eye4工房番外編

賽の河原



 今回お見せするジオラマは1/6という大きなスケールのものです。実際には1年前の個展の時にもいったんは発表はしていますが、
まだまだ完成度という点では不十分なところも多く、今回あらためて作品を見直すことにしました。

 賽の河原というと、自分の場合には青森県の恐山の風景を思い出してしまうのですが、植物の一切生えない、いちめん石ばかり
の空間に、積み上げられた石ころと無数の風車という、ある種、非現実的な世界でした。
 今回もこのイメージをベースにして、自分なりにあの世と現世の接点を表現してみようと思います。



   1 5mm厚のスチレンボードの上に1cm厚の発泡スチロールを貼り付け、
    起伏をつくります。
   

 今回は枯れてしまった川と巨大な岩を組み合わせて非現実的な空間をつくろうと思います。
 まず最初はできるだけリアルな石をつくるところから始めたいと思います。基本はスタイロフォームを削って
着色するという、極めて一般的な方法で制作します。


1 スタイロフォームを張り合わせたものをカッター
 ナイフなどで削って成形します。
2 ヒートガンを使って表面を荒らし、ごつごつした岩肌
 をつくります。
3 削りすぎや段差などは粘土を埋め込んで修正
 してゆきます。
 


   4 ジェッソにリキテックスのグレーを混ぜたものを、濃淡をつけながらベースと岩にひととおり
    置いてゆきます。
   

 白く残した部分は水の流れた跡をあらわします。岩の影の部分はやや濃い目に色付けをして、
全体のコントラストを高めます。


   5 発泡スチロールを細かく切ったものをグレーに着色し、乾いたところで適宜積み上げて
   石の小山をつくります。
   


6 100均などで手に入る小動物用の砂などで砂利
 の表現をおこないます。
 

 水の流れた跡(白いところ)には細かな砂、石と石の間の流れがよどみそうなところにはやや粗めの
砂をまいて、それらしく仕上げます。


    7 Mr.カラーをエアーブラシで吹き付けてゆきます。埃をかぶりそうなところは
     イエロー系、風化が進んだ岩肌などはライトグレーといった感じです。
    

8 パウダー類で変化をつけます。パウダー類の上から
 霧を吹き、薄めたボンドを垂らしてボードに固定します。

 白は石英砂、黄色はイオウ、鉄を含んだ砂は茶色といったところです。もうこのあたりは感覚的なもので、
特別何かルールがあるわけではないです。ただ全体として左手前から右奥に向かうような流れができると
いいなとおもってました。

   9 再度Mrカラーで全体の色調を調整します。基本的には青みのかかったグレーで
    寒色系に仕上げました。最後はつや消しウレタンで全体の調子を整えました。
   


   10 針金と折り紙から風車(8枚羽)をつくります。作り方はネット上にあった
    ものを参考にさせていただきました。
   

   11 これを先ほどの流れに沿って、左手前を向けて適宜ベースボードに固定
    してゆきます。
   


 とりあえずこの段階でいったんの完成です。この状態で昨年の個展の時に展示しました。





 雰囲気に合わせてドールもメイクしています。
 実のところ風車を取り付けてゆけばそれらしき雰囲気が十分に出ると思っていたのだけれど、いざ展示してみると
大きさの割に奥行きが足りない感じです。(90cm×60cm)


 ということで、今年1月ぐらいから少しずつリメイクを始めました。
 目を引く部分が、ドール、岩2つ、風車しかないので、これらをつないで立体的なつながりを持たせるものを追加しよう
と考えています。
(何せ、これだけ大きなジオラマって作ったことないので、空間を持て余してるって感じです)

 まずは中サイズの岩を追加です。

12 発泡スチロールの塊をカッターなどで適宜適当な
 大きさに切り分けます。
13 ヒートガンで表面の形状を整えてゆきます。凹凸
 は遠くから吹いてならします。

 発泡スチロールって、カッターとやすりで形状を整えると、白いくずがたくさん出てお掃除が大変です。ヒートガンを
使うようになってから、この苦難から解放されました。

14 ティッシュペーパーを1枚にはがし、スチロールの
 上にのせ、上から水で溶いたボンドを塗ります。
15 乾いたらリキテックスのグレーをまずは一様に
 塗ってゆきます。

   16 その後、陰影には薄く水で溶いたブルーを塗り、乾いたところでやや明るめの
    グレーでドライブラシをかけてゆきます。
   

 ブルーを使う理由ですが、本来の色とは色相的に反対の色をおくと塗装に深みが出るからです。
  (反対色を活用するこのような工夫は、絵画の世界などでは昔から行われていたと聞いています)
 ドライブラシの方法ですが、今回はジェッソに少量のカーキとライトグレーを混ぜたものを筆につけ、これを
スポンジなどの上で少し落とし、こすりつけるように塗るようにしています。
 これで表面の風化した質感が出てきます。

 前回は途中からMr.カラーを吹き付けていたので、換気が大変でした。今回はティッシュペーパーで表面を覆って
から作業をしているので、楽に水性塗料がのります。楽です!


   17 ここで水で溶いたボンドを塗った後、100均で買ったハムスター用の砂を、
    適宜まいてゆきます。
   

 最後に半つや消しにした暗めの塗料を吹き付けて陰影をつくっています。
 うーん、見るからに石だね。とっても満足です。



 まだまだ奥行きがないので小物類を追加です。


18 5mm厚のスチレンボードを素材として小さな祠を
 つくっています。

   19 色をつけ、ご神体やらお供え物などを追加してみました。
    このあと少し汚し塗装を入れました。
   

20 いざ組み込んでみようと思ったら、ベースボードに
 歪みが出ていたので4辺を角材で補強しました。
21 ベースボード側面をダークグレーで塗ります。
 これだけでぐっと見栄えが良くなった。


 で組み上げた結果がこの画像です。とりあえず二度目の完成です。







 奥行きを出すために祠を一番奥に組み込んだら、細かなところがみえなくなっちゃった。
 でもまあ、作品に迫力が出てきたから、これで良いかな。もうちょっといじるかもしれませんが、これも
また8月の個展に展示する予定です。



2019.05
camera: Canon PowerShot s100 / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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