ドール&フィギュアの撮影

RAWで撮影しよう



2019.10.24


 中級機以上のカメラや高画質のスマホをお持ちなら、ぜひとも試してほしいのがRAWで撮影することです。
 RAWというのは撮影した画像の保存形式の一つですが、画像劣化を生じないので、あとでPC上で編集する場合には最適なモードです。
欠点としてはデータ量が多く、少量のSDだとデータがすぐにいっぱいになっちゃうことと、PC上で「現像」という作業をしないとちゃんと見る
ことができないという点です。



1 明るさの調整

 RAWで撮影できるカメラやスマホには、必ずRAW画像を編集・現像できるソフトやアプリがついています。まずはこの基本的な使い方です。
ちなみに自分の場合にはSILKYPIXというソフトを使っていますが、他のものでも基本は同じだと思います。



 これは秋の田んぼを普通に撮影したRAW画像をSILKYPIXで開いたところです。ちょっと暗めかな?




 トーンカーブのウインドウを開いてみました。グラフの左から右に向かって明るさが増してゆくのですが、黄色の印がついている明るい部分には
画像のデータがほとんどないです。だから暗く見える。




 ということで、グラフの左端をデータのある部分までスライドさせました。




 一発で明暗のバランスの取れた画像になります。この間わずか3秒。
 一般的な「明度調整」でも同じような結果が得られますが、自分の場合にはトーンカーブのウインドウで確認しながら調整をします。
その理由としては思いこみでなく、客観的に判断できるからです。

 現像ソフトでは明るさのほかにも様々な調整機能がついていますが、現在のカメラはとても良くできていて色合いなどは特別なことが
ないかぎり調整の必要はほとんどないように思います。あえて自分の好みに仕上げたいときだけ調整すればよい感じです。
 一方で明暗のコントロールは調整が必要不可欠だと思っています。通常のjpg形式の画像でも多少の画像劣化はともないますが、
GIMPなどのフリーソフトやアプリで積極的に行った方がよいと思います。





 雨や雲天のときは明暗の差が小さいので、コントラストまたはトーンカーブのウインドウで、コントラストをやや高めるような調整を
行うとことが多く、逆に晴天時は明暗の差が大きくなりすぎるので、コントラストをやや下げるような調整を行うと良いと思います。



2 白トビを軽減する

 ともかくお人形を日なたで撮影すると起こりやすいのが白トビという現象です。



 こちらもSILKYPIX上での作業過程の画像ですが、鼻とか肩のあたりが真っ白になって色味が失われている。全体を暗くすればって言うかもしれませんが、
そうすると背景が花が暗くなりすぎちゃう。




 このあたりをトーンカーブ(ヒストグラムでもよい)で確認するとこんな感じです。黄色い印のついた左端のいちばん明るいところでグラフが切れてしまっている。
これはもっと明るいところまで、本当はデータがあったんだよという印です。




 で、RAWで撮影した画像だとこれを解決する方法が実はあるんです。ダイナミックレンジ拡張(DR拡張)というウインドウを開いて操作すると、消えていたデータが
表示範囲内に戻ってくる。




 ということで、白トビしている部分に色味が戻ってきました。RAW画像は可視できる範囲を超えてデータを保存しているのでこういうことができます。
 ただDR拡張は万能ではなくて、ひどい白トビだと画像が平坦な感じになって使えません。ということでやはり露出はできる限り正確に行うべきです。




 こちらの画像は晴天時の海岸で撮影したものです。ダイナミックレンジ拡張をしないと顔が真っ白になっちゃいます。でもやっぱりちょっと
顔が平坦な感じ、ぎりぎり使える写真かな・・・。




 白トビ対策はお人形の方でも行うことができます。要するにつるつるテカテカの状況を改善すればよいわけで、これは色白のお人形の場合には必須です。
UVカット艶消しスプレーというのも良いですが、一番簡単なのはメラミンスポンジで磨くこと。
 上の画像はオビツSBHボディで、右足だけメラミンスポンジで磨きました。テカリが消えているでしょ?
 簡単な汚れ落としにも使えるし、お散歩旅に持ってゆくと何かと重宝します。




 お部屋の中で撮影するとこんな心配はいらないですが、ともかく晴れた日に美白系のお人形を撮影するのは難しいです。



3 黒ツブレの軽減

 今度は黒ツブレです。これはどういうものかというと、日中の風景を撮影したときに、影になる部分が真黒くなって何が写っているのか分からなくなっている
状態です。



 たとえばこの写真だと日陰になった建物の壁や、ドールの耳から顎にかけての部分が黒ツブレしています。
 別に建物の方は気にならないですが、お人形にできた強い影はあまり見栄えが良くないです。
 ストロボやレフ版を使えばこの影は軽減できますが、日中の町中でお人形を取り出してストロボっていうのも、ちょっと気がひけます。




 トーンカーブではこんな感じです。左端の暗い部分でグラフが途切れてしまっている。これも白トビといっしょで、この先にも画像データがあったんだよという印です。




RAWで保存した画像の場合にはこの部分のデータも保存されているので復元します。  明度を上げるのは、今度は顔が白トビするのでだめ。そこでHDRの
ウインドウを開いて操作するとグラフ内にデータが戻ってきます。




 こうすることで強い影をやわらげることができます。
 自分としては、RAW形式で画像を保存し、明度調整やDR拡張、HDRといった機能でトーンカーブ(ヒストグラム)のグラフのなかにデータをおさめてゆく
というのが、撮影と現像の基本になるかと思っています。そのうえで自分の好みの画像に仕上げて行く。
 こうやって書くと難しそうに見えますが、慣れればどれも数秒の操作です。ただ最近のカメラはデータ量が多いので、安価なモバイルPCだと後処理に
時間がかかるかもしれません。




 白トビと黒ツブレの軽減について説明しましたが、この二つが絶対にダメということではないので念のため。
 上の画像は左側が完全に黒ツブレしてますが、もしここを明るくしてしまったら写真として面白くない。あくまでもデータをグラフ内に置くというのは
「基本的に」ということです。
 今回のまとめとしては。
RAWで撮影し、グラフ内にデータが収まるように現像するのが基本ということで。




 もしRAWで撮影できないカメラをお持ちなら、迷ったときには暗めに撮影しておくというのも一つの方法です。白トビはどうしようもないですが、
黒ツブレは白トビに比べれば気にならないです。それに最近のカメラは暗いところに強くなっているので、jpgでもソフトやアプリなんとかなっちゃう
ことも多いです。但し画像は劣化します。(粒子が目立って荒くなる)



 あと一つ追加するなら、モニターは色再現性の高いちゃんとしたものを使いたい。特に格安のノートPCだと色彩や明暗の微妙な差が分かりにくいです。
こんなときにはあえてモニターだけ追加するのもありかな。



2018.10
camera: Canon PowerShot G7X、 Panasonic GX8 ほか/ graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

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