球体人形の制作
How to make a doll?


 こちらは「球体人形の制作・改良編」です。型取りした素体をベースにしていますので、型取りについて興味のある方は、第1シリーズの人形制作講座をお読みになって、
概要をご理解下さい。
 制作方法は1作ごとに少しずつ変わってきていています。制作方法自体が完成されたものでなく、今も試行錯誤を重ねています。





●2013.03.03 天気:晴れ

 今日はひな祭り、那須で買ってた小さな雛人形を飾ります。
 型どりした球体関節人形の素体パーツが完全に乾いたので、
今日から新作DOLLの制作に入ります。
 私のつくる球体関節人形は、おおざっぱな型から抜き出した
パーツをベースとして加工してゆきすので、ビスクドールやレジ
ンキャストドールと違い、一つ一つが全く異なった個体になりま
す。
 毎回全く同じものを作りたかったら、レジンやイージースリップ
などを使えば良いわけで(こっちのほうが簡単)、これは考え方
次第です。

 今回のDOLL作りの目標は、よりなめらかで自然なフォルム
です。できれば5月のデザインフェスタに間に合わせたいと思っ
ています。
                   


1 パーツの歪みと収縮の調整

 一般に書籍で紹介されている球体関節人形の作り方によれ
ば、まずは人形自体の形状を完成させてから、人形を切断し
関節を作りす。しかし私の場合にはきっちりと関節を完成させ
るところから始まります。
 型どりした素体パーツはレジンと違い、乾燥過程で収縮や
歪みを生じます。まずはこれを修正するところから始めます。



1 膝関節の合わせをします。凹みがあれば柔らかく
 した粘土で修正します。
2 関節に余裕がなければ削ったりサンドペーパー
 で磨きます。

4 乾燥過程で腹部のパーツが歪みました。膨らみが
 なくなり平坦になっています。
5 粘土を盛り、サンドペーパーでならします。この
 過程で使うサンドペーパー100番程度です。

6 股下より下の3パーツを比較したら、3mmぐらい
 左足が長いです。これも収縮と歪みの影響です。
7 そこで左足全体を少しずつ短く修正します。下は
 足首の関節です。
8 この調整は必要があれば手のパーツでも行いま
 す。

9 乾燥過程でヒビの入ることもあります。大きなヒビは
 エポキシ接着剤をまずは塗り込めます。
10 そのうえで粘土を盛ってゆきます。今回修正に使
 った年度はプルミエとプレミックスを混ぜたものです。


   11 ヘッド部分にはネオジムマグネット(直径5mm)を仕組みます。

   





        修正部分を100番ぐらいのサンドペーパーで磨き終わったパーツです。

           

             






●2013.03.26 天気:晴れ

 今年は冬が長いなと思っていたら、一気に春。
 何かここのところ夏と冬が長くて、春と秋は一気に通り過ぎて
ゆくような気がしませんか?
 一番良い季節なのになー。
                   


2 穴あけ加工と組立

 これもとっても大切な過程です。
 固定関節のフィギュアと違って、どんな姿勢でも破綻しないように
作品のバランスを取らなくてはなりません。


1 腰の関節です。穴を開ける部分にマジックで印を
 つけてゆきます。
2 ドリルで大雑把に穴をあけてゆきます。基本はま
 ず小さな穴を開け、少しずつ大きくしてゆきます。
3 最後はカッターナイフとやすりで形を整えてゆきま
 す。

4 次は股関節です。ここが一番難しいかも。立った
 姿勢、座った姿勢、足を広げた姿勢・・・
5 ・・・それぞれの姿勢をチェックし、穴を開ける場所
 を決めてゆきます。
6 この関節で上下90°左右30°の自由度が確保
 できています。

7 前回同様、印をつけたところにドリルで穴をあけて
 ゆきます。
8 真っ直ぐな部分は、できるだけ模型工作用のこぎ
 りを使うほうが仕上がりが綺麗です。
9 最後はカッターナイフとやすりで修正します。

10  こんな感じで股関節出来上がりました。あとの
 関節も同様なので、完成写真だけ載せておきます。

 膝  肘

    ちなみに穴の大きさですが、手から腕を通る上体のラインは直径3から4mm程度、
   足から太もも、頭に通じる胴のラインは4から6mm程度です。私の場合には直径2
   mmぐらいの丸ゴムを使っていますが、このゴムを4本重ねにして通る直径です。
    レジンだともっと太いゴムが必要ですが、粘土の人形は軽いので、関節をきちんと
   作ればちゃん自立してくれます。

    次は手足のゴムを取り付ける場所の加工です。


11 ピンを通すための穴を開けます。直径は2.5mm
 です。
12 紐を通す場所を模型工作用ののこぎりで、切り
 出してゆきます。
13 ボンドをしっかりと塗った直径2.5mmのアルミのピン
 を挿入します。

14 紐を通した後、ピンを通した穴を粘土で埋めて
 しまいます。
15 直径2.0mmのアルミ線を折り曲げて、下のような
 金具(Cカン)を4つつくります。
16 この金具を紐につなぎ、外れないようにペンチで
 締めます。

