照明1(明るさと色温度)

 ● 明るくニュートラルな色が基本です。

 人形の写真を室内で撮る方は多いと思いますが、どのような方法で撮影されてます? よくヤフオクなどで商品を見ていると、もうちょっときれいに写るのにな・・・、と思うことがよく
あります。どんないいカメラを使っても光の扱いを知らなければ人形もカメラもかわいそう、ここはちょっとしたコツを身につけましょう。
  今回の使用機材:Canon eos kiss Digital X 1010万画素 1/2 CMOS + sigma DC17-70

               なお、難しくて分からない・・・・という方は最後までとばすと、結論が書いてあります。


最大の問題は明るさ
 室内で撮影するにあたって、最も大きな問題は明るさでしょう。
まずことわっておきますが、暗い条件では常識的に使うのが付属ストロボですが、私はおすすめしません。理由は、
(1)不自然な強い陰ができる。またストロボ光の強い反射が写り込むことがある
(2)光が1方向のため、立体感がなくなりやすい。
(3)実際に撮影してみないと分からない(撮影結果が予想できない)
このうち(1)(2)については解決する方法があるのですが、手間がかかり、それなりのノウハウが必要です。
そこで、ここでは見た目通りに撮影できる通常光(室内光)での撮影方法について説明しましょう。

まずは下の写真を見てください。
 通常の明るさで、ごく普通に撮影したのが左側の写真です。撮影した部屋は6畳、照明は合計80Wの蛍光灯です。絞りをF=6.3にしたのは全域でピントを合わせるため。このとき
シャッタースピードは1/3秒にしかなりませんでした。絶対に手ぶれするシャッタースピードです。一般に「焦点距離がfのとき、シャッタースピードが1/f秒を下回るなら手持ち撮影は
困難」といわれています。このようなときには迷わず三脚を使い、振動させないためにセルフタイマーで撮影しましょう。
 右側の写真はISOを1600に設定したものです。レンズ交換式カメラや高機能のコンパクトカメラではISO(感度)を調整することができます。高感度にすることでシャッタースピードを
1/50秒にすることができました。但し下のクローズアップ写真を見てください。特に暗い部分で粒子が荒れている(ノイズが出ている)ことが分かります。
綺麗な写真を撮るなら感度を極端に上げるのは避けましょう。カメラによって違いますがISOは400以内にしたほうが無難です。

 ISO100 絞り F=6.3 シャッタースピード 1/3秒    ISO1600 絞り F=6.3 シャッタースピード 1/50秒


明るくするための工夫
 一般的に最も普及している蛍光灯で、できるなら感度を上げずに手持ち撮影する方法を考えましょう。これなら見た目通りに撮影できて失敗が少なくなると思います。
まずは蛍光管の性質です。蛍光管は1日10時間の使用で、光量が半年で半分になるといわれています。蛍光灯は切れてから変えるのでなく、暗くなったら変えることをおすすめし
ます。(panasonicやTOSHIBAの回し者ではありませんが)
 室内灯だけでは不足なのでスタンド等で光量を補うことになります。私の場合には設置の自由度の高さからスポットランプを使用しています。
スポットランプにはE26型口金のものを用意します(下図1・・・特価品なら\980)。そして最初についているハロゲン球や通常電球をはずします。そして代わりにE26型蛍光管をつけ
ます(下図2・・・\1500ぐらい、ちょっと高い)。21W球など、できるだけ明るいものを選んでください。








 私の場合には、更に光を逃がさないようにするため、アルミの薄い板(0.3mm厚)を筒にして巻いてあります。
(作例では外側を黒く塗ってありますが、内側はアルミ地そのままです)




 このスポットライトを天井からつるした金属フレームにつけて使用しています。これだと設置の自由度が高いです。




更に手前に、これも電球の交換をしたスタンドを設置しました。これで室内照明に加えて21W×3の蛍光灯がそろいました。
下の写真では内側を銀色に塗った反射板で囲んでいます(市販品)。ここまでやれば、明るいレンズなら十分に1/50秒のシャッターが切れるようになります。
きちんと構えれば手持ち撮影も可能です。






光の色を選ぶ
 上の説明で「なぜスポットランプに付属の電球をそのまま使わないの?」と思われた方は思います。これは主に色温度の問題からです。
 この説明をする前に、まずは光の話をしなければなりません。いわゆる白色光(太陽光)はプリズムで分散したとき
                              
