ayumi の再リメイク

                      ヘッドの調整とメイク



<リメイクは何度でも>

 個展が終わって2週間が過ぎ、現在は作品の整理をしながら次の作品をつくっている。マリリンモンローのフィギュアを再発見してリメイクしたのに引き続き、
次のターゲットに選んだのはこちらです。

 

 こちらは2005年に最初につくった ayumi という粘土でできたオリジナルの球体関節人形で、一昨年リメイクを完了したものです。(52cm 主材料はラドール)
 できあがったときには思わずいいねしたけど、少ししてちょっとだけ違和感を感じるようになった。正面はOKなんだけど、たとえば髪をどけて横を向かせると、
何かおかしい。
 なぜなのかな? しばらく観察していて、そのうちヘッドそのものの形状が良くないことに気づいた。首の関節がやや後ろあることと、ヘッドの側面のふくらみが
大きすぎる。だから正面は良いのだけど、髪をどけて横を向かせるとものすごく変。
 本当は昨年の個展のときに持ってゆく予定でしたが、このことに気付いて公開するのはやめにしました。でもなぜこんなに分かりやすいミスに気づかなかった
んだろ? やっぱり観察不足って言うのがやっぱり第1の原因だろうと思う。個展を目の前にして作業を急いでしまったのかもしれません。
 そして1年が過ぎて、再度の修正に入ります。


1 問題の個所を削り、新たに造形し直します。

  

 具体的には 断面をきれいな卵型に成型し直し、首とのジョイント部分も前の方に1cm近く移動する。(上の図)
 そしてあとは以前より彫の深い顔立ちに仕上げることにした。耳も一旦削り落としてつくりなおします。



2 ひととおり粘土の盛りと磨きの作業が終わったところで、下地塗料を全体に塗ってゆきます。この下地塗料というのはモデリングペーストにリキテックスの
 アンブリーチドチタニウムとライトポートレートピンクを混ぜて肌色に調整したものです。分量比は目分量で 96:3:1 ぐらいかな?
 ちょうどMr.カラーのキャラクターフレッシュ No. 111 と同じ色調に整えています。こうすると後でちょっと補修するときにも困らないで済みます。
 これを塗ることで、粘土が出てきてしまった部分、従来の塗装面の残ったところ、その区別なく粘土を盛ったり塗装したりすることができるようになる。この下地
塗料は削りや磨きを入れることもできて、自分にとっては魔法の塗料のようなものです。
 なお何度か盛りと磨きを繰り返して、次第に平坦になっていったら、モデリングペーストに代えてジェッソの配分を少しずる増やしてゆくと作業がやりやすくなります。

3 以降は前回のリメイクと同様、盛りと削りの作業を繰り返し、着色し、高耐久スプレーと2液混合タイプのウレタンクリアーでコーティングを行います。



 ウレタンクリアーを吹き付けるとこれ以上ない光沢、しかも車の塗装に使われるほどだから耐久性も高いです。ラッカーにも強いのでこの後のメイクを失敗しても、
短時間なら問題なく薄め液でふき取れる。
 ただ一般的ではない。なぜドールやフィギュアのコーティング剤としてひろまらないのか、それは高価で扱いにくいというとこに尽きるでしょう。
 特に硬化剤は高温多湿のところに放っておくと1ヶ月もしないうちに使えなくなし、化学変化で硬化するので、のんびりと作業することもできない。エアブラシのこまめな
お手入れは必須です。
 一般的にはこの工程はカットし、高耐久ラッカーを吹き付けたあと、仕上げにUVカットのつや消しクリアーを吹き付けてつやを整えれば十分だと思います。
ここは完璧を求めるなら、こういう方法もあるんだよ、そういう意味でご紹介しているとお考え下さい。

 

 ウレタンクリアーを手塗りするという選択肢はほぼないので、エアブラシを使うことになりますが、比較的粘性が高いのでコンプレッサーの圧力は3kg/cm^2ぐらいはほしい。
今回、20年近く使ってきたコンプレサーのパワーが落ちて使えなくなってしまった。どうしても2.5kg/cm^2以上に圧力が上がらないので、補助タンク付きのものを新たに購入しました。
1万円を超える出費は痛い。


