next evolution





白い花





















 特に20年ぐらい前はガレージキットの全盛期で、普通に模型屋さんなどにもガレージキットが置かれていました。だから気になるものがあると、とりあえず買っておいて、
「あとでまたつくろう。」などと考えていたわけです。
 ところがいつになってもその日は訪れることなく、月日がだけが過ぎて、その存在すら忘れていることもあった。
 このままではまずいな、そう思って今回、押し入れに眠っていたフィギュアやキットを発掘して、自分なりの作品として完成させようと決意しました。

 

 発掘作品の2つめとして選んだのは矢沢俊吾氏の「 next evolution 」というガレージキット、これもおそらくは20年ぐらい前のものです。
 スケール1/10、身長16cmほどのキットで店頭価格は7800円。そんなに安いものではないのに、昔はこういうものをポンと買ってしまえる余裕があった。

 このころは自分自身もフィギュアをつくりだした頃でワンダーフェスティバルなどにも何度か行っていた。(参加もした)
 そのうちボークスのスーパードルフィーと出会って人形づくりを始めることになるのですが、当時は黎明期みたいなもので、基本的な事柄以外は試行錯誤
みたいな感じでした。
 そういうこともあって、様々なフィギュアやキットを買い込んでは自分の制作のための参考にしていました。
 さてキットの方は本体とスタンド、ヘアーのもとになるファー、そして簡単な組み立て説明書と完成写真が2枚、これで7800円なり。ちなみに今でも時々ヤフオク
などへの出品もあるようです。
 今見てもこのフィギュアの造形は素晴らしいと思いますが、スケールは1/10、身長20cmに満たない小さなものなので、これに7800円の価値を見出すかどうかは
その本人の判断次第といったところかな。特にオークションでは落札価格が当時の2倍ぐらいになることも覚悟しなくちゃいけない。



   1 下地を作ります
   

 最初にやることは中性洗剤に漬け込んでキットを洗うこと、そしてやすりがけ。
 そして塗装しやすくすることを目的に、キットに穴をあけて1mm径の洋白丸線を取り付けました。そしてホワイトのサーフェーサーを吹き付ける。
 黄変の問題があるのでサーフェーサーはきっちりと吹きかけて、変化が表に出てこないようにするのが自分のやり方です。

   

  サーフェーサーを吹き付けたら、指先のモールドに段差があることに気付いた。ここは瞬間接着パテなどで埋めて磨きます。このあたりは基本的な作業です。
 あと、お尻のあたりに細かな気泡がたくさん入っている。ここは瞬間接着剤や瞬間接着パテなどで一つ一つ潰してゆくのが一般的かもしれませんが、自分の
場合には少し水で柔らかくしたモデリングペーストを薄く塗り、水で湿らせたさらしでごしごしと磨くという作業を行います。
 これだけでもけっこう気泡が埋まります。細かなもののなかには埋まらないものも多少ありますが、これは塗装のどこかの段階で埋まってしまうことがほとんど
です。



   2 塗装とコーティングを行います
    

 全体をMr.カラー No.111 キャラクターフレッシュを吹き付けたら、次に高耐久ラッカースプレーを吹き付け、あとはクリアーブルーとクリアーオレンジ+レッドを使って
血液の流れる感じを再現します。
 つまりは普段、オリジナル球体関節人形でやっている透明感のある肌の再現を、ここでもやってしまおうというわけです。
 まずはクリアーブルーの吹き付けです。ごくごく薄くした塗料を2mm幅ぐらいに絞って吹き付けます。上はその練習と調整をしているところです。吹き付けているの
だけど、画像にしてしまうと見えません。でもこのぐらいがちょうど良いです。
 パターンとしては第二次世界大戦中のドイツ空軍の夜間戦闘域に施されていたような、メロメロとした塗装です。 (解説しても分からないかな? 調べてみてください)
 クリアーブルーを吹き付ける理由は静脈を流れのようなるような感じに仕上がるのと、オレンジ系の塗料の補色になるので、全体として深みのあるような仕上がりになる。
昔から絵画の世界で行われていた手法の一つです。

   

 次は再び高耐久ラッカースプレーの吹き付けを行います。
 乾燥したらクリアーオレンジ+レッドの吹き付けです。こちらは動脈の流れや毛細血管のような感じが表現できます。

