情景のなかの人形たち

Dolls in the scene 2020




*) こちらの記録はブログ「瞳に四角い鰯雲」に記録してきた3回目の個展の記録に加筆、再編集したものです。


<1年前>

 昨年の個展が終了してすぐ、再び「情景のなかの人形たち」を開催すべく再始動しました。
 「情景のなかの人形たち」のコンセプトは自分のイメージした世界をオリジナルドールやフィギュアをつかって3Dの情景や2Dの画像で表現すること。
 内容としてはこれまで同様、創作人形、ジオラマ、ドールフォトといったところをメインとして、作品の1/3ぐらいは入れ替える、あるいはリメイクする
つもりで頑張り始めた。



 予約を入れたのは今年も平塚市美術館の市民ギャラリー。そもそもなぜ平塚市美術館を個展の会場に選んだかというと、公立の施設ゆえに使用料がお安いこと、
それからメインの会場では常設展や企画展を開催している関係で、それを目的に訪れた方の多くがついでに見学してゆかれること。「他人のふんどし」みたいなもの
ではありますが、知名度がないゆえ利用させていただいてます。
 前回見学いただいた方は5日間でトータル750名あまり、一昨年はメインの企画展が大ブレイクした深堀隆介氏の「平成しんちう屋」だったので、5日間で1700名でした。
たとえ1万人の入場するドールイベントがあっても、自分のブースの前に1万人が立ち止まるわけじゃない。そう考えるとこれだけの方に自分のやっていることを見ていただき、
毎日数十名の方とお話しできることはとてもありがたいことです。販売ができないなどの制約はありますが、PR目的ならこれ以上の会場はありません。



<5か月前>
 年が明けてこの新型コロナの騒ぎです。準備は極めて順調でした。ところがここにきて、その個展のPR目的で出展予定だったアイドールの開催は延期、会場の平塚市美術館は
休館、市民ギャラリーで予定されていた催しも中止や延期が相次いでいるというわけで、だんだん見通しがきかなくなってきた。
 ただそれでも予定通りに個展の準備はすすめます。やるかぎりはちゃんとしたものにしたいので。



 今年のポイントは1/3スケールのジオラマ、これまでお人形を飾る場所は適当に飾り付けたパネルという、情景とは言い難いものだった。だからここはあらためて
ちゃんとしたものを、ほぼ1年かけて4つつくりました。





 作品自体をちゃんと作るのは当たり前なのですが、それがコンパクトに収納できるような、丈夫なケースをつくることも同等に大切です。せっかくつくったものでも
輸送の途中で壊れてしまったら何にもならないから。



 そしてそれをリビングの片隅に持ってきて、我家の軽自動車の荷室と同じ大きさに積み重ねてゆきます。



<1月前>
 緊急事態宣言解除後、平塚市美術館も開館し、市民ギャラリーもお借りできるということで、使用料を納入しにゆきます。
 新型コロナの関係で「何かこちらで注意することなどはありませんか」と、係の方に尋ねたところ、アルコール消毒とマスク着用の呼びかけ、定期的に換気、
密集することのないように注意してくださいということでした。
 実のところ、これまで夏休み期間は親子で楽しめるような企画を美術館側も用意し、それなりに混雑するものですが、今年はそうならない感じです。というのも
当面は人気の出そうな特別展はなしで、小規模な常設展のみ。使用料を収めたこの日も来館者は少なく、とっても静かでした。
 あと自分が利用させていただく市民ギャラリーの方も予約がほとんど入っておらず、まさにぽつんと自分の企画のみの状態でした。
 どうも「混雑したらどうしよう」って心配したのは杞憂だったようで、むしろ暇にならないようにPRしなきゃいけないかな。何もしないと三密どころか疎の状態で
6日間過ぎてしまうかも・・・。



<2週間前>
 この状況なので帰省するのはやめにした。仕事の方も2週間ほどまったくないので、朝食後は個展中心に時間がまわっている感じです。



 制作物の制作はおおむねひととおり終わったので、会場のレイアウトを考えつつ、準備品のチェックを行っています。展示物はけっこうな数になるので、この手順は
とっても大切。レイアウトを考えていたら、まだ写真が20枚ほど展示できそうな感じなので、この1年間で撮影したものから良いものを選び、プリントアウトします。
 今はプリントしないでデータだけって人も多いかもしれませんが、やはりそれなりの大きさでプリントすると迫力が違う、ブログ上の 400pic×600pic だなんて比較に
なりません。問題はプリントにするとけっこうなお金がかかるってことですが、ここは目をつぶって最高画質のプリント用紙(クリスピア)と純正インクを使います。
 ここでお金をけちっちゃいけません。見れればいいやって思って安物を買うと、1年もしないうちに退色がすすんだり、プリント用紙が黄変したりする。
 ついでにお土産用のポストカードもここで用意した。



