特殊効果3

●GIMPをつかって印象的に仕上げる
 1:3 ぐらいのスケールになると、撮影のために同じスケールの部屋を用意したりするのは困難で、
ましてや1:3スケールの自動車などは存在しません。ですからどうしても 1:1 スケールの現実世界
のなかでの撮影が中心となってゆきます。
 ただ現実にはスケール的な違和感は残るわけで、リアリティーやよりダイナミックな作品を完成さ
せたいのなら、画像合成という方法はとても有効です。
 今回はGIMP 2.8 を用いてつくった、最近の作品の制作方法について解説します。
 GIMPはRAW現像はできないものの、フォトレタッチ、ペイント、画像加工・各種フィルター等、フリ
ーソフトでありながら、市販されているグラフィックツールに遜色ない機能を持ち、完成度の高い作品
づくりが行えます。


作例1 漫画効果
 輪郭を強調するのが目的です。シャープネスよりも強い効果があり、印象がより強くなります。

 元画像の背景も白なのですが、
  1 <ツールボックス><ファジー選択>で背景を指定し、
  2 <色><明るさーコントラスト>で背景を更に明るく白
   く仕上げてあります。
       
 ちょこっとコメントを入れました。
  3 <ツール><テキスト>で挿入スペースをつくり、
  4 適当な語句を書き込みます。
       
   これでも良いのですが、より輪郭を強調し印象的に仕上
げることにしました。
  5 <フィルター><芸術的効果><漫画>でウインド
   ウを開きます。
  6 <マスク半径><黒の割合>を適当に設定し、その
   効果を調整します。
 








作例2 合成
 輪郭を強調した背景に、別に撮影したDOLL画像を合成します。

 古びた感じを強調するために次の操作を行っています。
  1 <色><色相−彩度>で彩度を下げる。
  2 <色><明るさーコントラスト>で少しコントラストを
   あげる。
       
 背景の写り込みを消去します。
  5 <ツールボックス><スタンプで描画>を指定し、
   画面上で小さく写り込んだ人物を消去します。
 以下、前と同様に、
  6 <フィルター><芸術的効果><漫画>でウイン
   ドウを開きます。
  7 <マスク半径><黒の割合>を適当に設定し、そ
   の効果を調整します。
       
    8 合成したいDOLL画像を指定し、前の画像の上にドラ
   ッグアンドドロップします。(引っ張ってきて落とすだけ)
   そうすると、新たにレイヤーがつくられます。
 
       
    9 <ツールボックス><ファジー選択>などを用い
   てDOLL後方の部分全体を指定し、
   10 <レイヤー><東名部分><アルファチャンネル
    の追加>を行います。
   11 <編集><消去>で背景が消えます。
     (左の画像は背景が白ですが、実際には町並み
      が写っています)
 
       
   このままだとDOLL画像が大きすぎるので、
  12 <レイヤー><レイヤーの拡大・縮小>で適当な
   大きさに変更します。
 若干DOLL画像が暗い感じだったので、
  13 <色><明るさーコントラスト>で少し明るくしました。
  14 最後に<レイヤー><下のレイヤーと結合>で画像
    を完成させます。
 








作例3 下塗り
 故意に暗くしたり、変色させて印象的な画像をつくります。

 地下通路の画像です。
 こういったどうでもいいような画像のコレクションが
作品づくりに役立ちます。
  1 <色><明るさーコントラスト>で少し暗く調整。
       
  2 <ツールボックス><スタンプで描画>を指定し、
   張り紙を消去します。
       
    3 <色><着色>で全体を青く着色。
 
       
    4 <フィルター><下塗り><雲><霧>で
   ウインドウを開きます。
  5 今回色は黒に近い青、霧の濃さは4.0ぐらいで、
   霧レイヤーをつくりました。
 
