eye4工房番外編

stratum


 実はずっと以前から試してみたいアイディアがありました。それはパネルにDOLLを固定してあるシーンを表現するもので、これまで
つくってきたジオラマの発展形とも言えるものです。
 8月の個展に向けては時間的にぎりぎりなのですが、3ケ月前より制作を開始しました。

 

 基本的には sara という12年前に制作したオリジナル球体関節人形(粘土でつくった手づくり品)を地層を表現したパネルに埋め込む予定です。
 なぜこの人形なのかというと、この時期はけっこうリアルな表現を追求していた頃で腰の関節はなし、肌は血液の流れている感じまで表現して
いて今回の作品にぴったりだからです。今更ながらではありますが気合が入っている作品です。

 久しぶりに出してみましたが、12年前に制作したDOLLなのに変色、変形やゴムの劣化などもなく、あらためて選んだ素材や制作過程に問題が
なかったことが分かって、ちょっと嬉しいです。
 基本ボディについてはこのままジオラマにそのまま組み込んでゆくことにしますが、ヘッドについてはシーンに合うように作り変えることにします。
いちばん大きなところでは、眠り目にヘッドを修正するところです。


1 制作しやすくするためヘッドを分割し、ネオジムで
 取り外し可能なヘッドに変更します。
2 アイを取り出し、眠り目につくりかえます。造形が
 終わったら、一度全体にジェッソを塗ります。

 考えてみたら、眠り目って近かい初めてつくったのですが、割合うまくいったかも。ポイントになるのは、今にも目を覚ましそうな、薄目を開けている
感じに表現すること。ここだけはちょっと工作が難しかったです。
 基本的に樹脂でコーティングされたものの上に粘土はつかないので、いったんジェッソで全体を塗り、その上に塗る塗料などの食いつきを良くします。

3 基本的な塗装はすべてリキテックスで行ってい
 ます。ここは唇とアイラインを入れたところ。
4 基本的な塗装が終わったら高耐久ラッカークリアー
 を繰り返し吹き付けて、透明層をつくります。

   5 このあと人間用のチークやアイシャドウで全体をメイクし、
    最後に睫毛を取り付けてヘッドは完成です。
   

   6 ボディの方はいったんばらばらにしてお掃除。少し傷んでた
    関節があったので、その部分を補修して再度組み立てます。
   

 再度組み立て直しましたが、かっちりと組みあがります。こちらのドールはリアルで洗練されたボディラインを表現したかったので、
ボディ自体は8頭身のバランス。身長57cmありますがヘッドはMSDより小さいです。
 今回はこのドールを上の画像に写っている 90cm×60cm のパネルに埋め込んでしまう予定です。パネル自体は10mm×40mmの
角材でつくったフレームに5mm厚のスチレンボードを貼り付けたものです。
 ちなみにタイトルの stratum とは「地層」のことです。


7 人形の輪郭をパネルに写し取り、人形の形に合わ
 せて切り抜きます。
8 裏側から発泡スチロールを貼り付けて補強し、
 人形が埋まるように形を整えます。
9 底板をつけました。予定したポーズがとれるよう、
 部分的に高さ調整のための補強材を入れます。

 このままだとまっ平らな壁面になってしまうので、1mmから5mmの厚さのスチレンボードを用意し、これを何枚も
重ねることで壁門の凹凸をつくることにします。

   10 厚さの異なるスチレンボードを組み合わせて粘土層と岩石層の区別やひび割れなどを
     表現してゆきます(白だけだと分かりづらいけど)
   



 ここから細かな造形や着色に入ってゆくのですが、そのための下準備をしておく必要があります。
スチレンボードは水をはじくので、水性のペイントや粘土はそのままだと使用できません。ここはティッ
シュペーパーを利用して下地を親水性の状態に変えます。

11 少し歪みが出てきたので、裏側に補強材を追加
 しました。
12 ティッシュペーパーを1枚にはがしてパネルに乗
 せ、上から水で薄めたボンドを塗って貼り付けます。
13 乾いたところで、粘土やモデリングペーストで表面
 の形状を整えてゆきます。
 

14 土を表現する部分に砂利を貼り付けて、リアルな
 感じに使づけます。

   15 様々な塗料でリアルな壁面をつくります。
   

   これはひととおり色をおいてみたところです。質感を出すために、岩の部分には青色を
  下塗りしています。

   

   土の部分が平坦な感じなので、タミヤのテクスチュアペイントでざらつきを与えてみました。
  あと砂利なども追加で埋め込んでいます。

   

   このあと少しずつ色を加え、最後に明るい部分を筆でドライブラシしたところが上の画像です。
  話としては簡単ですがこの変化をつけるのに3週間ほどかかりました。


   16 ハムスター用の砂をその地形の状況に合わせ
    てまき、薄めたボンドを吹いて固定します。
   

 この砂のおかげで、全体の質感がぐっと良くなります。



 こちらが壁の完成したところです。
 思いっきり近寄らなければ、どこから見ても岩だね。(かなり自己満足に浸った)



 このままだと簡単に砂が落ちてしまったり、表面が傷んだりする可能性があるので、最後にコーティングを行います。

17 まずは高耐久ラッカークリアー(つや消し)をまん
 べんなく全体に吹き付けます。
18 乾燥後、ウレタンクリアーに艶消し材を十分に混
 ぜてさっと吹き付けます。

 そして組み上げた結果が次の画像です。










 本格的な球体関節人形をつくり始めてもう14年ぐらいになるのだけれど、昔の作品は今でこそ技量的に見劣りする部分はあっても、
今自分のつくっている作品にない魅力を感じたりすることも多いです。そして何より、もう10年も経過したのに完成した頃と全く変わること
なくここにあることが、驚きであったりもします。
 人形というものは生命を持つものではないけれど、その存在自体は永遠なのかもしれない。そう思ってつくり始めたのがこちらの作品です。
もちろんフィクションとしてではありますが、長い年月を経て様々なものが滅び化石化してゆくなかで、球体関節人形が今にも動きそうな状態で
発掘される、そんなことがあっても良いかな? それがこちらの作品のテーマとなっています。
 こちらの作品は8月に開催予定の個展で公開の予定ですが、個展ではもう一工夫して展示するつもりです。ただその完全版についてはこの
個展をお披露目の場としたいと思っていますので、その点ご理解ください。

        
情景のなかの人形たち   Dolls in the scine 2019
          8.14~8.18 平塚市美術館 市民ギャラリーB室

2019.06
camera: Canon PowerShot s100 / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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