ドール&フィギュアの撮影


GIMPのフィルターを使いこなす



2021.01.31


 これまではお人形をきれいに写す方法について説明をすすめてきましたが、ここからはアプリのフィルター機能をつかって、
より積極的に画像加工をすすめてゆく方法について考えてみたいと思います。
 なお画像加工については、これまで同様にGIMPというフリーの画像処理ソフトを使って行います。



A 超新星



 こちらが元画像で、手持ちの1/6オリジナルドールを里芋畑の前で写しました。曇りの日だったので、画像としてはちょっと地味な感じです。
 まずはこれまでの基本的な流れで、お人形部分を選択します。

  ツール>選択ツール>自由選択  及び  ファジー選択 2つの選択方法を駆使して、境界ぴったりに切り取ります。
  選択>境界をぼかす(縁をぼかす量は300pixぐらい)
  色>トーンカーブ  これでお人形部分を適正な明るさに調整します。
  選択>領域の反転
  色>トーンカーブ  これで背景を少し暗くしました。

 この操作はこれまでと同様ですが、基本的にはお人形の画像と背景を別々に分けて、明るさや彩度を調整します。
(基本的な操作なので、これ以降は加工の手順から外して説明します)




 このあと、フィルター>照明と投影>超新星へと操作をすすめます。選択範囲は背景のみです。




 このフィルターは星のような輝きを与えるもので、背景の水滴のうちの4つを輝かせてみました。普通の画像がこれでちょっとだけ
ドラマティックになった感じです。



B Bloom



 電車が通りかかるのを待って撮影しました。でもなんか、お人形も電車も目立たない・・・。




 基本的な補正の後、フィルター>照明と投影>Bloomへと操作をすすめます。選択範囲は背景のみです。




 このフィルターによって、いわゆるソフトフォーカスと呼ばれる効果が出ます。これで人形が背景の中から浮かび上がる。
その後先ほどの超新星で電車のヘッドライトを輝かせると、靄がかかった中を電車が走ってくるような感じになります。



C レンズフレア



 薄曇りの日に撮影しました。色は悪くないのだけど、もう少しまばゆい感じがあっても良いかな?




 基本的な補正の後、フィルター>照明と投影>レンズフレアへと操作をすすめます。選択範囲は全体です。




 このフィルターは強い光線がカメラレンズ内で乱反射したような効果を出すもので、これで雲の隙間から太陽がちらりと顔を出した
瞬間のような画像になった。



D ライト効果



 ファッション系の雑誌の上に人形を置いただけ。別にどうってことのない写真です。




 基本的な補正の後、フィルター>照明と投影>ライト効果へと操作をすすめます。




 このフィルターはスポットライトに当たっているような効果を与えるもので、今回は2回の操作を加えています。最後に全体の明度を
調整して仕上げました。二人が手をつないでいる理由を詮索したくなるような感じに仕上がりました。





 積極的な画像加工って、こうやったらうまく行くって方程式などないです。ただ1枚の画像をもっと印象深いものにしたい、そのためには
どうしたらよいのか、まずはイメージを膨らませることが必要です。そしてそれを具体化するためには、やはり試行錯誤しかないかな。
 上の画像は落ち葉の色を濃くしただけなんだけど、それだけで印象的な画像になった。



 ここから先は微修正というより、やや派手目でよりドラマティックな画像をつくりあげようと思います。



 これが元になる画像です。厚木のマッカーサーギャレッジという有名なジャズバーの前で撮影したものです。なかには本当にマッカーサーの
乗ったキャデラックが置いてある。
 まずはこの元になる画像から、人形部分だけを選択する基本的操作についてのおさらいです。

  ツール>選択ツール>自由選択
ダイナミックな変化をつけるときには、これまでと違って少し小さめに選択するのがコツです。
  選択>境界をぼかす(縁をぼかす量は300pixぐらい)
ここまでが基本操作となります。


E ポスタリゼーション



  選択>領域の反転
  色>ポスタリゼーション(今回のポスタリゼーションのレベルは9)

 これが昔からあるポスタリゼーションという手法、色数が減ることでポスターというか、版画のような感じの非現実的な背景になる。ポスタリゼーションの
レベルとは色数のことで、数値を減らすほど効果は大きくなります。


F 漫画



 基本操作までは同じ、その後
  選択>領域の反転
  フィルター>芸術的効果>漫画(今回は半径7.0、黒マスク0.20)

 こちらはポスタリゼーションより現実的な仕上がりになる。但し黒く輪郭が強調され、彩度が高まるので、通常画像よりかなり印象的な仕上がりになります。
自分もたまに使う。



G ビビットライト



 派手な演出ということでは、フィルターを用いるほかにレイヤーの合成方法を変化させることでも可能です。上の画像は川にかかる水道橋です。まずは、
  レイヤー>レイヤーの複製
 これでレイヤーのダイアログに2枚の画像があらわれる。




