eye4工房番外編
drone
<青空の似合う情景>
ドローンとそれを操縦する女の子がセットになったフィギュアのキットを見つけ、これを組んで青空の下で撮影したら、けっこう良い写真が撮れそうだなと
思いました。
そうジオラマっていつもは部屋の中で見ることが多いけど、もっとより良い見せ方ってあると思う。



<フィギュアの制作>
さて「風の谷のナウシカ ガンシップ」の情景もそろそろ完成ということで、新しいジオラマづくりにはいることにしました。

こちらは1/24スケールのフィギュア キットで3Dプリンターでつくられたもの。
ドローンを操作している女の子がドローンとセットになっています。(Aliexpressで857円)
これまでちゃんとしたフィギュアというと、戦争やアクションもの、ゲームキャラといったところばかりがモデルになっていましたが、ここにきてようやく、こういう何でもない
シーンのフィギュアが普通につくられるようになりました。 自分としては嬉しい限りです。
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1 まずはフィギュアの組み立てを行います。解説書
はないので仮組からスタートです。 |
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まずは中性洗剤で全体を洗います。
乾いたら、あとは基本的に塗装のじゃまにならない程度にできるだけ組み立ててから、下地を作ります。

問題は腕の部分、左右の腕とコントローラーを握った手がうまくつながらない。
そこで各パーツの断面にピンバイスで穴を開けて0.8㎜径の真鍮線を差し込んで瞬間接着剤でつなげてゆく。
そして最後は肩の部分で微調整、瞬間接着剤で固めてから、隙間をタミヤパテで埋めます。Mr.カラーの薄め液を染み込ませた筆で表面をなでてやるとすぐに滑らかになります。(画像左)
あとはサーフェーサーを吹き付け、傷を見つけたら瞬間接着パテで埋めて磨く。(画像中と右)
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2 フィギュアをメイクします。使うのは人間用の化粧品
です。 |
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左画像はMr.カラーのNo.111キャラクターフレッシュを塗ったあとに、GX113つや消しスーパークリアーを吹き付けたところです。
塗装に使うのは人間用のチークです。太さの違う3種類の綿棒を使い分けて色をつけてゆきます。最初に使うのは茶系のチークで凹凸を強調する。あとは頬や唇といった赤みの
ある部分に色をおきます。
画像中は1回目の塗装が終わったところです。ご覧のように1回ではうっすらと色がのるだけです。なので再び GX113 を吹き付けて同じ作業を繰り返します。
ある程度色がのったところで筆を入れ、目や眉毛、口を描きます。(画像右)
描くと言っても、必要最小限でチークで描いた部分をうっすらと強調するぐらいに、自分はとどめています。描き切ろうとして頑張ると、かえって不自然になることが多いです。力不足
かもしれませんが、破綻しないのが第一だと考えています。
作業はメガネ式の拡大鏡をしながら行っていますが、細かなところまでは見切れないので、このあたりで撮影してモニター上でチェックをするほうがよいでしょう。
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3 衣服を描いてゆきます。ツヤや質感は最後に表現
します。 |
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引き続いて全体の塗装をMr.カラーで行います。最初の段階ではつやや質感などは無視していて、とりあえず全体に色をおいただけです。(画像左)
ちょっとだけ面倒だったのは、コントローラーと両手が一体化されている部分の塗り分け、ネールアート用の極細筆でなんとか塗り分けました。
次につやと質感を整えます。まずはいったんMr.カラーのGX113つや消しスーパークリアーを全体に吹き付けて均一につやを消します。
次にノースリーブのパーカーに少しだけ立体感をつけます。レモンイエローのパステルをカッターナイフで削って綿棒にとり、光の当たっているところにだけ軽くこすりつける。(画像右)

あとは適当なデカールを胸に貼り付ける、もちろんここでのマークソフターは必需品です。乾燥したらMr.カラーのGX114 つや消しスーパースムースクリアーに Mr.カラーのNo.118
フラットベースあらめ・ラフを30%ほど混ぜたものを丹念に布部分に吹き付けて定着させます。
これだけで「ちゃんとした布」のような質感が出てきます。
髪はMr.カラーのGX114 つや消しスーパースムースクリアーに Mr.カラーのNo.46 クリアーを30%ほど混ぜて半つや消しで仕上げます。
あっさりとしたキットなので、スニーカーの色分けだけにはこだわりました。1点でも目を惹くところがあれば精密感は増します。
<ドローンをつくる>
あとはドローンですが、実はこれをどう生かすかがポイントになる。
こちらも本体とプロペラ4枚の構成でとってもあっさりとしているので変化を出したい。けれどちょっと考えたら「飛行しているシーン」なので、プロペラを固定してしまうのは何かおかしい。

