ドール&フィギュアの撮影


背景の扱いや構図などを考えます



2019.12.12


 ドールやフィギュアの撮影についていろいろと語ってきましたが、いよいよ実際の撮影について説明してゆきたいと思っています。ただこのへんの話は
人物のポートレートと大差はないので、市販されている「きれいなポートレートの撮影方法」みたいな本や、それを解説しているサイトの方が詳しいかも
しれません。
 ということで、ここから先はドール撮影の経験から得た個人的な撮影のポイントということでお読みいただければと思います。



1 背景を生かすか、それともぼかすか

 で最初の話は背景の生かし方です。今回使用している機材はおもに Canon の G7X というコンパクトカメラです。



 近くのお寺で撮影しました。奥の方に見える本堂もきちんと写っています。(f24mm、F11)
 ここでいうfとはレンズの焦点距離で大きいと望遠(大きく写る)、小さいと広角(範囲がひろく写る)です。ちなみに24mmは広角です。
またFは絞りのことで大きいほどピントの合う範囲が広くなります。F11はこのカメラで言えば最大値になります。



 同じ場所で撮影しています。少しズームアップして絞りを開けました。これでピントが合っているのはお人形だけになりました。(f50mm、F5.6)
 この2枚のどちらが良いのかって話だけど、お人形を主人公において、お寺らしい雰囲気は残すということなら、後の方の写真が良いと思います。
前の方は説明的な写真というのなら良いかもしれませんが、背景がいろいろ写り込みすぎている感じです。




 刈り取った田んぼの真ん中で撮影しました。背景は山まで写し込むために十分に絞っています。(F11)
 こんな感じで背景を生かすつもりなら絞り値は大きめ、ズームは広角側の方が良いでしょう。(全体的にピントを合わせる)




 アップ画像です。こういった条件では写り込む背景は不要です、絞りはほぼ開放で撮影し、その光とニュアンスだけをいただきました。(F2.8)
 ここがいいなって思って撮影するとき、その場所を選んだ理由があるはずです。風景そのもの、あるいはその雰囲気、または光や色合いといったものです。
とすればその背景を生かすか、雰囲気だけをいただくか、またぼかし切って光や色合いだけをいただくか、それにふさわしい背景の扱い方があると思います。




 秋の空、紅葉と銀杏の存在が分かるように、そしてまたお人形が目立つように適度に背景をぼかしました。
 最近のカメラは極端に暗い状況でなければ手振れは起こりません。またお人形やフギュアは動くこともないので、自分は
迷うことなく絞り優先モードで撮影しています。
そのうえで背景をどういかすか考えて絞り値を決めています。




 オートモード、ズーム位置は広角側でスタートすると、だいたいすべての範囲にピントが合っているような写真が撮れると思います。そこを一歩すすんで絞り優先、
そして適切なズーム位置を考えると、これまでと違った写真が撮れると思います。





2 光のあて方

 次のテーマはお人形への光の当て方です。今回も Canon の G7X というコンパクトなデジカメで撮影した画像で解説してゆきます。



 これは「順光」で撮影した写真です。順光とは被写体が太陽の方向を向いている状態で、コントラストが高く色彩鮮やかに写ります。
 いちばん基本的な光の当て方ですが、実は人間のポートレート撮影ではむしろあまり使われないです。どうしても硬い感じの写真になっちゃうので。あと太陽の
方向を向いてぱっちりと目を見開ける人はいないから、どうしてもまぶしそうにしてしまいます。
 その点、お人形は目を細めたいすることはないから大丈夫。注意点としては白トビさせないように、場合によってはやや暗めに補正することと、完全な正面光だと
顔が平坦になってしまうので、心持ち斜めにポージングさせることかな。上の画像だとちょっとだけ右を向かせています。
 自分の場合、気に入った風景のなかで撮影することが多いので、順光の条件は撮影する機会の最も多いシチュエーションになります。



 これは「サイド光」。強い陰影ができるので、自分は特別な目的がない限り、この条件で撮影することはないです。



 こちらは「逆光」。背景が明るくなり、柔らかい感じの画になります。但しこの画像もそうですが、お人形自体が暗くなってしまうので多くの場合、
補助光が必要になります。実はこれが屋外での人物ポートレートではいちばん多く使われるシチュエーションになります。




 では「逆光」のとき補助光を使ってどのように撮影するかですが、上の作例では内蔵ストロボを弱めに光らせて撮影しています。結果、強い影が
少し和らいでいることがお分かりいただけると思います。
 ただ以前にも話したけど、近接した条件でストロボを使うって、けっこう難しいです。できればLEDライトを使って状況を見ながら撮影する方が失敗
はないと思います。
 このほかにもレフ版を使うという選択肢もあります。白い紙一枚をお人形の前におくだけでOKです。ただそうするとカメラ、お人形、紙の3つを手に
することになるので、助手を雇うか、お人形を下に置く、三脚とセルフタイマーを使うみたいなことになっちゃうので少々面倒です。
 ここでとっておきの方法です。撮影の時に自分が白っぽいものを着て、胸の前にお人形を構えると服がレフ版の役割を果たしてくれます。簡単ですが
とっても有効な方法です。




