球体人形の塗装とメイク
How to make a doll?

第2シリーズは「球体人形の塗装とメイク編」です。
 最初にお断りしておきますが、極めて実験的で発展途上の塗装方法です。それなりの良さはあると思いますが、経験のない方は真似しない方が良い結果が出ると思います。
手間もかかるし結構費用もかかります。部屋もものすごーく汚れます。それでもチャレンジしたい方はぜひお読み下さい。けど当方は一切責任を持ちませんのでご了解を。


●2007.04.29 天気:晴れ
 世間はゴールデンウイーク、ところが私の場合には、どういうわけか、
とびとびにしか休みが取れそうにありません。それならば遠出はあきら
めて人形作りに集中してみますか。
                      ▲藤の花も満開


1 基本塗装
 球体関節人形の製作をはじめてみると、サイズやそれまで扱っていた
プラスチックやレジンとは素材の性質が大きく違うことから、塗装にも一
工夫が必要だと考えるようになりました。
 工夫した点は次の2つです。
@肌の透明感を出すこと・・・石こうはプラスチックやレジンに比べ、光の
透過率が低く、結果として肌の柔らかさが出てこないような気がします。
A均一でない肌色の表現・・・皮膚は脂肪や血液の有無、日焼けなどの
要素から、身体の各部分でその肌の色にかなりの違いがあります。
 具体的には素体の上に何層もの塗装を繰り返すことでこれを可能と
しました。手順は以下をご覧下さい。
 右が基本塗装終了後の状態です。
 肌色スプレー一発に比べ、質感、透明感が格段にアップしています。


 なお文中に出てくるスーパークリアーつや消しとは、右の仕上げ塗料の
ことです。模型屋さんで入手できます。





A 肌の下地づくり
 肌の下地をつくります。この段階では赤みをつけることはしません。理想は純粋なタンパク質の表現です。(白身魚の色を想像してね)


1 使用する塗料等は3種類です。これらを混合して
 下地塗料とします。混合レシピは下にあります。
2 混ぜた下地塗料をエアブラシで塗ります。必ず下の
 ような吸い上げ式のタイプを使用しましょう。*1)
3 ちょっとした手の汚れがすぐに人形に移ります。素手
 でさわるのは避けたいです。

下地塗料の混合レシピ
 リキテックス・モデリングペーストとリキテックス・ジェッソを7:3の割合で混合、アンブリーチドチタニウムを適量混ぜる。
その後、スプレーできる程度まで水を加えて使用。
・モデリングペーストとジェッソの配分は好みで変更して良いと思います。ジェッソを増やすと塗膜は強くなりますが、やすり
がけはしにくくなります。
(吉田良先生が同じような配合をしていることを後で知り、ちょっと感激しました)
・アンブリーチドチタニウムを使用して着色しましたが、この絵の具はちょっとオレンジをおびたライトグレーです。ほんの少し
加えるだけで十分です。
 この塗料の欠点はエアブラシをすぐに詰まらせることです。本当によく詰まります。上にも書きましたが必ず吸い上げ式の
タイプを使用して下さい。この手のものならば針金一本ですぐにつまりを取り除くことができます。あとはこまめに清掃をして
下さい。(それでも良く詰まります) また微細な粉で部屋全体が白っぽく汚れます。塗装ブースがほしいです。



*1)使用しているのはタミヤバジャー250Uエアブラシセット(¥2400円程度)です。他社からも同程度のものが販売されています。





4 スプレーしたら十分に乾かします。合計3回スプレー
 します。
5 3回スプレーしたらスポンジヤスリ(細目)等で研きま
 す。そして更に3回スプレーしヤスリがけします。
6 計6回の塗装で、手足や顔のモールドが甘くなって
 いるはずです。ここでシャープに削りなおします。




B 陰影の表現
 関節部分(皮膚にしわのよる部分)を中心に影をつけてゆきます。また日焼けもこの段階で表現すると良いでしょう。


7 まずはスーパークリアーつや消しをスプレーし、模型
 用塗料やリキテックスで塗装します。*2)
8 塗料の量変えることのできるエアーブラシを使いま
 す。塗料はごく薄く! *3)
9 関節部分にスプレーしてゆきます。作例では111キャ
 ラクターフレッシュ:112キャラクターフレッシュ=3:1
 の割合で混合して使用しています。
*2)一般にはリキテックスを使われる方が多いようです。何より失敗しても水で拭けば元にもどりますから。
 模型用アクリルカラーを使う利点は2つ、調色済みのものが簡単に入手できること、粒子が細かくエアブラシに向いていることです。
 注意点としては、ともかく濃くなりすぎたらおしまいです。見えないほどにごく薄く!

*3)使用しているのはウエーブのもの、コンプレッサーとセットで特売されていたものです(¥20000円ぐらいだった)



9 次に影を強調したい部分にスプレーしてゆきます。
 作例では51フレッシュをごく薄くして使用しています。







C 透明感の表現
 手のひらを太陽にかざすと、皮膚が透けて血液の色が浮かび上がります。そんな肌の透明感を表現したいと思って工夫しています。


1 透明層をつくるために透明な盛り上げ材と樹脂粘土
 を混合して使用します。レシピは下にあります。
2 吸い上げ式エアブラシで吹き付けてゆきます。合計
 3回スプレーします。
3 甘くなったモールドをシャープに削りなおします。


