eye4工房番外編

塚越古墳



<今は憩いの場>

 塚越古墳は神奈川県内では最大級と言われている前方後方墳で、時期的には4世紀末から6世紀ごろにつくられたもの。被葬者は金目川水系を掌握していた
豪族の長と考えられているそうです。



 春になると3本のソメイヨシノが咲き誇る、近所ではちょっとした桜の名所です。
 今回はこちらの風景をジオラマにしてみました。



 こちらが完成した作品の正面画像です。スケールは1/64、ジオラマサイズは31cm×31cm×17cm、中心となる3本の桜の木は、三又の枝を軸にして、オランダ
ドライフラワーの枝をつけ、更にピンク色のパウダーを撒いてつくったものです。









 フィギュアは身長が26から28mm、すべて3Dプリンターで出力されたもの。出所はAliexpressやTEMUで、価格は1つ300円から600円程度です。



 こちらは後ろ側の画像です。古墳としては長さ45mほどの前方後方墳で、この桜の木はその後方部分に植えられています。
 正面から見ると実に見事な桜の花を咲かせているけど、こういう高台の吹きさらしなので、御覧のように根元部分には何回も折れたような跡があって痛々しい。
 3本の桜の根元には、いくつもの五輪塔や馬頭観音が置かれており、ここが昔から死者を弔う神聖な場所であったことを伺い知ることができます。



 ボロボロになりながらも毎年きれいな花を咲かせるのは、亡くなったものたちの祈りなのかもしれない。
 目に見えない何者かが桜を見守り、元気づけているというのは、話として不自然ではない。そう思って象徴的にトトロたちを置いてみました。







<ベースボードを作る>




 古墳公園の全景です。左に富士山、右に古くから霊峰、あるいは信仰の山として知られていた大山を望むことができます。このような場所が近隣にはいくつかあるのですが、
いずれ場所にも古い神社らお寺、そしてこういった古墳やサークルストーンといった古代からの宗教施設や儀式の行われていた痕跡が残る。
 ようするにここは選ばれし場所ということです。

 古墳の頂点、つまり後方部分の中心にはいくつもの供養塔や馬頭観音などが置かれている。もちろん時代的には比較的新しいものだろうけど、この場所が死者をあの世に
送り出す場所として古くから知られていたに違いない。



 こういう景色をジオラマにするためには、もちろんたくさんの写真を撮っておくと役に立ちます。このときたとえば人が景色の中に入っていると都合が良い、身長から様々な
ものの大きさが分かるからです。
 古墳の頂点の高さが概ね2.5m、ソメイヨシノの樹高が10mほどで、全体の高さは12m程度となる。これは1/64スケールに当てはめると18.8cmとなります。



 後方部分の歩測をしたら、0.72m×29歩=20.88m、こちらも1/64スケールに当てはめると32.625cm、古墳全体は大きすぎるけど、この後方部分だけなら、1/64スケールの
ジオラマとしてはちょうど良い。
 これが設計においての結論ですが、課題はあと2つある。一つは樹高10cmのソメイヨシノをどうやってつくるか、ということです。そして演出としてフィギュアを2,3体置いて
単なる「お花見」のジオラマにしてしまって良いか。もっと他の演出があるかどうかを考えなくちゃいけない。



