eye4工房番外編

地猫と遊ぶ



 新しく完成した1/20スケールのジオラマです。
 タイトルは「猫と遊ぶ」。どうってことのない日常の1シーンを再現しました。









 学校から帰ってきたら庭に置いてあったチェアに猫が座っていた。
 猫としばしの間、お話をした。ただそれだけの1シーンです。













 また明日いろんなことがあるに違いない。
 とりあえず今夜はおやすみなさい。



<ベースボードをつくります>

 最近になって、昔のフィギュアを引っ張り出してきてはジオラマにしています。でも1/20や1/24スケールだと完成させても、小さくて見栄えがしない。
 そこで今回も背景をつくって、何らかのシーンを再現しようと思います。



 ベースになるのは SOHO TIME という AliExpress を通して購入した1/24のドールハウスキットです。確か2000円台で購入したと思います。このシリーズは
Amazon あたりでも購入可能かと思いますが、円安の影響もあって4000円以上はすると思います。もうこうなってくると外国から何も買えなくなっちゃうな・・・。
 もう一つは林浩己氏による1/20青春少女④というキットです(右下)。
 林浩己氏が原型を担当したキットはWFで買ったレジンキットからプラモ化された小作品までかなりたくさん買っていると思います。とこかく女の子がキュート
なんです。
 サイズとしては少々の違いはある者のドールハウスキットがやや大きめにできているので違和感はないです。



 とりあえずこれで手付かずのまま押し入れに詰め込まれていたキットが二つ減り、陽の目を見ることになりました。
 まずはドールハウスキットの方から手を付けます。必要なものは接着剤や工具に至るまで入っていて、パーツ数は数百に及ぶ、パーツの合いも良くて良心的な
キットです。
 普通に大人が作るのなら、多分一週間ぐらいで見栄えのするものができると思います。

1 ドールハウスキットの主要なパーツを組み立てて
 基本となる形をつくります。
2 組み立て終えたあと、隙間になっている部分にスチ
 レンボード埋めて壁をつくります。

 工程にはのらないことだけど、もちろん最初に完成させたときのイメージを頭の中に構築するところから始めます。
 ポイントはテーマ性とそれを生かすアイテム、そして遠景・中景・前景のバランス。もしかしたら最初の段階で作品作りの半分ぐらいが終わっているかもしれません。
最初のイメージがつまらなければ、面白いものなどできるはずもない。
 今回は大胆にドールハウスは表裏をひっくり返して壁側を背景として使います。もちろんドールハウスキットは中身までちゃんと作るつもりですが、あくまでも主役は
フィギュアの方、主役を引き立たせるためには、あえてこういう使い方をするのもありかなと思います。


   3 100均で買ってきた5mm厚の青いスチレンボードと角材でベースをつくり、
    部屋を取り付けます。
   

 ドア前には3~5mm厚の白いスチレンボードを置いて敷石を表現した。これで基本的な構造物は整いました。

4 壁はモデリングペーストを塗って表現します。 5 敷石のざらざらとした感じはペット用のトイレ砂で
 表現します
7 フロアは天然木のシートを張り付けて表現します。

 次にそれぞれの材質に合わせて、質感を加えてゆきます。
A 部屋の外壁はジェッソで白く塗ったあと、モデリングペーストを筆でたたくように塗って、塗り壁のざらっとした質感を出します。
B 土はモデリングペーストをアクリル絵の具で着色し、そこに少量の木工ボンドと細かな砂を加えたものを塗る。
C 敷石はBの下塗り剤をまずは塗り、それが乾く前に更に砂を撒いてざらっとした質感に整える。(上の画像)
D 敷石は1枚1枚に色の変化があった方がリアルな感じになるので、艶消し剤を添加したMr.カラーを吹き付けてみました。
E コンクリートは単純に艶消しのライトグレーで着色 F サッシ部分はアルミシートを張り付け
G 床部分は木のシートを張り付け  ジオラマのベースをつくるとき、構造物の配置が終わったら、必ず質感を出す作業をするのが基本、塗装だけで変化を
つけるには限界があります。



 これが全体図です。大きさは17cm×30cm、1/20のフィギュア1体のための背景としてはかなり大きくなっちゃったな、というのが率直な感想です。


8 地面になる部分に茶色のアクリルを塗り、更に
 タミヤのテクスチュアペイントで質感を加えます。
9 地面に糊を塗った後、パウダーとファイバーを混ぜ
 たものを撒いて芝の表現をします。