半透明塗料の混合レシピ
 ホルベイン・ジェルメディウムと樹脂粘土・コスモスを4:6の割合で混合し、スプレーできる程度まで水を加えて使用。
リキテックス社製でも良いと思いますが、たまたま入手したのがこれだったので使用しています。
・樹脂粘土は透明度が高い方が良いので、商品名グレースの方が良いかも、皆さんも最適な組み合わせを探してみてください。
 この半透明塗料の欠点は粘性が低く、垂れやすいことです。垂れることのないよう、塗膜は薄くすることが必要です。
またジェルメディウムは接着剤としても使用可能なため、ちょっとしたほこりもすぐに取り込んでしまいます。ほこりの出ない環境を
確保したいところです。また下地塗料以上に部屋が汚れます。よい子はおとうさん、おかあさんに叱られないよう、掃除をきちんとしようね。


4 血液の表現は47クリアーレッドと48クリアーオレンジ
を3:1に混合して表現します。
5 まずは関節部の血管の集まっている部分を塗装
 します。
6 血液の流れを表現します。半透明層の上に血管が
 浮き上がる感じになります。





7 色が濃くなりすぎたら、シンナーで拭き取ってやりな
 おします。
8 完成したら、再度スーパークリアーつや消しをスプレ
 ーし、塗料を定着させます。
9 乳首部分については吹きつけでなく、小さな筆で
 少しずつ着色するといいでしょう。


10 半透明塗料を全体に3回程度吹き付けます。4*)
 もしほこりがついたら、こまめに取り除きます。
11 途中で修正すべき点が見つかったので、薄めた
 塗料を用いて修正します。
12 最後にスーパークリアーつや消しを2回塗って終わ
 りです。5*)

4*) 身体の各部分で吹きつけ回数を調整します。
  指先や顔は1回にとどめます、モールドが消えてしまいますので。一方、皮下脂肪層の厚い腹部や太ももといったところは4〜5回吹き付けます。

5*) 半透明塗料は厚く吹き付けるに従って、次第に白っぽくなってゆきます。スーパークリアーつや消しを吹き付けると、アクリル成分が染みこみ透明度が戻ってきます。
  また耐水性を持たせ、汚れがつかなくなるはたらきもあります。





今回使用したもの: ウエーブ製ハンドピースおよびコンプレッサー、
            タミヤ・バジャー250Uエアブラシ
            スポンジヤスリ(細目)、スーパークリアーつや消し
            リキテックス・モデリングペースト、リキテックス・ジェッソ
            ホルベイン・ジェルメディウム、日清不動産・コスモス
            リキテックスカラー、模型用アクリルカラー
       他にカッターナイフ、筆、針金等

今回の作業のために購入したもの:
            スポンジヤスリ(細目、\504)
            スーパークリアーつや消し(¥514)
            リキテックス・モデリングペースト(500ml、¥1840)
            リキテックス・ジェッソ(50ml¥310)
            ホルベイン・ジェルメディウム(500ml¥1950)
            日清不動産・コスモス(¥872)
            リキテックス・アンブリーチドチタニウム(¥253)
            模型用アクリルカラー(no111、112、51、47、48、各¥120)
累計  6,843円
今回の作業時間=16.5時間 累計 16.5時間











2 細部の塗装とメイク
 特に何も説明する必要はないかもしれません。特別変わったことをして
いるわけではありませんので。
 とはいうものの、最後の仕上げがすべてを台無しにすることもあるわけで
慎重に事をすすめます。ということで模型用アクリルカラー好きな私も失敗
してもすぐに洗い流せるリキテックスを使います。


 



A 墨入れと爪の表現
1 薄く溶いたリキテックス・ロー シェンナで足指の間に
 「墨入れ」します。
2 チタニウムホワイトに少量のアクラレッドとアンブリー
 チドチタニウムを混ぜたもので爪を表現します。 
3 爪の根本部分に半月状の白い部分がありますが、
 これは薄めたチタニウム ホワイトで表現します。

4 ミスターカラー・クリアーにホワイトパールを少量混ぜ
 た爪部分の上塗り塗料をつくります。
5 これを何回かに分けて少しずつ爪を盛り上げるように
 塗ってゆきます。




B 顔の細部塗装

1 チタニウムホワイトに少量のアクラレッドとロー シェン
 ナを混ぜたもので唇を表現します。

2 チタニウムホワイトを薄く溶き、縦に筆を使って明るい
 部分を表現します。


3 ロー シェンナに少量のアクラレッドを混ぜ、目の縁の
 部分を描いてゆきます。

4 0.5mmのシャープペンシルを細かなペーパーでとが
 らせます。これで眉毛や眉毛を表現します。
5 一本一本、眉毛を描いてゆきます。失敗したら消し
 ゴムで全部消します。

6 下のまつげを描いてゆきます。こまめにペーパ−が
 けして芯をとがらせます。
7 色づけのため、ごく薄く溶いたローシェンナを塗りま
 す。


8 全体にスーパークリアーつや消しをスプレーして、
 塗料を定着させた後、まつげをつけます。
 


9 ドールアイをつけ、唇に再びクリアーを塗れば完成
 です。





今回使用したもの: 耐水ペーパー(細目)、スーパークリアーつや消し
            リキテックスカラー、模型用アクリルカラー
       他にカッターナイフ、筆、シャープペンシル等

今回の作業のために購入したもの:
            リキテックスカラー・チタニウムホワイト、アクラレッド、ロー シェンナ
                                          (各¥253)
            模型用アクリルカラー・クリアー no46(¥120)
            ホワイトパール パウダー(\630) 
累計  8,352円
今回の作業時間=3.0時間 累計 19.5時間