カメラの選び方3

●ドールやミニチュアを撮影するのに相応しいカメラ





2022.01.25



<カメラが壊れた>

 新しく買った Canon の G9X Mk.2 というカメラにも少し慣れてきたので、どうしてこのカメラを選んだのかとか、ドールやミニチュアの撮影に
向いているカメラとはどういうものなのか、自分の思うところをお話ししたいと思います。



 自分が日常的に使うカメラは3種類あって、じっくり撮影するためのレンズ交換式カメラ(Panasonic GX8)、お散歩カメラ(Canon G9X Mk.2)、メモ用カメラ
(Casio、Panasonic、スマホ)などです。このうち今一番出番が多いのはお散歩カメラのG9Xというわけです。(画像手前、中古25000円)
 ちなみに奥に写っているのはそれまで使っていたG7Xというカメラで、落っことして起動しなくなってしまった。2世代前のもので、しかも修理代がおそらくは
2万円以上かかると予想されたので、迷うことなく買い替えた。



<カメラ選びのポイント>
 さてここからが本題、なぜこのこのG9X Mk.2 を選んだのか、どういうカメラが自分の理想なのかをお話ししたいと思います。

1 画素数
 少し前までは高画質の目安だった画素数ですが、これは今、ほとんどのカメラが必要最低限の画素数は確保しています。
 だいたいこのブログで使っている画像はたったの24万画素、自分のHPの大きな画像でも300万画素、きれいにA4プリントしたいときに必要なのは600万画素、
トリミングしても1000万画素あれば十分で、これは格安のスマホ以外はクリアーしているという状況です。プロの使うカメラでも1000万画素のものが現役なので、
この点で問題になるカメラはないと思ってよいです。
 むしろ3000万画素以上の高級機種を買ってしまうと、画像処理にも手間取るし、宝の持ち腐れという状況になる。
 ちなみにG9X Mk.2は2000万画素です。不満は全くない。




2 ズーム倍率
 あとよく出てくるのがズーム倍率です。単焦点という高級機もありますが、多くは3倍から20倍ぐらいの撮影倍率を持っています。ズーム倍率3倍のものは
焦点距離28mmから84mm(35mm換算)のものが多く、これで日常的な撮影には十分です。余裕をもって24mmから100mmという4.2倍ズームであればなおよい
という感じかな。
 それ以上倍率が高くなるとカメラ自体が大型化するのがデメリットです。20倍以上の超望遠撮影ができるものもあるけど、何十mも離れたところにお人形を
置いて超望遠撮影する人はまずいないと思う。
 ちなみにG9X Mk.2は3倍ズームですが撮影していて困ることはない。ただ広角側が28mmでなく24mmだったら良かったのにと思うことがたまにある。もしかしたら
以前使っていたG7Xは4.2倍ズームで広角側が24mmだったので、そう思うのかもしれませんが。
 ただズームを3倍に抑えていることからボディがかなり小さく、206gしかないのはありがたい。
(パックのジュース1つ分)手首にぶら下げていても何の負担にもならない。
 購入候補として考えたとき、同じような性能のものにはCanonのG7X mk.3、ソニーRX100、パナソニックTX2などもありますが、そのなかではいちばん小さく軽い
です。そして探し始めたら、すぐに良さそうな中古品を見つけて購入となったわけです。




3 最短撮影距離
 ドールやミニチュアを撮影するときに一番大切な要素は「寄れる」ということです。対象物が小さいから、どうしても近寄って撮影することが多くなります。
 ところがこの最短撮影距離はズーム位置によって変化するのが一般的です。実際にG9X Mk.2を使って1/6のアクションフィギュアを撮影してみました。



 これは撮影倍率が最大になるズーム域28mmの広角側、距離5cmで撮影しました。
 28mmというのは風景写真やスナップでよく使われる焦点距離で、風景の中にドールを置いて撮影するのに向いています。
 一方で、こういう感じに顔をアップして撮影することはあまりやりません、ご覧のように歪み(顔が樽型に膨らんで見える)が出てしまうので。




 これは焦点距離50mm、撮影距離20cmの条件で撮影しました。
 28mmに比べると歪みがなくなって自然な感じに見えます。この50mmというのは人間の目と似た焦点距離で、いちばん見た目に近い自然な感じの画像が
得られると言われています。




 これは一番望遠側にシフトして84mm、距離35cmで撮影しました。
 80mmから90mmぐらいまでの焦点距離は、歪みがほとんど見られず、顔かたちが最も美しく映ると言われています。昔からポートレートではこの焦点距離
を選んで撮影するのが良いと言われていました。
 よく撮影の最短距離が近いことを売りにしているカメラがあるけど、それが広角側だけではダメで、実際には50mmから90mmぐらいまでの間でどれだけ
寄れるかが問題になってきます。
 G9X Mk.2は焦点距離50mmで20cmまで寄れる(1/6スケールなら胸から上の範囲が写る)、84mmでは50cm(腰から上)なので、まあ合格かな。トリミング
すればアップでも使えます。