    次にゴムを通します。そのためにはゴムの長さを知る必要があります。
   まずはパーツを並べてみて、おおまかにゴムの長さを計算します。たとえ
   ば右手首のCカンから左手首のCカンまでが28cmだったとしたら、その3/4
   の21cmをゴムの長さとします。
    ゴムは最大2倍の長さまで伸びますから、これを基準に調整するのが
   良いでしょう。

15 左手首から右手首まで、ゴムを通してゆきます。
 2つに折り曲げた針金が必要です。
16 今度は右足首から左足首まで、ゴムを通します。

17 そのうえで中央部分を引っ張り出して、紐を取り
 付けます(黄色)。これが頭に繋がります。

18 すでに頭には金具を引っ掛ける直径2.5mmの
 アルミ線が埋め込まれています。
19 ここに引っ掛ける金具(Sカン)をつくります。
 (直径2.5mmのアルミ)
20 胴体から伸びる黄色の紐を2つ折にした針金で
 引っ張り上げてこの金具に引っ掛けます。





3 全体のフォルムの修正

 ここから先がいちばん楽しいところかも。
 一応それなりに形は出来上がっていますが、ここから人形の
完成度を高めたり、個性を作っていったりします。


    



 立たせているだけでなく、様々なポーズを取らせてチェックします。生で見るだけでなく、
写真を撮って画面上で確認したりすると、冷静に欠点を見つけたりすることができます。
 今回は特に太ももがボテっとした感じで気に入らないな・・・。





1 黒いところは削りたい場所、赤いところは粘土を
 更に加えたいところです。
2 印をつけた場所の修正をします。そしてまた全体を
 チェックします。
3 黒と赤の印を入れて再度修正・・・。この作業を
 何度となく繰り返して完成度を高めます。



    自分自身で今現在いちばん美しいと思う状態に近づけていった結果です。
      8.5等身でやや下半身にボリュームのあるボディライン。
      いつもながらSDより小顔
      全体バランスはDDに近いけど、より人間に近い下半身
   どの1/3スケールの人形とも違うけど、SDやDDの服が着せられちゃうのが、自分でもすごいと思う。

     









●2013.04.16 天気:晴れ

 4月の始めにデザインフェスタのオフィスから出展者パスやら
駐車券などが送られてきました。もうあと1月ちょっとでデザイン
フェスタの本番、さて今作っている人形は間に合うのかな?
 ほかにもやることが多いので、ちょっと危なくなってきたかも。
                   




4 マグネット加工と微調整

 まずは人形をばらばらの状態に戻します。こまかな部分を修正するには、この
ほうが都合が良いからです。
 マグネット加工は自分のつくる人形に全てついている機能で、人形の固定や装飾
にとても役立ちます。





1 ヒビ発見。この場合、問題の部分を大きく削り、エ
 ポキシ接着剤を流し込みます。
2 接着剤が乾く前に粘土を盛り付け、乾いたら削り
 ます。この修正が最も頑丈です。

3 首の部分に直径5mmの穴を2つ開けました。ここに
 エポキシ接着剤でネオジム磁石を接着します。
4 乾くのを待って微修正。金属の壁なら、この磁石
 で簡単に人形を立たせることができます。

5 耳たぶに直径2mmの穴を開けます。ここに鉄製の
 木ネジを埋め込みます。
6 この上から粘土を盛り、乾いたら平らに修正しま
 す。これでマグネットピアスが使えます。

7 このような加工をあちこちで行います。下半身は
 4箇所、腰部分の前後左右です。
8 上半身も脇腹とバストトップの4箇所。いずれこれ
 を生かしたセクシーな衣装などを作りたいと思います。

9 バストトップは木ネジでなく、直径2mmのボールベ
 アリングを使います。
10 直径2mmの穴を開けたら、接着剤を塗り、そこに
 ボールベアリングを取り付けます。
11 上に少量の粘土を盛って、乾いたらバストトップ
 の形を整えます。



12 全ての加工と修正が終わったら、全体をヤスリで磨いてゆきます。
 240番ぐらいがちょうど良いです。左が加工前、右が磨いた後です。






13 一番手間取るのが手足の指です。まずは細かな傷
 を粘土で埋め、ヤスリで磨きます。

14 つるんとした状態になったら、シワや関節の加工
 をします。デザインナイフが活躍します。
15 爪は簡単にその輪郭を削り出します。粘土が柔
 らかいので慎重に。



16 次に顔。アイホールの輪郭を削り出します。ここも
 デザインナイフが主役です。
17 裏側から14mmのアイサイザーでアイの受けをつ
 くります。極力アイホール周辺を薄く整形します。
18 完成を予想しながら修正します。ここは頬の
 丸みを作っています。



19 240番の紙ヤスリで磨き、細部の修正をします。眉毛を鉛筆で書いたり。アイを入れたりして
 具合をみます。左が加工前、右が修正後です。

次回はいよいよ表面加工と塗装の段階に入ります。


next