 次に土の表現をしたところに芝生を植えてゆきます。
 以前は繊維質の素材をスタティックアプリケーターで立たせて草の表現をしていたのだけど、それだとどうしても密度が低く、下地の地面そのものが透けて
見えてしまう。
 そこで今回は素材そのものの配分を変えてみることにしました。そのレシピは5mm長のファイバー2種(ライトグリーンとグリーン)に、鉄道模型用のパウダー2種
(ライトグリーンとグリーン)の合計4種をブレンドしてみた。配分としてはファイバー70%、パウダー30%といったところです。
 まずはKATOの草原のりを塗った後に、ブレンドした素材をスタティックアプリケーターを使って撒いてゆく。イメージとしては細かなパウダーがのりを塗った面に
まずは張り付き、その隙間にファイバーが突き刺さるように立って張り付くという感じかな。



 やってみたらこれが大正解で、いとも簡単に芝生が出来上がってしまった。
 石畳の隙間には草原のりを筆で塗ってから、スタティックアプリケーターで同様に処理をしています。



<家具類や雑貨品などをつくります>
 このドールハウスキットには家具他の様々な調度品が同梱されています。つくりはそれなりなのだけど、全くないところからつくることをかんがえるならば、
それなりに便利です。

   10 説明書に従って家具類をつくります。
   

 基本はカットされた板材を接着剤で組み立ててゆく。時折こんな感じでワイヤーパーツなども組み合わせる。
 正確に作るためには多少の慣れは必要です。上はテーブルのパーツなのですが、なかなか正しい長さにカットして折り曲げるのは難しい。

    

 左の画像では上のパーツが少し長すぎる。
 そこでピンクの印の部分をペンチで挟んで少しだけ伸ばす。(画像中)
 今度は少しだけ内側をペンチで固定して曲げ直す。(画像右)
 あとは長すぎた部分をカットすればおしまい。慣れてしまえば大したことないのですが、やり方を知らないと多分苦労します。



 ここで問題発生です。パッケージに入っているはずの接着剤がなかったのはすぐに気づいたのですが、更に金属パーツの袋がないことに気付いた。
これはテーブルの上に置く照明スタンドの材料などが入っていたはずで、ここはやむなく手持ちのジャンクパーツを流用することにします。
 中国製のキットだと検品不十分でこういうことはたまにある。
 理想を言えば、送られてきた直後にパーツ類はすぐにチェックすべきでしょう。でも実際には制作を開始して見ないと気付かないことも多いので、最終的には
パーツ類を自作する覚悟は必要かもしれません。



 作りあげたタンスや箱、カゴ。照明スタンドも無事にジャンクパーツから作りあげた。



 こちらはテーブルとイス、ソファー。
 時間をかければ、それなりに見栄えのするものができます。
 たまにトラブルはあるけれど、こういうものをキットの手助けなしに作ってゆくのは、やはりかなりの時間がかかるはずなので、やはり利用できるものがあれば
利用したいと思います。
 基本的にはキットに含まれる家具類はそのままつくる。パーツが欠品しているというトラブルもあったけど、最終的にはジャンクパーツから作りあげました。

 難しいのはこの先です。家具の他にも、そこに納める本や筆記用具、観葉植物などのパーツが用意されてはいるのですが、なかにはスケール感のおかしなもの、
イメージにそぐわないものもあって、ここから先は作るものを選ぶことにします。


   11 仕えるアイテムを選んでつくります。
    

 フロアの敷物は水玉模様の紙(画像右の右下)、どう見ても紙にしか見えない。いろんな絵が用意されていて、モナリザの額縁もあるけど、こういうものを若い女の子が
部屋に飾るとは思えない。そういう感じです。
 パソコンやタブレットは紙からつくることになっているけど、質感に乏しいので、これらは画面部分の印刷だけ利用させていただいて、本体はプラ板からつくります。(画像右)
 5mm厚のプラ板に画面を張り付け、上から半つや消しのクリアーを何度か吹き付ければそれらしい感じになります。



 一つ一つが小さいので見た目以上に手間はかかる。それでもちょっとずつ作業を続けて1週間ぐらいでこのぐらい作りました。



 家具とともに部屋にセッティングしてみます。
 見栄えはそこそこ。
 でも作るものをいくつか省いているので、やっぱり少し密度が足りません。たくさん家具その他をつくったつもりなんだけど、それらをぴったり収納させちゃうと、
こうなっちゃう。一言でいうならちょっと生活感がなくて、まるでホテルの部屋みたいな感じです。
 人間一人が生活する部屋っていうのは、そこに置かれている品数を数えたら、おそらくは数百はあると考えた方が良いでしょう。だからリアルな空間にするなら、
それなりの時間と覚悟が必要だと思う。

