背景の生かし方、ぼかし方

2015.09.15



 こちらの画像は人形だけでなく、背景にもある程度ピントが合ってます。こういう写真は晴れた日中なら
コンパクトなデジタルカメラ(コンデジ)でも撮影できると思います。



 一方、高機能のコンデジやレンズの交換できるデジカメを使うと、背景をぼかしたこんな感じの画像を撮影する
こともできます。
 今回はこの2種類の撮影方法について解説してゆきたいと思います。



*)ここからちょっと専門的な内容になるので、カメラに詳しくない方は最後までとばしていただいて、結論をご覧になっても良いかと思
  います。






まずはレンズの選び方から

 今メインで使用しているカメラは panasonic の G3、サブのカメラは Canon の s100 です。両方とも画質がそこそこ良くって、小型軽量、
とても満足しているのですが、すでに発売から3年以上が経ち、本来なら買い換えを考えても良い時期です。ただお小遣いの範囲内で
買える新機種もないので、しばらくはこの二台にお世話になり続けそうです。
 下は今使用中の Panasonic LUMIX G3 、軽量なマイクロフォーサーズ規格のカメラでバリアングル液晶付き。.人形撮影には可動式
モニターがついていることが最低限の条件だと思っています。

 

 人形撮影に必要なレンズは最低2本だと思っています。まずは標準ズームと言われるもので、焦点距離が35mm換算で28mm-85
mm程度のもの、もう一つは焦点距離が85mm前後の明るい中望遠レンズです。
自分の場合には次の2本でした。



Panasonic G VARIO 14mm-42mm f3.5-5.6
 こちらはもともとG3についていた標準ズーム、市販はされていないです。
ヤフオクあたりの中古市場では5000円ぐらいから取り引きされている安価
なレンズです。
 写りは一流ではありませんが使えます。少なくともコンデジよりは確実に
綺麗に写ります。良くも悪くも標準ズームです。
 右の画像はおおむね焦点距離26mm(35mm換算で52mm)、絞りF=4.0で
撮影しました。
 

OLYMPUS zuiko digtal 50mm f2.0
 もう10年以上前に発売されたレンズです。でもものすごくよく写るし、マクロ
なのにF2.0という明るさも魅力的。「神レンズ」と呼ぶ人もいるぐらいの伝説の
レンズです。
 現在はこれにアダプターを接続して使用しています。 















 このレンズは被写体に接近して、絞りを解放にしてやったときに真価を発揮
します。ピントはマニュアルで調整するのがポイント。きれいな背景のぼけが
絶品。
 欠点はフォーサーズ時代のレンズなので、ちょっと大きく重いこと。(それで
もアダプター込みで400g以下なのですが) ただ室内でじっくりと撮影するな
ら問題はありません。写りについては、今でも最高レベルだと思います。
 
  





 これまでの組み合わせについては、写りに関してはそれほど不満はありませんでしたが、旅行に出かけるには少しでも軽く小
さくしたいところです。
 この夏、北海道に旅行に行ったのですが、トレッキングすることも計画していたので、最軽量と思われるレンズセットを買い足す
ことにしました。(但し予算の関係でどちらも中古)

 Panasonic G VARIO 12mm-32mm f3.5-5.6   OLYMPUS M.zuiko digtal 45mm f1.8
   

 実際に今回買い足した2本のレンズをテストしてみました。レンズの特徴を知っておくことは、良い写真を撮影するには大切な
ことです。

Panasonic G VARIO 12mm-32mm f3.5-5.6
 今回購入した小さな標準ズーム、今までのレンズに比べると体積は1/4
ぐらい、70gしかありません。(10円玉7枚分!)
 一見、こんなんでちゃんと写るか心配になるほど小さいのですが、これま
での標準レンズに遜色なく写りました。
 右の画像は焦点距離19mm(35mm換算で38mm)、絞りF4.0で撮影して
ます。
 シャープな感じに写るのは良いのですが、背景がきれいにぼけないで、
ちょっとざらついたような感じになってしまうのが残念です。そういう意味で
はこれまでのレンズの方がポートレートには向いているかな。
 けど一方で広角側が12mm(35mm換算で24mm)からというのは大きな
メリットです。
 



OLYMPUS M.zuiko digtal 45mm f1.8
 こちらも評判の良いレンズです。
 120gと超軽量。上の50mmマクロに比較すれば体積は1/4。タマゴ1個より
軽く、ポケットにも入ります。
 とても良く写る、背景のぼけ方も、やわらかくてとてもきれい。
 でもこのレンズの欠点はやっぱり寄れないこと。(最短撮影距離が50cm)
正直なところ、同じようなレンズが Panasonic にもあるので、お金さえあれば
こちらの方が人形撮影には向いていると思います。こちらは30cmまで寄れ
ます。















