オリジナルドール aimi の製作 3
メイク 造形の段階が終わったので、いよいよ最終工程です。 でもまだまだ先は長いよ! トラブルの発生をふせぐ
作業にムキになっていると、次第次第に部屋は汚れ、乱雑になってゆきます。 でもこれが原因で、つまらないトラブルがあったり、汚れがついたりたりで、全く 良いことはありません。トラブル防止のため、周囲はいつもきれいにしておくこと を心がけます。 特に完成が近くなると先を急ぎたくなるのですが、そんなときこそ心のクール ダウンが必要です。粘土や塗料が乾くまでの間、掃除をしたり、パーツを眺めた りしながら、あらためて制作の過程の確認するのも良いと思います。
6 メイク DOLL制作が彫刻と違うのは、造形の次にメイクの過程があるという こと。DOLL制作にあって、メイクは粘土のかたまりをヒトに近づけてゆ く創作活動だと思っています。
まずは基本塗装です。使用するのはリキテックスをジェッソに混ぜ込んだもの
です。 創作人形の世界では胡粉で処理することが多いようですが、自分の場合に は簡便なこちらの方法を選択しています。 1 ライトポートレートピンク1、アンブリーチドチタニウム3の割合で混合した
ものを基本色とします。そしてこれを更に30倍量のジェッソに混ぜ込んで 下地塗料とします。 参考までにこれは後述のMr.カラーno.111のキャラクターフレッシュ(1)に非常 に近い色になります。 基本色についてはその配合、分量を変化させることも可能です。ブラウン系の 絵の具を混ぜて日焼けした肌にしたり、ジェッソを更に加えて美白系にしたりする こともあります。
肌色というより、むしろやや黄色がかった灰色という色合いに仕上げました。
タンパク質や脂肪の色合いというところですかね。 次はここに血液やメラニン色素の表現を加えてゆきます。 肌の表現に変化をつけてゆきます。使用するのはリキテックスのホワイト、
ライトポートレートピンク、アンブリーチドチタニウムに加えてオレンジや赤と いったところです。 調合は実際に塗ってみて調整します。 筆ではこまかなグラデーション調整ができないので、ここから先はエア ーブラシで塗装を行います。 6 基本塗料にホワイトを加えたものを、あご、バストの下、内股など、陰になる部分に 吹き付けてゆきます。(メラニン色素のないところの白みを強調) 7 基本塗料に少量の赤とオレンジを加えたものを、頬、バストトップ、肘、膝などに吹きつけ
てゆきます。(血液の表現) 8 基本塗料に茶系の絵の具をほんの少し混ぜて額や肩、手の甲といった日焼けしやすい 部分に吹き付けます。(メラニン色素の表現) ご覧いただいたように、この表現はほんのかすかなものです。もちろんもっとし っかりした濃淡をつけることもできるのですが、ナチュラルメイクにこだわると、ど うしてもこうなっちゃいます。 イベントなどでは、もっと派手な表現で目立たせた方が良いのは分かっている のですが・・・。(ついでにいうとヘッドももっと大きな方が良いことも) エアーブラシの扱いに馴れてくると、幅1mmの線も引けるようになります。 画像では分かりにくいのですが、赤みをつけるときにはエアーを細く絞り、わざ とむらをつけて吹き付けると、血液の流れが表現できます。 リアル系フィギュア作家の方のなかには、静脈や毛細血管を1本1本書き入れ る達人もおられるようですが、ドールでそれをやってしまうと、リアルすぎて逆に 違和感を感じさせることになります。(やったことはあります。) 9 表面処理 おそらくこの工程は独自のものです。
表面処理についてはパジコ社のドールフィニッシャーやMr.スーパークリアー などを用いる方が多いと思いますが、自分の場合にはこれを工業用の2液混合 タイプのウレタンで行っています。 メリットは表面強度が増すこと、水や油、汚れに強くなること、塗膜が厚みを持 ち肌の透明感が表現できることなどです。逆にやや高価で扱いが難しいことが デメリットです。 この塗装には手間がかかります。1回塗って塗膜の厚みは紙1枚分(おおよそ 0.1mm)ぐらい、透明感を出すには最低でも5回ぐらいの塗布は必要です。状直 なところ、繰り返すうちにだんだん嫌になってきます。
一回目の塗布でつるつるぴかぴかになりました。 実はこのウレタン塗料と下地のサーフェーサーの相性が余りよくなく、 塗膜を浸かすことがあります。そのため特にレジンパーツについては、 少しずつ吹きつけ塗装を繰り返す必要があります。 黄変の影響さえ出なければ、サーフェーサー吹きは今後省略してゆ こうかと思っています。 1回目のウレタン塗布が終わったところで、細部のメイクを行います。ウレタンの うえにリキテックスはのりにくいので、ここから先はプラホビー用のMrカラーを使 います。 使用するのはNo.111のキャラクターフレッシュをベースにして、赤系のNo112の キャラクターフレッシュ、No51のうす茶色、No131の赤褐色あたりです。 ちなみにNo111は調合した基本塗料に、No112はリキテックスのライトポートレイ トピンクの近似色です。
