4つのドールヘッドのリメイク
フィールドラインについての考察2
DOLLの性格を決定づけるのはやはりヘッド部分だと思います。ボディも重要だけど、結局服を着せちゃうと、見え
るのは手先とフェイス部分だけになってしまうってこともあります。ということでリメイクも圧倒的にヘッドやフェイスメ
イクが中心になってきます。
今回はグラフィックツールを利用した4つのドールヘッドのリメイクの過程をご紹介し、あわせて前回ご説明したフィ
ールドラインについても補足したいと思います。
もし chie のメイクをご覧いただいていなければ、まずはそちらをお読みいただくと今回の話が理解しやすいかと思
います。
→ chie のメイク
1 グラフィックツールの活用
yuzuki
最初は yuzuki 。6年前に制作し、昨年リメイクしたものです。それほど問題は大きくないけど、もっと良くなるなって
思い始めていました。とてもバランス良くできたリアル系ヘッドですが、暗色系のウイッグの似合う落ち着いた感じに
仕上げようと思っています。

1 まずはウイッグをダークブラウンのものに交換します(画像下の左側)。眉毛が少し細いなって思ったので、
GIMPというグラフィックツールを用いて眉毛部分だけを20%ほど拡大してみました(画像右側)。

この場合、明らかに眉毛は太くした方が良いように思います。このあと何回か操作を繰り返して、どれほど太くすれば
良いのかも検討してみました。実際の作業なしにシミュレートできるのはとてもありがたいです。
2 修正画像をもとに眉毛を太く濃く描き直しました。

3 ここで上の画像で左右の目を比較します。自分には右眼の方が形が整っているように思えました。そこで
右目の目頭部分を0.5mmぐらい削って丸みをつけ、全体に上のアイラインを強調してみました。1mmに満た
ないレベルの調整ですが、この過程の変化は大きかったです。

4 後は頬の部分と目尻の部分にうすくピンクとブラウンのパステルをのせ、陰影のバランスをとります。画像
からは分からないかもしれませんが、このぐらいがナチュラルで良い感じです。

5 あとは唇にクリアーを塗り、全体の調整を行って完成です。
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完成画像 |
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最初の画像 |
ということで修正が完了しました。満足度としては95%かな。落ち着いた和風のべっぴんさんになったと思います。
最近思うのは、自分の制作する作品にこういった感じのものが多くなってきてるなってことです。一つの完成形が
見えてきたのかもしれません。



youki
1年前の作品です。近年の作品でそれなりの完成度はあったのですが、表情がぱっとせず、何とかしな
くっちゃいけないと思っていました。今回は明るく快活な感じに仕上げたいと思います。
一見して眉がうすく、修正はこのあたりからスタートすることになります。

まずはGIMPを使って構想を練ります。下の画像左は眉の目頭を下げ、少し太くした状態です。また目の
間隔が広いように思えたので、右はそれに加えて両目を内側に少し拡大したものです。

1 眉の目頭を下げ、目を内側に0.5mmほど拡大しました。薄すぎる眉自体も濃く修正しています。

2 目の間隔がまだ広いように思えたのでアイラインの特に目頭側を強調しました。目がかなり大きく感じ
られるようになりました。このあたりの作業は微妙です、緊張します。

4 ぱっとしない感じがあったので、思い切ってウイッグを交換します。

あらためてこの段階でよく観察すると、目が大きくなった関係か口がやや大きすぎるようにも思います。
(このあたりは chie のメイクでのフィールドラインの部分を思い出してください)
5 透明な瞬間接着パテで口を左右1mmずつ縮小し、部分的にメイクし直します。

6 あとは唇にクリアーを塗り、頬と目尻にパステルで色味を加えて完成です。
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完成画像 |
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最初の画像 |
明るく笑顔を感じることのできる作品になりました。でも満足度としては一歩低い80%。完成度が低いというのでなく、
どうも最近落ち着いた感じの作品が自分の好みになっているからかもしれません。
どうするかは、しばらく遊んでみてから考えたいと思います。



ruka
6年前の作品、過去にも何回かリメイクしていて今回が4回目。いよいよ本題というか、重傷というか、度重
なるリメイクでかえってバランスを崩してしまった娘達の登場です。新たな理論的な裏付けをもとに、何とか
一歩すすめたいと思っています。
下が正直あまりお見せしたくない最初の画像。実はヘッドだけ新規のものを取り付けてしまおうかと思って
いたぐらいです。でもそれでは負けなので何とかします。