 今回はPR目的で巨大プリントを何枚か用意することにしました。
 巨大プリントはプリンターのプロパティー(ポスター)で設定が可能で、サイズによってA4を3枚×3枚などに分割し、フチなし印刷の後につなぎ合わせて1枚の大きな
プリントをつくるものです。前回はこれで行ったのですが、プリンターの精度の問題もあってなかなかスムースにつながらなかったりする。
 もちろん世の中にはA1サイズの印刷が可能なプリンターもありますが、1台14万円でインク1セットが2万円では手が出ません。ということで、今回はズームプリント
という専用のソフトを使ってみることにしました。ソフトに関して言えば、マニュアルなしでも直感的に理解できて、30分ぐらいもあれば印刷にまでたどりつく。



<3日前>
 展示する制作物等はもうこれ以上増えないということで、今年持ってゆく作品を整理し始めました。



 「情景のなかの人形たち」の準備も最終段階です。ある意味、このために1年かけていろいろとやってきた訳なので、できるだけきちんとした形で開催したい。
 作品数はドールやフィギュアを主人公とした情景作品が27、スペースを調整する小作品が6、写真150、大きな写真パネル10といったところです。これを会場の
見取り図に配置してゆく。おおまかなものはつくってあったんだけど、こうやって正確なものをつくってみたら、作品数が増えた分、配置を多少変更しなくては
いけないところがあるってわかった。こういうものを事前につくっておかないと、多分、準備に丸1日以上かかっちゃう。
 今年の目標は準備時間4時間半、開始目標14:00です。



 印刷物では美術館側の要請もあって、新型コロナ対策の注意書きを追加しました。正直なところ、この個展が感染拡大につながるような危険なものではないとは
思っていますが、それでも少なくともご近所の方とか、このブログ等の読者の方が訪れるということを考えれば、開催することの影響はゼロとは言い切れない。
そういう事実そのものが、心のどこかに小さな棘のように刺さっている感じです。



<DAY 1>
 さて今日からいよいよ3回目の個展「情景のなかの人形たち」が始まります。過去2回に比べれば、作品数も増えたし、質も上がっていると自分では思っています。



 早朝、涼しいうちに我家の軽自動車の荷室に、会場に運び込む作品を詰め込んだ。作品はそれぞれ専用の箱をつくって省スペース化しているので、ぴったりと収まるはず・・・。
ちょっと計算違いもあったけど、ご覧の通り荷室の96%ぐらいは埋まった感じ。これはこれで見事な光景です。





 9:30、早速、会場設営を始めました。まずは工芸台とテーブルを並べて布をかぶせる。次にジオラマ作品を組み立てて並べる・・・。13:00、ジオラマが並べ終わった段階で開場、
並行して写真を壁に貼り付け始めた。結局、この日すべてが整ったのは15:00過ぎでした。この規模の作品展を個人が行うって、やっぱり大変です。

 それで初日の会場はというと、本当に静かでした。予想した通り美術館に訪れる人も少なく、美術館の企画展から流れてくる人もほとんどいなかったです。
 でもこれはある程度予想されていた事態です。新型コロナの影響で外出は自粛のムード、自分だって意味なく人のいるところや公共交通機関に乗ろうとは思わない。それに
いつもは子供たちで賑わう場面もあったけど、今年は夏休み短縮で学校はすでに始まっている。
 状況からすれば、興味があって自家用車で来られる近隣の方、もしくはご近所の方が散歩がてらに訪れるとか、見に来られる方はかなり限定された範囲になるとは思っていた。

 

 通りかかった方に少しでも気づいてもらえるよう、大きな写真パネルを置いたりして少しでも気を引くようなエントランスにした。



 いつもどおりイレーヌ・カーン・ダンウェール譲に扮した chico ちゃんは窓際に置く、こうすると何だろうと思って入ってくる人がいる。
 chico ちゃん、明日からは頑張ってね。





<DAY 2>
 「情景のなかの人形たち」第2日目です。 始まって15分で最初のお客様、今日もとっても静かな始まりです。



 今回は今年のポイントみたいなところを解説します。
 基本的に「情景のなかの人形たち」は、自分のイメージした空間を、ドールやフィギュアを主人公として表現してゆくというコンセプトなのですが、
メインのはずの1/3スケールのオリジナル球体関節人形については、これまで簡単なパネルの背景だけで済ませていた。
 これを今年はリアルな背景に作り替え、テーマを持たせたところがやっぱり一番大きな変更かな。