薄い透明プラ板を円形に切って取り付けるという方法をまずは考えたけど、見る方向によっては、その丸いプラ板が明るく反射してしまいそうです。
結果としてここは何も本体に取り付けないことにしました。これがいちばん自然だね。
4 ドローンを制作します

こちらは完成したドローンの表と裏です。
本体のみだと寂しすぎるので、前向きと下向きのカメラを追加し、塗装を工夫した。オレンジと青は翼端灯でドローンの向きを確認するためのものです。

問題はまだまだあって、どうやってこのドローンを空中に浮かせるかが難しい。
1mm径の透明アクリル棒、0.5mm径のステンレス線、0.3mm径のステンレス線、黒い糸で吊るすなどの方法を検討し、実際に比較してみたけど、強度も十分で最も目立たない
のは0.3㎜径のステンレス線でした。
ちなみに100均で売っているものは柔らかくて、10cm以上の高さでは曲がってしまう。結局はこちらも硬質のものを取り寄せることになりました。
実際にはもっと強度があって細いワイヤーもあるみたいだけど、何たってお値段が魅力でした。0.3mmステンレス鋼線50mが139円というのはなかなかない。(TEMU)
送られてきたものは円筒に巻き付けられたものだったので、まずは力を入れて引っ張って伸ばす。それでも少し癖が残っているところを、今度は爪で強くこすって少しずつ修正しました。

ステンレス線で15cmの高さにドローンを浮かせた。努力の甲斐があって、これだったら鑑賞に堪えられる。
あともう一つ思ったのですが、この情景については女の子の後姿を生かす方が良さそうな気がした。主人公が後ろ姿になっているというのも面白いし、何よりこの角度から
見たときの景色が、最も空間的なひろがりがあると思う。
<ジオラマベースをつくる>
現状ではフィギュアとドローンは完成して、課題だったドローンを空中に浮かせる方法も、0.3mm径のステンレス鋼を使うことで解決しました。
上の画像で15cmの高さにドローンはあるのだけど、途中のステンレス線はそれほど目立たず、これだったら鑑賞に堪えられるという感じです。
5 ジオラマベースのイメージをスケッチします。

次はジオラマとしての配置を考えます。今回は底面は20cm×10cmとやや細長いベースボードを組み、前方に大きく青空がひろがっている風景を想像できるような
レイアウトにしようと思います。
上空のドローンを見上げる女の子の目線が、この作品のすべてと言っても良いかもしれません。
そして前方の空間のひろがりを意識できるよう、前方になだらかに下ってゆくようなレイアウトを考えた。これだけで小高い丘の上にいるような感じになると思う。
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6 例によって角材やスチレンbノードで枠組みをつくり
ます。 |
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ベースボードの素材は角材と5mm厚のスチレンボードです。
小さな作品なので必ずしもがっちりと作る必要はない、ということで側面は曲線を切り出しやすいスチレンボードを使うことにしました。もちろんドローンを立てるパーツも追加する。(画像中)
この枠組みに貼り付けたのは、やはり加工しやすい板目紙です。
そしてここに、着色したモデリングペーストに「あびっこサンド」を混ぜたものを水で薄めて塗ってゆく。
そしてこれが乾く前に、黄色から緑のパウダーと短いファイバーを4種類ぐらい混ぜたものを、上から撒いてゆきます。
乾くとこんな感じに仕上がる。これが最小限の地面の表現になります。
ちなみに泥の塗料を塗ったことで、その水分は板目紙に染み込んでゆきます。すると板目紙は真っ平らでなく、適度に波打って自然な地面の凹凸ができあがるという具合です。
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7 植物表現を追加します。市販のものそのままだと
変化に乏しいので少し手を加えます。 |
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さてこのままの地面だとあまりに殺風景な感じなので、少々の植物表現を加えることにします。自分自身たくさんの植物ストックを持っていますが、そのまま使うことはほとんどないです。
画像左で背いちばん左は背の低い植物のクラスターを再現したものですが、はっきり言って出来は良くない。この表面部分に糊を塗って、大きさ1mm程度のパウダーを振りかけたのが、
真ん中の状態です。
そして更に細かな白いパウダーを追加してあげると、右側のような白い小さな花の咲く、デージーに見えなくもない植物ができあがります。
右画像は草表現に使うミックスパウダー2種類です。
人の歩くところは植物が傷みやすく成長しにくい、また踏み固められるので水分も枯れることも多い。こういうところは黄色から黄緑のパウダーと短いファイバーをブレンドして植物表現に
使います。
それ以外の場所は普通に植物は育つので緑色をベースにしたパウダーと長めのファイバーをブレンドします。

