eye4工房番外編

祈り



<聖母マリアを取り上げたガチな作品>

 「祈り」というテーマで制作を続けてきた1/24スケールのジオラマが完成しました。 次の個展ではテーマとして「祈り」を取り上げることにしましたが、この作品は
その骨格となるガチな作品です。









 正面の聖母マリアの像は EasyThreed の K10 という3Dプリンターで出力しもので、顔だけはマスターボックスのキットから移植しています。プリンターの出力結果は、
お世辞にも高詳細とは言えず、これを時間をかけて修正しました。

 背景はきれいな花の咲く公園をイメージしてつくっています。
 この作品のサイズは底面が11cm×11cm、高さ19cmです。



 最近はジオラマが完成したところで、最もそれにふさわしいところに持ち出したり、光の演出を行って撮影することにしています。
 今回選んだのは田んぼの真ん中、撮影時刻はなんと午前4:40、日の出の時間帯です。






 優しく見下ろすマリア像の表情がこの作品のすべてかも知れません。
 プリンターで出力した段階ではボロボロでしたが、よくここまで頑張って作り直したなって感じです。





<聖母マリア像をプリントする>
 EasyThreed の K10 という3Dプリンターで出力した1/24スケールのフィギュアをつかって、新しいジオラマの制作に入ることにしました。

1 K10 を使って、できるだけ高詳細に聖母マリア像を
 出力します。

 プリントしたのは高さ8cmほどのマリア像で、上下分割になっています。K10は、おそらく入手可能な3Dプリンターのなかでは最安で、自分は6752円で購入
しました。もちろん初心者向けで性能も高いとは言いがたい。いろいろな調整を経て、最も高詳細な設定でプリントしたので、プリント完了までの時間は8時間を
越えました。

 この状態からリューターで磨きを入れたら使えそうなんだけど、目や口の再現性は乏しい。このプリンターとしては、もっとも高詳細な仕上げなのだけど、
結果はこの程度です。

2 他のフィギュアから、ヘッド部分だけを移植して使う
 ことにします。

 このままでは使えないので手を加えます。特にヘッドの部分はリアルな感じにはなりそうもないので、他のフィギュアから移植することにします。
幸い使うことなくストックされていた1/24スケールのフィギュアは多数あります。

 目にとまったのはマスターボックスの自動車整備を行う女性フィギュアです。
 早速、顔部分を削り取ってヘッドを埋め込みます。パテを使って固定すると、まるで合わせたかのようなぴったりの仕上がりでした。

3 エポキシパテでモールドを補い、タミヤパテとリュー
 ターで形を整えてゆく。

 エポキシパテで足りない造形を追加してゆきます。
 積層の段差やサポートを取り外した跡など、表面の「荒れ」は、タミヤパテをMr.カラーの薄め液で溶いて柔らかくして筆で塗ってゆく、そして乾いたところで
モールドをリューターで整形しなおす。

 いちばん右の画像は表面仕上げの途中段階、まだまだ荒れは目立つけど、形にはなってきました。あとは平滑にするのみです。
 タミヤパテを更に塗って、リューターのビットを砥石に変えて磨き出します。

 

 表面仕上げの90%が終わったところです。これなら実用上、問題はないでしょう。

 自分は決して信心深くはないのですが、こういうフィギュアを制作するにあたっては、少しだけ緊張感を持って作業をしています。やはり見る人にとって
不愉快なものになってはいけません。

4 スタイロフォームを使って台座を作り、マリア像を
 取り付けます。

 多くのマリア像は「人々を見守る」という意味もあって、ほんのわずかにうつむき加減です。
 だからこのフィギュアについても、顔を埋め込む際に少しだけ視線を下げました。だからバランスとして少し高い台座の上にのせるのが良いと思う。

