箱根湯本から小田原


北条氏ゆかりの地、そして「生命の星 地球博物館」



2022.08.28
 さて、今年の夏もそろそろ終わりに近づいてきた感じです。  実は個展が終わったあとの8月後半には休みを貯めてとっておいて、当初は旅行に出かける
つもりでした。希望としてはまだ訪れたことのない宮崎と鹿児島の2県だったのですが、この状況ではとてもとても出かけるつもりにはなりませんでした。
 ということで、たいしたこともできずに8月の終わりになってしまったのですが、ここはちょっとだけ観光に行ってやろうということで、箱根湯本から小田原あたりを
巡ってみることにしました。



8.28 MON 天気:くもり時々晴れ
9:10
 実施したのは昨日8月29日の月曜日です。最高気温が28℃と予想されていたので、もうお散歩するならここしかないという感じです。

 

 箱根湯本と言えば、箱根の温泉街の入口にあって、ここから箱根登山鉄道で強羅方面を目指す人も多いと思います。
 行った日は月曜だったけど、繁華街はそれなりに賑わっていました。コロナが特別なものではなくなりつつあるってことかな。




 こちらが箱根登山鉄道の「箱根湯本駅」付近を早川の下流から眺めた風景です。もしかしたらお正月の「箱根駅伝」でおなじみの景色かもしれません。
 右側は現在の国道1号線が通っていて、ランナーもここを走る。並行して箱根登山鉄道の路線も通っており、いわば現在のメインストリートです。
 一方、早川を挟んで反対側にはいくつかの旅館が立ち並んでおり、地域住民もこちら側に多く住んでいる。もともとはこちら側に旧東海道が通っていて
賑わったところです。



 

9:30
 今回は駅から山を一つ越えて旧東海道側に出てきました。まずやってきたのは早雲寺です。
 戦国大名 北条氏の菩提寺で、2代氏綱が1521年に建立したと伝えられる名刹です。箱根湯本の町はもともと早雲寺の門前町として発展したと伝えられています。
ここには北条五代の墓所があります。
 早雲寺は1590年の豊臣秀吉による小田原攻めで一度消失、その後1627年に再建されたという歴史を持ちます。
 小田原城は観光名所、秀吉の築城した「一夜城」も訪れる人は多いです。ですがこちらの墓所を訪れる人は少ないです。このときも我々以外には、檀家と思われる
方がお一人で花をもってやってこられただけでした。

 いろいろ思うところはあるのだけど、たとえばNHKの大河ドラマをはじめとして、様々な歴史ドラマがつくられてきたわけだけど、その存在の大きさの割には取り上げ
られることの少ない武将や大名家って多いと思う。
 この北条とか、今川、三好、陶等々、たびたび取り上げられる武将と比べて、その人気の差っていったい何なんだろう?
 北条氏についていえば、一代で大名になった北条早雲の「だまし討ち」的なやりかたとか、そもそも無関係であるはずなのに鎌倉時代の執権「北条」を名のったとか、
最後は最後で「一夜城」に驚いて屈服してしまったとか。いろんなところでケチがついているのかもしれません。

 

 でもまわりの樹々はけっこうすごい。
 背後の山々にある「早雲寺林」は県の天然記念物に指定されています。





 ここから先はできるだけ旧東海道と思われる道をたどって、小田原に向かうことにします。
 向かいにある白山神社です。738年の創建というから相当古いです。こちらもまわりの樹々が鬱蒼としていて何かが宿っているような感じです。
 江戸時代までは白山権現と呼ばれ、温泉の守護神として崇められていたそうです。



 

10:10
 こちらは牛頭天王神社です。箱根町と小田原市の境にあって、疫病神が入ってこないようにするためにつくられたのではないかという説明がありました。
 こちらの神社のシチュエーションがちょっと面白くて、参道は箱根登山鉄道の下を通っており、鳥居の下を通り抜ける電車を見ることができる。
(でも写真を撮るのはちょっと難しい)









10:20
 今回最大の目的地の一つ、入生田にある神奈川県立「生命の星 地球博物館」にやってきました。
 (箱根登山鉄道「入生田駅」より徒歩2分、入館料 大人520円)



 こちらがそのエントランスです。
 冒頭、宇宙はビッグバンによって誕生し、様々な物質や天体、そして生命を生み出しながら現在に至っていると、宇宙誕生の概略が解説されています。
 地球誕生は45億年前、宇宙から飛来する隕石によって形づくられた。



 前回訪れたのは20年以上前のことだったのですが、解説や展示は少しずつ変わってきているようです。最初に見たときには、最古の岩石は38億年前の
ものだったけど、今回は42億年前。そして地球上の生物は他の天体からやってきた可能性が高いなど、少しずつ最新のデータのものに置き換わってきて
います。

 

 鉱物のコレクションがすごい。
 美しいのもそうなんだけど、こんなのいったいいくらするんだろ?


hitomi (TBLeagues45 ヘッドリメイク 26cm 2021)