   

 こういう吹き付け作業を何度かしていると、だんだんと肌に透明感がでてくる。そして固いはずのものが柔らかそうに見えてくる。
 注意点としては、やはりやりすぎは禁物でモールドが甘くなる。あとはクリアー塗装は少しずつ乾燥を待って行い、吹き付けするごとに埃の混入がないかを確認するのも
大切です。(今回は5日かけた)



   3 メイクを行います
   

 最後に細部のメイクとヘアーの貼り付けを行います。
 まずはUVカットの機能を持つMr.カラーのNo.113 つや消しスーパークリアーを吹き付けて、肌の調子を落ち着かせます。
 その後、クリアー塗装で甘くなったモールドをデザインナイフなどでシャープに整え、窪んだところに塗料を流し込みます。これを「墨入れ」とも言いますが、黒い塗料では
馴染まないので、ここはやや濃いめのピンクを流し込みます。


   

 次はメイクに入ります。自分の場合には人間用の化粧品を使います。
 スケール1/10の顔の大きさは2cmちょっと、だからここは模型用の先のとがった綿棒を使って少しずつ、ピンクやブラウンをおいてゆく。そして次にNo.113つや消しクリアー
の吹き付けをする。作業としてはこの繰り返しです。
 顔全体が整ったら、細筆で眉や唇を描き込み、爪やバストトップ等にも色を加える。


   

 そして最後に行うのはヘアーの取り付けです。このキットには白いファーがついているので、今回はこれをそのまま使います。
 こちらの作業も難易度が高い。ファーは真っすぐでなく好き勝手な方向に伸びている。これを適当な長さにカットして貼り付けるのは至難の業かもしれません。
 ちなみにファーの貼り付けについては、説明書では「ボンドGクリアー」またはつけまつげ用接着剤をすすめていますが、自分は「さいほう上手」を使っています。繊維質の
ものには良くなじんで使いやすい。


    

 とりあえず張り付けたら、まずはちょっと太い筆でファーの表面をならし、つまようじを差し入れて髪の流れる方向を整える。最初は浅く、そしてだんだんと深く差し入れてゆく。
 そして髪型を落ち着かせるために最後に「お湯パーマ」をします。口先の細いポットからやや冷ました(90℃ぐらい?)お湯を髪の流れる方向に垂らしてそのまま乾燥させます。
 そして乾燥したらハサミを入れて髪型を整える。


   

 最後にNo.114のつや消しクリアーを吹き付ける。No.113と比べるとこちらのほうが塗膜が強く、しっとりとした感じになる。
 そして唇と爪にはつやアリのクリアーを塗ればフィギュアは完成です。
 時間をかけると身長17cmとは思えない仕上がりになります。




   4 背景をつくる
   

 針金を通しているので、このまま台座に取り付けてしまえば完成なんだけど、それだとただフィギュアを上手につくりましたで終わってしまうので、ここから先は一工夫です。
 材料にするのはDVDのスピンドルケース、そしてキットに付属した台座、そして100均で売られている造花です。

   

 また造花の芯の部分は台座にワイヤーとエポキシパテで固定します。
 構想としては、スピンドルケースを花器に見立てて、ここに100均の花を飾り付ける。つまり「生け花」をしてしまおうという訳です。


   

 100均の造花は日々リアルに進化していて、種類も豊富になってきた。また今回のように「あり得ない色合い」のものも多数あって、これを使わない手はない。
 ただ細かなところを見れば雑な部分も感じます。バリのようなものもあるし、全体に不自然なつやがあったりする。
 ここはきれいにお掃除したうえで、高耐久ラッカースプレーつや消しクリアーとMr.カラーのNo.114でトップコートします。
 上の画像で言うと処理前が左、処理後が右です。見栄えが全然違います。


   

 スピンドルケースの軸に穴をあけて素材を飾り付ける。生け花を学んだことはありませんが、基本根元を見せないように、且つ非対称に飾り付けてバランスをとれば、
まあまあの背景になります。
 あとは「中心に咲く花」としてフィギュアを取り付け、細かな手直しをすれば完成です。



















2022.12
camera: Panasonic LUMIX GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: S ILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10






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