eye4工房番外編
桜の下で
新しく完成した1/24スケールのジオラマです。
白い洋館の前に女の子が二人、まわりの桜は満開で、そこから絶え間なく花びらが舞い降りてくる。
見た目は大きく見えますが、スケールは1/24でジオラマサイズは16cm×16cm×20cm、フィギュアの身長は7cmぐらいです。
<ひらめき>
製作に少し余裕も出てきたので、またストックしていたキットをもとにして新しい作品をつくろうと思います。
でも作品をどんなに作りたいと思っても、材料がどんなに豊富にあったとしても、何を作るのか具体的なアイデアがなければ先に進みません。
そしてその閃きみたいなものは、いろんなことがきっかけになって生まれるものです。
こちらはハセガワの1/24、80年代ファッションのフィギュアです。時代は繰り返すというけれど、ファッション自体は今だったら地雷系、量産型って感じですね。
でもただフィギュアとして仕上げるだけではつまらないので背景が欲しい。
こちらは画像を整理していて目に止まった1枚です。ここでひらめいた。フィギュアを地雷ちゃん、量産ちゃんで武装してここに並べたらおもしろいかも。
ということで製作開始です。
<背景をつくる>
上の画像は道の駅「黒磯」にある「旧青木家那須別邸」の建物の一部です。明治時代に外務大臣等を務めた青木周蔵が別荘として建てたものです。(国重要文化財)
完全に同じものをつくる必要もないので、このイメージをお借りして背景をつくります。
1 9㎜角の角材を組み合わせてフレームをつくり、
5mm厚のスチレンボードを張り付けてベースにします。
ベースは100均で入手したスチレンボードや角材からつくります。このサイズで16cm×16cm、同じく16cm角のスチレンボードを切り抜いて仮の壁もつくりました。
2 プラモのパッケージから切り抜いた女の子二人を
正面に置いてみた配置を検討します。
左は真っすぐに壁を置き、フギュアを中心に置いた場合です。まあ、こんな感じで記念撮影するかなって感じです。
主人公がメインで背景は雰囲気づくりという作品なら、主人公をドーンと真ん中正面に置くという、この安定した構図が悪いわけではない。
右は壁の右端を2cmほど手前に出し、主人公を心持ち左に移動し斜めに構えさせる。こうすることで奥行きが感じられるようになる。ちょうど
遠近法を実践している感じです。
すべてを並行に置くと平坦な感じ、少し傾けて台形にすると立体感が出て「更に左右に空間がひろがっているんだよ」みたいなイメージになります。
これが最初のポイントです。
3 スチレンボードからバルコニーのフレームのみを
をつくります。
実際の建物は2階建てでデッキ部分の上にはバルコニーがあります。
但しこちらは部分的な表現にします。ご覧のように簡単なフレームだけですべてを覆わない。どういうことかというと「このジオラマの上には更に構造物が
あるんだよ」ということをイメージさせるという意図があるわけです。
かっちりとした枠で空間を切り取ってしまうと、作品としてはその空間内で完結している感じ、枠をぼやかしてゆくと作品外の空間ともつながりが出てくる。
あるいは閉鎖的な感じと開放的な感じということもある。これが2つめのポイント。 (といってもちゃんとしたところで学んだことはなく、経験上で得たものですが)
バルコニーをフレームだけにしたのはもう一つ意味があります。
実際に取り付けてみるとご覧のような影ができる。影ができることで立体感がさらに増し、このジオラマの外にも広い空間があることをイメージできるようになります。
影を意識することで空間のひろがりや立体感を補強する、これが3つ目のポイントです。
もちろん閉鎖的な狭い空間を表現するならこういったことは不要なのですが、自分の場合には晴れた青空の空間を表現することが多いので、光線のコントロールは
ちゃんと考慮します。
4 デッキ部分には細く割いた板目紙を張り付けて
板張りの感じを出します。
5 扉は板目紙を丁寧にカットして組み合わせ、その
起伏を再現します。
6 床と壁、そしてバルコニーを組み合わせます。ここ
でも100均の道具が活躍します。
jこのあたりを完璧に再現するのは不可能だし、その必要もないので、ある程度デフォルメしました。作業はスケッチしたものを正確にデザインナイフで切り抜いて
張り付けてゆくだけ、難しくはないです。
最近の100均は自分に言わせれば宝の山で、こういったレアな工具類からジオラマパウダーまでそろっている。できるならぜひ大きめの100均に行って見て下さい。
眺めているだけでいろんなアイディアが生まれてきます。
