eye4工房番外編

Welcome Back



<カモの親子を見た>




 今年の6月、秦野から平塚に流れる大根川の土手をを散歩していたら、カモの親子に出会いました。



 こどもたちの全身はまだ黒っぽくて目の周りだけが黄色、おそらくは巣からやっと出られるようになったばかりだと思う。ヒナたちは必死になって集団でお母さんに
ついてゆく、その必死さがまたとってもかわいい
 このときは8月の個展の準備に忙しくてそれどころではなかったけど、いずれカモの親子の登場する情景をつくってみたいなと、考えるようになりました。





 そして個展が終わってから制作を開始、2ヶ月がすぎてようやく完成しました。



 川の土手から上がってきて歩道を渡り、ねぐらに戻ってゆくシーンです。



 誰が書いたのか welcome back (おかえり)の文字。
 ちなみに塀の裏側には have a nice day (いってらっしゃい)と書いてあります。



 母親についてゆく子供たち、キットでは足が省略されていたので、エポキシパテでつくりました。体調5mmなので結構塗分けが難しかった。



 主役の視線は子供たちに向けられています。
 じっとその姿を見守っているというのが、この作品のポイントですから。



 彼女の着ているもの、そしてキャリーケース、背景の塀に貼られたポスターなどを、少し昔のアメリカンな感じで統一してみました。
 作品サイズは底面が19cm×15cm、高さ11cm、スケールは1/24、フィギュアの身長は75mm。ちょっとほっとできるような作品になりました。





<登場人物の制作>
 個展も終わって、日常は平常モードになりました。あらためていくつか作品をつくろうと思いましたが、ふとあの写真のことを思い出しました。

 

 「そういえば・・・。」
 昔買ったタミヤの家畜セットのなかにアヒルがあったことを思い出す。もちろんスケールは1/35、自分の場合には見栄えやつくりやすさを重視しているので、
普段は1/20や1/24でつくっているのですが、このアヒルをカモの色に塗ってしまえば、1/24スケールのマガモあたりに見えないこともない。ヒナが3羽ついている
のもありがたい。
 あとパッケージには特価420円などというシールが貼ってあるけど、今はちょっと高くて600円を少し超えている値段で売られているみたいです。

 

 使うフィギュアはあと一つあって、それがこちらMBのトラッカーズ シリーズのミンディです。キットの中身はすっきりしています。MBの製品なのでそのままつくっても
大丈夫でしょう。お値段は買った時には確か800円前後だったかと思いますが、輸入物だから円安の影響もあってか今はAmazonで2,122円もする。

 そもそも最近のプラモのお値段は高すぎると思う。
 プラモ自体が、昔は子供を含めた「大衆的な趣味」だったけど、今は次第次第に限られた一部の人間の趣味になって来た感じがあります。

 まずはフィギュアを並べて作品の構想を練る。
 この1年は気合が入ってしまい大作や手間のかかるものが多かった。だからちょっと原点に戻ってお散歩のときに見かけた風景など、さりげない小品をいくつか作って
みようかと思います。
 見た瞬間に、ちょっとだけ笑顔がこぼれてしまうような作品て良いと思う





   1 フィギュアのポーズを少しだけ変更します。
    

 イメージができあがったところで、早速制作に入ります。
 このフィギュアで改造する箇所はただ一つ、視線を水平方向から右斜め下方向に動かすということです。たったこれだけのことですが、これがこの情景の最大のポイント
になる。

 視線を傾けたら真鍮線を通して瞬間接着剤で固定します。(A) そのあと隙間をエポキシパテで埋めます。(B) 更にその上からタミヤパテをMr.カラーの薄め液で溶いて、
ドロッとしたものを筆で塗ります。(C) そして乾いたらやすりがけして仕上げます。(D)
 うまくやればこんな感じでつなぎ目が分からなくなります。

   2 人間用の化粧品で塗装をします。
    

 塗装の前にホワイトサーフェーサーの吹き付けを行います。この段階でキズや凹凸があれば瞬間接着パテなどで修正します。(E) 塗装の始まりは肌の部分からです。
 いつもはMr.カラーの111キャラクターフレッシュを塗るのですが、今回は日焼けした感じがほいしいので、タンを少量加えています。(F)