1  角材を骨格にして発泡スチロールを湾曲させて
 貼り、基本的な形状を整えます。

 木枠にスチレンボードで糊しろをつくり(青)、中央には古墳の高さに合わせたスタイロフォームを取り付けます(水色)。

 ジオラマベースというと基本的な作り方にはいくつかあって、見栄えは似たようなものでも、重さや強度、かかる費用や時間などには大きな違いがある。
1 積み重ねる
 段ボールや発泡スチロール、あるいは新聞紙を丸めたものなどで概形をつくり、上に薄くのばした粘土、あるいは石膏などを重ねていって地形を作る。重くなりすぎる
ときには、これを内型としてヒートプレスするという方法もある。
2 削ってゆく
 発泡スチロールやスタイロフォームの無垢材、あるいは積層材から地形を切り出す。
 多くの場合には1と2を併用している人が多いと思う。
3 組み立てる
 3番目の方法としては、いくつもの面を作って、それを組み立ててゆくというやり方もあります。メリットとしては軽量に仕上がり、資源の無駄も少ないことが挙げられます。
 この方法は時間はかかりますが、結構きれいに正確に仕上がります。
 なだらかな地形の場合には発泡スチロールを湾曲させながら貼り付けてゆくという方法もあります。
 一般にはスチレンボードや発泡スチロール、そしてスタイロフォームは曲がりにくくそれなりに強度もあるのですが、隙間埋めの目的で使われている梱包材のなかには、
ふにゃっとした発泡スチロールの板が使われていることがあります。
 今回はこれを使って切り出す面の数を減らします。


 次に左画像のように細く切った発泡スチロールを貼り付けてゆく。2枚目以降はぴったりと合うように、カッターで切り出しながら合わせてゆきます。今回は4枚の発泡
スチロール片で事足りました。
 最後は㊨画像のように、できてしまった段差をモデリングペーストで埋めたらOKです。
 組み上がってしまえば強度は思った以上にあって、戦車のプラモを乗っけたぐらいでは変形しません。だいたい半日あれば、ここまでできあがる。



 そしてこちらが古墳を正面から見た画像です。
 ほとんど地形的なものはできあがったことがお分かりいただけると思う。

2 ティッシュペーパーを使って、ジオラマベースの表面
 を整えます。
3 表面処理を行って、桜の木を三又とオランダドライ
 フラワーからつくります。

 さて表面に貼ってある薄い発泡スチロール板は軽量で良いのですが、傷付きやすく塗料ののりも悪いので表面処理をします。
 ティッシュペーパーは通常2枚重ねですが、これを1枚にはいでベースボード上に広げます。そして上から水に溶いた木工ボンドを筆にとって染みこませて
ゆきます。
 乾燥するとシワが少しよりますが、土の塗装をすると目立たなくなるので問題はないです。これでアクリル絵の具や塗料がよくのるようになって、しかも
表面が少し硬くなる。

 中画像で空けられた3つの穴は、桜の木を固定するためのものです。
 桜の木をつくります。(右画像) 骨格になるのは手芸店などで売られている乾燥した三又です。写真を見ながら適当な大きさに切り出します。


 これを組み合わせてエポキシパテで固定します。100%同じ形にするのは不可能なので、だいたいの木の雰囲気が出れば良いと思う。
 中画像では試しにベースボードに配置してみました。(固定はしていない)
 幹の部分ができあがったところで、次は枝をつけることにします。枝は例によってオランダドライフラワーの一択になります。(右画像)


。日本の模型屋さんではちゃんとしたものを売っているけど、海外製の安価なものは圧力を受けて潰れているものが多いです。こういうときには、1時間ほど水に
つけておいてからほぐし、形を整えたあとに乾燥させると使えるようになります。
 木の頂点に近いところは乾燥したオランダドライフラワーをそのまま使います。ただ下の方の枝は横に広がることの方が多い、だから中画像のように、余分な
上下の枝を取り払い、平べったくしたものも用意しておくと、都合が良いです。
 次に幹に穴を空けて、接着剤をつけたオランダドライフラワーを固定してゆきます。段差についてはMr.カラーの薄め液で延ばしたタミヤパテで埋めます。
 作業が一巡したところで幹に色を塗りました。(右画像)



 なんとなくそれらしくは仕上がっているんじゃないのかな。


4 枝の密度を増してから、パウダーを使って花の
 表現を行います。
5 地面の下処理を行い、ターフやパウダーで草の
 表現を行います。

 桜は一般に市販されているコースターフのようなものを使って再現しています。でもソメヨシノの場合には、粒子が細かく、もっと淡い色合いのパウダーの方が良い
ので探してみた。ところがこの細かなパウダーを使うとなると、枝部分に糊をスプレーしただけでは、撒いたパウダーのほとんどは素通りして、ボリュームが足りなく
なることは明らかです。
 鉄道模型のメーカーの販売するソメイヨシノでは、いったん綿を枝に絡ませてからパウダーを撒くなどの工夫をしていますが、リアル感という意味では、ちょっと
違う感じがします。

