eye4工房番外編

小さな丘



 小さな丘の風景という組作品を思いついたのは1年ほど前です。20cm×25cm、スケール1:150の小さなジオラマをこの間に4作品制作しました。
 今回はその4作品をまとめてここに掲載しますので、4作品を通してみたストーリーのようなものを読み取っていただければと思います。



「小さな丘の風景 1 冬」




   

 小さな丘に樹が1本、そこに1頭のシカが足跡を残す。
 雪はすべてを覆いつくす。





「小さな丘の風景 2 早春」






 雪が融け、小さな丘は緑に覆われた。そしてあちこちで小さな白い花が咲き始める。
 そして一人の女性がそこに佇む。




 もう少しで夕暮れ、彼女は何を思う。





「小さな丘の風景 3 初夏」






  ここにはかつて市場で働きながら花売りを生業にする一家が住んでいた。




 夫婦に娘一人、生活が楽だったわけではない、つらいことはみんなでがんばって乗り越えて行く。
 この家庭に笑顔は絶えない。




 1940年、近くの草原に空軍の飛行場がつくられたとき、父と娘は屋根上に登って飛来する飛行機を眺めていた。
 そして彼女の回想は続く。





「小さな丘の風景 4 晩秋」









 それはある日突然訪れ、何もかも奪っていった。
 彼女には何の罪もないのに。




 そしてそれから20数年の年月を経て、彼女はやっと丘の上に戻ってくることができました。
 いま彼女はやさしい両親とともにここにいます。  fin.






2020.05
camera: Canon Powershot G7X / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

 最後の晩秋編はあえてグラフィックツールでモノトーンに近い色調に変化させています。
 場所と時代設定は1940年代から60年代のスコットランドあるいはイングランドの北部、ヨーロッパ戦線に向けて飛び立つ航空機のために数多くの空軍の
飛行場がつくられていた時代です。
 本当はこの作品(特に最後の晩秋編)は、8月の個展でお披露目する予定でしたが、開催できるかどうかも怪しいので、もったいぶらないで公開しちゃいました。
 本当はこういう解説なしに理解していただきたいのですが、自分の構想の乏しさと表現力のなさから考えて、分かりやすさ重視で写真の合間にこういう文言を
入れさせていただきました。

 一連の作品のヒントになったのは、イタリア・フランス・ソ連の三国による合作映画、往年の名作「ひまわり」からです。ロシアの大平原を覆うひまわり、
そして真冬の厳しい雪原の風景が実に印象的でした。そして主役ではなかったけどマーシャ(リュドミラ・サベーリエワ)がとても美しかった。そして悲しかった。
 それにしてもエンディングで、いちめんのひまわりとヘンリー・マンシーニの音楽が流れてくるシーンを思い出すだけでも泣けちゃうんだよなあ・・・。
今思い出すだけでも涙が出てきそうです。





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