佐久島




2024.11.21~11.22
 佐久島は三河湾に浮かぶ周囲が11kmほどの離島で、そこに180人が住んでいるという。おもな産業は観光と漁業、とても静かでゆったりとした時間の
流れる場所でした。またアートの島、そして弘法道があることでも有名です。



11.21 THU 天気:晴れ
5:00
 11月の終わり、1泊2日の予定で旅行に行ってきました。
 目的地は佐久島という三河湾に浮かぶ島です。面積は1.73km²で東京ディズニーランドのおよそ3倍、小さい島ではあるけれど学校や診療所、漁協や農協などもある。



 さて佐久島に渡るには一色港から出ている渡船に乗らなくてはなりません。本数は日中は2時間に1本ぐらいなので、それに合わせるように神奈川を出発しました。
 9:30の便に乗るため、まだ暗い5:00に出発です。

 

 距離290kmを4時間ちょっとで移動して一色港に着きました。ちなみに乗ってきた車は一色港の駐車場に停めました。(無料)
 あと時間的余裕があるのなら、一色港に佐久島ナビステーション(観光案内所)があるので、資料等を得ておくのが良いと思います。

 

9:30
 船旅はいたって快適。三河湾内ということもあるけど、この日は風も比較的に穏やかでした。

 佐久島は「アートの島」として知られていて、島内各所に現在は21のアート作品が常設展示されています。
 そしてそれを巡るスタンプラリーもあって面白い。スタンプラリーしていると自然に島内を1周できる仕組みになってます。

 

 上の画像は「イーストハウス」という作品を撮影したものです。白い箱があって、そこから長い廊下が延びていて、その先にもまた白い箱がある。



 こちらは反対側の白い箱、イーストハウスとは「東屋」の直訳で、やってきた人はここで休憩したり、お昼寝したりするんだそうです。
 箱の中に入るととっても穏やかな島内の景色が見える。眠ってしまうのも分かる気がします。



 そして箱は東西の向きに開いているので、日中の休憩も良いけど、夜明けや夕暮れの時間帯も良いに違いない。

 

 イーストハウスの先には大島があって、本島とは橋で結ばれています。
 こちらはその大島にある「佐久島のお庭」、まわりには梅林もあってきれいに整えられています。春早い時期はきっと素敵な景色が見られるんだろうな。







 そしてこちらは比との手の加わっていない、島のさりげない風景です。
 海の透明度が高くて、プチ松島してます。

 

 ところどころに咲く花。
 ここは癒しの空間そのものです。



 トンビがたくさんいる。



 ただただきれいな砂浜、夏は海水浴場として賑わう。
 驚くべきことに、ゴミが一つも落ちていません。



 こちらは「カモメの駐車場」、風向きによってカモメ向いている方向が変わるそうです。
 「アートの島」とは言っても、それほど大げさなものはない。景色のなかに溶け込むような、そしてほっと一息つけるような感じのもので、それが島の雰囲気に合っている。



 佐久島の集落は大きく東と西に分かれていて、それぞれに港がある。真ん中あたりは平地が少なくて、ここに学校や消防署、交番、診療所、農協などの公共施設が集まって
いるって感じです。



11:40
 最初に歩いて回ったのは東港周辺で、ここから西半分を回ることにします。
 こちらはフラワーロード沿いにある「佐久島クラインガルテン」というアートスペースです。タイルアートやお花畑があったりする休憩所という感じかな。
 ここから先が西半分の集落になります。

 

 こちらの集落の特徴は、ともかく壁が黒いということ。黒い壁の家が密集していて、幅2mほどの曲がりくねった道が民家から民家へと続いていて、まるで迷路のようです。
 そしてところどころに猫がごろごろしているって感じかな。



 そしてその片隅に仏塔や石仏、観音様などが鎮座している。
 佐久島の歴史は古く、縄文時代の貝塚や弥生時代の土器が発見され、いくつもの古墳もあって、長い人々の営みが感じられるようなところです。







 

12:10
 こちらは「おひるねハウス」というアート作品です。
 なかに入ると落ち着く。
 胎内を体験すると言ったら、言い過ぎかな?