「古いドア」
 モデルドールは asumi





「小さな侵入者」
 モデルドールは akane



 写真のコーナーです。



いつもだったら、旅行した記録写真をいろいろと張り付けているのですが、さすがにこの新型コロナのおかげでほとんどない。
かわりにご近所を散歩した記録のコーナーができちゃいました。
 でもおかげで、これまで知らなかったご近所の素敵な場所をいろいろと知ることができました、それは収穫。





「極楽寺」





「大根川の河原」




 あとは今年は展示レイアウトをかなり変えた。
 作品には前面から見てもらうことを前提としたものと、360° どこからでもOKなものの2種類があるけど、これを明確に区別して配置した。これって当たり前の
ことなんだろうけど、これまで見落としていました。



 多くの鉄道模型のレイアウトは、どの方向から見ても大丈夫なようにつくり込んでいるので、これでだいぶ見やすくなったと思います。



 この作品は「新学期」というタイトル(1/150スケール)、画像中央に高校生がいますが、これで身長が1cmほどです。
 全体としてはお客様が全くいない時間帯もあって、けっこう暇してました。何もないので、いつもの連れてる人形の撮影などしてました。
 でもときおり、この作品展にものすごく興味を持って下さる方がいて、嬉しく思いました。その言葉一つ一つが明日への励みになるんだよな。





<DAY 3>
 3日目、会期6日間も中盤になりました。今日もいたって静かな始まりです。
 今回は会場のいちばん目立つところに置いた作品をご紹介します。

 

「stratum」(地層)
 人形そのものは明確な寿命を持たないので、可能性としては永遠の存在として将来、地層の中から発掘される可能性もあるというイメージに
もとづいて制作した作品です。
 巨大プリントは作品の上に掲げて、その存在感を強調しています。入口に一番近いところに置くにはふさわしいかなと思いました。でもこの作品は
きっとすぐにリメイクする。ドライブラシかけ過ぎたのに気付いた。
 けっこう暇しているので、手を入れなきゃいけない作品はないか、あちこちチェックして回っています。





「賽の河原」
 その隣に置いたのがこの作品です。何年か前に恐山を訪れたことがありますが、あの空間のインパクトはすごかった。恐山にこういうところが
あるというのでなく、現世と死後の世界の境界線をイメージして制作したこのジオラマです。



 

「腐海の尽きるところ」 最近リメイクの終わった作品で、がらっと雰囲気が変わりました。 作品そのものは、もちろん「風の谷のナウシカ」から
ヒントを得ています。腐海の最深部では浄化された新しい世界がひろがりつつあるというくだりを再現しました。
 ナウシカのフィギュアはプラモをベースにつくっていますが、この作品の見どころは、やはり腐海の植物とよみがえりつつある旧世界の植物が
共存するこの空間です。
 この作品のスケールは1/20、ナウシカの身長は8cmほどです。ミニチュア作品の弱いところって、その小ささゆえ立ち止まってじっくりと見て
もらわないと、何も気づいてもらえないところです。だからここにも巨大プリントを置いて目を引くようにした。



 

「LAST WALTZ」
 最近完成させた横浜駅西口に実在するBARから、そのイメージをいただいて制作した作品です。1/3スケールのジオラマは4点持ち込みましたが、
そのなかでいちばん大きく、その中心に置いてある作品です。
 モデルドールは nanami、以前に blog や HP で紹介したときから、アメリカンな感じのOFに変えてみました。
 自分のつくるドールって小顔なので、やっぱり立ち止まって、じっと見てもらわないと作り込みが分からない。だから会場内にはこの娘の大きなプリントも
展示してあります。大きなプリントってやっぱり効果ある。





 昼頃になると会場内は本当に静かになっちゃった。12:30ごろから2時間ぐらいは誰も来なかった。通りを見ても誰も歩いていない。本当に悪いタイミングで
開催しちゃったなって感じです。コロナと酷暑には勝てない。
 もっと言うと、この日はこれまででいちばん気分が悪かった。
 こういうものをやってると、たまに上から目線であれこれコメントする人がいる。物事良く分かってないのに突っ込みを入れたりするが、その内容に具体性が
ない。それはそれで軽くあしらうだけなのだけど、気に入らないのはマナーのなっていない人です。たとえば入ってきて、作品を何も見ないでソファーに座り込み、
「さあ、次はどこに行こうか」なんておしゃべりを始めるご婦人、ここは休憩場所じゃないです。
 あとはタオルで汗を拭きながら電話かけ始める人。あのねー、いくらなんでもそれはないでしょ。さすがに睨みつけて立ち上がったら、その場からいなくなりました。