 台座は2枚重ねのスタイロフォームから削り出します。
 スタイロフォームをきれいに直角を出しながら切り出すには、ちょっとしたコツがあります。まずは面倒でも切断するところを軽くけがいて、そこにカッターを
入れる。
 一面だけ見て切り出すと間違いなく斜めになるので、少しずつ回しながら刃を引いてゆく。そして切り出したスタイロフォームを磨いて、本隊同様にMr.カラーの
薄め液でのばしたタミヤパテを表面に塗ります。
 最後の画像の角度から見ると、聖母マリアが少しだけ笑っているようにも見える、良い感じです。

   5 マスターボックスのキットを相手方として完成させます。

    

 登場人物その2は1/24スケールのマスターボックスのフィギュアです。
 但しこのままでは使えない、胴体部分にエポキシパテを詰めて、上体を上向きに調整します。そうすると右側の画像のように両者の視線が一致する。小さいけど、
ここがこのジオラマの最大のポイントです。見るものは両者が心を通じ合わせているかのように感じるというわけです。





<フィギュアのメイクを行います>
 次は2つのフィギュアの塗装に入ります。

6 人間用のメイク素材などを使ってフィギュアの塗装を行います。

 フィギュアの塗装に入ります。基本的に肌の部分から行います。
 まずは肌の部分にMr.カラーのNo.111キャラクターフレッシュを塗り、GX113つや消しクリアーを吹き付けます。そのあと人間用のチークと細めの綿棒を使って、
肌の部分に変化をつけます。血液の多く流れる所には赤系、陰になるところにはブラウン系といったところです。

 次はグレーにブラウンを少量混ぜ込んだアクリル絵の具をつくり、これを専用の希釈液で薄めて眼や唇の部分に流し込む。するとこの部分のモールドが強調されて
自然な感じに仕上がります。もちろんこれは水性カラーと薄め液を使ってもOKです。


 あとは眉毛と瞳、そして唇に色をのせたらおしまいなんだけど、今回はアイライナーを使って瞳と眉毛を入れてみました。極細のものを使えば0.3mmぐらいの
線も描けるし、いろんなカラーが出回っているのでけっこう便利です。しかもお値段は1本124円(TEMU)と、とても安価です。
 作業が1巡したところで撮影して結果を確認し、再び調整と修正を加えます。
 最後の画像はちゃんと上目遣いになっている。視線あわせについてはこれで良しです。

  

 そして最後に着ているものなどを表現します。
 ちょっとシンプルすぎる感じがあったのでバッグなど追加しました。



7 マリア像の方は着色した石像で、表面の塗装が
 少しだけ落ちてしまっている状況を表現します。

 タミヤパテのグレー1色だったところに、つや消しホワイトでドライブラシをしてゆきます。墓石によく使われている花崗岩(御影石)が材質のイメージです。
 そのままだと単調すぎるので、いったんつや消しのタンをドライブラシします。黄変や汚れといった経年変化を感じとれるようにするためです。(中画像)
このあと再びつや消しホワイトでドライブラシして、タンの色合いを薄めます。部分的にうっすらとタンが透けるぐらいが理想的です。
 右画像は人間用のチークを綿棒にとって薄く色つけをしているところです。



 マリア像の画像を検索すると、着色されたものも多く存在します。今回は着色されたマリア像が経年変化によってその塗装が落ち、かすかに色が残るのみという、
ちょっと微妙な塗装をしようと考えています。
 基本は彩度を抑えた薄化粧、ひととおり作業が終わったところでMr.カラーのGX113つや消しクリアーを吹き付けて定着させます。





<ベースボードを作る>
 登場人物が完成したところでベースボードをつくります。大きさは11cm四方とちょっと小さめです

8 ベースボードを作ります。骨格になるのは角材と
 スチレンボードです。

 角材のフレームに5mm厚のスチレンボードを貼り付け、エポキシパテで石畳を表現しました。
 石畳部分はまずはグレーのアクリル絵の具で着色します。そしてこのままだと単調すぎるので、タンやホワイトでドライブラシして変化をつけてゆきます。
そして最後はMr.カラーのGX113つや消しクリアーを吹き付けて仕上げます。


