表面の仕上げとメイク 2



 こちらは「球体人形の制作・表面仕上げとメイク編2」です。
 型どりしたパーツをベースにして完成までの過程解説しておりますので、制作過程全体をお知りになりたい方はインデックスページからたどって、まずは型どり
の概要をご理解下さい。





1 基本塗装
     
 型どりから始めて 全体の造形が終わり、最後に400番のサンドペーパーで
磨き上げたのが下の画像です。ここから表面仕上げの工程に入ります。

  
 





1 自分の制作したドールについては、手と足、肘の
関節についてはレジンパーツに置き換えています。
 このままでは水性塗料は乗りませんから、全体に
ジェッソを薄く塗ります。これで粘土のパーツと同等
に塗装することができます。





 一方、他の粘土製パーツは最後にサンドペーパーで
磨き上げてるので表面が毛羽立っています。
 普通はそれを抑えるために、固く絞った雑巾などで表
面を拭くのですが、自分の場合にはここでひと工夫。
 薄めたイージースリップを全体に塗ることで毛羽立ち
を抑え、また表面を固く締めます。


2 イージースリップを水でおおむね5倍程度に薄
 めます。
3 これをスポンジに染みこませ、軽く絞ったうえで
 すべてのパーツに塗ってゆきます。


        イージースリップは濃すぎるものを1度にたくさん塗らず、
       何度か繰り返した方が良いかと思います。
        今回は塗布と乾燥の過程を3回繰り返しました。




 次に基本塗装に入ります。ベースになるのはリキテッ
クスのチタニウムホワイト、ライトポートレートピンク、
アンブリーチドチタニウムの3色です。
 今回はこれを、20:1:3の割合で混合したものを基本
色としています。以前はホワイトの代わりにジェッソを混
ぜ込んでいたのですが、細かなモールドが消えてしまう
ことがあるので変更しました。
 参考までにこれは後述のMr.カラーno.111のキャラク
ターフレッシュ(1)に非常に近い色になり、最終過程で補
修が必要になったとき、とても便利です。
 基本色についてはその配合を変化させることも可能で
す。ブラウン系の絵の具を混ぜて日焼けした肌にしたり
することもできます。


4 塗料は一度に厚く塗らず、塗装と乾燥の過程を
 5回ほど繰り返して仕上げます。




 以前はこの段階から表面保護と肌の透明感を出
すために透明ウレタンを何度となく吹き付けていま
したが、有機溶剤を使用することなどの理由から、
今回からパジコ社のドールフィニッシャーをに変え
てみることにしました。
 塗膜の強さや厚さでは透明ウレタンに一歩及びま
せんが、水生アクリル塗料なので安全性も高そうで
すし、扱いも簡単です。


5 ここでパジコのドールフィニシャーを3回程度吹
 き付けました。






2 着色
     
 ここから先は色を変えて、肌に様々な変化を加えてゆきます。
自然なグラデーションをつけるためには、ベースカラーに少し
ずつ別なカラーを加えていって様子をみるのが無難かと思いま
す。

 まずはライトポートレイトピンクをベースカラーに加えて赤み
を強調します。この作業にはエアーブラシが向いています。



6 股関節部と身体で赤みがある部分にまんべん
 なく吹き付けてゆきます。
7 特に赤みの必要な部分、頬、膝、指先などには
 更にピンクの割合を増やして吹き付けます。



8 この段階でドールフィニッシャーを吹き付けます。
 埃の混入は目立つので取り除きます。
9 次にオレンジをベースカラー加え、影になる部分
 を強調し立体感を出します。
           1つの工程が終わるごとにドールフィニッシャーを吹き
          付けます。これによって徐々に透明感が増します。
           また透明層が塗膜と塗膜の間に入ることで、次の塗装
          に失敗しても、ふき取ることで塗装を一歩手前の段階に
          リセットできる安心感があります。