通常、丘の上部は水分が少なく、また人もたくさん歩いたりするので踏み固められて植物は成長しづらくなる。それに対して下の方はそういった制約がないので植物は普通に
育って、背丈の大きな植物もところどころにあったりする。
配置する植物は画像の矢印にあるように、左は黄色く短く、右に向かって緑濃く長くなるというイメージです。

まずはデイジーをゴム系接着剤で貼り付け、次に黄色の部分に草原のりを塗ったあと、スタティックアプリケーターで黄色い混合ファイバーを撒いたところです。

空いた部分に緑色をベースにしたパウダーと長めのファイバーをブレンドしたものを撒きました。
建築模型ならこれでOKです。でも情景としてみると境界がはっきりしすぎていて不自然です。

だからここもまた「馴染ませる」という作業を行います。
全体に上から薄くスプレー糊を吹き付け、残った混合ファイバーを混ぜ合わせて、中間色のファイバーをつくって撒いたのが上の状況です。境界が薄くなり、全体のボリュームが
増して良い感じになります。
見た目には良いのですが、よくよく見ると問題はある。
ゴミが落ちていたり、横倒しになった長いファイバーが混じっていたりで、こういったものを取り除いてゆく。面倒でも、こういうところを根気よくやれば、必ず見栄えは良くなります。

そしてフィギュアとドローンを配置する。
ドローンは0.3mm径のステンレス鋼線に取り付けられているのですが、線自体はあまり目立たず、雰囲気を壊してはいません。

やっぱりこのアングルが良い。
ひろがりを感じます。
こういうシンプルな情景は、いろいろ付け加えるとかえって逆効果になる。だからこれでいちおうの完成ということにしたいと思います。
<完成画像>
そして数日間観察して、もうこれ以上の改良すべき点を見つけることができなかったので、完成と判断しました。でも箱に収納する前にもう一つやりたいことがある。
そう、青空の下での撮影です。

やっぱりこれが決めのアングルかな。シンプルな作品だけどひろがりを感じます。

思った通り、この作品は青空の下で見た方が良い。
1/24スケール、20cm×10cmの小さな情景なんだけど、それを越えてリアルに感じます。


このフィギュアは特別にベッピンさんというわけでもないけど、こうやって鑑賞してみると出来の良いフィギュアだと思う。

人形や情景をつくっていて思うのは、作品の完成後でも、もしかしたらもっともっと良い作品に見せられる可能性があるということです。
一番大きいのはライティングの工夫と作品を見るアングル、そして鑑賞する環境。人形だと何を着せるかという問題
そして眺めるだけでなく、撮影するとなるともっと考えなければいけないことがある。撮影距離と焦点距離、絞りとシャッタースピード、明度と彩度、加工と修正などなど。
もう撮影するというのは別な作品をつくるのに等しい行為ではないかと思う。
話は変わって、個展の時にいつも困るのは照明の問題です。光を選べないというのは作品をベストな状態で見せることができないということ。
いまだに多くの美術館では色温度を低く(赤から黄色の照明)、そして暗くして鑑賞しているところが多いのだけど、たとえばその作品が青空の下の南洋の風景を描いたもの
であったら、決して鑑賞の環境としてはベストではないような気がします。
この作品についていえば、じっと自室で眺めているより、外に持ち出して撮影して画像として鑑賞する方が、数段魅力的に見える作品だと思います。
2025.01
camera: Canon PowerShot G9X Mk.2 / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa
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