2日の作業でここまでできる。角材、スチレンボード、板目紙は使い切っていないので、おそらく材料費としては100円もかかっていません。
いい感じかな。あえて傾けた構図なんだけど安定感がある。
こちらがモデルになる邸宅の画像です。
ドアの向こうが少し暗くて、照明が印象的に輝いている。これがちょっとした奥行き感を持たせています。次はこの感じを出したいと思います。
7 扉の部分を裏返して真っ黒に塗りつぶします。
そして壁の裏側に暗い小部屋をつくります。
8 適当な大きさの穴を小部屋に開けて、上から着色
した透明なプラ板を張り付けます。
そして再び裏返せばこんな感じで、透過光が入り込んで内部に存在するランプのように見える。
これだけで更に奥に空間があるように見えます。
そして壁や床板は一切せずに白いままに仕上げます。むしろ単色の方がバルコニーや木の枝によってつられた影が、印象的に下に落ちるという計算
もあります。
光と影の演出ってこれまでやったことがなかったので、ちょっとしたチャレンジです。
9 ドアのハンドルをつくります。使ったのはプラ板
とアルミ線です。
異素材の接着には瞬間接着剤を使います。また金属部分の塗装は事前にプライマー処理をしてから行います。
さてここから先は桜の樹の枝を再現します。桜の樹を1本つくると大げさなことになっちゃうので、ここはシンプルに枝だけにします。
ジオラマで大切なのは、やはりミニチュアである限りは精密でリアルなことだとは思う。
だけど共感を感じてもらったり、喜んでもらうことを考えると、ただ実物を縮小させればよいというものでもないと思います。ここではやっぱり基本的な構想とか
演出が大切なものだと思う。
今回のポイントとなるのは、ずばりフィギュアの服装と背景の季節感です。
10 3種類の太さの針金を組み合わせて木の枝を
つくります。(太さ0.5mmから0.2mmぐらい)
11 このあとモデリングペーストを塗ってならし、こちら
もプライマー処理してから着色します。
12 透明プラ板の先端にこれを固定して、バルコニー
の扇端に取り付けます。
枝に関して言えば市販のものもあるけれど、スケール的には鉄道模型に合わせてつくられているので、少し太めで小枝の感じは出にくいです。
現時点での仕上がりはこんな感じです。
次は花を咲かせましょう。いろいろと花びらの素材を探したのですが、結局は適当なものが見当たらず、鉄道模型用の桜パウダーを
使うことになりました。
13 ガーゼを茶色に着色したものを、細かく切って枝に
接着します。
14 糊スプレーを吹き付け、あとは桜パウダーをま
ぶす。これを何回か繰り返します。
画像のように着色して細く切ったガーゼを枝に接着するのは、枝だけだとパウダーのひっかる部分が少なすぎるからです。
この方法で桜を表現する場合のポイントは2点あります。
1 このジオラマスプレーは広範囲に噴射されるので、必ず床をシートでカバーし、また吹き付けたくない部分はマスキングすること。さもないとあたり
いちめんがべたべたになる。
2 最初から3回目ぐらいの段階では、細かく切った茶色のガーゼをパウダーに混ぜ込んでやると変化が生まれて単調になるのを避けられます。
だいたい6回ぐらいパウダーをまいたところで、十分なボリュームになりました。
あとは枝に張り付いた余分なパウダーをデザインナイフで落とし、ぽてっと塊になったところをほぐしてやればそれなりに見栄えのするものができます。
あとはうっすらとデッキ部分に糊スプレーを吹き付けてから桜パウダーをまきます。そして次に壁とデッキの接するラインにのみ、更に桜パウダーを追加します。
(上の画像)
桜が満開になり、春風に乗って花びらが舞い降りてきた感じを出してみました。(実は今回これがいちばんやりたかった)
<フィギュアの製作>
背景が完成したので、いよいよフィギュアの制作に入ります。
15 パーツはこんな感じです。まずは中性洗剤で
洗って乾かします。
16 完全な地雷系ファッションにするため、あちこちに
手を加えます。まずはフリルをつけた。
あとはパーツを眺めながら組み立てと塗装、修正の工程を頭の中でシミュレーションします。
今、地雷系とか量産型と呼ばれているファッションも、自分には80年代ファッションに通じるものがあるように思える。
今回はプラモを地雷系や量産型に近い服装に変えてしまおうと考えているので、随時、微細な修正を加えてゆく。
17 フィギュアのメイクを行います。
顔のメイクに使用するのは人間用のチークやシャドウなどです。自分の場合にはCEZANNEを使っていますが、特にこれでなくてはいけないということもないです。
