自然な光を演出するには

 ● 太陽の出かたによって写真の写り方は変わる

空の明るさと太陽光を表現する
 照明編の発展です。状況に合わせて自然な光を演出するにはどうしたら良いのかについて考えてみました。
室内で自然光を表現するためにいろいろ調べたり、考えたりした結果が下の照明配置です。



 人形の上方のライトは、スポットランプにはE26型口金の20W蛍光管をつけたものです。
(照明1参照) このライトはつや消し処理をしたアクリル板の上にのせています。このアク
リル板はディフューザーとよばれ、光を拡散し、人形にやわらかな光があたるようにする
はたらきをします。変な強い影や、おでこが白とびするするのを防いでくれます。トレーシ
ングペーパーや薄い和紙でも同じようなはたらきをしてくれます。この光はいわば空の明
るさに該当します。

 真ん中のライトは太陽光を表現します。
 13W蛍光管をつけたスポットランプ2つを三脚に取り付け、可動式としています。
 晴れた屋外をイメージした写真を撮るつもりなら、ちゃんとした影が必要なので、このラ
イトにディフューザーはつけません。曇りの日や室内をイメージした写真を撮るつもりなら、
ディフューザーをつけるか、照明そのものが直接人形にあたらないように配置を変えます。
 またこの位置のランプが人形の瞳にキャッチライトを入れます。




 下の真ん中の光は足下の明るさを確保するためにおきます。実際には地面からの照り
返しにあたります。1つのスポットランプに13W蛍光管をつけてます。可動式のアームに
取り付け、最も暗い部分に照射します。

 最後に全体の明るさのバランスをとるために周囲の反射板(レフ板)の位置を調整します。
不十分なら、さらに小さなレフ板(レフ板の項を参照)を追加します。

 本当ならHa-Yarnのような70cm級の人形だったら、もっと大きな撮影スペースが必要で
す。ちょっと窮屈すぎてライトと人形の間に充分な間隔がとれていません。



季節や時刻と、場所や天候の表現
 ちょっと難しいですが、まずは「空がなぜ青いのか」「夕焼けがなぜ赤いか」についての話です。
照明編の1で解説したように、太陽光は       紫 などの、たくさんの波長の光が集まったものです。
そしてこれらの光には次のような特徴があります。
● 光は空気をつくる分子に散乱(乱反射)されてしまう。
● 波長の短い光ほど散乱されやすい。

 したがって太陽光は紫     橙  の順に散乱されます。
 太陽が真上にあるとき(右図A)には、まずが、次にが地表に近いところで
散乱されるため、人の目には空が青く染まっているように見えます。
 太陽が低い位置にあるとき(右図B)には、大気を通過する距離が長いので、
だけでなく  橙 まで散乱されてしまいます。そのため、人の目には直前
で散乱している赤が空の色として認識されるのです。

 太陽の高さが低くなると、光の成分は紫     橙  の順に失われて
ゆきます。このため朝夕や、もともと太陽が低い位置を通る秋冬に写真を撮ると赤み
をおびてしまうということになるのです。
 日陰や雲の下では写真は青みを帯びてしまます。
これはバランスのとれた太陽光線が遮られ、散乱された空の青さが影響するからだと
考えられます。(黄色いものに近づくと近づいたものが黄色っぽくなるのと同じこと)








 太陽光線の強さや、太陽の出ている高さなどと、季節や時刻、場所や天候などの関係を簡単にまとめてみました。
これだけでイメージ通りの写真が撮れるようになるとは言い切れませんが、この関係を意識することで、より自然な写真に近づくと思います。



       ● コントラストを強調した写真
      太陽光線が強いときにあてはまる。
        ↑ コントラストを+2
      ● 青を2段階強調した写真
 日中の日陰や、雨・曇りのときにあてはまる。

              ← 青を+2
         ● 補正していない写真



           ↓ コントラストを−2
    ● 赤を2段階強調した写真
 秋冬や朝夕など太陽が低いときにあてはまる。

           → 赤を+2
       ● コントラストを押さえた写真
      太陽光線が弱いときにあてはまる。





 これまでのことは気に入った風景写真と人形写真を合成するときにも役に立ちます。
 ここでは2つの例をあげて説明します。




風景写真の光は右やや後方からの逆光です。これを考慮して人形写真のライトを調整し、写真を合成します。





 風景は晩秋の朝、太陽高度はかなり低いです。そこで肌の色をちょっと赤く、
そして直射日光はあたっていないので、コントラストを少し下げます。





 枯れたススキの穂がきれいです。輝く感じを出したいので、最後にソフトフォーカスをちょっときかせます。




2008.01 Ha-Yarn Cho ( Doll More製 レジンキャスト 68cm 2007)  camera: Canon Eos Kiss Digital X + Sigma DC17-70/ graphic tool: Ichikawa Daisy Collage 10






風景写真の光は右上方から、ただし薄曇りで日差しは強くありません。これを考慮して人形写真のライトを調整し、写真を合成します。





けっこう人形が風景から浮いてしまっています。
 風景は夏の昼、日陰になった通りです。そこで肌の色をちょっと青くします。
またあわせて少し明るくします。後方の女性が色と明るさの参考になります。





日陰にいる雰囲気は出ました。
足下にやわらかい影をつけます。
また用が済んだので後方のおねえさんもコピーツールで消します。





 最後に美白系のフィルターをかけました。(全体が少しだけもやがかかったように白くなる)
 フィルターは最後にかけてやると2枚の画像がなじみます。




2008.01 Ha-Yarn Cho ( Doll More製 レジンキャスト 68cm 2007)  camera: Canon Eos Kiss Digital X + Sigma DC17-70/ graphic tool: Ichikawa Daisy Collage 10