 人物ポートレートの世界でいちばん好まれるシチュエーションは薄曇りとか晴れた日の窓際とか、そういった明るい日陰の条件です。強い影ができないので
自然な感じで撮影できます。お人形のポートレートも同様で、いちばん撮影しやすいんじゃないかな。




 木漏れ日を利用して撮影しました。瞳がキャッチライトしていて良い感じです。





3 空間をつくる

 背景の使い方、光のあて方ときて、最後は構図の話です。


nano (オリジナルヘッド+TBLeagues26Aボディ 26cm 2018 )

 これは近くの原っぱで撮影したものです。順光で撮影できるのは DOLL であることのメリットです。構図としては画面の中央に被写体が写っている
「日の丸構図」そのものです。この構図が常に悪いわけではないけれど、一般的には避けられることの多い構図です。



 ほんの少しですがお人形を左に寄せました。顔の右側に空間ができてバランスが良くなったのと、ポージングさせた腕に動きのようなものが出てきたかと思います。
 自分の場合、ドール&フィギュアの撮影をするとき、背景、光、そして3番目にどういう空間をつくるかを考えます。




 こちらは以前にもご覧いただいた写真です。お人形を少し右に寄せて左側に空間をつくりました。どうして左側なのって質問を受けそうだけど、基本はお人形の向いている方に
空間をつくった方が自然です。何を見てるのかな?って感じにすると画としてまとまります。
 でもちょっと窮屈な感じもするな・・・。



 そんなときには横位置で撮影します。空間に広がりが出ました。きっと落葉しつつある樹々を見つめているんだろうなって感じになる。
 人物写真もそうだけど、どうしても縦位置で撮影することが多くなっちゃう。つくる空間によっては積極的に横位置で撮影すると変化が生まれて良いと思います。



sayaka (オリジナルヘッド+TBLeagues26Aボディ 26cm 2018 )

 ここから先は Panasonic の GX8 で撮影してます。
 これも横位置、岩に落ちた銀杏の葉の流れみたいなものを生かしたいからです。そしてこの空間のなかでお人形に自然なポーズをとってもらう・・・、
でもこれが難しい、今自分がいちばん何とかしたいと思っているところです。



ikumi (オリジナルヘッド+TBLeagues24Aボディ  27cm 2019 )

 背景は順光、お人形自体は日陰なので自分の着ているものをレフ板がわりにして撮影してます。那珂川の清流を少しぼかして入れました。カメラのレンズには
独特の「ぼけ味」っていうのがあるんだけど、安価でコンパクトな 12-32mm だとちょっと厳しいです。どうしてもざわついたような感じのボケかたで上品さがない・・・。
それは分かっているんですが、お散歩だと軽快さを優先してついこの組み合わせを使っちゃう。
 ふわっとした感じが欲しければ、明るい(高価)ズームか単焦点レンズを使いましょう。




 お人形をまん中に置かないってことは、ようするに背景の何かを生かすってことなんだと思う。基本は背景の生かしたい部分を空間として置き、その方向に
ちょっとだけお人形を向けると、画面が整理できると思います。





4 光の通り道を意識する

 あと一つ自分が撮影しているときに意識しているのが、光の通り抜ける道筋みたいなものかな。

 

 上の2枚は同じ条件で撮影しているのだけど、自分の好みとしては右の方を選びます。右上に空間があって、光もその方向からやってくる、シンプルでまとまりが
良いように思います。




 これはこれで可愛く写っていると思いますが、インパクトが足りない感じなのでトリミングしてみます。



 基本、お人形の向いている側に空間を残してトリミングしてみました。このぐらアップにした方が絶対に良い。最近のカメラは普通に1600万画素ぐらいはあるので、
少々トリミングしてもネット上に画像をUPするぐらいの画素数は残ります。



 今度は逆に光のやってくる側に空間をつくってみました。影のできる側を切り詰めるとポイントが明確になる気がします。これもありです。
 自分にとってのスタンダードな構図は、まずはお人形の向いている方に空間をつくることだけど、それだけだとつまんなくなっちゃう。で、こんなふうに必要に応じて
影のできる側をトリミングする。今回はこちらが正解だと思う。




 今度は逆光の条件での撮影です。



 横位置にして、あえて影を多く入れてみました。光の通り道が強調されて印象深い画になったかと思います。まあ偉そうに言うほど、
写真のことが分かっているわけじゃなく、あくまでも自分の好みとしてはこうしているってレベルかもしれませんが。
 あと大切なのはたくさん撮影することかな。瞳にピントを合わせることを絶対条件にして、違う光や角度で何枚か撮影すると良いと思います。
計算は大切だけど、偶然性っていうのもときにはすごく良い画をつくってくれたりするので。




 空間と光の方向が一致。背景のイロハモミジの赤が生きて、左上から光のシャワーを浴びている感じです。




 半逆光、明け方の柔らかい光ですが自分の衣類をレフ板にして撮影してます。背景は大井川ですが、早朝の色合いだけをいただきました。
左手が動き出しそうな感じを演出できたかなと思います。



2018.11
camera: Canon PowerShot G7X、 Panasonic GX8 ほか/ graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

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