eye4工房番外編

テレワーク



 自分の場合、だいたいいつもは3つぐらいの作品を並行して制作しています。というのも、粘土や塗料は乾燥に時間がかかるし、
時にはアイディアが浮かばなくなったり、制作に行き詰まってしまうこともあるから、だいたいこれが丁度よい。
 先日、制作を始めた1/72の山入口バス停、それから旧作品 Stratum のリメイク、そして今回作り始め\た1/24のジオラマの3つが
現在進行形になっています。



 こちらがそのジオラマのベースになる1/24のドールハウスキットで、大きさは9cm四方ととても小さい。お値段はAliexpressで仕入れて
だいたい1200円ぐらいです。


  1 まずは説明書を眺めながら、全体の構成などを確認してゆく。


 箱絵に写っているものは、パーツとしてすべて箱の中に入っています。これまで何度か購入したけど、パーツが足りないなんてことは
なかった、お値段を考えると、とても良心的な製品だと思います。
 基本、説明書どおりにつくってゆけば、1日2時間程度の作業で一週間もあれば完成すると思います。


  2 使えるもの使えないものを分類して、制作に入ります。
  

 大きさ4cmのギターに弦を張ってゆく・・・、説明書にはさらっと書いてあるけど、ときどきこういった無茶苦茶難しいところがある。制作年齢
10歳以上とは書いてあったような気はするけど、きれいな作品に仕上げるためには、それなりの器用さと努力が必要です。
 キットにはいろいろなパーツが入っているけれど、イメージと違うものやスケール感のないものは作りません。  




 とりあえず2日間の作業で、まずは大きなものを作りあげて形になってきた。ここまでは順調。
 今回はキットを説明書どおりにつくらず、あえて幅を少し狭くしています。(底面を9cm×9cmから、9cm×6.5cmに縮小)、少々窮屈な感じには
なりましたが、最低限の遊べるような空間にはなったかな。
 そしてなぜ縮小したかというと、これを軽規格のトレーラーに仕上げるためです。


3 つくりかけのホンダtodayのシャーシーを分割して、
 ドールハウスに組み込んでゆく。
4 更にジャンクパーツからカプラー部分を制作し、更に
 デッキ部分を延長しました。
 

 このほか、車両なのでウインカー類やナンバーも移植しました。こうしないと公道は走れないからね。上に乗っかっているソファーや透明ケースなどは
「荷物」ということになります。




 とりあえずトレーラーの形になってきた。はまだまだ手を加えたいところはあるんだけど、とりあえず完成度70%になったところで、牽引する車本体の
制作にかかります。





 ここで牽引する自動車の方もご紹介します。こちらはスバルサンバー、実車は富士重工(現SUBARU)が発売していた軽商用車です。2年ほど前に、
何かに使えるなと思ってこの模型を購入し、ストックしてあった。これが今回のイメージにぴったり。
 パッケージをあけてみたら、これがけっこう古い模型でした。1980年代に今井科学が製品化したもので、それが今はアオシマが復刻して再販売している。
 パーツを眺めていたら、これがなんとコラムシフトで時代を感じます。このサンバーは軽のバンとしては初の四輪駆動車で、当時はあちこちの田舎道の
荷物輸送に活躍したヒット商品。そういうこともあって、こういう実用車が模型化されたんだと思います。 (今でもamazonあたりで入手可能)


5 まずはジャンクパーツを利用して、接続部分をそれらしく作り
 あげます。
6 車体内部はとてもあっさりとしている。説明書通りに
 さらさらっとつくる。


  7 サンバーの後席と荷室部分はフラットな空間に置き換えます。
  

 サンバーは4名乗車+荷室ですが、ここは迷わず2名乗車+ベッドルームに変更し、運転席の後ろをフルフラットにします。
 そして布団や毛布、それから遮光カーテンなどを取り付ける。


  8 内部に棚をつくり、適当な物品を配置してゆく。
  

 ハイルーフ仕様の車っていうのは、基本そのハイルーフ部分は物置に使用する。ということで棚を加工して、適当なものをおいてゆく。本当にけっこう適当なのですが、
ウインドウガラスの透明度も低く、組み立て後はほとんど見えなくなるので、「何かおいてあるな・・・」ぐらいで十分、これでもやりすぎぐらい。