 さて今日もこれで終わりかなと思った15:00ごろ、学生さんと思われる二人がやってきました。きっと短い夏休みも先週で終わり、今日あたりは半日授業だったん
だろうなあと思います。そして静かにそれぞれのペースで、(ここがポイント、興味関心て人それぞれで違うから) 解説文まで含め、作品を隅から隅まで見て帰られ
ました。その間、二人の会話はなし。
 もしかしたらそれほど興味のある分野ではなかったかもしれませんが、じっくりと時間をかけて理解しようとしていたんだろうなと思います。これは嬉しかった。





<DAY 4>
 「情景のなかの人形たち」4日目、今日も本当に静かに始まりました。なんと最初に見学者は開始後1時間ほどたってからでした。
そして暇な時間を何していたかというと、展示室内でウオーキングや軽い運動、そしてちょっとだけスマホでゲーム。ちなみに歩数計を
持って歩いていたのですが、今日は何と17,780歩も歩けちゃった。距離にすると13kmぐらい。これなら早朝のジョギングはいらない。



 新型コロナの影響はある程度予想はしていたけど、まさかこれほどとは。
 自分が会場をお借りしているのは平塚市美術館の一室です。この美術館自体も企画展を開催していますが、今年は新型コロナの影響で
小規模な所蔵品展のみ。いつも夏休み中は親子で賑わっているのですが、夏休み短縮ですでに新学期も始まっている。ついでに言うと酷暑の
中ではお散歩ついでにやってくる人もいない。あと今日この金曜日を定休日にしているところがほとんどないっていうのも影響しているでしょう。
(まあ、それでも自分の作品を楽しく見て帰られた方も何人かいたんだけどね)



ここで、時期がやや遅かりきの感はありますが、いつものお人形さんたちと会議を始めます。(ちょっと密だね)
「何か良いアイディアがないだろうか?」
「・・・・。」
「・・・・・。」

「・・・。」

 これ以上やっていると最低人(注)になってしまうので、ここはいったん中断します。
(注:がんばれタブチ君で有名な、いしいひさいちさんが描いた「死闘 地底人 対 最低人」より。ずっと昔の漫画です。 )

 ここで本日も展示品のいくつかをご紹介します。



「私の部屋」
 1/6スケールのドールハウス、モデルドールは nano



 自分としては女の子の部屋をのぞき見している感じで、どきどきしちゃう作品かな。こういう感覚的なものってとっても大切だと思う。





「コンサート」
 同じく1/6のジオラマです。モデルドールは nano と sayaka です。
  nano と sayaka って名前が頻繁に出てくるけど、以前イベントで販売していたころに名付けたドールヘッドの種類のことです。



 

「新学期」
 1/150スケールのジオラマ、いわゆるNゲージのレイアウトです。(20cm×75cm)
 もちろんこの上で電車を走らせることもできます。 通常、この大きさのものをざっとつくると1週間ぐらいで出来上がると思いますが、これを
2ヶ月ぐらいかけて作り込んでいる。だから近寄ってみると、いろんなものが見えてくる。このシーンの主人公は中央の高校生二人です。
その身長は1cmほど、きっと上から見ても分からないと思います。皆さん、腰を落としてよく見てください。
 そういうこともあって、多分、今回の作品のすべてをざっと見るだけで最低20分はかかると思う。じっくり見たり写真を撮ったりすればその倍以上かな。





「曲沢
」 1/150スケール(20cm×50cm) 実在する由利高原鉄道の駅を少し縮小して再現しています。この駅を利用していた方が、一昨年前にたまたまここを訪れ、
この作品を「本当にこのとおりです」と評価してくださいました。





「卒業式の朝」
 前日は大雨だったので、用務員さんが早めに出勤して卒業式の準備を始めた。そのシーンを1/150で再現しています。(20cm×25cm)
 ジオラマって物を並べてリアルに仕上げることが大切じゃなく、そこにどれだけストーリーがあるかってことの方が重要だと思う。





<DAY 5>
 今日も静かな始まり、最初の来場者がいらっしゃるまで約1時間ほど。じっとしていても時間の無駄なので、軽い運動とかウオーキングで
時間つぶしました。この日の歩数計の最後のカウンターは15000歩ほど、10km以上歩いた計算です。



 新型コロナがどうしたって感じで、会場内は十分に疎。上の写真は本日いちばん密になったときに撮影しました。
 でも今日は熱心に見てゆかれる方が多かった、最初の学生さんを始めとして、上の画像の方々にいたっては1時間近くいたんじゃないかな。
これはけっこう嬉しいかも。では今日も会場内の作品をいくつかご紹介です。





「Kittyの部屋」
 2400円ぐらいで買った中国製のドールハウスキットをベースにして仕上げた作品です。



 こういうアトリエ兼温室のような部屋があったら、誰もがお昼寝しちゃうよねって感じです。気持ちよさそう・・・。
 ジオラマって、こういう共感できる感覚が大切です。



 