 ミニチュアを撮影するとなると最短撮影距離が得られる広角側を使うことが多くなります。但し寄ることで全体にピントが合いづらくなるので、まずはモードを
「絞り優先」にしてできるだけ大きく絞る(作例は最大値のF11)。そのうえでピントを合わせたい範囲がボケない距離にカメラを移動させてシャッターを切る。
あとはトリミングしていらないところを切り取ります。
 大きく写したいときには望遠側にズームしたくなるけど、むしろ結果は逆になるので、必ずズームは広角側に、そのうえでピントの合っていないところはトリミング
処理というのがポイントです。



 もう一つ大切なのは照明です。絞り優先モードでF22までに絞ったりすると、全体がかなり暗くなる。おそらくは部屋の明かりだけでは足らなくなるので、スタンド等
で十分に明るくしてください。

 こういう話をしていると、必ずスマホのカメラじゃダメなのって話になってきます。結論から言うと高画質を売りにしているものなら使えます。但し残念ですが、
それでもセンサーサイズが小さいこととレンズ性能が専用機に比べてしまうと、若干劣ることについては間違いない。(最近は1型センサー搭載のものもあるが)
 将来的には遜色ない性能になってゆくことが期待されますが、現時点ではやっぱり10万円を超えるようなスマホを、カメラ兼用で買うつもりはないです。
 高いので壊れたら悲しすぎるし、10年もつわけじゃない。所詮、カメラもスマホも消耗品だと私は思っています。




 今回モデルになっているのはTBLeagueS22とKT005の組み合わせです。KT005は今見ても名作ヘッドだね。
 このときの撮影条件は G9X Mk.2でズームの焦点距離は28mm、絞り優先のF11に設定しています。およそ20cmから80cmぐらいの範囲でピントが合っていると
思います。




4 センサーサイズ
 今自分が思うに、カメラの性能や特徴を決定する最も大きな要素がセンサーで、特にそのサイズが問題になってくる。たとえば今回購入したG9X Mk.2は1型の
センサーですが、これは一般的なコンデジ(1/2.3型)の5倍以上の面積を持っています。これは同じ画素数であるならば、1画素あたりに得られる光の量が5倍以上
違うということで、暗い場面での撮影に圧倒的に有利になります。



A) Panasonic DMC TZ-10 (1/2.3型 1200万画素)
 わざと部屋の照明を消し、窓のブラインドを下げて、ごく少量の光が差し込むだけの条件で撮影しました。
 撮影したカメラは数年前の古い機種で、センサーサイズはコンデジ標準の1/2.3型です。画像を見ればお分かりいただけるように、カメラのシャッタースピードは
1秒にもなって手振れを起こしている。この暗い状況では、このカメラで撮影するのは少し難しいことが分かります。

 

B) CASIO EX-ZR4100 (1/1.7型 1200万画素)
 CASIO最後のデジタルカメラZR4100です。Panasonic に比べるとセンサーの面積は2倍になってそれなりにちゃんと写っている。但しホワイトバランスが崩れて
少し赤くなっているのが惜しい。ホワイトバランス オートの精度がやや低いところがこのカメラの弱点のように思う。

 

C) Canon G9X Mk.2 (1型 2000万画素)
 CASIOに比べてセンサーの面積は2倍以上あり、ホワイトバランスも崩れていない。

 さて、別な視点でこれらの画像を見てみます。
 BとCについては左目の部分を拡大したものです。センサーサイズがすべてとは言いませんが、ご覧のようにセンサーサイズに勝るCanonの方がきっちりと
描写され、粒子の荒れも目立たない。
 雰囲気の良い場所が暗かったということはよくあるので、センサーは大きい方が良いです。
(ちなみにこういうときに付属のストロボを使ってもあまり良い写真は撮れません)

 更に最初の画像に戻って確認していただきたいのは背景の方です。
 センサーサイズが大きくなるにつれ、背景のスピーカーや白いフレームがボケてゆくのがお分かりいただけると思います。
 このような画像では背景まできっちり写ってしまうと、何か全体がガチャガチャした感じになってしまうので、できるだけボケていた方が良いです。そういう意味でも
センサーサイズは大きい方が良いと言えます。
 センサーサーズの目安ですが、やはり1型もしくはM4/3と呼ばれるものより大きめが良いと思います。但し高価なフルサイズと呼ばれるようなカメラだと大きくて
重くてややオーバースペックになってしまうような気がします。



 