 例によって着色したモデリングペーストに「あびっこサンド」を雑ぜた土塗料をつくって地面部分に塗ります。レシピとしては、だいたいモデリングペーストと
あびっこサンド、水が1:1:1程度です。

 次は背の低い草の表現です。色合いとしては淡い緑、粒子の大きさが1mm程度のターフを主材料として、長さ2mmほどのいちばん短いファイバーと黄緑の
パウダーを混ぜて草の元をつくります。そして草はら糊を塗ったあと、KATOの「繁茂・深雪ボトル」で静電気を発生させながら、少しずつ草原をつくります。

  

 今回は理由があって、追加の演出は後回しにして、最初に2体をベースボード固定しました。
 左画像は両者の顔が確認できるポジションです。
 中画像は主役の表情を見せるポジション、でもこれではマリア像を置いた意味が薄まってしまう。対面の構図というのは結構難しくて、最後は一方を完全な
引き立て役にするしかなくなることが多いです。
 やっぱりマリア像を生かすなら右画像のポジション、主役のフィギュアには背中で頑張ってもらうことにします。

 これで作品としての正面が決まりました。
 追加の演出はこの角度を最大限に生かせるように配置してゆくことにします。



9 正面が決まったところで植物表現を追加します。
 材料の中心はペーパークラフトです。

 さてこのままではあまりに殺風景なので、はこの角度を最大限に生かすように追加の演出を加えてゆくことにします。使用するのは市販されているジオラマ用の
ペーパークラフトです。(和巧)
 これをリアルに仕上げるコツの一つ目はやはり塗装でしょう。葉の裏側は表側よりも白っぽくする。そして葉の先端や端に向かうに従って少し明るめ(黄緑色)に
仕上げてゆくと良い。
 芯を取り付けたら、しっかりと爪楊枝などでこすって形を整えます。



 こちらが仕上がったところです。今回は全部で4種類。
 完成したら、表面保護のためにMr.カラーのGX113つや消しクリアーでトップコートしておくと、劣化しにくくなる。



 これだけだと、種類も量も足りないので、更に植物表現を追加します。
 左から、市販されている天然花のついた放射状のファイバーの塊(5個219円 TEMU)、ストックして置いたツタ、プラスチックの草(50個353円 TEMU)
 天然花を使ったものは、経年劣化がすすむ可能性が高いので、やはりGX113つや消しクリアーでトップコートして置いた方が良いでしょう。


 プラスチックの草はいかにも造花という感じなので表面塗装を行います。まずは中性洗剤で洗って離型剤を落とす。乾燥させたら、高耐久ラッカースプレー
つや消しクリアーを吹き付けて塗料が剥離しないよう下地をつくります。あとはMr.カラーで着色して仕上げます。

 材料がそろったところで、植物を仮配置してシミュレーションを行います。
 このあたりは「生花の基本」を身につけておくと役に立ちます。



 こちらが実際に植物を植え付けたところです。
 今回はきれいな花の咲く公園をイメージしてつくってみました。



 あとはもう一体のフィギュアを配置して完成です。



 この作品の借りのタイトルは「祈り」です。
 google のAI によれば、祈りとは神や仏などの神聖な対象に対し、病気平癒、平和、救いなどの実現を請う。あるいは感謝や意思疎通をはかるための基本的な
宗教行為のことをいうそうです。

 ただ現在ある宗教が存在する以前においても、旧石器時代以降、様々な自然物や自然現象、目には見えない運命を左右するものを神と呼び、恐れ敬っていた
時代があったわけで、本来自分にはどうにもならないことや、運命を良い方向に向かうよう強く願うことは人間の持つ本能的なものだと自分は思います。もっと言えば
強い生への執着やよりよく生きることがこそ、生きたるものすべての願いであるはずです。



2026.07
camera: Panasonic DMC-GX9 + 12mm-50mm  /  graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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