「Alice's Dreamy Bedroom」
 これもドールハウスキットをベースにしています。天文学に興味のある活動的な女の子の部屋を再現しました。
 この娘は今何を考えているんだろう? 見ている人にそう思わせたら、この作品は成功なのだろうと思ってつくってました。
 ドールハウスって、一般的にはあまりフィギュアを置いたりはしないものなのですが、自分の場合には主人公としてそこに置きます。
そのうえでできるだけドールハウスという背景に馴染むような工作を加えてゆくって感じかな。



 あとはちょっと脇役さんのご紹介です。展示スペースの隙間に置いている作品です。



 昨日思いついて急きょ制作した作品(制作ってほどのもんじゃないけど・・・)ウイーゴ2体がお相撲を取ってます。



この娘が意外な人気です。
 以前は1/12のドールを主人公にしたジオラマもあったんだけど、1/12って結構難しい。1/12というのはドールハウスのスタンダードな規格なので、
背景物を豊富にあってリアルなものをつくることができる。一方でリアルな人形や洋服をつくるのはけっこう難しくてアンバランスになる。
 結果、自分はこんな感じで1/12の娘たちにがんばってもらってます。



 あとは写真プリントからいくつかご紹介です。



 これはTBLeagueボディとマリリン・モンローのドールヘッドの組み合わせです。このヘッドはネット通販で購入したのですが、最初は紹介画像に
全然似てなくて、これじゃ「詐欺じゃん」て思ったもの。
 こういう場合には、自分は意地でも似させたり、可愛くしないと気が済まない。手を加えればこのレベルにはなるよって作品です。





 これは会場内で皆さんの足が必ず止まる合成写真です。 スコットランドの山+どこかの草原+ハセガワのB17のプラモ+オリジナルドールという
4枚の画像を加工してつくりました。これも画像合成です。





 この暑いさなかなので、あえて選んでみました。
 やっぱりお人形ってただ飾っておくものじゃないよ。いろいろ遊んでこそ価値が出てくる。またそういう遊びができるようなドールやフィギュアをつくり
続けたいなって、自分は思います。





<DAY 6>
 「情景のなかの人形たち」もいよいよ最終日です。撤収作業の関係もあって今日は15:00には終了の予定です。



 日曜日なので少しは来場者が多くなるかなとも思ったけど、あんまり平日と変わらない。つまりは休みであっても外出を控えている人が多いってことだろうなあ。
そういえば自分自身もここのところ外食をしていないし、人の集まるようなところにも行っていない・・・。

 さてこれまでに会場に持ち込んだ作品のいくつかをご紹介してきましたが、今日は「こだわり」みたいなものについて触れておきたいと思います。
もともとこの「情景のなかの人形たち」は、ドールやフィギュアを主人公として、自分のイメージする空間を2次元、3次元で表現するというテーマで展開していますが、
まずはその主人公となるドールについてです。

 

 これは「小さな訪問者」という展示のなかのオリジナル球体関節人形 akane です。
 左は普通に撮影したもの。開場は美術館の展示会場なので天井から一様な照明で照らされています。その関係で展示室内には影もできないし、
とびぬけて明るいところもない。たとえば絵画の鑑賞にはこういうフラットな明るさが向いているんだろうと思います。
 でも必ずしもドールの場合にはこういう特別な照明が良いとは言えません。
 右側は正面から小さなLEDライトで照らして撮影したものです。お気づきの通り印象が変わります。
 一般的な家庭でよく使われるLEDライトや蛍光灯といった照明で照らしてあげると、こんな感じでアイがキャッチライトして、生き生きと見えるようになる。
(だから本来は会場にコンパクトな電源とライトを持ち込みたいところ)

 キャッチライトはドール撮影において、とっても大切なことなのですが、残念ながら市販の多くのお人形は描き目なのでキャッチライトしようがない。
だから自分の場合には1/3から1/12にいたるサイズの人形はすべて入れ目で仕上げています。
 もちろん1/6とか1/12のサイズのドールアイは市販していないので自作しています。入れ目であることは主役のドールとしては絶対に必要なことです。