 あとは必要に応じてMr.カラーのGX113を吹き付けながら、人間用のチークやシャドウを使ってメイクしてゆきます。(G) 一回では色がうっすらとしか乗らないので、
GX113の吹き付けを繰り返しながら少しずつ仕上げます。筆で仕上げるより、圧倒的に失敗は少ないです。
 もちろんこのままではぼやっとした仕上がりなので、今度はメイクに芯を入れるつもりで筆を入れます。(H)
 ときどき撮影して、モニター上で結果を確認してゆく。小さいものなので肉眼で確認するよりこちらの方が良いです。



3 ネット上で公開されている画像を元にしてデカール
 をつくり、フィギュアに貼り付けます。

 このまま完成させてしまうというのもアリですが、今回はフィギュア自体に「見どころ」をつくろうと考えています。
 ネット上から画像を適当に集めて、彼女のショートパンツに似合いそうな絵を探して、デカール用のプリント用紙に印刷します。(I) このとき大きさは1種類だけでなく、
予想したより少し大きめのものと小さ目のものを合わせて印刷しておくと、あとあと手間が省けます。(なかなか計算通りにはゆかない)

 デカール用のプリント用紙は透明なものと白いものがあるけど、今回は紅白のストライプがあるので、白いものを使いました。
 デカールはそれなりの強度は確保されているので、細かくデザインナイフでカットしても大丈夫です。また局面に馴染ませるためにマークソフターは必ず使いましょう。



 マークを切り取って貼り、乾いたら塗料で補う、この繰り返しです。(J)
 これらの作業が終わって乾燥したら、最後にMr.カラーのGX114を吹き付けて表面を保護します。(K)
 もうこれは完全にお約束の作業です。



 典型的アメリカンなお姉さんが完成しました。
 世の中にはこの精度の作業を1/35スケールでやって住まう人もいるようだけど、自分はこの1/24ぐらいが限界だな。

 彼女の視線を動かした理由はお分かりですね。
 次はこの視線の方向にいるはずのカモさん親子をつくります。



4 カモの親子を製作します。子ガモの足は省略されて
 いるので追加で製作します。

 主役のフィギュアが完成したところで、いよいよカモさん達をつくります。
 使うのはタミヤの家畜セットのなかにあったアヒルたちです。もちろんMMシリーズなのでスケールは1/35ですが、でもこれをカモの色に塗ってしまえば、小柄な1/24
スケールのコガモやカルガモさんあたりに見えなくもないでしょう。

 問題なのはこどもたちで、足の部分が省略されています。陸上のシーンを想定しているのでちょっと具合が悪い。
 そこでエポキシパテを練って高さ3mmの二等辺三角形をつくり、端っこをちょっとまげて足に見立てる。一方で本体には2つの穴を開けて、その受けとします。(画像左)
 あとは瞬間接着パテを穴に盛ったところで、足を突っ込んで固定します。
 塗装はカモを真鍮線に取り付けてからMr.カラーで行います。





 つくったものを並べてみて思ったのは、女性フィギュアは片足で立っているので何か立てかけるか、座らせる必要があるということです。

5 女性フギュアを立たせるために、追加でキャリー
 ケースを組み立てます。

 お姉さんに合わせ、デカールを使って思いっきりアメリカンな感じに仕上げました。
 いい感じにまとまったね。





<ジオラマベースをつくります>
 登場人物が出そろったところで、ジオラマベースの制作に入ります。

6 角材やスチレンボードを用いてベースボードを製作
 します。

 基本は角材でフレームをつくり、その上にスチレンボードを乗せるところからスタートです。
 最初のポイントは正確な直角を出してフレームを組み立てること。こんなときに100均で買った固定具が役に立ちます。これを買ったら、直角を出す難易度が思いっきり下がりました。(画像左)

 フレームの大きさは19cm×15cm、これに5mm厚のスチレンボードを乗せて、直接ここにイメージした空間を書き込んでゆきます。
 全体としては土手道で、手前側は川に降りてゆく斜面、奥は公園という感じです。(画像中)

 高低差は発泡スチロールでつくります。
 手前は川に降りてゆく斜面なので少し削りました。(画像右)