       
    6 合成したいDOLL画像を指定し、前の画像の上に
   ドラッグアンドドロップします。
  7 <ツールボックス><ファジー選択>などを用い
   て背景全体を指定し、
   8 <レイヤー><透明部分><アルファチャンネ
   ルの追加>を行います。
   9 <編集><消去>で背景が消えます。
 
       
   やはりDOLL画像が大きいので、
  12 <レイヤー><レイヤーの拡大・縮小>で適当な
   大きさに変更します。
 若干DOLL画像が明るすぎたので、
  13 <色><明るさーコントラスト>で少し暗くしました。
  14 最後に<レイヤー><下のレイヤーと結合>で画
   像を完成させます。
 








作例4 ライティング

 違和感なく画像合成するにはそのためのライティングの調整が必要です。

 こちらが背景となる画像です。
 新宿駅前から撮影しました。
       
  1 <色><色相−彩度>でウインドウをひらきま
   す。
  2 Y(イエロー)以外、すべての色合いの彩度を0
   にします。
 こんな感じで、あっという間に1色を残した異次元空
間ができあがります。
 この手法はポスターなんかでもよく見ます。

       
   こちらが合成するDOLL画像です。
 DOLL画像は基本的に背景画像の完成後に撮影しま
す。なぜなら背景画像に合わせてライティングするか
らです。
 作例の背景画像では基本的には上方からやや逆光
気味で光があたっており、さらにビルや地面からの照り
返しなども再現します。
 このあたりの調整が違和感のない合成画像をつくる
最大のポイントだと思います。

 その後、
  5 合成したいDOLL画像を指定し、前の画像の上に
   ドラッグアンドドロップします。
  6 <ツールボックス><ファジー選択>などを用い
   て背景全体を指定し、
   7 <レイヤー><東名部分><アルファチャンネ
   ルの追加>を行います。
   8 <編集><消去>で背景が消えます。
 
       
   DOLL画像の方のレイヤーを小さくします。
  9 <レイヤー><レイヤーの拡大・縮小>で適当な
   大きさに変更します。
  10 最後に<レイヤー><下のレイヤーと結合>で
   画像を完成させます。

 





作例5 光と陰
 さらに漫画効果に加えて一部の色を脱色し、よりインパクトのある画像にチャレンジ
します。

 迫力ある海岸風景です。このまま使用しても良いの
ですがここで一工夫します。
       
  1 <色><色相−彩度>でウインドウをひらきま
   す。
  2 C(シアン)とB(ブルー)の彩度を0にします。
 結果として海と空の部分がモノクロームになり、海岸
のみが色合いとして残ります。
 さらに輪郭強調のため漫画効果を追加します。
  3 <フィルター><芸術的効果><漫画>でウイ
   ンドウを開きます。
  4 <マスク半径><黒の割合>を適当に設定し、
   その効果を調整します。
       
   こちらが合成するDOLL画像です。
 前の作品と同様、背景画像に合わせてライティング
します。
 図では右上方からの光を再現し、撮影しました。

 その後、
  5 この画像を指定し、前の画像の上にドラッグアン
   ドドロップします。
  6 <ツールボックス><ファジー選択>などを用い
   て背景全体を指定し、
   7 <レイヤー><東名部分><アルファチャンネ
   ルの追加>を行います。
   8 <編集><消去>で背景が消えます。
 
       
   DOLL画像の方のレイヤーを小さくします。
  9 <レイヤー><レイヤーの拡大・縮小>で適当な
   大きさに変更します。
 こちらの写真は夏の日中に撮影されたものですので、
陰がないと不自然です。そこで、
  10 背景を指定し、<ツールボックス><自由選択>
   で陰のできそうなところを選択し、
  11 <色><明るさーコントラスト>でその部分を暗く
    しました。
  12 最後に<レイヤー><下のレイヤーと結合>で
   画像を完成させます。

 





 フリーソフトと比較的簡単な操作で、本格的な合成画像が完成します。
馴れてくれば15分ぐらいで仕上げられます。
 もちろんDOLLでなくてもOK! 皆さんもぜひお試し下さい!