 さて、では昔のコンデジでは全くダメなのかというとそうでもない。左側の画像は12年前に発売されていた Panasonic の TZ-10 ですが、ちゃんと写っていて、
右側のCanon G9X Mk.2 にそれほど劣っていません。前の比較写真では手振れしてボロボロでしたが、ちゃんと明るいところならまだまだ使えます。
 一昔前なら、2〜3年過ぎると全然性能が違っていたけど、今は昔ほどの違いはないです。だから毎年のように買い替える必要は全くないです。




5 絞り優先
 それではセンサーが大きいもので、コンデジのように広い範囲にピントを合わせることはできるのか?
 結論的に言えば、ちゃんとカメラの機能を使いこなすことができるのであれば可能です。(限界はある)
 カメラには様々な撮影モードがありますが、静止しているものを撮影するので「絞り優先」で撮影するのが良いでしょう。絞り開放(F1.8〜2.8程度)にしてあげれば
背景はボケ、絞り切る(F11〜22程度)と背景まできちんと写ります。

 

 Canon G9X Mk.2で撮影しました。
 左側はロウバイの蕾にピントを合わせて絞りはF2.8、背景はボケてロウバイだけが浮き上がるようにしてみました。。
 右側は同じ場所でF11に絞って人形にピントを合わせた。絞り切ったことで手前のロウバイまでピントが合っている。そして背景に観音堂は少しボケながらも
写っていて、ここがどこかのお寺であることが分かるといった具合です。
 ようするに絞りをどこまで入れるかで、表現できる内容が変わってくる。思う通りの画像を得たいのであれば絞りの調節は絶対必要です。高画質をうたうもので
あっても、たまにこのF値の幅が狭かったり、2〜3点ぐらいしか選べないものがあるので要注意です。
 ただ先ほどの1型センサーやM4/3センサーのものは、そのすべてで絞り優先モードが選べ、絞りも広範囲に変えることのできるものばかりなので、何を買っても
失敗ということはまずないと思います。 (もちろんちょっとお高い)




6 RAW
 あまり使ったことがないという人も多いとは思いますが、多くのカメラは記録形式や記録画素数、画質などを選択できるようになっています。そのなかでぜひ使って
ほしいのがRAWという記録形式です。
 多くの場合、jpg 高画質で記録する人が多いと思いますが、RAWで撮影すると撮影後にいろいろ調整ができて便利です。

 

 上の画像はG9X Mk.2で撮影したものですが、人形は日陰、背景は明るい日なたになっていて、ごく普通に撮影してしまうと、左側のように背景が明るくなりすぎ、
雲などは白くなってディテールがなくなってしまいます。ところがRAWという形式で撮影して「現像」というひと手間をかけると、右側のようにちゃんと見ることのできる
画像になる。(限界はありますが)
 基本自分はドールやフィギュアの画像はRAWで記録しています。
 手間はかかりますが、思い通りの画像を得るという意味で、RAWで撮影できるカメラを使い続けたいと思います。




7 可動モニター
 少し高級なカメラになるとモニターが可動式のものが増えてきます。可動式モニターのメリットは低い位置での撮影が簡単にできるということです。
(地面に人形を置いたとき、寝そべって撮影するなどということがなくなる。)
 現行、Bluetoothでスマホと連携すれば、スマホ側から操作することもできるのですが、画像の転送速度が遅いので自分は使っていません。



 自分が通常使用しているカメラです。
 上からPanasonic GX8、こちらは3軸のフリーアングルで、どの位置からでもモニターが確認できる。現在のメインカメラでじっくり撮影するときにはこれを使います。
 真ん中はCASIO ZR4100、こちらはチルト式モニター(上下のみに可動)なので、縦位置での利用には制限があります。いつもはメモ用カメラとして作業を記録する
ときに使っています。
 左はCanon のG9X Mk.2、モニターは固定で低いところを撮影するには苦労する。
 そしてあともう一台はこれを撮影している旧式のPanasonic TZ-10で、いつもはお料理の記録用になっています。

 すでにお分かりいただけたと思いますが、撮影場所を選ばないという意味では、3軸フリーアングルのモニターが圧倒的に便利です。
最初はずっとレンズ交換のできる3軸フリーアングルの機種だけを使っていた時期がありました。でもさっと取り出してストレスなく撮影する、できるだけ身軽で行動したい
というときには、圧倒的に小型軽量の方が楽です。
 だから最近は場面によって、手持ちの4台を使い分けるようにしています。