この娘は自分のつくってきたドールの中では異色なもので、ヘッド部分は一回り大きく、いわば市販のレジン
キャストドールに近いバランスをしています。ただしそれが不完全な形で終わっており、作品としての完成度は
低いです。
とりあえずこの娘については、少しでもかわいく仕上げてあげたいと思います。
1 ウイッグを交換しました。左の画像は交換後の状態。そこからGIMPで眉の目頭側を引き上げるという
シミュレートをしたのが右側の画像です。

なぜこのような修正をしたのかは後述するとして、この娘の修正の最大ポイントは「垂れ目」に仕上げることでは
ないかと考えるようになりました。
2 垂れ目計画実行です。眉の目頭側をつり上げました。

3 そのうえで更に目の内側を斜め上方に削り(0.3mmぐらい)、アイラインを強調してみました。やっとメイクに
まとまりが出てきたように思われます。

4 もっと明るい雰囲気にしようとウイッグを交換、さらにピンクのパステルで思いっきり頬を強調しました。リアル系
ドールではないからぜんぜん問題なし。劇的に変化します。

5 唇が全体に上向きになるよう、透明瞬間接着パテとデザインナイフで修正。最後に赤いパステルで色味を加え
ました。

8 眉の目頭側をいったん消して、同色のパステルで柔らかく描き直します。この状態でもっと良いウイッグとアイが
ないかどうか試してみました。

ウイッグはともかくとして、アイはやはりオーバーサイズかな。もう少し小さめなブルー系を探したのですが
合うものはありませんでした。
9 最後にウイッグの長さの調整、唇にクリアーを塗るなどの作業をして完成。結局アイは地味なブラウン系
になりました。
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完成画像 |
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>最初の画像 |
ともかく当初の目的は達成、というよりよくぞここまで持ち直したという感じです。でも満足度はまだまだ60%台のレベル
です。まずは似合うアイを探さないといけないかな。
このあたりは好みなのかもしれないけど、せっかく明るく軽快な感じで仕上げてきたので、その路線で完成させたいです。
そのほかのことはアイを交換してからまた考えたいと思います。



miu
6年前の作品、リメイクは今回で3回目になります。この娘のリメイクも迷走しています。画像を見ると
最初の頃の方がむしろ良かったかも。
本当にお見せしたくない現在の状況が下です。

前の ruka とは全く逆に、リアル系フィギュアに似たバランスの長身の娘を目指して制作したのですが、道は遠の
くばかりで、何をして良いのか分からなくなっていました。
今回の修正のメインは目尻をつり上げ、目自体を中央に寄せることです。GIMPで元画像から眉の目尻側をつり上
げたのが左の画像、そして更に目を中央に寄せたのが右の画像です。

1 一端眉毛をすべて消し、以前よりつり上がるような感じで長くくっきりと眉毛を描きます。そのうえで目尻側上瞼の
アイラインを強調してつり上がった感じにします。
でも実際にはつり上がったって感じはしないので、むしろこれまでのバランスが悪すぎたってことなんだろうね。

2 計画通り目を内側に拡張します。バランスが悪かったので左眼(向かって)で0.3mm、右目で1.0mmぐらいの
削りを入れて形を整えました。結果、予想通り良くなりました。
唇はもう少し小さい方が良いように思えたのでGIMPで唇を小さくした状況をシミュレートしてみました。
(右側の画像)

3 唇が小さくなるよう、透明瞬間接着パテとデザインナイフで修正、その後着色します。

4 あとはパステルで頬に赤みと陰影を加え、クリアーレッドで唇を強調して完成となります。
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完成画像 |
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最初の画像 |
最初が迷走の末のひどい状態だったので、完璧な状況にする自信もなかったのですが、この作品について言えば満足度は
98%です。何より、やっと本当の意味でのリアル系ドールをつくることができたという感じがします。
次のパートでは今回のリメイクの理論的ポイントを解説しますよ。