あえて言うなら入手しやすく、比較的安価、安心の国内産ということかな。
こだわりがあるというと、下に写っている綿棒の方です。これを使って色をつけてゆきます。
上から子供用の小さい綿棒、これは比較的広い面積を着色するときに使います。一般的には真ん中のつまようじに綿のついたものが使いやすいです。一番下は
固くとがった綿棒で、細かな溝にチークを落とし込んだり、逆に色がつき過ぎてしまった時にこすって落とすなどにも使えます。
全体をMr.カラー No.111 キャラクターフレッシュで着色の後Mr.カラーGX No.113 つや消しクリアーを吹き付ける。このあと画像中段にある3種類の綿棒で少しずつ
チークの色を乗せてゆきます。1回ではあまり色がのらないので、つや消しクリアーを何度なく吹き付けては色を重ねます。
あとは目や口を描きます。
自分の場合にはまずはきっちりと上瞼のラインを書き入れて、これを基準線として他の部分に色をおいてゆきます。上の画像は1回目の作業が終わったところです
18 全体の塗装と組み立てを行います。
あとポイントとしては、ときおり写真に撮り、画像を拡大して修整すべき点を見つけ出すようにすると良いです。
また右画像のように一旦真鍮線に固定してから作業をするとやりやすい。
塗り終わったら順次組み立ててゆきますが、パーツの合いが良くないので、瞬間接着パテをはみ出すぐらい塗ってから成型しなおしました。
そしてもうちょっとで形になるというところで、髪型も変えないといけないことに気付いた。
ロングヘアーは良いとしても耳は出さないと、やっぱりおかしい・・・。
ということであちこち手を加えたところをまとめます。
A 髪のサイドを削り耳を出す。
B カチューシャつけました。
C ポシェット追加。
D フリルつけました。
E バッグはエポキシパテからつくりました。
F デカ襟に変更。
G そして全体的に白、黒、グレー、ピンクといったカラーで塗装をまとめます。
こちらが最終形です。
ボタンや装飾品を描き入れ、全体のつやを調整しました。
衣類はMr.カラーのNo.188 フラットベース荒めを少量No.133スーパークリアーに追加、肌はNo.114 スーパースムース、髪や靴など少し光沢のあるところには
No.114に少量のクリアーを追加といったところかな。
<再び完成画像です>
4月中旬、ようやくの完成です。
桜の季節の終わりまでには仕上げたいと思っていたので、とりあえず何とか目標は達成かな。
主人公の二人は、ハセガワから発売されているこちらのプラモに手を加えたものです。今、地雷系とか量産型と呼ばれているファッションも、自分には80年代
ファッションにつながるところがあるように見えました。
箱絵の色合いをそのまま白、黒、グレー、ピンクあたりに置き換え、小物類を追加して仕上げました。
背景の白い家は、こちらの那須にある旧青木家那須別邸(道の駅「明治の森・黒磯」)をモデルにしてつくってみました。
こちらはヨーロッパ式の建築技術を用いて建てられた明治時代の建造物、建築した青木周蔵はドイツ公使や外務大臣等を務めた人物です。
壁と床、バルコニーの基本形は角材、5mm厚のスチレンボード、板目紙、透明プラ板などでつくっています。素材の多くは100均で入手しています。
今回絶対にやりたかったのは桜の表現です。太さの違うワイヤーをより合わせて枝をつくり、鉄道模型用の桜パウダーで花を再現してみました。
デッキ部分にも桜パウダーを撒いて、満開の感じを再現しました。
ただもともと桜パウダーが鉄道模型用(1/87~1/150スケール)のものなので、それなりに雰囲気は出ているとは思うけど、少しスケール的には細かすぎてしまった
かもしれません。(小さな画像だと一様にピンクに見えちゃう)
写真にすると大きく見えるけど、実際のジオラマの大きさは16cm×16cm×20cm、フィギュアの身長は7cmです。
桜、白い洋館、地雷系・量産型のOF、この優しい感じの組み合わせがぴったり。
そして桜の枝とバルコニーの影が壁や床に落ちて青い空を意識させる。
別にどうということもないジオラマだけど、自分としてはこういう作品も清々しくて良いのではないかと思っています。
2023.04
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 & Panasonic LUMIX GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10
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