 では単純にすべての撮影を1台だけで済ませなさいと言われたらどうするか?
 上の画像は手持ちで人形を撮影しました。左手に人形、右手にカメラという感じです。こういうシチュエーションでの撮影が多分いちばん多いです。片手で
カメラを構えるといった時点で、まずは大型のカメラは候補から外れます。
 そしてこれまでの話からすればセンサーが1型以上の大きさ、広角側28mmからの3倍ズームが最低限、より幅広い絞り値が選べること、そしてできればフリー
アングルであることを条件に探すことになると思います。
(各メーカーとも該当する製品はある。すべてRAW形式の記録も可能)
 おそらくはどれを選んでも性能的には後悔がないと思います。あとは鳥などの写真も撮る人は高倍率ズームを選べばよいし、スポーツ写真も撮るというのなら
やや大型でもレンズ交換できるものを選んだ方が良いと思う。
 ただ機能がたくさんあればあったで、高価で大型になってゆくのは先に話をした通りです。



 最後に追加として自分の推薦機種をいくつか挙げます。赤い字は2022年1月時点でのAmazon価格です
  Panasonic DC-G100 (M4/3センサー フリーアングルモニター レンジ交換式 
8.5万円
      レンズ交換式としては最も小型軽量、持ち運びを意識してVlog動画撮影にも対応。但しレンズ交換式がゆえに、他より体積的には大きい。自分の次の
      メインカメラ候補です。
  Canon PowerSotot G1X Mk.3 (APS-Cセンサー フリーアングルモニター レンズ固定 
15.1万円
      コンパクトカメラとして始めてAPSーCセンサーを搭載、センサーそのもの画像エンジンにも定評がある。でも高い・・・、普通には kiss M2
9.2万円の方が
      良いかな。
  sony VLOGCAM ZV-1  (1型センサー フリーアングルモニター レンズ固定 
8.9万円
      Vlog用に新規開発されたものですが、静止画撮影もちゃんとできる。vlog系のものは片手で扱うことを前提としているので、ドール撮影には向いていると
      思う。

 各社を代表するフリーアングル搭載の小型機種というとこんなところかな。
 追加でこんなものもあるよという意味では

  Canon PowerSotot G9X Mk.2 (1型センサー モニター固定 レンズ固定 
6.8万円
      ともかく小さく邪魔にならない、自分も所有していますが、2台目としておすすめ。もちろん必要最小限の機能は備えていてちゃんと写る
  sony RX100シリーズ (1型センサー チルトまたはモニター固定 レンズ固定 
6.3〜13.4万円
      1型モニター搭載機首としては永らく定評がある。現在はMk.7まで商品展開しているが、Mk.2もまだカタログにのっている。安く買えるなら昔のものもおすすめ。

 さてここまでの話で、確かにカメラは欲しいと思っているけど、高いから手が出ないという人も多いと思います。1型センサーのものは5万円以上するのが普通です。
 でも今回購入したG9X Mk.2が、壊れてしまったG7Xからどれだけ画質が向上したかと聞かれたら、多分ぱっと見た瞬間に違いは分からないって答えると思います。
前にも書いたけど、ここしばらくは劇的な性能向上はないので、よほどシビアな条件でなければ差はつきにくいです。

 ようするに5〜6年前の1型センサー搭載カメラがたとえば中古で2万円ぐらいで売っていたら、もちろん中古ゆえのリスクはありますが、十分に検討する価値がある
ってことです。特に上の推薦機種でMk.2やMk.3とあるものは、当然その旧機種があるわけで、このあたりは狙い目です。うまくゆくと本当に2万円ぐらいから買えたりする。
 ちなみに自分が通常使っている4台のカメラのうち、3台が中古品、1台は鉄道模型フォトコンテスト最優秀賞の賞品で、真っ当に買ったものは1つもありません。





 最後はG9X Mk.2 のインプレッションです。
 このカメラを使い始めていろいろなことが分かった。206gしかないので手にぶら下げて歩いても、何のストレスも感じない重さでありがたいのですが、その分、ボタン類が
ものすごく少なくなっていて、ほとんどの機能は液晶画面上で操作することになる。スマホの操作と似たようなものなので、冬場は指だし手袋が必要です。
(もちろん100均ですぐ買った)




 撮影された画像は壊れてしまった旧機種G7Xに似ているが、少しコントラストが高くてカリカリした感じがある。だからG7Xのときは輪郭を強調するような補正をしていたけど
全く不要。一方で人形の顔が白トビしやすい感じがあるので、通常撮影では2/3EVほどわざと暗めにして撮影しています。(上の画像)




 とりあえず中古とは言え、Amazon 価格の1/3ぐらいで G9Xが買えちゃったのは有難い。多少難ありの部分に後で気づいたけど、それは覚悟の上ということで。
 それにしても、カメラって高いなあって今回は思った。でもせっかくの作品なんだから、ちゃんと記録に残しておきたいって気持ちはあるわけで、こればっかりは
必要経費として考えなきゃいけないと思う。



2022.01
camera: Canon PowerShot G9X Mk.2 その他/ graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

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