 「旅立ち」という作品です。「こちらのドールはずいぶん小顔ですね。」と言われることが良くあります。実際1/3スケールのドールというと、市販品では
VOLKSのスーパードルフィー(SD)あたりが有名ですが、こちらの2体はSDよりかなりヘッドサイズが小さく、ウイッグサイズで言えば1/4スケールのものが
ぴったりです。
 ただ実際のところは、むしろ自分のつくるドールの方がリアルなスケールに近いです。だいたい7.5頭身ぐらい。市販ドールがやや大きめのヘッドになって
いるのは、その方が可愛く感じられることと、見栄えが良いということだと思います。
 自分が初めて小さめのヘッドをつくった時に感じたのは、SDに比べるとかなり地味で、目立たないってことでした。
 でもドール単独でなく、実際にきれいな場所で撮影したり、情景の中に組み込んだりしたときには、リアル系の小顔のドールの方がずっとバランスが
良かった。そういうところからこのヘッドサイズに落ち着いたということです。
 ちなみに市販のドールも何体か持ってはいるのですが、6頭身程度のドールを、こういったリアルな情景作品に組み込んでみると、少なくとも自分は
ちょっとした違和感を感じます。
 ジオラマに組み込んだり、画像加工に使うような写真を撮るなら、やっぱりリアル系のドールの方が良い。ここも譲れないところかな。
 ただ自分のつくるドールが本当にリアルかって言われればそうでもない。いろいろと脚色して、生身の人間とはまた違う解釈で造形している。このあたりは
いろいろとあるけれど、まだ語りつくせるほどの整理はできていないので、このぐらいにしておきます。





「Cappuccino」 家の庭、車、フィギュアで構成されたシンプルな作品。(1/24)



 普通に上から見ちゃうと、「あ、風でスカートがめくれあがっている。」ぐらいの観察で通り過ぎちゃうんだけど、周囲の目を気にせずスカートの中をのぞくと
ご褒美がある。 (今回覗き込んだ人は自分の見てる範囲ではいなかった、もったいない。)
 これをどういうのか人それぞれかもしれないけれど、「思わずにっこり」みたいなものを潜ませておくのは楽しい。





「最後の冬」1/150スケールの鉄道レイアウトです。フィギュアの大きさは1cmほど。普通に鉄道模型を走らせるだけなら、こんなことはしないだろうけど、よく見ると
女子高生はピンク色のマフラーをしているし、待合室の屋根からつららが伸びている。
 1/150だと何から何まで正確に作るのは難しいけど、ここだけは作り込んでおくってところがあると、それを発見した人も楽しい。ようするに喜ばせ方の問題です。





「梅雨明け」こちらは1/150のジオラマです。昭和レトロな街並みを再現しています。目線を1cmのフィギュアまで落としてやると、こんな世界がひろがっている。
「そうだよな、昔はおもちゃも扱っている駄菓子屋さんてどこにもあったよな。」 そういう共感てとても大切です。



 こちらは同じ作品の裏側です。(この作品は360°どこから見てもOK) 細い路地に2件の小料理屋、そのうちの1軒に入ってゆく若者二人、納屋のホーロー看板、
狭い道なので消防車は入れない、だから消火栓をここに置く。こういう細かな作り込みから説得力のようなものが出てくる。
 1/150なので完璧にリアルな空間をつくるのは難しいです。でもこの空間の中でのつじつま合わせをしてゆくうちに、この空間内だけで成立するリアルさが出てくる。
あれこれと書いたけど、ジオラマである限りは、まずはリアルであることがもちろん大切です。でもそれだけじゃなくって、もう一つ何か楽しみとか驚きのようなものを、
プラスアルファで加えられたらきっと良い結果が出ると思います。





 こうして今年の「情景のなかの人形たち」は終了しました。入場者数は6日間で、昨年の1/5にしかならない150名ほどでした。正直なところ
とっても疲れた。来場者が少なくてやや精神的にもきついところがあった。



 最終日の夜はこれまでだったら「打ち上げ」に出かけるところですが、今年はおうちでささやかに「反省会」です。(上の画像のリステリンはもちろんジョーク)
 新型コロナの影響が大きいとは思っていたけど、正直ここまでとは思わなかった。数字だけ見ると惨敗って感じです。



 いつもだったらジオラマのまわりは子供たちでいっぱいになるけど、夏休み短縮で学校はすでに始まっている。状況からすれば、興味があって自家用車で
来られる近隣の方、もしくはご近所の方が散歩がてらに訪れるとか、見に来られる方はかなり限定された範囲になるとは思っていた。
 だからあとは通りかかった方に少しでも気づいてもらえるよう、入口に大きな写真パネルを置いたり(上の画像)、イレーヌ・カーン・ダンウェール譲に扮した
chico ちゃんを窓際に置くとか、そういう工夫をしたけど、そもそも酷暑で通りを歩いている人もいなかった。

 では全くダメだったのかというと、もう一つ別の数字もある。同時並行して更新し続けたブログの8月のアクセス数は「情景のなかの人形たち」が終了した
23日時点で、すでに12,000という、これまででは考えられない数字になっている。(昨年8月一か月間の約5倍以上)
 それはもしかしたら、見に行くことはできないけど、せめてブログでその内容を知りたいという人が多かったのかもしれません。
 もしそうであるならば、ここはリモートで「情景のなかの人形たち」の世界を引き続きご覧いただくのも一案かと考えました。すでにブログ上ではジオラマ作品の
半分以上を紹介済みでしたが、160に及ぶ写真はほとんど掲載できずにいたので、追加で自分の選んだ画像作品をご覧いただくことにしました。