2 再びフィールドライン
下の画像は口の大きさを修正する前の youki です。まずはこのヘッドについてフィールドラインを考えてみましょう。
一つのポイントになるのがフェイスパーツの大きさの比較、そのなかでも特に目と口の大きさの比較は重要な意味を
持つと考えています。
通常、人の場合には目の大きさを1とすると、目と目の間隔も同じ1、口の大きさは1.2から1.8といったところです。
下の画像でいうと口の大きさは目よりも少し大きいぐらいなので、ヒトの場合とほぼ同じ。そういう意味ではヒトとして見
たときのバランスはとれているということになります。従ってそのフィールドラインは直線的といことになります。そしてこ
れを赤で示すことにします。
ところでDOLLの場合はどうかというと、目と口の幅はほぼ同じかやや小さめ、場合によっては口の大きさは目の半分と
いうDOLLもあります。従って、今度はDOLLとしてのフィールドラインで youki を考えてみると、この時点では頭頂に向
かって収束してゆくかたちになると思います。
このあたりは断定的なことは言えませんが、DOLLとは目の大きいもの、大きい方がむしろ自然に見えてしまうような先
入観のようなものがあるのかもしれませんね。
いずれにせよ、ドールとヒトでは標準的なフィールドラインが違うということを前提に話をすすめます。おおまかに言えば
目の大きさ=目の間隔=口の大きさ
といったところをDOLLの標準的なバランスの目安としたいと思います。
ヒトの場合にこれをあてはめると、口と目の大きさが一緒だと、食事ができないほど口は小さくなってしまうのですが、それ
がいわゆる標準的な感覚なのでいたしかたありません。
ちなみに自分の持っているリアル系可動式フィギュア(クールガール等)の場合には、目に対する口の大きさは1.4ぐら
いありました。
この娘の場合には次の段階で口の大きさを改め、標準的な大きさに変えました。この場合のドールとヒトのフィールドライ
ンは下のとおりとなります。多分、このあたりが人形設計の標準なんかじゃないかと思います。DOLL制作で行き詰まった
ら、いったんこのあたりに戻ってきたら良いのではないかと思います。

次に横方向のライン、正確にはフィールドラインに直交するラインについて考えてみます。まあ、電気力線に対する等電位線
みたいなものですね。(たとえが難しくて申し訳ないです、自分も理系の人間なもので・・・。)
下の図では緑のラインです。yuzuki の場合にはほぼDOLLの標準的なフィールドラインを持っていて、それに直交するライン
も水平です。

ruka の場合には目が大きく、口が小さいというDOLL特有のバランスなのでフィールドラインは上に発散する形になります。
従って水平を示すラインは湾曲した形になるはずです。これをこれからレベルラインと呼ぶことにします。
このような空間の中で、たとえば水平に眉毛を引いたとしたら、おそらくは目がつり上がったように見えるのではないでしょう
か。目が大きく幼い感じのDOLLがみんな垂れ目に近い感じで作られているのは、むしろ垂れ目に描くことが自然に見えるか
らだと思います。
そういう理由があって ruka については垂れ目になるようなリメイクを行ったわけです。また上唇が上向きになるような修正も
この理由によります。

miu の場合はこれとは全く逆で、DOLLとしては著しく小顔でスリム、ヒトに近いバランスを持っています。ですからフィール
ドラインは頭頂に向かって収縮する形になります。従ってレベルラインを考慮して眉を描くのであればむしろつり上がっていた
方が自然というわけです。

この2,3ヶ月でいろんなことが見えてきたなというのが率直な感想です。
たまたまうまくできた自分のDOLLをもう一回つくってみようとか、お気に入りの作家さんのDOLLを参考にしようとか、
そればっかり考えていると行き詰まってしまいますね。
大切なのは模倣する技術でなくって、新しいものをつくるために必要な本質的な知識と感覚なんだろうなと思います。
それから標準て言葉が良く出てくるけど、すべての要素が標準的になってしまったら、おそらく同じようなものばかりに
なってしまうわけで、標準を外れたものをあえて持ち込むことで個性が出てくるんだと思います。そのあたりのことも次の
テーマにして考えてみたいです。




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