 この先に「石垣第一古墳」という大きめの古墳があるらしいので行ってみました。古墳を見て こーふん することはまずないので、期待しないで歩きます。



 やっぱり古墳の方は外見はそれなりだったけど、違う発見もありました。



 古墳の下はものすごくきれいなビーチでした。
 もうプライベート感いっぱいです。
 ここはいい。



 朝顔が木に撒きついて高さ10m以上も伸びている。
 圧巻です。

 佐久島のガイドマップによれば、
 紀元前一世紀の頃、伊勢の斎宮の郷に作彦という臣がいた。彼が伊勢志摩の島々を巡るうちに、この島の景勝を大いに気に行って移り住んで農業を始めた。それからこの島は
「作島」と呼ばれるようになったと伝えられる。


 分かるなあ、穏やかで静かで、時間がゆっくりと流れている感じです。

 

 こちらは築100年の大庭邸です。唯一公開されている黒壁の家で、予約を入れておけば家のなかも見学できるそうです。





12:40
 西側の黒壁の集落を通って、無事に西港にたどり着きました。



 こちらの港の前には、とても立派な古民家を改装した「弁天サロン」という無料の休憩所があります。
 2Fには佐久島の歴史資料館も併設されていて、島のあちこちにある古墳や縄文・弥生時代の遺跡から発掘されたものが展示されています。

 

 この日は小規模なアート展も開催中で、近隣の大学生の作品が展示されてました。



 こちらは1192年に後鳥羽上皇の第七皇子の青蓮院宮によって建立された崇運寺です。おそらくは佐久島では最も古いお寺です。
 また会津の上杉景勝を攻めるために大坂城から出陣した徳川家康が、途中こちらのお寺に滞在したとも伝えられる。
 西港を見下ろす高台にあって、なかなかの絶景を望むことができるような場所です。



 とはいえ、こちらの港周辺は歩く人もほとんどいない。
 佐久島には東と西に大きな集落があって、どちらかというと東の方の集落が大きく、宿泊施設やお店の方もそれなりに多いです。一方西側は黒壁の家が続き、雰囲気は
更にのどかで昔ながらの漁村といった感じです。

 ここで困ったことが起こった。そろそろお昼ご飯なのですが、開いているお店が見つからない。
 聞けばこの佐久島では水木を定休日にしているお店が多いそうで、自分たちの訪れたのも木曜日でした。さらに人の少ない西側の集落では、観光客の少ない平日に営業
しても利益が出ないのだろうと思う。
 現在、島の人口は180名と聞く。この人口で学校や郵便局、農協、診療所といったものがひと通り揃っているということ自体が驚きかもしれません。



13:00
 お昼は抜きにするか、一軒だけ開いていた商店でお菓子でも買って済ませるかを考えていたのですが、そんな時、ダメもとで訪れたこちらのカフェが営業中でした。
 喫茶Nishigawa、こちらのお店もまた周囲の景色に馴染む黒壁の古民家です。



 入ってすぐに、えっと思ったのは、そのオーナーが流暢な日本語を喋るイギリス人男性だったこと。
 そしてそのお店そのものも手作り感にあふれていて、民家の改修や内装は「おじいちゃんと一緒につくった。」のだそうです。しかも店内を飾っているのはオーナー手作りの
茶道具で、その奥には茶室まであるという完璧さです。
 すごい。
 こちらのオーナーはカフェを営業しながら、茶道具職人としても活躍しているんだそうです。



 オーダーしたのは特注したイギリスの紅茶と西尾産の抹茶、そして和菓子のセットです。
 紅茶も抹茶も、そして和菓子や茶器に至るまですべてが完璧でした。離島であるがゆえに行列はできてませんでしたが、間違いなく佐久島の名店です。
 往復1,660円の渡船代を払っても、こちらのカフェには行く価値があります。







13:40
 東西の集落を巡り歩いたあとは、島の中央部の山のなかを歩いて東側に戻ります。ただ山のなかと言っても、標高にして30mを少し超えるようなところではありますが。
 山中には「弘法道」が通っていて、ご覧のような祠がいくつもあります。

 そもそもは1916年に四国八十八ヶ所の写し霊場として、弘法大師の祠が建造されたのがその始まりで、戦前には島外からもたくさんのお遍路さんが訪れて賑わったそうです。
 ただ戦後は道も荒れ、また過疎化や高齢化の影響もあって、その規模も縮小していたという。それが近年になって、町おこしを兼ねて再整備されたのだそうです。
 ちなみに一番札所は東地区の阿弥陀寺、八十八番札所は西地区の崇運寺で、その所要時間は3時間半です。

 

 島の北側に出てきました。ここに民家はなく、「北のリボン」というアート作品があるだけです。
 海のすぐ向こうに西尾の街が見えます。

 

 左は「ひだまりの滝」右は「星を想う場所」、静かで二人きりだったらロマンティックかもしれません。





 

14:50
 ぐるっと一周して東地区に戻ってきました。
 こちらは1024年創建の八剱神社です。毎年1月8日には250年の歴史を持つ八日講祭が行われる。祭りでは佐久島太鼓が奉納されて、たいそう賑わうのだとか。
 きっと元島民とか、そういった方たちの協力もあるんだろうね。



