球体人形の制作
How to make a doll?


 こちらは「球体人形の制作・改良編」です。型取りした素体をベースにしていますので、型取りについて興味のある方は、第1シリーズの人形制作講座をお読みになって、
概要をご理解下さい。
 制作方法は1作ごとに少しずつ変わってきていています。制作方法自体が完成されたものでなく、今も試行錯誤を重ねています。





●2013.04.04 天気:晴れ

 さてデザインフェスタまであと1ヶ月ほど、そろそろその準備に
本格的に取り組まなくてはなりません。
 そのため、今つくっている新作人形の制作は予定より遅れ気
味。デザインフェスタでお披露目をしたかったけど無理かな。

 今回の更新は表面仕上げからメイクまでの最終過程をご紹
介します。
                   


1 表面仕上げ

 全体の造形が終わり、最後に400番のサンドペーパーで磨き
上げました。ここから表面仕上げの工程に入ります。
 サンドペーパーで磨き上げると粘土の表面が毛羽立っていま
す。
 普通はそれを抑えるために、多くは固く絞った雑巾などで表面
を拭くのですが、自分の場合にはここでひと工夫。薄めたイージ
ースリップで毛羽立ちを抑え、また表面硬化を促します。



   


1 イージースリップの原液を水で5倍ぐらいに薄め
 ます。
2 これをさらっと全体に塗ってゆきます。あくまでも
 最初は毛羽立ちを抑える程度で。

   * 一回塗ると表面の細かな傷などが浮き出てきます。
     これを修正します。


   

3 柔らかく溶いたプレミックスをカッターナイフの
 刃先で傷に塗りこみます。
4 乾いたらまたイージースリップを塗ります。この
 作業を何度か繰り返します。


   * イージースリップは濃すぎるものを1度にたくさん塗らず、何度か繰り返した方が良いかと思います。
    以前、濃い目にして表面がひび割れたこともありました。
      イージ−スリップはプレミックスとの相性が良く、表面を固くしてくれるので大変重宝してます。


5 表面が硬くなると、細かな作業がやりやすくなりま
 す。アイホール周りに手を加えます。
6 仮のアイ、ウイッグ、鉛筆で眉を入れて、全体のバ
 ランスをとりつつ、デザインナイフを入れます。
7 粘土を盛ったら、イージースリップを塗ります。
 この段階で瞼は極力薄くします。(1mm以内)

8 1回塗りの状態です。このあとはイージースリップを
 エアガンによるスプレーで塗り重ねます。
9 最終的には300番から400番ぐらいのサンドペー
 パーで磨き上げてゆきます。


   * 平坦に、すべすべになったら完了です。

   






●2013.05.11 天気:晴れ

 デザインフェスタ1週間前、展示テーブル完成。
 でも一方で新作の人形の方はやっぱり間に合いませんでした。

 イベントの出展は初めてなので、ここからは忘れ物がないよう、
慎重に準備をすすめることを優先しようかと思っています。
                   


2 着色

 ベースカラーは2色、リキテックスのアンブリーチドチタニウム
とライトポートレイトピンクです。これを 3:1 ぐらいに混ぜ合わせ
るとMr.Collor 111 のキャラクターフレッシュ(1) に近い色合いに
なります。(うすい肌色)
 これにウルトラマッドジェルメディウムを混ぜ、全体量を3倍に
してベースカラーとします。
 

1 色の確認は目立たないところ、具体的にはヘッドの
 裏側で調子を確認します。
2 厚くならないようにさっと全体に塗り広げてゆきま
 す。塗りにくかったら水を加えます。
3 乾燥したら2回目を塗ります。むらなく仕上げるな
 ら、スプレーの方が良いです。

4 股関節部分は塗装膜が厚くなると、動かなくなる
 ので、ときおり可動するか確認します。

5 最後に400番のサンドペーパーをさっと、全体に
 かけます。


* こんな感じに仕上がりました。

   

6 ベースメイクの前段階としてMr.Collor のつや消し
 クリアーを吹付け。(しなくとも良いですが)
7 Mr.Collor 112 キャラクターフレッシュ(2) を肌の赤
 みのある部分に吹き付けてゆきます。
8 スプレーは塗料を極力薄くして慎重に。一気に仕
 上げようとしたらだめです。

* うすいので、画像からは効果が分からないかも。

9 今度はクリアーオレンジ49、クリアーレッド47を
 使って血管の表現をします。
10 太ももの内側には、わざとムラが出るように吹き
 付けます。

* 血管の表現は関節部分のほかに唇、鼻腔、耳穴、バストトップ、指先
 などで行います。


11 次は肌の影を表現します。 Mr.Collor 51 のフレッ
 シュを使います。


* 影を入れるのは額の下、顎、アンダーバストなどの影になりやすい部分です。
 立体感は出ますが、やりすぎは不自然になります。

   