 9 車体のカラーリングをシミュレーションしてみます。
    

 カラーリングですが、もちろん箱絵と同じに仕上げるつもりはないです。取説を写真に撮ってPCに取り込み、これをGIMPで着色してみた。(上の画像)
 いろいろなパターンを考えたけど、明るく活動的なイメージということで、ホワイト+淡い黄緑+シルバーの3色で仕上げることにした。


10 吹き付け塗装の前に、まずはマスキングを行い
 ます。
11 マスキングと吹き付けを交互に行って3色に塗り分
 けた。


 塗り分けは基本的にマスキングで行います。マスキングは面倒なので、あまりやりたくないけど、きれいに仕上げるためには避けて通れない。吹き付けは白から始まって、
徐々に濃色に移ってゆくのが基本、そして最後にメタリックの部分を仕上げてゆく。

 ナンバーは「群馬40 せ444」。  SUBARUの本社工場って群馬県の太田市にあるんだけど、その前身となったのは、旧陸軍の隼戦闘機をつくっていた中島飛行機というメーカーです。
 そういうこともあってか、後にはこのサンバーにスーパーチャージャーなんかが取り付けられ、特に車重の軽いトラック仕様のものは、走りに関しては、下手なスポーツカーに負けない
というものでした。(スーパーチャージャーってターボと同様な過給機なんだけど、一昔前に主に航空機エンジンに使われていた技術です)
 そして今はというと、サンバーの名前は残っているけど、すべてダイハツからのOEMに切り替わってしまい、自社開発はしていない。やっぱり凝りすぎて開発費用がかかりすぎたのかな・・・?
 ちょっと残念です。
 でもね、やっぱりこの時代のサンバーって、何か夢がある。
 ちなみに中島飛行機の創業者、中島知久平の邸宅は今も利根川の河畔にあって地域交流センターとして公開されています。自分も訪れたことがあるんだけど、いろんな意味で時代を
感じる場所です。
 何十年も前、創業者自身もきっとここから利根川の上空を飛ぶ隼の姿を眺めていたに違いない、そう思いながら庭を歩いてました。


  12 ボートやルーフキャリア、カンガルーバーなどを取り付けます。
  

 利用したのはサンバーのキットに入っていた不要パーツとオプションパーツです。このキットとは別のバージョンでアウトドア仕様も発売していたらしいですね。


 

 ここで思ったのですが、これだけ装備しちゃうと、さすがにNA(自然吸気)のサンバーでは、まともに走らない。高速道路の上り坂では60km/hも出ないかもしれない・・・。
 ということでサンバーにはターボを取り付けました。ただ取り付けた、といってもパーツを追加したわけでなく、ターボのデカールを見つけたので貼り付けただけ。ターボ
つけたからちゃんと走るよって印です。こういう説得力を高めるアイディアはとっても大切だと思います。

 今はあまり見かけなくなったけど、アウトドアがブームだったころには、パジェロとかランクルを、みんなこんな風にドレスアップして乗っていた。懐かしい。
 バブル崩壊以前のことだったから、ごく普通のサラリーマンでも、けっこうお高い車を購入していた時代だったね。男子諸君にとっては免許を持つのは当たり前、
注目されるような車で彼女を迎えに行き、そして素敵な場所に連れてゆく。代表的なデートのパターンでした。
 そういう自分も、押し入れの奥にはキャンプ道具やスキーなんかが眠っていたりする。もう一度引っ張り出すことってあるのかな・・・?