 水生アクリル塗料は安全性が高く安心して使うことが
できるのですが、細かな吹きつけ作業については、やは
り溶剤系のカラーには及びません。
 Mr.カラーのno.111 キャラクターフレッシュはベース
カラーに非常に近いです。赤みを加える場合には更に
no.112を加えると良いでしょう。
 また影の部分にはこれに加えてガイアカラーno.054
を加えて調子を見ます。
 そして1工程進めるごとにドールフィニッシャーを吹き
付けます。



10 Mr.カラー等を使って、指やバストトップ、唇など
 の表現をします。失敗したら溶剤で拭き取ります。



 あせらず、少しずつゆっくりと着実に、というのが
塗装のコツでしょうか。それから集中力が切れる
までに休憩することも大切。
 とりあえず一区切りついたので、各パーツの現状
をご紹介します。
 
         
     
         
     





3 表面保護とメイク
 自分はDOLLは飾り物でなく、実用品であるべきと考え
ています。ですから多少ラフな扱いでも簡単に傷ついた
りしない。また簡単に汚れが落とせるということは大切な
ことだと思っています。
 ドールフィニッシャーは扱いの簡便さには優れていま
すが、表面保護という意味ではこれまで使っていたウレ
タン塗料の方が上のように思います。
 ウレタンの塗膜は市販の塗料のなかで最も強いです。
自動車の塗装にも使われているぐらいなので、水、油、
汚れに強く、また塗装しておけばメイクに失敗してもうす
め液で消すことができます。更に人形自体の強度も増
します。
 メリットはとても多いのですが、問題もいろいろありま
す。
 まずはやや高価で、二液混合という扱いの難しさがあ
ること、スプレーガンがつまりやすく、メンテナンスが面
倒、溶剤の刺激が強く、部屋も汚れる・・・。でも知って
しまうと間違いなく手放せなくなります。 
 


11 つや消し剤を混ぜた透明ウレタンを吹き付けて
 ゆきます。乾燥を待って全体に5程度繰り返しま
 す。関節部分は組み合わせの状況を見て、回数
 を調整します。
  埃の混入があったらすぐに取り除きます。



         ここから微細な部分の塗装とメイクに入ります。
        基本的にすべてMr.カラーなどのアクリル塗料を使
        います。


12 爪はピンク系の塗料を中心にグラデーションを
 つけ、付け根部分を白に塗装します。
13 輪郭をオレンジ系の塗料で描き、最後に透明
 アクリルで保護します。


14 Mr.カラーno.51で目尻と顎などに陰影をつけて
 ゆきます。アイも具合を見るために入れました。


15 眉毛と下の睫毛、目の輪郭などを茶系の塗料
 で描いてゆきます。




16 唇や鼻孔、目頭などにピンク系塗料でアクセ
 ントをつけます。





       とりあえず表面仕上げとメイクの段階はここまで。
       あとはアイをウイッグを選びなおし、取り付けます。作例ではブロンドの
      ウイッグになっていますが、全体の雰囲気が和風だなって思ったので、
      黒髪に変更しました。




       ボディの大きさに合わせてゴムを切り組み立ててゆきます。
       実はこのときがいちばん不安で、ちゃんと関節がバランス良くつな
      がっていなければ、制作過程を戻してやり直すしかありません。
       修正を繰り返すとたまにバランスが悪くなってしまうこともあります。



 



               

               



          ね、やっぱり和風の美人さんです。
          ねらった訳ではないのですが、ふっくらとした頬と穏やかな表情がごく普通
         にいそうな感じです。
          風の夏も近いということで、水着を着せてみました。
          いろいろチェックしてみましたが、SD用のOFはだいたい着せられそうです。

                  







     球体関節人形もこれで30体目になりました。
     手慣れてきたというか、ポイントが見えてきたということか、最近は大きな
    ミスもなくなって、DOLL制作の完成度も高まりつつあるように思います。

     でも一方で、もうそろそろ次のステップにすすみたいのですが、その先が
    見えてこない、そんな状況が続いているのも事実です。






2015.06

camera:Panasonic Lumix G3 + GVARIO 14mm-42mm / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 5 + Ichikawa Daisy Collage 10