eye4工房番外編

古いドア



 次回の個展に向けて1/3スケールのオリジナル球体関節人形の展示用背景をいくつかつくることにしました。きっちりとつくりあげてジオラマ
として完成させる予定です。自分の作品づくりのメインは1/3の球体関節人形なのですが、考えてみれば背景は個展やイベント前にささっ
とつくって終わりにしていることが多かった。ここははっきり言って弱点!
 第1作目はいろいろ考えて今回は何かドラマ性のあるものをと考えて、古いアパートの玄関をつくります。


   1 スチレンボードを組み合わせて玄関の外形をつくります。

    

 材料は5mm厚のスチレンボードを主材料に2mm厚のスチレンペーパーを組み合わせています。お人形が乗るのでステップ部分は2cm厚の
スタイロフォームでつくります。
 ちゃんとした設計図はないです。ネット上で古いドアを検索し、そこに出てきた画像から得られたイメージをスケッチした程度です。
 つぎはぎになっているのは、使い古しの材料を寄せ集めたから。新規に購入したものはないです。
 とりあえずお人形を置いてみたけど、バランスは悪くないです。



   2 ドアノブや郵便受け、覗き窓といった細部の工作を行います。

    

 追加したパーツは、基本的には1mmから2mm厚のスチレンペーパーを加工してつくったものです。ドアの下の通気口には真鍮でできた
メッシュを取り付けています。
 右側の画像はドアの裏側です。のぞき窓と郵便受けもつくりましたが、こちらは完成すると見えなくなります。
 なんでつくったのか? 何かその瞬間だけ完璧を目指していたらしく、つい作っちゃった。


 今回は古いアパートの玄関、あくまでも主役はドールなので、そこには目立つようなものを置くつもりはありません。ということでドアや壁、
ステップといったごく当たり前のものを、どう表現してゆくかということがポイントになります。


    3 まずは粘土で表面に起伏をつけてゆきます。

   

 スチロールがむき出しになっているところは、そのままでは粘土が付かないので、そういったところには最初にジェッソを塗っておきます。
 古いドアであれば、過去に何回もペイントが重ねられ、表面は平らではないはずです。そこでわざと水で柔らかくした粘土をペインティングナイフで薄く
盛って凹凸をつけます。
 乾燥したら布ヤスリをざっとかけ、今度は次にモデリングペーストを硬い筆にとり、たたくようにして表面に塗ります。これで荒れた表面に仕上がります。


   4 壁部分をやや変色した色合いのホワイトで塗装する。

   

 壁部分はドアと同様に粘土とモデリングペーストで処理し、チタニウムホワイトに少量のアンブリーチドチタニウムを加え、紫外線で少し黄色く変色したような
ホワイトで仕上げます。乾燥後チタニウムホワイトにつや消し剤(プラモ用アクリル塗料)を混ぜたものを、少量ずつ筆にとり、荒くこすりつけるように表面に塗って
ゆきます。 (ドライブラシ)  これでとりあえず壁は完成です。


   5 ドア部分にざっと茶色を塗ってみて、全体の感じを見ます。

   

 ステップや壁にもモデリングペーストによる荒らしを加えてひととおり色を置いてみました。
 ドア部分には100均で買ったくるみボタンを貼り付けてリベットの表現を追加しています。このボタンはアルミ製なので、アクリル塗料はそのままでは乗りません。
事前にメタルプライマー(これもプラモ用)を塗っておく必要があります。

 ここまででかかった費用は100均で買ったボタン、絵具、ペンキ、接着剤で合計550円です。皆さんもそうだと思いますが、まずは100均を巡って利用できるものは
利用するというのが正解だね。最近は手芸関係の素材も充実してきて嬉しい限りです。


   6 ドアの着色を行います。赤から黒まで少しずつ色を変えなっがら塗ってゆきます。

    

 さてここからが最大のポイントです。
 中央の木部は茶色をベースにした塗料でまずは全体を塗る。薄めた黒で汚れの付きやすい端の部分、雨だれの起こりやすいところなどを着色。
更に鉄のパーツの下には、赤+茶色で赤さびの垂れた感じを表現します。
 金属部分は基本的にダークグレーで着色、ところどころに赤茶色で赤さびのしみ出した感じを表現します。
 言葉として整理してしまうとこんな感じになっちゃうんだけど、本当は塗料の濃度や艶、添加物なんかをいろいろ調整して何度も塗り重ねて表現しています。
きっとものすごく古いドアだったら、塗装が劣化するごとに、いろいろな人が様々な塗料で色を塗り重ねてきたに違いないです。そして人の手の触れるところ、
日光の当たりの良い下半分、雨風の当たりやすい中央部分など、それ相応の色合いや質感の違いが出てくる。ここはこの想像力の勝負だね。