 

 左は阿弥陀寺の入口あたりの風景です。大小さまざまなお地蔵様が並んでいて印象的です。弘法道のスタートがこちらです。
 右はおとなりの正念寺の縁側に鎮座する海神様です。



 こちらのお寺ですが、googleマップから電話番号を知ることもできないので、常駐するご住職はおられないのかもしれません。扉も閉まったままです。
 ここは「信仰の島」と言っても良いかもしれません。

 

 今現在佐久島の人口は180人と聞きますが、その数をはるかに上回る祠やお地蔵様がある。そしてその一つ一つ、たとえそれが山中であっても、その全てに花が供えられている。
 そしてどこに行ってもきれいにされていて、ごみなどが全く落ちていません。

 その事実に気付いたとき、島に住んでいる方々の思いがちょっとだけ伝わってきたような気がしました。
 ちなみに関係あるかないか分かりませんが、島にはコンビニやスーパーはないし、自動販売機も見かけませんでした。







15:40
 もうすぐ夕暮れというとき、島一周の最後の目的地である筒島にたどり着いた。細長い堰堤を歩いて島に上陸します。
 ここには筒島弁財天という三河三弁天のひとつがあります。創建等は不詳のようですが12年に一度ご開帳される弁財天は室町時代前期の作であるという。



 ここには「願い石」の伝説があります。
 その昔、佐久島にとても美しい娘がいて、許嫁は島で一番の器量の漁師であった。
 ところがあるときから、その娘の具合が急に悪くなって、身動きできないほどになった。
 ある晩に、女の神様が夢に出て「石を戻しなさい」と娘に語りかけた。

 
娘は一ヶ月ほど前に、弁天島から美しい石を持ち帰っていたのだ。
 娘はすぐに許嫁の男に頼んでその石を元の場所に戻してもらった。
 するとすぐに病は治り、二人は結ばれて後生幸せに過ごしたという。

そんな伝説があって、ここには願い事を石に書き込んで奉納するという風習があります。



 自分たちも奉納してきました。こちらには厳かで独特の雰囲気があって、必ずやご利益があると感じたからです。







16:00
 佐久島は周囲11kmほどの島ということでしたが、結局一日あちこち巡って宿に戻ったら、歩数計の計測によれば何と21kmも歩いていた。アップダウンもけっこうあったので、
さすがに翌日は筋肉痛になりました。
 宿は東港の目の前にある「佐久島館」という旅館です。

 

 宿泊する3Fの部屋からの眺めが絶景で、佐久島湾内が一望できる。お風呂に入ったあと、沈みゆく太陽をしばらく眺めていました。
 この日の宿泊は自分たちだけで、宿は貸し切り状態でした。
 ちなみにこの佐久島館は佐久島内で最初にできた伝統のある宿泊施設だそうです。



 地元でとれたお魚を中心とした晩御飯です。
 船盛とか豪華な丼がある訳ではないけれど、おいしく夕食をいただきました。

 ちなみに前にも書いたように、佐久島にはコンビニやスーパーはおろか自動販売機もないです。だからお酒の準備のなかった自分たちは宿にお願いして出していただくことに
なりました。
 おかみさんとその娘さん(あるいはお嫁さん?)が接客して下さったのですが、とても気さくで親切にしていただきました。

 翌朝の会計では一人一泊二食で8,000円、お酒はビール1本とお銚子3本で2,000円、なんか申し訳ないほどリーズナブルでした。





 

11.22 FRI 天気:晴れ
6:10
 翌朝は夜明け前のお散歩です。
 完全に無風で、湾内はまるで湖のように静かでした。




 




 ここ佐久島は、一色港から僅か20分ということで日帰りする人が多いようだけど、この夕暮れ時と夜明け前の風景はぜひ見ておきたいと思いました。
 このあと宿で朝食をいただき、8:40発の渡船でマイカーの駐車してある一色港に戻りました。



 佐久島は漁業と観光を中心とした島なのですが、島内には市場やスーパーはないので、地元のお魚をいただくには渡船の乗場のある一色港の「一色さかな広場」「三河一色さかな村」
などで購入することになります。
 こちらには新鮮な魚を目的にたくさんの人で賑わう場所です。
 もちろん飲食施設もあります。



 最初は「アートの島」ということで興味を持った佐久島だったけど、やっぱりその歴史を感じる集落や景色、そして自然そのものが良いです。また行ってみたい気がするけど、行くなら梅の
咲く早春あたりが良さそうな気がします。



2024.12
camera:Panasonic DMC-GM-1 & 12mm-32mm / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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