画像合成

 ● 視線の一致と光線のコントロールができれば大丈夫。
撮影の幅をひろげよう
 1/6スケールの人形の場合には、食玩をはじめとして様々な小物類が発売されており、またベッドや家具類も容易に購入、もしくは製作可能です。
ところが1/3スケールの人形の場合には、これらのものが入手しにくいのが実情です。また当然のことながら実物は人形に対して大きすぎます。結果としてせっかく造った人形も、
いつも同じ背景・小物で撮影せざるを得ない・・・。
 そこで私は、撮影の幅を広げるために人形画像自体を縮小して実物の背景に組み込んでゆくという手法をとるようになりました。これによって、お気に入りの風景や旅先の風景
自分の人形を組み込むことができるようになり、作品の幅もぐっとひろがりました。
 画像合成のポイントは視線と光。
 なおPCと画像処理ソフトが必要となりますが、それらの扱いは付属の解説書におまかせするものとし、このコーナーでは人形の画像合成の場合に絞って解説します。


合成を前提とした人形写真の撮影
 まずは人形撮影に必要な照明の条件については、撮影講座・2技術・ 照明1 および 照明2 に書かれていますのでお読み下さい。
 ここでの画像合成は気に入った風景に人形の画像を切り取って貼り付けることを前提としますので、人形の背景となるスクリーン選びには注意が必要です。特に次のことは人形
画像をきれいに切り取るうえで大切なことです。
1 無地であること
 バックは市販のスクリーン、模造紙、布などで、つやのない単色のものであればOKです。
2 人形そのものや衣装と異なる色であること
 色は人形の肌や衣装と異なる色合いのものが要求されます。色白な人形の場合にはスクリーンが白だと画像が切り取れないし、青い服はスクリーンが青なら切り取れないという
ことです。下の写真のように撮影前に人形とスクリーンの色が違うことを確認しましょう。



3 できれば背景となる画像に近い色合いが良い
 画像を綺麗に切り取ることは難しいです。切り取った人形画像にスクリーンの色の一部が混じっていることはよくあることです。だからできるだけ背景の画像に近い色合いのスクリ
ーン、もしくは地味な色合いのスクリーンを選びましょう。

そのうえで
1 背景が多くの色を含んでいたり、人形の衣装が多くの色を含んでいたり、様々な要因で色選択が困難なときには迷わずグレーを使いましょう!
2 髪が乱れている人形は非常に画像が切り取りにくくなります。事前に小さな霧吹きで湿らせるなどして、落ち着かせておきましょう。
といったところがポイントでしょうか。





補足)使用している画像処理ソフトの紹介
Ichikawa Daisy Collage 10(パッケージ版¥10290、実売¥6300程度)
 フォトレタッチ、ペイント、画像加工・各種フィルター等、一般的なグラフィックツールとしての機能を持つ。市販品のなかでは最も安価な部類。細かな調整は苦手だが、その分初心
者にもわかりやすい。ちょっとした加工ならとっても便利。私も80%の作業はこちらでやってます。RAW現像可能。
*)特徴としては、画像の合成がコピーツールに似た機能で目視しながらできること。手順が簡単で分かりやすいです。
 (一般に多くのグラフィックツールは透明レイヤーに画像の切り出しをして、他の画像と合成するのが主流かと思います)

GIMP 2.2(フリーソフト)
 フォトレタッチ、ペイント、画像加工・各種フィルター等、フリーソフトでありながら市販されているグラフィックツールに遜色ない機能を持つ。以前に比べて安定感が増し、完成度の高
い作品をつくるときには活用するようになりました。ただRAW現像はできません。





画像処理の手順とそのポイント

作例1 まずは菜の花の咲く土手の写真(左)とleahの写真(右)を合成することを考えてみましょう。
 土手の斜面に菜の花が咲き始めた早春、シルエットの綺麗な気が1本あります。この木の下に和装の人形を立たせてみたいと考えました。
 最初に考えることは2つの画像の視線を一致させることです。土手の中腹に人形を立たせるつもりですから、やや下方から写した人形写真が必要となります。
そこで撮影したのが右側の写真です。角度を変えて何枚か撮影しておくと良いでしょう。





 人形写真と土手の写真を比較したところ、土手の画像の発色が良くありません。そこで土手の画像を調整し2つの画像の明度と彩度を一致させました。
 そしてグラフィックツールを使って人形部分を切り出したのが右側の写真です。Ichikawa Daisy Collageの場合には切り出す必要もないのですが、画像の確認をするために1回、白
をバックにした画像に切り出しておくのも良いかと思います。
 あとはグラフィックツールを使って2枚を合成します。人形の足下の菜の花を自然な雰囲気にするのはちょっと手間ですが30分程度で下の合成画像が完成します。



                       






作例2 次に順光でない背景写真の場合について考えてみましょう。
 旧家の写真は光が左やや後方からあたっています。ここに人形写真を貼り付けます。
 人形写真を撮影するときにも、この旧家の光が再現されていなければなりません。
 さていったいどうやって人形を撮影すれば良いのでしょう。




実際の撮影では基本となる3灯の他に、左後方から照らす2つの光源を追加して撮影しました。
これで2つの画像の光線を一致させることができました。










作例3 こまかな部分の修正をしましょう。


これまでの手法で人形写真を合成してみましたが、ちょっと落ち着きがありません。
そこで次のような修正をしました。
@ 人形の袖の部分には光が当たっているはずなので、この部分の明度を上げる。
A 切り取った人形写真の輪郭にあたる部分にグレーのスクリーン画像が残っているので、これを消去。



まだちょっと違和感があるので更に修正します。
@ 人形の右側部分の明度を落とし、人形自身の影をつくる。
A よく見たら柱に「禁煙」の張り紙が・・・、コピ−ツールで消します。

 

私自身も結構、行き当たりばったりでやってますが、参考になりましたでしょうか?