4 眉毛や唇などを軽く描き、アイやウイッグを取り付けて様子を見ます。



 眉毛など必要最低限の筆を入れたところです。もちろんこれは全体のバランスを見るためのもので、この段階ではぜんぜん可愛くない。


 

 自分の場合にはここでPCによるシミュレーションという段階を間に入れて、実際の作業に結びつけるようにしています。
 画像をPCに取り込み、GIMPというフリーのアプリケーションを起動して画像加工を行います。
 左側は元画像、右側はPC上で眉毛と唇、アイラインを書き入れ、チークやシャドウで赤みや陰影を強調して完成させたものです。
 今回は3つの塗装パターンを試し、20枚以上の画像合成を行いましたが、そのうち最終結果として選んだ1枚がこれです。面倒かもしれませんが、塗装をやり直すよりは
こちらの方が全然楽。


 

5 この画像をもとにして、実際のヘッドを完成させます。Mr.カラーで眉毛と唇、アイラインを描き、人間用のチークとシャドウでメイクを加える。
 この後、いったんウイッグとアイを取り外し、艶消しクリアーを全体に吹き付けてメイクを固定します。
 乾燥したら再びアイとウイッグ、更には睫毛を取り付けて再び写真に撮る。 撮影して画像として見ると、より客観的に判断できるようになるのはありがたいです。




6 ここで再度のシミュレーションを行います。今度は眉毛の形を変えることにしました。
 具体的な作業方法ですが、消したいときには「コピーツール」、描きたいときには「範囲指定」と「トーンカーブ」を使って行います。これが一番簡単で違和感のない方法です。
  上の画像では目尻側の眉毛を太くしようとして、自由選択による範囲指定を行い、境界を10picほどぼかし、トーンカーブを3原色それぞれで操作して、こげ茶色に染めています。



 そして再度この画像をもとに作品を調整してゆく。




 今回リメイクが完了したヘッドがこちらです。シミュレーションしたのでイメージと違うなんてことはない。
シミュレーションの方法が分かるとかなり実験的なメイクなんかもテストしたりすることができるし、市販のドールのリメイクを失敗なく行うこともできるので、
かなり有効な手段だと思います。
  但しここには若干の問題があって、画面上ではmm単位で修正ができるのですが、(1mm顔のパーツがずれただけでがらっと印象は変わる)
 いざ実際にそれを作品に表現しようとすると、1/3スケールなら0.3mm、1/6なら0.2mmのレベルで筆を扱えなきゃいけない。モニター上では等身大に拡大して
作業もできますが、実際のドールは小さいからね。



 最終的にちゃんとした撮影ブースで、衣装を着せて撮影テストを行います。





ayumi
仕様:身長52cm(1/3スケール)テンションゴムを用いたオリジナル球体関節人形(2005年制作、2020年及び2021年にリメイク)
素材:ラドール、モデリングペーストによる表面仕上げ グラスアイは組み込み、ドールヘアはウイッグ リキテックスとMr.カラーによる着色 つや消しウレタンクリアー
及びMr.カラーのつや消しクリアーのコーティング










角度を変えて何枚か撮影したけど、どの角度についても破綻はないです。 OK!
これで本当の完成です。 5月の個展以来、最初の完成作品となりました。




 近くこの娘を連れてどこかで撮影してくるつもりです。
 最初にも書いたけど、こちらは18年前に自分が最初につくり始めた球体関節人形で、いろいろなものを参考にしながら、結局1年半近くかかって粘土を人の形に整えたものです。
但し自分の技術的にも未熟だったこともあって、その後もいろいろ手を加え続け、長い年月を経てやっとこの段階までこぎつけたという感じです。
  粘土は同じものを作るという意味ではレジンやビスクには到底及びませんが、こうやって何度でもリメイクできるって言うのは大きなメリットです。もしかしたら粘土の人形に完成は
ないのかもしれない。 まあ、自分も成長したけど、お人形も同時に成長を続けてきたということでしょうか。



2021.06
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 & Panasonic LUMIX GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm  / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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