LED(ちょっとだけ紫外線の話も)


 最近では、安価になりつつあるLED照明を省エネ目的で購入する方も多いかと思います。照明機材のなかで最もひろまっている
蛍光灯との違いを中心にまとめてみました。なお内容は、このサイトの「照明1」「照明2」のページをご覧になってからの方が分か
りやすいかもしれません。


1 スペクトル

 太陽光線をプリズムにかけると、光は7色に分解します。

                          
 更に詳しく分析すると、右のようなグラフになります。横軸は光の
波長(色)、縦軸がその波長の光の強度をあらわします。
 波長が短いのが、長いのが、またその外側には人間の眼に
見えない紫外線と赤外線があります。

 但し、実際に太陽から地表にたどり着く太陽光線は、地球大気の
吸収によって、特に波長の短い光が少なくなっています。
(右図ではグレーの部分)
 ちなみに空が青いのも、大気が
の光を中心に吸収しているため
です。

 大量の紫外線は有害であることが知られていますが、大気(オゾン
層)はその多くを吸収してくれています。また紫外線はヒトの日焼だ
けでなく、キャスト製ドールの黄変の原因となっていることもご存じか
と思います。



2 蛍光灯

 太陽光は連続した波長の光をもっているので「連続スペクトル」と
いいます。これに対して特定の原子が放つ光を「線スペクトル」とい
います。
 たとえば水銀のガスに高い電圧をかけてやると右図のように特定
の波長の光だけが出てきます。もちろんこのまま照明に使用すると
不自然な光になるし、有害な紫外線もさえぎられていません。
 この水銀ガスをガラス管に封じ込め、そのガラス管の内側に蛍光
塗料を塗ったのが蛍光灯です。蛍光塗料によって特定の波長の光
が分散され、連続スペクトルになります。

 蛍光塗料の種類によって、もしくはガラス管内のガスを変えること
によって、蛍光管の特性を変化させることができます。
3 LED
 最近、徐々にひろまりつつあるLED照明は、将来照明の主流に
なるに違いありません。

 LED(発光ダイオード)による照明は、2つのタイプにまとめられます。
1つは
の光の三原色を放つ発光ダイオードをまとめたもの
で、テレビやPCディスプレイなどに利用されています。
 もう1つは
の発光ダイオードのみを使用したもので、右図のような
スペクトルをもっています。
 この青色ダイオードを黄色の蛍光物質に反射させてやると、光の
スペクトルが分散し、赤から緑の波長の光が生じます。これがLED
照明の仕組みです。

 では実際に蛍光灯とLEDではどちらが優れているのか?
カメラのホワイトバランスを太陽光にして、蛍光灯とLEDで撮影してみました。

 
蛍光灯(パナルックボール レフ型 三波長昼光色)


 
LED(よく分からないメーカー、480ルーメン、980円)



 結果としては間違いなく蛍光灯の方が色の再現性が良いです。何の補正もなしに太陽光に近い表現が得られます。
一方でLEDの方は激安ということもあるのかもしれないけれど、全体に緑の色合いが強く、安価な蛍光灯みたいな発色です。
これは蛍光灯とLEDの差というより、メーカーの技術力の差のほうが大きいのかも・・・。
 少なくともしばらくは、激安LEDについては色の再現性が良くないことを覚悟して購入した方が良いでしょう。
 ただ最近のカメラは賢いので、ホワイトバランスをオートにしてやるだけでちゃんと補正してくれます。でもモードにLED補正
なんてものがあると良いかも、今後のカメラメーカーに期待します。



4 紫外線

 それでもわが家ではLED照明化をすすめています。それは省エネ、長寿命という理由のほかに、紫外線対策という目的が
あるからです。
 ちゃんとした美術館や博物館では蛍光灯を照明として使いません。暖色系のタングステンランプなどを、明るさを落として
使用しています。それは所蔵品に当たる紫外線をできるだけ少なくするための工夫なのです。
 蛍光灯は紫外線を出しています。従って程度こそ違ってもキャスト製ドールの黄変は起こります。印刷物の退色もすすみます。
繊維の強度も落ちます。
 ですがLEDの場合、調べたところほとんど紫外線が出ていません。ですから激安でもその価値は十分にあると思ってます。

 ついでにいうとLEDのおかげで美術館の照明も変わるのではないかと期待しています。現在の暗い暖色系の照明は、画家が
暗いアトリエでろうそくの灯りをたよりに描いた画ならぴったりだと思います。でも明るい太陽の下で描かれた地中海の風景は
やはり太陽光に近い照明が向いていると思います。暖色系の照明に照らされた絵が、画家のイメージした空や海の色を正確に
表現しているとはとても思えません。