 極力接近し、絞りを解放(F1.8)にして撮影したのが下の画像です。あまり
寄れないので若干トリミングしています。自然で深みのある色合い、ぼけも
やわらかくて良い感じです。もっと寄れたら文句なしです。
 
     





背景の生かし方、ぼかし方

 いよいよ本題です。
 実際の撮影では背景を生かしながら撮る場合には標準ズームを使用。背景
をぼかし、人形本体を浮かび上がらせて撮影するには中望遠レンズを使用する
という使い分けを自分の場合にはしています。
 以下の画像は新しく買い足した2本のレンズで撮影したもので、小さい方が
panasonic の標準ズーム12mm-32mm、大きい方が OLYMPUS 中望遠レンズ
45mm になります。

 
 



     

 この2本の小型レンズを持って北海道に出かけました。この2本が万能というわけで
はありませんが、この組み合わせなら持ち運びはウエストバッグでもOK、いざとなれば
一方のレンズはポケットにも入れられます。

 人形撮影になぜ2本のレンズが必要になるのか。それはこれまでの画像をご覧いた
だければ分かるように、撮影の方法には背景を生かすか、それともぼかしてしまうかと
いう、2種類の選択肢があるからです。
 背景をぼかすには絞りを小さく、焦点距離を長く、撮影距離を短くという原則がありま
すが、絞りについてはF2以下のぐらいの明るいレンズがほしくなります。いわゆる標準
ズームだと3.5以上になってしまうので、きれいにぼけてくれません。
 そこで明るく焦点距離がやや長めのレンズが必要となります。よくポートレートに使用
される85mm F1.8あたりがその代表です。

 F値が大きい=全体にピントが合う。F3.5以上だと暗いレンズといわれる。
 F値が小さい=ピントの合う範囲が狭くなる。F2.8以下のレンズは明るいといわれる。

 ただ最小絞りを示すF値が低いほど、レンズは大きく高くなる傾向にあり、このあたり
はどこか適当なところで妥協しなくてはなりません。




 実際の使い分けです。
 標準ズーム(Panasonic G VARIO 12mm-32mm f3.5-5.6)を使いオートで撮影しま
した。こんな普通の記念写真になります。




 今度は中望遠(OLYMPUS ZUIKO 45mm F1.8) で撮影してみました。背景が
ぼけています。でもこれでは中途半端です。これはカメラの判断でレンズの絞り
をF2.8ぐらいまでにあげて(絞って)しまったからです。





 背景をぼかす場合には、まずカメラのモードを絞り優先に変えます。そのうえで、この
レンズの最小絞り値F1.8に設定します。するとカメラがシャッタースピードの方を変え、
露出を調整してくれます。
 ただし明るい場所ではシャッタースピードの上限を超えてしまうこともあります。
そこで
使用するのがNDフィルターです
。これはわざと光の量を減らしてくれるもので、ND4また
はND8あたりを1枚用意しておくと良いでしょう。





 そんな工夫をしてこういった背景に人形の浮かび上がるような画像が撮影できます。





 センサーサイズが大きく(1インチクラス)、F値が2.0以下のコンデジならば、レンズ交換
式のデジカメと同じように背景をぼかすことができます。この場合にも絞り優先でF値を
最小に設定してみてください。なかにはNDフィルター内蔵という便利なカメラもあります。




 背景を生かしたい場合にも、まずはカメラのモードを絞り優先に変えます。そのうえで、
レンズの絞り値をF11ぐらいに設定します。レンズによってはF22ぐらいまで設定できるも
のもありますが、
あまり大きくしすぎると回折現象で全体が白っぽく霞んだような画像に
なってしまうことが知られています
。このあたりは撮影してみて、実際に使える上限を調
べておくとよいでしょう。
 シャッタースピードは長くなってぶれやすくなります。ですから
場合によっては三脚を使
用した方が良いこともあります

 なお
人形はレンズから離す、またズームレンズなら焦点距離は小さくしたほうが、両方
にピントは合いやすくなります。
 普通のコンデジでも全体にピントを合わせたいのなら、絞り優先で、F値を大きめにとっ
てみて下さい。そのうえでズームはワイド側にします。これでも十分に効果はあると思い
ます。





 ともかくいろんな場面で試し撮りして、カメラやレンズの特徴を知っておくことは大切です。
準備しておけば、いざというときにも素早く的確な判断ができます。