3 透明層の形成

 普通にこのあとメイクに入ってしまうと、なんとなくのっぺりとし
た平坦な肌になってしまいます。
 写実絵画や創作人形などではわざと肌色の補色となる緑色
の絵の具を塗ったあとで、肌色を塗ったりしますが、自分の場合
には本当に透明層をつくって質感を上げ、柔らかい感じにします。

 使用するのはウレタンのクリアーです。
 

1 まずは関節部分から、ウレタンクリアーにつや消し
 を混ぜて吹き付けます。
2 吹き付けられない部分は細い筆で塗ってゆきま
 す。
3 全ての関節に2回ぐらい塗布。塗膜が厚くなりす
 ぎたらサンドペーパーで調整します。

4 腕や足など、パーツをまとめてみて可動を確認します。
 大丈夫なら仮組みします。


   5 今度は全体にウレタンクリアーを3回ほど吹き付けます。
      (最初はつや消しにしない)
    



   6 更に今度は透明感の更に欲しい部分、言い換えれば皮膚層の厚いところに
    ウレタンクリアーを更に吹付けます。
    (場所は次のとおり、最大1mmぐらいの厚さになるまで吹き付けます)


* バストとお腹 * お尻


* 肩周辺と二の腕 * 太ももとふくらはぎ、膝 * 頬と鼻



     とりあえず今回はここまで。
     ウレタンの塗膜は市販の塗料のなかで最も強いです。このあとメイクの
   段階になりますが、失敗してもうすめ液で消すことができます。また人形
   自体の強度も増します。
     とっても良いのですが、問題はやや高価なところと、二液混合という扱い
   の難しさにあるかと思います。スプレーガンも専用のものが欲しくなるし・・・。
    でも知ってしまうと間違いなく手放せなくなります。

  
   







4 メイク

 言ってみれば、これまでの過程はレジンキャストド
ールでいうならば、メーカーが素体をつくっているの
と同じです。
 私たちは購入したこの素体を磨き、メイクして自分
の思うような人形に仕上げてゆきます。

 ここから先は人形作りで最もわくわくする過程では
ないでしょうか。
 自分の場合にはメイクはすべてMr.カラーとウレタ
ン塗料で行います。
 またウイッグ(7インチ)とドールアイ(12or14mm)は
市販のものを使っています。



1 まずはパーツの全てをスポンジペーパーで磨き、
 ツヤを消します。これで微かな凹凸も消えます。
2 細かな部分はヤスリスティック(400番)を使って作
 業します。
3 これをハサミやカッターで細くしてアイホールなど
 を磨いてゆきます。



4 次に塗料ののりが良くなるように透明ウレタンに
 つや消し剤添加して、全身にスプレーします。
5 まずは手足の爪を表現します。Mr.カラーの no.47
 no.49、に少量の no.131を加えます。
6 細い筆で爪の輪郭を描いてゆきます。失敗しても
 うすめ液で拭き取れます。

7 no.112と no.1を 1:1 で混合し、これを爪全体に塗っ
 てゆきます。
8 no.1と no.111を 1:1 で混合、爪の根元部分に塗りま
 す。このあと全体にクリアーを塗って仕上げます。
 

       
  *)こんな感じに仕上がりました
       
       
           
       



9 バストトップや唇など、赤みのある部分は no.112を
 ベースにクリアーオレンジなどを混ぜて塗装します。
10 頬や膝など面積のある部分は吹き付け塗装に
 向いています。塗料は可能な限り薄くします。

11 no.131でアイラインや二重まぶた、瞼の内側など
 を描き、眼の輪郭を整えます。

12 眉毛・睫毛を描く前にウイッグとドールアイを選び
 ます。
13 ウイッグとドールアイに合わせて、今回は眉毛・
 下まつ毛をno.131で描くことにしました。






14 マジックテープのザラザラとした方を適当に切って
 ドールヘッドに貼り付けます。ウイッグずれ防止です。
15 ヘッドに合わせてウイッグの長さを調整します。
 今回はナチュラル仕上げで、お湯パーマはなしです。



16 あとは元のように全身を組み立てて完了です。ウイッグは
 一旦外したほうが無難です。



         
 かわいい・・・。
 自分で言うのもなんだけど、粘土からこんなかわいい娘が出来上がるなんて、
本当に不思議です。

 名前は saki に決めました。