 

 地球に存在した過去の生命の展示です。
 福井県の恐竜博物館はリアルに動きますが、こちらは止まっている。とはいえ、けっこうな迫力です。



 ここで見ることのできる複製された生物は今は存在しません。
 そしてその滅亡の原因の多くが、人間の活動であったということは意外に知られていない事実です。環境や科学に対する理解が深まった今でも、人間は
いくつもの生物を絶滅の危機に追い込んでいます。




 もちろん現存する生物たちの展示もあります。モルフォ蝶のコレクションがきれいです。

 

 地味なところで、この植物模型がまたすごいです。紙や針金など身近な素材から、まるで生きているような複製をつくっています。ジオラマに興味がある人
なら必見です。



 展示の最後は、現在問題になっていることを何点かあげ、これからもこの地球で人々や様々な生命が生き続けるためには何をしなくてはいけないか、それを問い
かけるような内容で終わっています。



 県営の博物館なので「勉強をする」という視点でつくられてはいるんだけど、大人が見ても考えさせられるところは多いです。
「地球温暖化なんてうそっぱち」とか「人類の危機が迫っているなんて科学者の妄想」などと言い放っている一部の政治家や評論家などにはぜひ見てもらって、
真剣に考えてもらいたいです。







11:50
 風祭の集落の村社だった「八幡神社」です。その詳細は不明なれど、取り囲む林がまたすごい。
 電車や車だと気付かずに通り過ぎてしまうところですが、こうやって歩いてみるといろんなものを発見できます。




 小田原厚木道路のガード下で「像ヶ鼻」という看板を見つけました。その昔、日蓮聖人が身延に向かう途中でこの地に立ち寄られたと伝えられます。
 草が生い茂っていて先に進めそうになかったので引き返しましたが、この先には「像ヶ鼻」という大きな1枚岩があってその上からの眺めは絶景なのだとか。
 日蓮聖人はここから遠く房総の地を眺め、そこで亡くなったご両親を偲ばれたということです。





 振り返ると石垣山が見える。秀吉によって築かれた一夜城はその山頂付近にあります。この城が築かれたことによって、北条氏が戦うことを諦めたとも
言われています。

 箱根登山鉄道の「風祭駅」から少し歩くと板橋という昔ながらの景色のひろがる地区に出ます。
 現在、小田原城の東側は駅や繁華街、南は海、北は山がちなところで学校がいくつかある。実際のところ昔の風景を今も見ることができるのは西側の
板橋地区だけという感じです。

 

12:05
 こちらは板橋地蔵堂です。弘法大師が彫ったと伝えられる地蔵尊があって県指定重要文化財。大祭では多くの人々で賑わう。


 



 このあたりが先が旧東海道の小田原の街並みの始まるところで、ここから先は様々な歴史的建造物が点在しています。
 でもね、ごく普通にこういった昔ながらの街並みが見られるってことが嬉しい。




 裏に出るとまたこんな感じです。実はこの趣のある建物の下を流れるのは「小田原用水」といって、日本最古の上水道です。
 詳細は不明ですが、北条氏康の時代に早川の水を小田原城内に引き込む目的でつくられたのだと伝えられています。



 このまま小田原城に向かって旧東海道の雰囲気を味わいながら歩きます。
 といってもこの板橋から先は、すでに拡張された小田原城の城郭内で、秀吉の小田原攻めの前には総延長が9kmにも及んだという。



 城内では様々な商いが行われ、専門的な職人街も存在していたらしく、城郭を持った一つの都市そのものだった。



 

12:40
 箱根板橋から1km近く歩いてたどり着いたのが三の丸です。
 この南堀は蓮池とも呼ばれ、この時期でも蓮の花が楽しめます。
 それにしてもやっぱり小田原城は大きい。上杉謙信や武田信玄の猛攻にも耐え、当時は難攻不落と言われていたといいます。


 

 こちらが復元された天守閣です。(入場料 大人510円)
 中は歴史博物館と展望台になっています。  天守閣の展望台から見た風景です。





 この天守閣は江戸時代のものの復元なので、厳密には同じ風景を北条氏政が見ていたとはいえませんが、右手の石垣山に突如「一夜城」出現したときには、
やはりその衝撃は大きかったに違いないです。
 やっぱりね、本やネット、TVドラマでは分からない感覚的なものって、間違いなくある。

 

 現在、小田原市では城の中心部を江戸末期の姿に復元することを計画しているそうで、天守のほかにも2つの門が復元されています。そして駅前にも江戸時代の
雰囲気を持つような建物もできたりして、観光を第一に考えた街作りが進んでいるなって感じです。




 ただ自分が思うに、一つ残念なのはこの天守閣が正確な復元でなく、コンクリートのものだということ。
 そして駅周辺の整備はともかくとして、城下町の雰囲気を残す地区こそ、その保存活動に力を入れたいなってことです。



2022.08
camera: Canon Powershot G9X Mk.2 / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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