 次にその上に出ているモードボタンを押して、標準からビビッドライトに変更すれば、いきなりこんなドラマティックな画像に変化します。
 これは効果てきめんなんだけど、ここにお人形を置いても人形がかすんでしまうので、こういう橋とか工場とか廃墟とか、何かインパクトのある構造物を
見せるときなんかに良いです。



H ソフトライト



 人形写真にも使いやすいのが、ソフトライトという合成のモードです。ちょっとめんどくさいのだけど、より自然に印象深い画像に仕上がります。まずは、
   レイヤー>レイヤーの複製 そして上のレイヤーをクリックして、基本操作に従い人形部分を選択します。
   レイヤー>透明部分>アルファチャンネルの追加
   編集>消去

ここまでやっても、見た目まだ画像には何の変化もありません。




 次にレイヤーダイアログのモードボタンを押して、標準からソフトライト変更、透明度を50%にするとこんな画像ができる。 クリスマスの雰囲気が強調され、
しかも自然な感じです。





 写真ていうけど、実は真実を写すものでも何でもない。ほとんどの場合そこには何らかの演出がある。
 特にお人形などは架空の世界を演出するのだから、むしろ積極的に手を加えて、自分のイメージするものに近づけて良いと思う。上の画像はフィルターの<漫画>
それから<ビビッドライト>、<彩度の調整>などの効果を加えてつくってみました。もはや元画像とは全然違う作品になっています。



 GIMPには一発で絵画的な効果が得られるフィルターが用意されているので、今度はこれを使ってみます。



 これが元になる画像です。背景は相模川を渡る小田急線。モデルドールは nano ちゃんです。


I Cartoon



 これは背景部分にCartoonという効果をつけたものです。黒い輪郭が加わって少し漫画のような、あるいはポスターのような感じになって
電車と橋梁が強調されます。
 やり方としては、
  ますは自由選択でドールのやや内側のラインを範囲指定します。
  選択>選択範囲の反転
  選択>境界をぼかす(300pic程度)
 ここまでは範囲選択の基本操作で、以降のエフェクトにも共通です。

  フィルター>芸術的効果>Cartoon(マスク半径7.00, 黒の割合0.200)
 その効果はCartoonの数値を変化させることで調整できます。


J 水彩



 水彩画のように輪郭がぼかされ、彩度が上昇します。平面的な背景になって主人公のドールが生きる。
 やり方としては、まずは前作と同様の範囲選択の基本操作を行います。
  フィルター>芸術的効果>水彩(Supaerpixels size 32, Gradient smoothness 1.00, Spatial reguiarizetion 0.00)


 ここから先はこれまでの効果を何種類か使って、ちょっと目を引くような画像をつくります。



 こちらが元の画像、厚木の街で撮影しました。


K 水彩+明度、彩度



 まずは1〜3の範囲選択の基本操作を行います。
  フィルター>芸術的効果>水彩(Supaerpixels size 32, Gradient smoothness 1.00, Spatial reguiarizetion 0.00)
  色>トーンカーブ(白く飛んでしまわない程度にグラフを上に引き上げる)
  色>彩度(バーを右側にスライドさせる)

こちらの方が、単純な水彩効果よりも、より鮮やかで明るい画像になります。


L プラズマ+モード「比較(明)」



 ほんの5分ぐらいでこういうアーティスティックな画像もできちゃう。まずは範囲選択の基本操作を行います。
   レイヤー>レイヤーの複製
  するとモードと書かれた枠内の小さな画像が2枚になる。

   フィルター>下塗り>ノイズ>プラズマ(Turbulence 1.00, Rundom seed 0)
   モードを「標準」から「比較(明)」に切り替える。

 もし思った通りの効果が出なければ、プラズマのレイヤーの明度や彩度などを調整すると良いと思います。
 こんな感じで、フリーのアプリでもいろんな画像が簡単にできてしまいます。そして効果の与え方、組み合わせ方は無限といっても良いぐらい、
可能性も無限。
 一方で問題はなのは、これだけ組み合わせがあると、システムを熟知するのに時間がかかるってことでしょう。自分も多分このアプリでできることの
半分も理解していないと思います。









 上の画像は<モードの切り替え>と<色温度>の調整だけで変化を与えています。簡単にこんなことまでできちゃう。GIMPとはPC用のフリーの
アプリケーションですが、普通に使っている分にはフォトショップあたりと比べても、そんなに見劣りすることがない、とてもありがたいソフトウエアです。

 さて個展に向けての制作を進めていたら、今年は新たに展示する写真が少なくなりそうなことに気づいた。そりゃそうだ、新型コロナでどこにも旅行に
行ってないのだから。
 だから過去の写真を活用して積極的に画像合成などして補ってゆくしかないかな?



2021.01
camera: Canon PowerShot G7X、 Panasonic GX8 ほか/ graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

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