球体人形の制作(発展編)
                            How to make a doll?

        こちらは「球体人形の制作・改良編」です。第1シリーズの制作講座をお読みになってない方は、まずはそちらで人形制作の概要をご理解下さい。
        このシリーズは前回以降の制作で得たノウハウをまとめたものになっております。

                     関節の工夫2




●2011.11.08 天気:曇
 
 人形の関節についての考えは、作家やメーカーによって様々です。
あえて球体を強調する作家さんも多いですが、自分としては関節は
目立たず自然に、しかも可動範囲が大きいというのが理想だと思っ
ています。
 人形は自分でつくるほかにも、興味がある作品はお金の許す範囲
で購入し、研究させていただいています。SDを参考に始めた人形創
りですが、最近では様々なメーカーがいろいろなアイディアで人形制
作に取り組んでいて、ときどきすごいなーっと思うことがあります。
最近購入した右のiplehouse社のAmyもそのひとつです。




 こちらの人形はオークションで出品した naomi A02 ですが、これまでの人形とはちょっと関節を変更しています。
今回はその工夫についての解説です。




肩関節

 肩の関節の凹凸関係を逆にしてみます。一般的には胴体側を
凹に、腕側を凸にすることが多いですが、逆にすると肩のライン
がスムースになり、ノースリーブの服が綺麗に着せられそうです。
問題は可動範囲にどれだけ影響があるのかという点です。結果
としては・・・。

 A 縦関係の回転に制約はありません。
 B 真横にまで腕は上げられますが、ゴムのテンションの影響
  で、真下に腕を下げるのにはやや制約があります。

 アクション、ポージングを重視しないなら、この関節は美しい
仕上がりが期待できます。

A                B



膝関節

 可動範囲を大きくするためには、二重関節にするのが一般的
です。ですが粘土製の人形の場合、精度や強度に気を使わな
ければなりません。
 そこで膝の球を裏側に大きく出すような関節にしてみます。

 A 通常は90°程度の可動範囲が130°以上になります。
 B 関節を球でなく楕円体にすると、更に安定感が増します。

 球体が外に出ることをいとわなければ、とても安定した作りやすい関節です。
              A               B

 C 太ももの裏を凹形に削りこんであります。ですから、少し見
  苦しいところはありますが、正座させることもできます。

C



腰関節

 レジン製ドールで時折見かけるのが、腰の関節をバストの
直下に持ってくる方法です。バスト下なので分割ラインが目立
たなくなります。


 ここで問題になるのが分割した場所の関節の形状です。
この部分は球にしようとすると不自然なので楕円体としま
す。その結果・・・。

 A 前後の可動範囲はおおむね30°を確保
 B 左右は45°程度
 C 横回転はほとんど不可能

という結果になりました。
   

           A            B            C

           

 結局のところ、誰もが満足する関節は存在しないように思います。
様々な関節にはそれぞれ長短があって、興味志向、時と場合で使い分けるということでしょうか。