 まずやったのはオランダドライフラワーの枝の密度を2倍に増やしたということです。(左画像) 幸い細かな枝は絡みやすいので、少量の水を混ぜた木工ボンドを
塗って2~3cm程度の大きさにしたオランダドライフラワーの細枝を隙間に埋め込んでゆくだけで良い。
 あとは更に細かなオランダドライフラワーの破片をかき集めてきて、糊をスプレーした枝に振りかけます。
 これでおそらく枝の密度は3倍以上になったことと思う。

 あとは糊スプレーしたあとに桜パウダーを撒く。1回では足りずに、この作業を3回行って花の密度を増しました。(中画像)

 次は地面の処理です。右画像は土表現のための塗料で、「あびっこさんど」とモデリングペーストを1:1の割合で混ぜ、アクリル絵の具で色をつけたものです。
あとはここに水を加えて、よく混ぜてから使用します。
 右下にあるのは黄色から黄緑のパウダーとファイバーを3種類ぐらい混ぜたもの、イメージとしては枯れ草と草の新芽が混じったような色合いです。これで春間
もない下草を表現します。


 ここまで準備が整ったら、まずは土塗料を塗り、これが乾く前に下草パウダーを撒きます。(左画像)

 次はメインの草表現です。今回は黄緑を中心としたパウダーとファイバーを4種類ほど混ぜました。
 あとは「草はら糊」を塗ったあと、「繁茂深雪」ボトルに草の元を入れ、シェイクしながら振りかけてゆきます。

 このとき必ずしも均一に撒く必要はない、草のよく伸びるところもあれば、人がたくさん歩いて育ちにくいところもある。むしろムラのある方がリアルです。このとき少なめ
に振りかけたところは、下草表現がそのままで、ここは草が育ちにくいところという感じになります。下草表現をしたのはそのためです。



 そしてソメイヨシノ3本を取り付けた。久々、会心の出来だと思った。



6 桜の根元部分の五輪塔や馬頭観音などを追加
 してゆきます。

 桜の根元には馬頭観音や五輪塔などの石の遺物がたくさん置かれています。おそらくは古の時代から、ずっと死者を葬る場所として、神聖な扱いを受けて
いたところに違いありません。



 写真をもとにして形の分かるものをいくつかスケッチしてみました。
 直方体の形をした馬頭観音、あるいは石仏のようなものが6基、五輪塔は形がきちんと残っている物は2基のみで、あとは崩れたものをあらためて組み直したもの
が6基、そして半分土に埋もれた石の破片が多数という感じです。

 左画像にあるようにこれらをエポキシパテで再現してゆきます。ちゃんと形の残った五輪塔で、高さは1.2cmほどです。
 塗装はいったんグレーで着色して、つや消し添加剤を混ぜたホワイトを少しずつ添加してドライブラシします。

 桜とこれらの石の遺物は杭とロープで丸く囲まれています。右画像のように円形の型紙をつくって、それに従い正確に24本の杭を刺してゆく。


 あとは糸でそれらの杭を結びつける。
 写真を参考にしながら、桜の根元に石の遺物を取り付けてゆきます。

 中画像でいちおうこれで形は整いました。でもこのままではあっさりしすぎているし、リアル感も足りない。ここで自分は必ず「馴染ませる」という工程を加えます。
桜は桜、石は石、そして原っぱと3つが明確に独立している感じです。

 そこで手持ちの草表現の材料から、パウダーやファイバー、ツタのようなものを持ってきて、桜の幹や石の遺物に絡ませてゆきます。また桜の下で日当たりも
悪いので、改めて土表現の塗料などを塗り直します。(右画像)