 サンバーがいい感じに仕上がったので、今度はトレーラーの方に手を加えることにする。
 並べてみると、トレーラーの方が車高が高すぎてちょっと違和感がある。それにこの丸見えの状態は、どう考えても落ち着かない。
   ケント紙をカットして、ブラインドや折り畳み式の屋根をつくります。  

13 ケント紙をカットしてブラインドをつくっているところ、
 これを束ねて真鍮線でつくったレールに取り付ける。
14 天井版にはケント紙をつかって、折り畳み式の
 ルーフを追加します。

 細かなところではトレーラー自体を全体を少し低くして、手すりや雨除けを追加しています。このほかスケール感のなかったテーブルやスタンドは手作りして交換します。
このあたりは、自分がもしここに居住するんだったらっていう想像力を発揮して、作り変えてゆきます。





、次はいよいよ主人公の登場です。今回、買い置きしてあったもののなかから選んだのは、ガールズ イン アクション シリーズの一つで、Rita というフィギュアです。

15 全体にサーフェーサーを吹き付けたあと、Mr.カラー
 のNo.111 キャラクターフレッシュを肌部分に塗る。
16 そのあと少しずつ調子を整えてゆくのですが、使用
 するのは人間用のチークやシャドウです。
17 ときおりこうやってルーペで確認したり、写真を撮
 ってシミュレーションしたりするのも大切です。

18 最後にMr.カラーを使って細部を塗り分けてゆく。
 終わったらつや消しクリアーを吹き付けます。
19 ボディ部分の塗り分けです。ここもウエザリング
 マスターなどで調子を整えるのが良いです。

 肌の表現については、昔は全部手塗りしていたけど、今、メインで使用しているのは人間用のチークやシャドウです。今はこれで少しずつ色をのせては、
つや消しクリアーで定着させています。自分が思うに、これがいちばん失敗の少ない方法です。
 色を乗せる道具は100均などで売っているお化粧用のチップ、赤ちゃん用の細い綿棒、模型店で売っている先のとがった綿棒の3種類。とりあえず塗装で
変化をつけることのできる1/35より大きなフィギュアやドールだったら、全部これらの道具で仕上げることができます。
 薄い色から始めて徐々に色の濃いものに変えてゆくのは、一般的な塗装と同じです。上の図はベージュ系の薄い色から始めて、ブラウン、そして最後に
頬に赤みを加えたところです。
 たださすがにアイラインや唇は表現できないので、ここはMr.カラーで描いてゆく。こんなルーペで確認をしながら描きますが、大きさが7mmぐらいしかない
顔の上に描くのは、やっぱり簡単じゃないです。
 ポイントは調子のよい筆を選ぶこと、塗りやすい濃度に塗料を薄めること、描く手の手首をきちんと固定すること、あとは練習あるのみ。
 顔が終わったら、次は着衣をピンク系のブラウンで一様に着色しました。立体感を出すために更に色を乗せてゆくのですが、最近はここもこういったパレットを
使っています。
 ここで使っているのはタミヤのウエザリングマスター、このほか市販されているパステルをカッターで削ったものも使うことができます。



  ここまで終わったらヘアーやボタン、アクセサリーなど、つやのある部分をMr.カラーで塗って完成です。
  いつもだと、髪の表現は意地でも細めのドールヘアーに改めるんだけど、今回はこのフィギュアの持つ元々の表現にはかなわないと思ったのでやめました。
  このフィギュアをソファーにのせてみると、思った以上にいい感じでまとまってる。
  ちょっと嬉しい。





 さてあとはフィギュアを乗せて完成としたかったのですが、まだまだ足りない感じがする。
 というのも、たとえばこのようなキャンピングカーに自分が乗ったとして、快適ですか? と聞かれたらどうだろうというわけです。やっぱりエアコンは欲しいし、
テレビぐらいはあった方が良い。この車であちこち全国を回るなら、もっともっといろんなものを取り付けたいところです。

  20 ジャンクパーツやプラ板プラ棒などから、いろいろな快適装備を追加します。
   

 左下の薄型液晶テレビは、白と透明なプラ板、写真、こんなものを組み合わせてささっとつくる。
 サーフボードとオーディオセットはサンバーのキットの予備パーツから。あとボートがあってパドルがないのは不自然だから自作。左下はコンパクトな窓用エアコンで、
これもジャンクパーツの組み合わせです。