 たまにドールハウス展などをやっていると、覗きにいったりもするのだけど、それなりに密でリアルな作品があると、「これいったい何ヶ月かかっているんだろう?」
などと思ったりもします。
 自分の場合には、実はここから先が作品作りの核心になるところで、季節感やシチュエーションに工夫を加えたいところ。
 やはりここは女子高生の好みそうなアイテムなどを加えるなどして、この部屋に住む人物の個性や志向といったものが感じられるように仕上げたいと思います。


   12 カーテンなどを取り付けます。
   

 キットから省かれていたカーテンはプラ棒と紙から自作します。やっぱりプライベートな空間で、しかも1Fなのでカーテンがないのは少しおかしい。
 またあえて取り付けていなかった窓は開閉式に改めました。形を変えられるってことはシチュエーションに変化が出せるってことです。そしてこちらにはロールカーテンを
セットすることにしました。


   13 察字やミッフィー、文具類を追加します。
    

 キットに含まれている本はお堅い感じのものばかりで、若い女の子があまり読みそうにない。そこでそういったものは奥まったところに置き、目立つところに雑誌をつくって
置くことにします。こちらは実物を撮影し、プリントアウトしてつくります。(A)  キャラクターものの欲しいなと思い、ミッフィーのポスターやカード、テーブルマット(B)、マウス
パッドとマウス(D)などもプリントアウトします。
 紙類や印刷物はどうしても劣化しやすいので、こういうものをつくるときには必ず純正インクを使ってプリトし、上からつや消しクリアー(UVカット)でコーティングするのが
長持ちさせるコツです。
 あと100均で見つけたミッフィーの消しゴム(C)はぬいぐるみに見立てるつもり。
 手持ちの布を毛布や敷物に見立てる。そのまま載せただけでは重量感のようなものが出ないので、瞬間接着剤を使って形状を整えてゆきます。



 ということで、これらを配置し直します。
 生活感が出てきて、この家主のキャラクターみたいなものが感じられるようになった。でもしばらく眺めていると、きっともう少し手を加えたいなって部分が必ず出てくる。


   14 更にアイテムを追加します
     

 まずはやはり室内照明がないと不自然な感じがします。そこでジャンクパーツを組み合わせて傘の形の照明をつくることにしました。もちろんここにはLEDも組み
込みます。(画像右)
 画像中ですが、左下はウーロン茶とコップのプラモを組み立て塗装したもの(アスカモデル 1/24 Amazonで660円)。真ん中はエポキシパテを成型着色してクッキーに
見立て、それを小さな薬瓶に詰めたもの。右は適当なタオル地の布に綿を詰め込んでクッションにしたものです。
 このあたりは想像力を働かせてジオラマそのものの密度を高めてゆきます。
 画像左は人形とAmazon箱、女の子なら部屋にお人形があっても良いだろうということで、TOMIXとPreiserのNゲージ用フィギュアを再塗装してデスクにおくことにしました。
あと、Amazon箱って大きさが統一されているので、様々な物品の整理に使っている人も多いと思う。そこで箱を写真に撮ってプリントアウトし、スチレンボードを包んでみること
にしました。
 こういう「それってあるある」的な感覚はとっても大事だと思う。

 

 それらをさりげなく机の上に配置してみた。
 デスクトップはこんな感じで良いと思う。

   15 またまたアイテムの追加です。
    

 画像左でつくっているのはバッグです。バッグを一つも持ってない人って多分いない。スチレンボードをベースにして、黒い布のリボンを巻いてゆきます。
 バッグは良い感じに仕上がりました。右側にあるのはお皿、あとでお菓子でも乗っけるかな。その下はティッシュペーパーの箱、そしてボールペン2本と
それを入れるペンケース。
 みんな小さいです。1/20だとボールペンは長さ1cm、太さ0.7mmぐらいにしなくっちゃいけない。

    

 画像左は手提げ袋2つ。そしてコスメボックス2つはスチレンボードと紙からつくりました。チュチュアンナの袋は実物を写真に撮ってから縮小してプリントアウト。
 画像右は衣類も1つぐらいあっても良いと思ってつくったスカート。
 あとは庭に置く折り畳み椅子です。



 さりげなくこれらを配置します。また少し密度が高まった。そう確かにこういう部屋ってあるよねみたいな感じが大切だと思います。
 ドールハウス的なものの製作ってある意味際限がない。おそらく一個人の部屋に置かれている物って数百の単位であるはずです。泥沼とは言いませんが、どこかで
打ち切らないといけない。
 もうそろそろいいかな・・・。いよいよフィギュアの制作に入ります。