7 質感を出しながら塗装を行います。同時に短かな
 草もパウダーで表現します。

 自分の場合、地面の表現には何パターンかあるのですが、今回は一番シンプルなパターンです。
 まず下地塗料をつくります。これはモデリングペーストに同量の「浴びっこサンド」を混ぜ、これを茶色に着色して水で薄めたものです。(A) そしてこの下地塗料を塗って、
これが乾く前に黄色から黄緑色のパウダーやファイバーを3種類ほど混ぜたものを上から撒きます。(B)

 歩道部分は陸上競技場などでも見られるクッション性のある舗装を再現してみました。塗料はモデリングペーストに半分量の「浴びっこサンド」を混ぜ、これを茶色に着色して
水で薄めたものです。(C)
 乾燥したあと、スポンジやすりで軽く表面をこすってやると、表面が少し荒れてリアルな感じになります。(D)



、フィギュアを置いてみて、配置や色のバランスなどを確認します。
 今のところ、土手道でキャリーケースに腰かけて休憩してるという、ごくごくありふれた風景です。



8 草の表現を行います。使うのはTEMUで購入した
 植物とジオラマ用の素材です。

 次は地面の部分に植物の表現をしてゆきます。
 画像左はTEMUで仕入れた80個748円の植物パックから選んだ2つの植物です。こういうものは大きな100均あたりにもありそうなのですが、自分はまだ見たことがありません。
こちらは軟質のプラスチック素材で少し光沢がある。これをまずは中性洗剤で洗って乾かし、高耐久ラッカースプレー つや消しクリアを吹き付ける。
 あとはMr.カラーのロシアングリーンを少しだけ吹き付けてやると、色が落ちついて少しリアルになります。

 画像右はTEMUで購入した24個452円のジオラマ用の植物です。草状のファイバーの上に、何かの植物の種を接着剤で貼り付けたもののようです。
 左の4つは買ったばかりのもので、派手な緑のファイバーが横からはみ出し、上についている植物の種子は接着剤でお互いがべったりと張り付いている。
 細かな商品なので、購入時にはこういう部分はモニター上では分からない。そこで鋏を入れてはみ出したファイバーを切り、種子をバラバラにほぐす。それが右の4つです。



 これらを地面に貼り付けます。もちろん自然な雰囲気が良い、こういうとき自分は不等辺三角形を連続させてゆくことを意識します。やはり雑草が規則正しく並んでいたり、一様に
ひろがっているというのは不自然です。

9 スタティックアプリケーターを使って、さらに細かな
 草を再現します。

 次はすでに下処理してある地面の上に背の低い植物を表現します。
 長さ5mmの若草色と緑のファイバーを混合し、ここに同量のパウダー3色を混ぜたものをつくります。そしてこれをスタティックアプリケーターに入れて、KATOの草はら糊を塗った
部分に振りかけます。
 ファイバーだけで草原をつくる方法がよく紹介されているけど、自分は隙間をつくらず密度を高めるためにパウダーを混ぜます。
 あとKATOの草はら糊は粘度が高いので、少し水を加えると塗りやすくなる。

 少し説明を加えると背の高いものがあると、その影の部分(右画像の白い矢印の部分)にはファイバーが撒かれず隙間になることがある。だから真上から撒くだけでなく、ベース
ボードをいろいろな方向に傾けて影のできやすいところにもファイバーが撒かれるように注意すると良いと思います。

 

 これでごくごく自然な歩道と土手ができあがりました。



10 板目紙を使って塀を再現します。今回はステッカー
 で50年代のアメリカンな感じに仕上げます。

 ジオラマとしてはもの凄くシンプルなんだけど、性格的に一ひねりしたくなる性格なので、追加で塀をつくることにしました。
 材料は板目紙とスチレンボード細く切ってつないでゆくだけです。

 

 フィギュアが少し昔のアメリカンな感じなので、それに合わせてレトロなステッカーを用意しました。TEMUで50枚70円ぐらいだったかと思います。
 このステッカーを張り、汚し塗装をしてから全体にMr.カラーのGX113を吹き付けて全体の調子を整えます。



 これで塀も仕上がりました。
 右下の隙間の上にはボールペンで Welcome back と書き入れる。





<完成画像>
 あらためて完成画像をお送りします。


















 なんかほっとする情景だね。



2024.10
camera: Panasonic DMC-GX8 & ZUIKO 24-50mm  /  graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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