修復とカスタマイズ
Fairy Land Ari の場合





 ネットオークションで手に入れた Fairy Land の人形。中古で説明書も付属しておらず、同社のサイトから Ari という、初期の製品ではないかと推測。
黄変ありとのことでしたが、とても安く出品されていたので修復するつもりで落札しました。




黄変の状況

 
 実はこの人形、実際に手に取るまでは、どこのメーカーのものかも
分かりませんでした。箱も説明書もないので、梱包のプチプチを取り
外し、メーカーと商品名のラベルがないかと探します。
 ヘッドの裏側に Fairy Land の文字がありましたが、人形の名前は
どこにもありません。

     

 ネット上で検索すると韓国のメーカーで 2005年創業とか。商品の一
覧から、同社の初期の製品で Ari ではないかと推測します。おそらく
は製造から5年ぐらい経っているのではないかと思います。
「黄変あります」と出品者から知らされていたのですが、自分としては
思ったより程度は良かったです。
 うまくカスタマイズできたら、とってもお得な買い物になりそうです。
 
 
 全体をくまなく眺めるとパーティングラインが手つかずのまま残っ
ています。また前オーナーのメイク跡も残っています。まずは人形
を綺麗にしてあげるところから始めます。



1 まずは全身を中性洗剤で洗います。綺麗に使用され
 ていたようですが、念のためです。 
2 パーティングラインをカッターの刃を立てて削ってゆ
 きます。
3 全体を400番の耐水ペーパーで磨いてゆきます。
 後で行う塗装の下準備として、大切な作業です。

4 メイク跡を除きます。塗料はMr.カラーだと思います
 が、溶剤より「塗料はがし」の方が強力です。
5 綿棒で塗料の残っている部分に「塗料はがし」を塗り
 磨いてゆきます。
6 作業が終わったら、また全てのパーツを中性洗剤で
 洗います。


 ここでこのドール の黄変の状況です。
 製造後5年でどれだけ黄変しているかを、各パーツで比較してみました。
・下の画像左は胸元の状況です、この部分は顔のようにメイクしないので、はいちばん黄変しやすい場所だと推測できます。
・真ん中はウエストの内部パーツです、光は全くあたりませんが少し黄変しています。
・右の画像は脇の下のパーティングラインを消した部分。1mmほど削り取ったので、レジン本来の色が確認できるはずです。


 市販のレジンキャスト製ドールはどれも黄変と無関係ではありません。
 黄変のいちばん大きな原因は紫外線ですが、紫外線の影響がなくても、少しずつレジン自体の化学変化がすすみ、徐々に黄変して
ゆくと言われています。
 レジンキャストドールはどれも高価なので、最近では多くのメーカーが無黄変タイプのレジンを使っていますが、実際にはどんなレジン
も黄変してしまうのが事実のようです。永遠の命を保つのは難しいよね
・・・。

次回の更新は顔部分のカスタマイズと修復塗装の予定です。






ヘッドのカスタマイズ

 適当に14mmのアクリルアイとウイッグをつけてみました・・・。
 うーんもっと可愛くなるのにな〜。
 どうせならカスタマイズまでやってしまいましょう!
黄変の修復は全塗装が原則なので、削りだけでなくパテ盛りも思う存分できます。

point1 頬をふっくらとさせる
point2 目尻を下げて、ちょっとだけ垂れ目に
point3 細すぎる鼻筋を、丸みをおびた鼻に

 全体としてクールな感じから、ちょっとふっくらとした優しい感じを目指します。





7 まずは鉛筆で予定線を書き入れます。
 (うすくて見えませんが)
8 2剤混合型のエポキシパテで肉不足を補います。
 ここは素材に食いつくエポキシパテが良いです。
9 240番、400番の順で耐水ペーパーをかけます。必要
 に応じてリューターで磨きます。



 予定のイメージに近づきました。全体に優しい感じになったかと思います
 ですがまだ微細な凹凸や微妙なカーブのずれがあるので、この後、微調整に入ります。




10 まずはサーフェーサーを吹き付け、全体を均一に
 します。キズや凹凸が分かりやすくなります。
11 その後はパテ盛りとサンドペーパーの磨きを交互に
 行い、少しずつ理想のラインに近づけてゆきます。

*)グレーのパテを使っていますが、手元にあったも
 のを使っているだけです。本当はホワイトのものが
 いいです。



 とりあえずヘッドのカスタマイズは完了。 この後、若干の修復をします。

 今回は全塗装をしたうえでウレタンによる表面保護と、UVカットの塗装を行う予定です。
これまでの経験から、表面塗装の厚さは 0.5mm 程度になります。ですから凹凸の組み
合わさる関節部分では、この厚みがじゃまをしてパーツがまらなくなってしまいます。
 そこで次に関節部分の修正をします。



12 関節はぴったりしていて、遊びが全くありません。
13 リューターで関節の凹み部分を磨いてゆきます。
 一方で凸部分も削って、0.6mmの遊びを作ります。

14 再びサーフェーサーをスプレーした後に塗装に入り
 ます。
15 Mr.colorの 111で全体を塗装。次に 112を使い
 立体感を出します。
16 この基本塗装を全てのパーツで行います。



 素材のレジンは塗膜に完全に被われ、この時点で黄変については、全く感じられなくなります。
ただこのままだとちょっとこすれたりすると、表面の塗料がはげ落ちてしまいます。そこでこの
上にウレタンでコーティングを行います。ウレタンは自動車の表面塗装にも用いられるもので、
おそらく塗料のなかでは最も塗膜が強いと思います。



17 ウレタン塗料を全体に吹き付けます。1回で0.1mm
 3回で0.3mmの塗膜ができます。
18 Mr.color 111をベースに 112を混ぜ、頬や唇、目
 の周りをなど、赤みのある部分を表現します。
19 Mr.color 51 で眉の下、あごの下、まぶたの部分
 など、影になるところを強調、立体感を出します。





20 Mr.color CK4で目の周りと唇周辺、鼻の穴など
 を強調します。
21 Mr.color 119で二重やアイラインを描き、口の中
 に流し込む感じで、全体をシャープに仕上げます。
22 Mr.color 131で眉毛、睫毛を描きます。ここがい
 ちばん緊張します。





23 Mr.color 112で唇を表現、また CK4を少し混ぜ込
 んで唇の輪郭を描きます。爪も同様に描きます。
24 Mr.color スーパークリアーつや消しUVカットを
 全体に吹き付けます。
25 Mr.color スーパークリアーUにホワイトパール
 を少量混ぜ、唇と爪をグロスに仕上げます。





 このあとあらためてウイッグとグラスアイを選び直し、これに合う睫毛を取り付けます。
これで全ての作業が終わりました。黄変は修復できたし、オリジナルとは違う魅力があって自分では満足な仕上がりです。



 ですが、黄変などの経年変化はこれから全く起こらない訳ではありません。ウレタン塗料も紫外線で少し黄変します。
(古い自動車は少し黄ばんで見える) そのために上からスーパークリアー UVカットを吹き付けました。ですがスーパー
クリアーのベースになっている、アクリル塗料自体も黄変すると聞いています。・・・本当に終わりがない。
 自分自身では汚れなどが気になった段階で、表面のスーパークリアーは洗い流し(内側のウレタン塗料は残る)、メイク
しなおしてまた表面にスーパークリアーを吹き付けるということを繰り返すのがいちばんだと思ってます。