<フィギュアの制作>

 主人公は林浩己氏の青春少女④という、けっこう昔のレジンキットからつくります。
 スケールは1/20なので、身長としては立たせた状態で8cmぐらいです。キットはしゃがんでいる女の子1、猫1、猫の座っているトロ箱1という内容でとても出来が良い。
調べたらまだまだこのキットは現役で販売されていた。(Amazonで3,838円)

16 まずは全体を中性洗剤で洗ってから、真鍮線に
 とりつけます。この方が後の作業はやりやすい。
17 基本は筆で塗り分けて、最後にクリアーで艶の
 調整をします。
18 制服のラインや衣類の塗り分けはマスキングテ
 ープを活用します。

 例によってパーツは中性洗剤で洗った後に、ピンバイスで穴をあけ、1mm径の真鍮線を取り付ける。左の画像はそのあとサーフェーサーを3回ほど吹き付け終わったところです。
 このキットの場合、身に着けている衣類が異なる部分で分割されているので、着色が終わった後で組み立てるのが手順としては正解です。
 セーラー服の表現で難しいのは襟の部分のラインです。まずは真っ白に着色したあとにマスキングテープを細くカットして貼り付ける。(幅0.8mmぐらい)
 これが終わったらグレーを吹き付け、マスキングテープを取り除けばOKです。


  19 フギュアの塗装を行います。
     

 肌の部分は例によって人間用のチークで変化をつけます。(画像左)
 全体をMr.カラー No.111 キャラクターフレッシュで着色の後Mr.カラーGX No.113 つや消しクリアーを吹き付ける。このあと画像中段にある3種類の綿棒で少しずつ
チークの色を乗せてゆきます。1回ではあまり色がのらないので、つや消しクリアーを何度となく吹き付けて葉色を重ねます。うっすらと赤みがついて、肌らしい感じが
出たらOKにします。(画像中)

 少し濃いめの塗料を流し込むということは自分の場合にはやりません。小さいものほど輪郭を強調しなければ、作品としての見応えがないという考えの方もいるかも
しれないけど、自分の目には不自然に見えることが多いし、やり直しというリスクも伴う。

 あとは目や口を描きます。自分の場合にはまずはきっちりと上瞼のラインを書き入れて、これを基準線として他の部分に色をおいてゆきます。
 いちばん右の画像は1回目の作業が終わったところです。このあと写真に撮り、画像を拡大して何をどうするか考えます。
「右目が小さすぎる」「口角が下がっていて何か不満があるように見えちゃう」「頬に赤みを加えてもう少し健康的にしたい」などなど。このあと余分だなと思った部分は、
デザインナイフを少し立てて軽くなぞるようにして色を落とす。そしてまたチークやカラーをのせる。



 この作業を3回ほど繰り返した。自分としてはこの段階で80点台の出来、もうこのぐらいで十分でしょう。あとは目と唇にクリアーをのせて完成とします。
 自分としてはフィギュアの顔を上手に描き切ろうとは思ってません。1番やりたくないのは失敗して作品を台無しにしてしまうことです。だからできるだけ失敗しないような
方法を考え、必要に応じて写真に撮って確認し、必要ならPC上でシミュレーションする。
 あと、もうこれ以上は無理と思った段階で終わりにするのも大切です。上の状態でも、たとえば「もう少し瞳を細かく描き分けた方が良い」「睫毛も描きたい」という人もいる
かもしれませんが、リスクがあるのでやりません。



   20 配置の調整をしました。
    

 左側が最初の配置、このままだと庭と部屋の間にソファーが入って左右が分断されるような感じになってしまう。一体感を出すためにはソファーを左に置いた方が
良いと思いました。



<再び完成画像です>

 



 こちらは細部のUPです。ミッフィーは身長3cm、雑誌(装苑)は1.5cm×1cm程度。




 背景にしたのはのは Alexpressから入手したドールハウスキット、これをベースにしてまずは女の子の部屋を細部まで作り込みました。
 そう「こういう感じの部屋ってあるよね。」みたいな共感を持っていただけるとうれしい。




 主人公は「青春少女4」という林浩己氏によるフィギュアと猫です。こちらはよくできているキットなので、基本そのまま作りあげました。



  ここには難しいテーマなどはありません。ただ「家に帰ってきたら、庭に可愛い猫がいて遊んだ。」という、ただそれだけのシーンです。
 昨年はけっこうシリアスなテーマも扱ったけど、こういう軽い作品もまた好きです。



2023.03
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100  & Panasonic LUMIX GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm   /  graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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