 基本は何度も色を塗り重ねるということなんだけど、下の色が消えてなくなったら意味がなくなります。下地が透ける塗装は自分が思うに方法は4つです。
A 塗料自体を薄めて使う。(水や溶剤 これが一番簡単)
B 透明、半透明の塗料を使う。(プラモ用ならクリアー系、アクリル絵具なら透明、半透明系)
C 塗料自体を透明な塗料に混ぜ込む。(プラモならクリアー、アクリル絵具ならジェルメディウムなど 厚みが出せるのが長所)
D うすく吹き付け塗装を行う。(これも簡単だけど、これだけで塗り固められた感じは出せない)
 このあたりの選択は口で語るのも難しいので、臨機応変にやってます。 。

   

 基本的には全体を半つや消しで仕上げていますが、場所によって艶消し材の添加量は変えています。木部は標準的な半つや消し、鉄の部分はやや艶あり、
錆の出ているところはほぼつや消し。鍵穴はアクセントとしてクリアーブラックという感じです。


   7 ルームナンバーを追加します。

    

 ルームナンバーはパソコンでハガキに印刷した文字を切り抜き、Mr.カラーのゴールドで着色、その上にUVレジンを盛り上げています。


   8 ドライブラシで塗料が風化しつつある感じを再現する。

    

  グレー+タンの塗料に艶消しを多めに混ぜたものを、少量ずつ筆にとり、荒くこすりつけるように表面に塗ってゆきます。 (ドライブラシ)
 これでいちばん上の塗装もすでに経年変化がすすんでいるよ、みたいな感じを再現します。


   9 パステルで錆の表現を追加します。

    

 赤や茶色、黄色といったパステルを削り、アクリル系の溶剤で溶いたものを塗料として赤さびを再現します。このパステル粉は場所によってその配合を
少しずつ変えると良いと思います。
 こういう塗装って、時間をおいて少しずつ過去のものから塗り重ねてゆくのが基本だね。それによって説得力のようなものが出てくると思います。
 歴史の重みを感じるドアはこれにてほぼ完成です。


   10 ステップと歩道部分の下地塗装を行います。

    

 スタイロフォームでできたステップ部分はいったんすべて白いジェッソで塗り、乾燥後に粘土で隙間を埋めたり、新たに凹凸をつくったりします。

   

 いろいろ並べているうちに歩道部分もあった方が良いと考え、同様にジェッソと粘土で処理をしました。その後、硬めの筆でモデリングペーストをたたくように塗って、
更に細かな凹凸をつくってゆきます。


   11 ステップと歩道部分を着色します。

  

 グレーからタンの色合いで微妙に変化させたアクリル絵の具を塗り重ねてゆきます。これだけでけっこう荒い感じのする歩道ができます。


   13 砂で汚しを入れる。

    

 水で薄めたボンドをさっと塗り、その上から砂をまきます。(ハムスター用の砂)
 乾いたところで全体に荒く布ヤスリをかけ、余分な砂を落とします。(しっかりとくっついている砂粒だけが残る)  あとこの処理はドアの下半分にも加えます。


   14 ライトグレーにつや消し添加剤をたっぷりと混ぜた塗料をつくり、こすりつけるように表面に塗ります。(ドライブラシ)

    




 作業としてはこれで終了です。早速、お人形を置いて撮影してみました。






 

 

 エージング処理と汚しがちょっとやりすぎかなとも思ったけど、色合いが地味なのでお人形を置いても背景の方が目立つってこともなかった。
イベントなどでも十分に使えそうです。






 asumi
  仕様:身長53cm(1/3スケール)テンションゴムを用いたオリジナル球体関節人形(2008年制作)
  素材:ラドールプレミックス、プルミエなど粘土を混合、モデリングペーストによる表面仕上げ グラスアイ、ウイッグは既製品
      リキテックスとMr.カラーによる着色 ウレタンとアクリルのコーティング



2020.01
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



サイトのトップページにとびます