に分かれることをご存じかと思います。この色の違いはそれぞれの光の波長の違いからくるもので、この波長の違いを色温度というもので示します。
赤や橙なら3000K程度、緑なら4000K、最も波長の短い藍や紫なら7000Kというわけです。
太陽光の場合には赤から紫までバランス良くこれらの色を含んでいて、その色温度の平均が5000〜6000K程度となります。
 ここで下の写真を見てください。照明はいずれも、表記の照明+室内灯の組み合わせになっています。

 昼光色蛍光管(+室内灯)
 通常の蛍光灯(+室内灯)   ハロゲン球(+室内灯) 
最も太陽光に近い色合いかと思います。 特に陰になっている部分や、暗い部分が緑色っぽくなって
います。
全体が赤からオレンジ色に染まっている感じです。

 ここで最も勘違いしやすいのは、照明器具で赤い光とは、赤の強い光でなく緑や青、藍、紫を含まない光のことです(色温度の平均値は3000K程度)。同様に緑色の光とは青、
藍、紫の不足している光(色温度平均4000K)ということなのです。
 バランスのとれていない光で撮影しても、フォトレタッチソフトで修正すればいいとか、カメラの補正機能を使えばいいと思っている人はお気をつけ下さい。
これらの補正は不足している光の成分を無理して増幅することなのです。ちょうどこのページの最初で取り上げたように(感度ISOを1600にするのと同様に)、増幅した色の成分は画
像の荒れを生じさせます。
 確かに一番右の写真のように、暖かい色合いの画像は決して悪くないです。でも基本はバランスのとれた光で撮影することです。バランスのとれた画像なら、逆に青や紫の色を
落としてすぐに暖かい色合いの画像に変換できますよ。


具体的に照明としては何が良いか
 照明器具としておすすめなのは値段や取り扱いやすさから、やはり蛍光灯でしょう。水銀灯や白色LEDも候補ですが現在の状況では使いづらいと思います。
また人形写真ということを考えれば小型のE26型スタンドに組み込む方法がベストでしょう。蛍光管の選択としては色温度が5000K以上の蛍光管を使うこと、色温度がパッケージに
記されていない場合が多いですが、その際には「昼光色」「高演色」「白さがひきたつ」「晴天下の明るさ」などの表現が参考になるかと思います。同じメーカーで似たような商品があ
れば赤より緑を、緑より青のパッケージを選べば良いかと思います(ちょっとだけ高いですが)。商品例としては、私が使用しているTOSHIBAネオボールZ(EFD21ED)を紹介しておき
ます。
 実際のところ、これでも色温度は十分でなく、陰の部分ではやや緑色になってしまいます。本当の昼光色は(快晴の日の昼間)では陰の部分がやや青みを帯びていますが、まあ
通常はこれで十分でしょう。
 発展としては、熱帯魚屋さんに行くことをおすすめします。そこには南洋の海の青さを表現する7000Kの光、熱帯アマゾンの6000Kの光、緑色植物育成に向いた5000Kの光・・・・、
赤い植物育成に向く3000Kの光など、通常の蛍光灯(4000K)意外の様々な色温度の照明があります。色温度と画像の関係を突き詰めたいならぜひどうぞ!


まとめ
 人形写真を撮るうえで、どのような照明を準備したらよいのでしょうか、以下が私のまとめです。
(1) 焦点距離がfでシャッタースピードが1/f秒を下回る場合(一般には1/50秒以上のシャッタースピードになるほど暗いとき)には、三脚を使ってセルフタイマーで撮影する。
(2) 手ぶれを避けるためにISO(感度)を上げない。カメラによって違うがISOは400を超えると暗い部分から画面にノイズが発生する。
(3) 基本は照明を明るくすること、室内照明に加えて20W×3程度の蛍光灯と反射板があると手持ち撮影も可能になる。
(4) 照明器具は昼光色(5000K以上)の蛍光管を使うこと、それ以外では色バランスが悪くなる。

とりあえずはそんなところです。光の照射角度などセッティングの詳細については、また別途ということで。


miho (石塑粘土 52cm 2005)

2006.09
camera: Canon Eos Kiss Digital X + Sigma DC17-70/ graphic tool: Ichikawa Daisy Collage