 ジャンクパーツは実は宝の山です。これ間違いない事実。


  21 生活感のあるパーツを追加します。
  

 あちこち巡って入れば、それなりの生活感もでてくるはず。だからここは、「意味を持つ」小物アイテムを追加してゆきます。
 箱、袋、クーラーボックス、無指向性アンテナと配電設備といったものをつくってみました。こういうものを追加することで、長期間、一人旅を続けているって感じが
出るのではないかと考えたわけです。


  22 お仕事関係のパーツを追加します。
  

 じゃあ、仕事はどうしてるの?
 それがしているんですね、PC、書類やフォルダなんかもつくってみた。PCはプラ板にキーボードの写真を張り付けた下部と、透明プラ板からつくったモニターを
組み合わせてつくりました。書類は雑誌の目次ページにある記事の縮小版を切り取ったものです。


  23 樹を1本つくります。
  

 あと追加したのはウッドランドの樹木、枝ぶりの良いものを選んで形を整え、プラ板のベースに取り付けてみた。ベース部分はタミヤのテクスチュアペイントで着色した後に、
鉄道模型のパウダーをまいて背の低い草を表現した。
 ジオラマって言っても車外の表現はこの樹だけです。
 いろいろ考えてはみたのですが、このワンボックス+トレーラーが置かれているシーンはどこでも良い。見る人が海岸と言えば海岸だし、高原でも、湖でも大丈夫。だったら
見る側の想像力を邪魔しない方が、むしろ良いのではないかと考えた。







 いろいろ紆余曲折があったもの、やっと新しい1/24スケールの作品が完成しました。
 このあと細部に手を入れ、ちゃんとしたライティングで撮影してみました。










 これが作品の全体像です。軽のワンボックスに軽規格のキャンピングトレーラーを牽引して、あちこち出かけるというイメージです。シーンとしては海でも
山でもいいわけで、そういう意味では見る側の想像力を制約しないように、あえて樹が1本だけという背景にしてみました。



 このトレーラーを牽引しているのはスバルサンバー、1980年代に製品化されたとても古いキットです。これをキャンピング仕様にしてオリジナルのカラーリング
でまとめてみた。ウインドウの透明度が今一なため、よく見えなくなっちゃったけど、中はフルフラットのベッドルームになっています。
 スバルサンバー自体はもう製造されていないけど(ダイハツのOEMに置き換わった)、スーパーチャージャー&軽初の四輪駆動という、とがった仕様で、自分は
往年の名車だと思っています。




 キャンピングトレーラーのベースになっているのは、Afternoon Tea Time という小さなドールハウスキットで、これに1/24のプラモ(today)のシャーシーを組み
込んでいます。
 キット自体はそのまま組んでもちゃんと見られる良心的な製品です。


 

 主人公はガールズ イン アクション シリーズの一つで、Rita というフィギュア、買い置きしてあったもののなかから選びました。1/24という小スケールなので、
身長は7cmぐらい。




 この作品のポイントは、この女性が単に遊びまわっているだけじゃなく、ちゃんと働いているってことです。
 仕事の内容にもよりますが、この状況下、テレワークという勤務形態が最早特別なものではなりました。そしてその場合、働く場所としては、ネット環境自体が
整っていれば良いわけで、十分にこういう生活パターンもあり得るだろうと考えたわけです。

 自分は旅行がけっこう好きなのですが、感染リスクを考えたら、国がたとえ go to やっていても今は出かけない方が良いと思っている。
 それで9月ごろ、小さなドールハウスキットを眺めながらあることに気づいた。だったら家自体が移動可能で、人のほとんどいない田舎や、自然あふれる場所を
巡るというのであれば、旅行も可能なのではないかと。
 実際、度重なる災害も起きるなか、キャンピングカーはものすごく売れているみたいだし、ソロキャンプも流行っている。
 もし本当にこういうキャンピングカーの組み合わせがあったなら、自分はきっと欲しくなると思う。ある意味、理想とする生活の形だから。




 高原の画像と合成してみました。これだったら快適にお仕事できる、ストレスもたまらない。
 でも実際にはお昼寝の時間が増えちゃうかもしれない、そういう心配は確かにある。
 で作品名は、Afternoon Tea Time 改め テレワーク ということで。





2020.12
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Canon Powershot G7X / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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