<フィギュアを仕上げます>

7 選んだフィギュアを塗装します。基本的には最初に
 肌の部分を仕上げます

 背景の方は十分に整ったので、ここから先は登場人物を仕上げてゆきます。
 背景作りと並行してストックしてあったフィギュアから5体を選びました。1体目はこちらの1/64スケールのフィギュア、作品の中心に置くつもりです。これを選んだ
理由は後ろから見た立ち姿が凜々しかったことです。

 早速フィギュアの塗装に入ります。基本的に肌の部分から行います。
 まずは肌の部分にMr.カラーのNo.111キャラクターフレッシュを塗り、GX113つや消しクリアーを吹き付けます。そのあと人間用のチークと細めの綿棒を使って、肌の
部分に変化をつけます。血液の多く流れる所には赤系、陰になるところにはブラウン系といったところです。
 茶色のアクリル絵の具を水性塗料の薄め液で薄く溶いて、これを極細筆で目の周辺にさっと塗る。これだけで目の輪郭が強調されます。(左画像) 普通に極細筆を
入れたのは唇のみです。

 あとは中画像のように拡大鏡で見ながら丹念に髪や衣類を描きます。
 少し物足りない感じがしたので、胸と肩に小さなデカールを探してきて貼り付けてみました。何がプリントされているのかまでは分かりませんが、雰囲気が出れば
良いかなって感じです。
 そして最後にGX113つや消しクリアーに少量のフラットベース あらめ・ラフを加えたものを吹き付けて全体のつやを整えます。


 2体目3体目は左画像です。有名な桜の名所ではないけれど、地元ではよく知られているところなので、こういうシーンはよく見られます。
 右画像は4体目と5体目です。スマホで撮影して画像をSNSにUP、それを彼女が覗き込んでいるという設定です。


 一帯はご覧の通り見晴らしの良い高台の公園で、更に古墳の上、完全に吹きさらしの状態になっています。
 近年の強風によって、根元に近いところから何度も折れたような痕跡が残っています。もう根元近辺はボロボロの状態です。傷んでいるのに、毎年咲かせる
花の密度はすごい。もしかしたら、この古墳や五輪塔の下に眠る者達によって、何か特別な力が与えられているのかなと思わせるぐらいです。

 そしてこれをちょっと具体化するアイディアを、実は最初から持っていました。
 最近買った3Dプリンター TINA2C で打ち出したトトロ大中小です。3Dデータは Thingiverse からいただきました。バリを取り外してから、タミヤパテをMr.カラーの
薄め液で溶いて塗り、乾いたところで更にヤスリがけする。(トトロ大で高さ30mm)
 着色すれば右画像のように仕上がる、ちゃんと使えるレベルだと思います。

 トトロの作品の1シーンに、トトロ達が森を育てるシーンがあったと思う。人知れずして(トトロ達の姿は大人には見えない)、遠くからこの桜を応援しているっていう
のも、ちょっと夢があって良いかなって思いました。





<完成画像 その2>
 この公園のある場所は平塚市の北金目というところです。






 地形的には丘陵地帯の先端にあって、古墳時代には北の大根川、南の金目川の流れを利用して、少しずつ水田が広げられていったような場所だと思われます。
今でこそ視界を遮る建物が増えてしまいましたが、当時はここからいちめんに田んぼがひろがる景色を見ることができたでしょう。



 今も背後に視界を遮るものはない。見晴らしが良くて西に富士山、北に霊峰として知られる大山を望むことができます。この眺望こそが、ここが神聖な場所として
選ばれた理由だと思います。






 ちなみに近くに真田城という城跡があります。
 最初は平安時代の末期、源頼朝が最初に挙兵したときに付き従った真田与一が築城し、その後、室町時代には扇谷上杉氏の重臣、上田右衛門尉が城主となって改修したと伝わる。
 最も標高の高いこの区画が本丸として選ばれず、ここから見下ろせる場所に城郭が作られたのは、ここが侵すべき場所ではない神聖な地であると判断されたからに違いないと自分は思います。





2026.08
camera: Panasonic DMC-GX8 + 12mm-50mm  /  graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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