<1 DOLL写真>
 自分の作った人形や市販の人形の中でも特にお気に入りのものを撮影したコーナーです。



 1/3オリジナル球体関節人形の akene 、粘土による手作りのドールです。これは完成直後に撮影したものです。 いままで30体以上の
作品を作ってきたけど、その中でもいちばん完成度の高い作品の一つです。
 でも実は制作にはあまり苦労した覚えがない、何かが天から降りてきて、するするっと出来上がってしまった。こういう経験は過去2回だけ。





 1/6オリジナルドールの nano 、レジン製オリジナルヘッドにオビツSBHボディ、もしくはTBLeague s26Aボディを組み合わせたドールです。
お散歩や旅行のときには必ず連れてゆく、今となっては相棒みたいなものかも。
 入れ目+ウイッグ仕様で、ヘッドのつくりは球体関節人形と同等です。以前はドールイベントなどで販売していたこともあります。





 以前に発売されていた J-DOLL の Koningslign というドールです。(1/6スケール)
 J-DOLL は「入れ眼」と「ウイッグ」という他のドールにない特徴を持ち、世界の通りの名前をイメージした独特な衣装が特徴の人形でした。
自分との波長が合って40体以上も購入したと思います。(現在は生産終了、もしかしたら製造原価が高すぎたのかも)
 このJ-DOLLが手に入らなくなったので、上のオリジナルの nano というドールをつくり始めたというわけです。今でも素敵なドールだと思う。
探すとたまにヤフオクあたりに出てきます。





 自分はけっこうなドールコレクターで、そのほかにもいろんな色々なお人形を持っています。
 こちらは、赤ちゃんのお人形で有名な Ashton Drake 社の Delilah Noir ”Debut” (1/4スケール、生産終了、入手困難)。セカイモンを通してアメリカから
9000円ぐらいで個人輸入、このほかにもお洋服1セットがついていて、すごくお得でした。
 でも結局、このシリーズも5作ぐらい出たところで販売終了になってしまった。上のJ-DOLLもそうだけど、DOLLという趣味の世界だと、必ずしも良いもの、
手間のかかったもの売れるというわけではないという例の典型ではないかと思います。
 今はというと、このサイズの中国製の球体関節人形が、送料込み5000円ぐらいで購入できちゃったりするわけで、個人でも企業でも新規参入はかなり
厳しいと思います。





「情景のなかの人形たち」の看板娘 chico ちゃんです。いつもルノワールのイレーヌ・カーン・ダンウェール譲に扮してもらっています。
もともとは amazon で売られていた100cmサイズのいわゆるラブドールです。(中国製、これも3万円ぐらいから買えたりする)
 そのままだと見栄えが良くないけど、いろいろと手を加えてあげると、見違えるように可愛くなります。あとは3歳児用の服を着せて
パソコンの前に座らせると、ちゃんとお仕事しているように見える。
 欠点は重いこと、これで12kgあります。着換えさせるのは一苦労です。
 前にも書いたけど、ドールってただ飾っておくものじゃない。着換えさせたり、写真撮ったり、いろいろ遊んでこそ価値が出てくると思う。





<2 春夏秋冬>
 季節の風景のなかでドール写真を撮ってます。



「春・箒川」
 那須塩原温泉郷を流れる箒川には、毎年コイノボリが泳ぎます。谷筋を通り抜ける風が気持ちいいです。この周辺にはきれいな渓谷や滝があって、
その季節ごとにいろいろな景色を楽しむことができます。





「夏・長者ヶ埼」
 神奈川県の三浦半島、夏は観光客で賑わいます。渋滞もものすごい。
 でも多分今年は地元の人たちが散歩するぐらいで、とても静かだったんだろうな。(神奈川の海水浴場はすべて遊泳禁止)





「秋・那須岳」
 ここのところ毎年登っている那須岳。10月後半だけど風が強くってむちゃくちゃ寒かった。でもお人形はどんなに暑くても寒くてもへーきです。





「冬・会津田島」
 真冬の2月、雪深い会津田島にやってきた。おりしも数十cmの積雪のあった翌日でした。皆さん雪下ろしが大変そうでした。 地元の方によれば、
最近、豊かな緑に囲まれた田舎暮らしにあこがれて移住してきた人もいたみたいですが、移住する前に冬の会津田島を経験しておくべきだったと、
少し後悔しているそうです。
 でも間違いなくとても良いところです。あと国権酒造さんでおいしいお酒も買えます。





