旅立ち



 新しく1/3ドールを展示するための背景をつくり始めました。今回は煉瓦の壁の上に漆喰を塗り固めた西洋によくあるような壁を
再現します。またまた今回も地味でちょっとマニアックな工作になっちゃいます。



 壁はすでにあるものを利用します。これはもともとドールイベントの展示用の背景として使っていたもので、この際ちゃんとしたものに
作り変えてしまおうというわけです。だから基本的なデザインは同じです。


1 貼ってあった壁紙をすべて剥がし、その上に凹凸
 をつけながら薄く粘土をのせてゆきます。
2 乾いたところで今度はモデリングペーストをたたく
 ように塗ってざらざらな質感を出します。
 



 さて白壁の方は基本これで良いとして、レンガ部分はもう少しリアルな感じにまとめたいです。



 そこで持ってきたのが床に敷き詰めるこのシートです。色合いや模様の出方も手頃なので利用することにしました。


3 まずはこのフロアシートを1/3スケールのレンガの
 大きさに切り分けてゆきます。
4 これを壁に貼り付け、その隙間にボンドと粘土を混
 ぜたものをつめてゆきます。


   5 あらためてこのレンガの上に粘土をのせてゆきます。モデリングペーストの処理も同じ。
   

 たまたまこの部分にヒビが入ってしまったけど、上塗りした部分が少しずつ崩壊してゆく感じが出てリアル。もちろん
補修しないでそのまま残します。



   6 白にタンを混ぜた塗料をうすくまばらに塗って経年劣化(黄ばみ)した感じを表現し、その上から
    薄いグレーで雨だれや埃で汚れた感じを出します。
   

   7 一見やりすぎた感じですが大丈夫。この上にアクリルの白とつや消し添加剤、少量のブラックを混ぜたもので
   ドライブラシをかけてゆきます。
    

 ドライブラシというのは濃いめ、かさかさのつや消し塗料で表面の凹凸を強調するために行うもので、いわゆる汚し塗装の
一種です。


   8 スチレンボードと角材で歩道になる部分をつくりました。
   

 この歩道部分ですが、あえて長方形でなく不等辺の四角形にしてみました。この方がなんとなく広がりのある
空間になると思ったからです。

   9 レイアウト上の関係で壁の方もやや傾けて設置できるように折り畳み
   式のステーをつけます。
   


 ここからまたレンガ部分の工作に戻ります。

10 フロア材を歩道部分に貼り付け、適宜ブラウン系
 の塗料で汚しを入れる。
11 壁部分も含め、目地にも汚しを入れてゆきます。
 これで少しリアルな感じになった。



 ということで中間的にはこんな感じでまとまりました。



 ドールを引き立たせるという目的でつくっているので、壁と歩道だけのシンプルなベースです。 手前に少し写っている
黒っぽい部分はバス停&道標を立てる予定のところです。




 それがこれ。もう10年ぐらい前につくったものですが、今回もこれに少し手を加えてアイキャッチャーにするつもりです。


 がしかしここで作業が中断、どういうことかというとレンガの表現に用いたフロア材ですが、表面がビニルコーティング
されているようで、少しつるつるしていて透明感があります。汚し塗装をすれば消えると思ったのですが、これがなかなか
消えない。このままだと質感に欠けるので再塗装してみることにしました。


   12 レンガ部分の再塗装をします。使用した塗料はモデリングペーストにハムスター用の砂を混ぜ込み、
    ブラウン系のリキテックスで着色したものです。
    

 いろいろと調合して試してみたのですが、結局はこのレシピがいちばん良かった。不透明でざらっとした感じがなかなか良い感じ。
リアルなジオラマをつくるためには、こういった一期一会の塗料づくりがポイントかも。
 ちょっと色が濃いめに見えますが、このあとやや淡い色合いの塗料でドライブラシするので、このぐらいの濃さでOK。

   13 ドライブラシしたあと、エアーブラシで目地部分にロシアングリーンを吹き付けます。
   



  このままだとやはりジオラマとしては色合いがちょっと寂しいので、歩道部分に少しだけ緑のアクセントを加えることにしました。



 使うのはこちら、左から100均で買ったジオラマシート、緑のパウダー、KATOのターフといったところです。



   14 パウダーやターフなどで地衣類を表現、背の低い植物を追加してゆきます。

   

 こういうのってちょっと楽しい、足元に小さな宇宙がひろがってゆく感じです。そして最後に例のバス停&道標を置いて、
完成となります。






 道標自体は角材を支柱にしてプラ板とバルサ材で形をつくり、プリンターで地名やインフォメーション等を運刷したものを
貼り付けて仕上げてあります。もう10年以上前につくったものです。




 完成した1:3スケールの背景に人形2体並べてみました。
 設定としてはアイルランド北西部、スリーブリーグ近くの小さな町の街角から二人が旅立ってゆくというシーンを再現したものです。
道標に記された場所は実在するものですが、このような街角があって道標&バス停があるかどうかは定かではありません(フィクション)。




 これから旅立つ不安と期待が再現出来たらいいなと思ってこの作品をつくりました。
 ちなみにこの服はJETRUNNER;Dのみけ様に以前につくっていただいたもので今でもお気に入り。ついでに言うとこの組み合わせは
チームコヤーラの主催する創作人形展の本選にも出品したものです。今回あらためてちゃんとした背景を整えたことで、やっとけじめが
ついたかな。3年かかって作品が完成したような、何かそんな感慨深さがあります。




 あと撮影して思ったのだけど、背景を少し傾けたりベースになる歩道部分を台形にした効果で、画面に奥行きが生まれた感じだね。
この経験はこれからの作品づくりにも生きるような気がします。

aimi & chie
仕様(共通):身長54cm(1/3スケール)テンションゴムを用いたオリジナル球体関節人形(2016年制作)
素材(共通):ラドール、ラドールプレミックス、プルミエなど粘土を混合、モデリングペーストによる表面仕上げ グラスアイ、ウイッグは既製品
         リキテックスとMr.カラーによる着色 ウレタンとアクリルのコーティング


2020.02
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Panasonic GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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