンパス、ボールペン
今回の作業のために購入したもの:木球を1個追加(¥380)
累計  548円
今回の作業時間=1.0時間 累計  4.5時間