ここからの作業は完全に塗料やウレタンクリアーが乾燥してから先に進め
ます。Mrカラーはすぐに乾きますが、ウレタンは完全に固まるまで丸1日、次 の作業を行うには最低でも4時間ぐらい待った方が良いです。
この塗装は3回ぐらいで一区切りです。この段階で関節を合わせてみると ちょうどぴったりぐらいになっているはずです。 これ以上塗布すると、ぴったりだった関節がはまらなくなってしまいます。 (もし逆に関節が緩いなってときには繰り返します) ともかくこの工程はとても埃が混入しやすいので、注意が必要です。身の 回りをふき掃除したり、毛羽立ちのあるものを着て作業しないなどの準備や 心がけが必要です。 ここでついにトラブル発生。肘の受け部分を磨いていたら、磨きすぎて下 地が出てきてしまいました。 ここは作業を中断して下塗りからやり直します。結局それがいちばん早い です。このようなときのために下地塗料はきっちりと残してあります。
ウレタンを塗ると表面の強度がぐんと上がります。もちろん転倒させたりしたら別ですが、 少しぐらいこすれてもキズはつかなくなります。手間はかかりますが、おそらくは表面保護 のはたらきをするものとしては最強でしょう。水や油にも強いです。 次にウレタン塗料につや消し剤を加えて関節部分のみ仕上げてゆきます。 (つるつるのままだと滑りすぎて具合が悪いです)
磨いた分だけ関節は小さくなっているはずなので、だいたい2回ぐらい 塗布するとまたぴったりの状態になります。 次に乾燥を待って部分的な組み立てを行います。
つなぎ合わせたのがこちらの状態。 ここから最終的な仕上げに入ります。ここからは吹きつけで 見える部分の表面仕上げに入ります。 部屋は汚くなるけどやはり吹きつけの方がきれいに仕上がり ます。
最後のつや消し塗装については、どのパーツについても5回以上行って います。特に透明感の欲しい頬やバスト、ヒップといったところは10回ぐら い吹き付けています。 25 満足のゆく塗膜の厚さになったところで、乾燥させパーツ単位 に分解します。 10 最終仕上げ ここまでくればあともうおちょっと、いちばん楽しいワクワクの時間帯かもしれません。 でもそれなりに集中力の必要な部分でもあるので、まずは精神統一から・・・。
全体のバランスも悪くありません。ちゃんと組み立てなおすことができて、 ほっと一安心といったところです。 あとはフェイス部分だけになります。アイとヘアーの取り付け、メイクが残さ れた作業です。
とりあえずの仮組みです。 どんなフェイスにするか、もう一度構想を練ります。 基本的に使用するのはMrカラーのみ。但し乾きやすいのでリターダーを 少量混ぜて乾燥を遅くしておきます。 ウレタン仕上げをしているのでペイントは何度でもやりなおすことができ ます。これはありがたいです。 それから言い忘れていましたが、基本的に手袋をして作業をしています。 特につや消し塗装の場合には汚れがつきやすいので必需品です。 今回はともかくナチュラルに仕上げるのが目標。「すっぴん」でも勝負できる 娘になってほしいな・・・。ある意味、ここでは祈るような気持ちです。
右利きだと向かって右側の眼が描きやすいです。左眼は描きにくく、自分はひっくり
返して持ちかえてやってます。 皆さんはどうします? どの方法がいいのかな。いつもここで考えてしまいます。 「弘法は筆を選ばず」と言いますが、眉毛、睫毛を描くのには筆を選びます。筆は高け ればいいというものでなく、今使っているのは420円のもの。良い感じのものは5本のう ち1本ぐらいかな。
このあとドールアイやウイッグを合わせ直してみることにしました。アイはこのまま、 ウイッグはブロンドのストレートロングに変更です。
45 ヘッドをボディに取り付けました。完成の一瞬です! かわいい・・・。 今回は特に新しいアイディアを持ち込むこともなく、従来の方法で時間をかけて ひたすら丁寧に作業をすすめました。地味だけど良い感じに仕上がったように思 います。 もちろんもっと時間をかければ更に完成度は高まると思いますが、時間とのか ねあいもあるし、今は充分これで満足してます。
こちらに大きな完成画像があります。但し肌の露出部分の多い画像を含んで いるのでご注意下さい。 完成画像
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