<3 旅>
 旅行にはいつもお人形を連れてゆく。その記録写真です。



「礼文島の夏」
 氷河に削られてできた地形が日本じゃないみたい。高い樹木はなく、高山植物がいちめんを覆っています。夏は可憐な花があちこちで咲いている。
一生に一度は見ておきたい風景です。本当に来てよかった。





「石岡」
 ここは石岡の中心街です。昭和の時代はもはやレトロになりつつあります。ここは看板建築ファンがいたら泣いて喜ぶ場所だと思う。
 こういう風景もあともう30年もすれば見られなくなっちゃうんじゃないかな? 見ておくなら今です。
 あとこれまで行ったところでは、桶川や館林なんかもいいと思います。





「鶴岡市内の居酒屋」
 だいたい何処へもお人形は連れて行く、飲み屋さんにも行くし、観覧車にも乗る。電車やフェリーにも乗った。入場料や運賃はタダだしね。



<4 合成写真>
 人形を主人公にして合成写真をつくります。この合成がおもしろいのは、ありえない空間ができあがってしまうところ。でもそのためには、
素材になりそうな画像をたくさん撮りだめしておく必要があります。



「ガレージ」
 合成写真は、基本的には適当な背景画像の上に、DOLL画像を切り出して貼り付けるという作業になります。自分の場合にはこれをGIMPという
無料のアプリケーションで行っています。ただしそのままだと違和感があったり、DOLLが背景に埋もれてしまったりします。
 この画像の場合には両方の画像の明るさを調整し、人形の足元に影をつけるという2段階の操作で完成させています。
 背景は浜松の「ぬくもりの森」というテーマパークです。とってもフォトジェニック、背景としてだけでなく、直接人形をここに置いても良い写真が
撮れると思います。





  「エマ・ワトソン」
 築地本願寺を背景にしてます。この画像での工夫は背景画像のぼかしです。階段はピントが合っていますが、遠方になるほどぼかしを強く入れています。
こうすることで遠近感が生まれてリアルな作品にまとまります。
 ドールは市販されているエマ・ワトソンのヘッドとTBLeague s22Aボディの組み合わせです。





「新宿」
 新宿の風景とテグスで吊ったお人形の画像を合成してみました。
 GIMPではいろんなエフェクトを効かせることもできます。この場合には黄色以外の色の彩度を落としてみた。エフェクトを積極的に使うとおもしろい
画像ができます。あと誰でも簡単にできるのは、背景をモノトーンにすること。





<5 お散歩>
 この半年近く、旅行に出かけていない。だから写真もお散歩のときのものが多くなって、新しいコーナーをつくりました。



「川霧」
 お散歩するなら絶対に早朝が良いです。圧倒的に光がドラマティック。特に日の出の15分ぐらい前の時間帯は、周囲がまるで魔法がかかったような
色彩に染まり、印象深い写真が撮れます。





「嵐の前」
 これも早朝の写真です。台風がやってくるという前日の写真です。青空とピンクに染まった雲、しかも時間を経てその色合いが少しずつ変わってゆく、
どの瞬間も一期一会。



 ということで、これにて今年の「情景のなかの人形たち」のイベントリポートは終了です。
  そして次回の「情景のなかの人形たち」ですが、いつかどこかでやりたいと思っています。こういう世界があるということを、ぜひ皆さんに知ってもらいたい。
特に子供たちには造る喜びみたいなものを知ってほしいので、希望としてはやはり夏休みの来年8月なんだろうな。
 ただ現状では何とも言えない部分はある。よほど良く効くワクチンが開発されて、世界中に十分な量が供給されない限りはオリンピックだって厳しいでしょ。
エイズだって特効薬がすぐにもできそうな話を聞いていたけど、実際にはいまだに完成はしていない。
 残念ながら、当面する課題のすべてを解決できるほどには、まだ科学は進歩していないということです。
 前にも書いたけど、地球46億年の歴史の中で人類は高々500万年の歴史しかない。そのなかで我々現生人類の歴史はわずか3万年、これまでに多様な
人類が誕生しては、様々な理由で滅んできた。生物学的に絶対の強者と言えない人類が、少なくとも地球上で永遠の存在であるとは何の保証もありません。
 今回はそういう壊滅的な状況には至らないとは思いますが、我々は不幸にして足元の小石につまづいてしまった。
 痛みをこらえて立ち上がれっていう人もいれば、腫れがひくまで休もうって人もいる。
 でも最終的な問題はその立ち上がり方ではなく、歩いてこの先、どこに向かうのかってことだと思う。

  どこにいても晴れていれば空は青い。
     人がいてもいなくても
     歴史があってもなくても
       いつかまた、本当に自由に青い空の下を歩きたいね。






2020.08
camera: canon Powershot G7X & CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Panasonic GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



サイトのトップページにとびます