eye4工房番外編

曲沢駅



2017.08.09
 前回のジオラマは電車のない街中のシーンを再現しましたが、今回は久々にちゃんとしたNゲージの
レイアウトをつくります。
 再現するのは昨年の夏に訪れた由利高原鉄道の「曲沢駅」です。





 単線の無人駅であるのもちろん、周囲には駅前商店街どころか民家すら一軒もありません。待合室には自動販売機もなく、
ここまで何もないと、実に潔いです。



1 基本工作
 田んぼの真ん中にある曲沢駅は、さながら海のなかにある孤島のようでした。ですがあまり大きなレイアウトはつくれないので、
駅自体をできるだけコンパクトにつくって、ぽつんとした存在感を演出しようと思います。

     1 スチレンボードと18mm×6mmの角材を組み合わせたものをベースにします。
     大きさは496mm×200mmです。
    



 曲沢駅を再現しようと思いついたのは、こちらのsankei のローカル線ホームというキットを見つけたときでした。見つけた瞬間、
曲沢駅に似てるって思いました。

 

 ところが資料や撮影した写真を眺めていると、雰囲気は似ているのですが実際はけっこう違います。どうせつくるなら、このキット
をベースにして手を加えちゃんとしたものをつくろうと思います。





2 切り出したパーツに端材を加えて拡張、パネルを
 つくります。
3 このパネルに特徴的なラインを描くためにマスキ
 ングします。
  4 最初に赤、次に再度マスキングしてグレーを吹き付け
 ます。細部は手書きで整えます。

5 ここからは基本的に説明書の通りに組み立ててゆ
 きます。
6 キットにはない手すりは端材と0.5mmの真鍮線で
 つくりました。
  7 屋根は0.5mm厚のプラ板を張り合わせてつくりまし
 た。最後に青色を塗って完成です。


 なんか、ここまでえらく手間取って、5日間ぐらいかかっちゃいました。3cm×2cmぐらいしかないのでどうしても
ぴたっと決まってくれない、自分の腕のせいもあるけれど・・・。
 次にホームをつくります。こちらは基本的にキットをそのまま組み上げます。

8 パーツの切り出しを行います。脚部分は1mmほど
 の太さで、組み立ての難易度はやや高いです。
9 ベース部分の組み立てが完成しました。レーザー
 カットされたパーツなので精密感は高いです。
  10 ホーム上面はいったん白で塗り、マスキングして
 ラインを再現します。


 ホームへのアプローチはスロープになっているのですが、実際の曲沢駅は階段。そこでここもキットをベースに
階段を組み上げることにします。

11 キットのスロープをますは完成させ、端材を細か
 くカットして貼り付けてゆきます。
12 これで階段ができました。緑とグレーの塗料を
 混合したものを塗って仕上げます。
 



     13 完成した駅とレールを置いてみて、まずはレイアウトを検討します。田んぼの真ん中に
      ぽつんと浮かんでいる島のような駅のイメージです。

     

     14 5mm厚のスチレンボードを2枚切り出して木工ボンドで固定します。それが乾いたところで
      今度はレールの方も万能ボンドで固定。

    

15 交差する道路を同じようにスチレンボードでつくり
 ます。下を抜ける水路はこの段階で塗装します。
16 水路と田んぼのあぜ道を作ります。厚さの違うス
 チレンボードを組み合わせて微妙な高低差を表現。
  17 スチレンボードのつなぎ目などにできた段差は、
 モデリングペーストを塗って消してゆきます。

18 ベースカラーを塗ってゆきます。植物の生い茂る
 ところはグリーン系の塗装。
19 地面の露出しているところは茶色と肌色を混合
 下ものを塗ります。
  20 水路はまずは茶系の塗装を行い、部分的に緑
 色で藻を描いてそれらしく仕上げます。



 ということなのですが、完成が近づくにつれて駅がコンパクトすぎるような気がしてきました。田んぼの真ん中にぽつんと
いう感じは良いのですが、待合室をちょっと大きくしたこともあり、ホームが短すぎてアンバランスな感じです。





 本来のホームはこんな感じで、3両編成ぐらいでも乗降ができる長さです。



 ここは今からでも拡大を試みるべきでしょう。サイズは2両編成が停められる大きさです。実際由利高原鉄道は
1から2両編成なので、それで十分かもしれません。

21 0.5mmプラ板を250mm×20mmサイズに切り出し
 て待合室に接着します。
22 ベースに1mm角のプラ棒を組み合わせて基部を
  つくります。
  23 ブラウンで塗装して基部を完成させます。なんか
 結局、キットをほとんど使ってないな・・・。

24 0.5mmのプラ棒を組み合わせて手すりもつくって
 おきます。破損しやすいので接着は最後です。



 ということで、やっと基本工作が終わりました。白いところは田んぼなのですが、シートを貼って仕上げる
予定なので無塗装のままです。





 まだこの段階ではホームと待合室は基部に接着していません。
 このあと仕上げに入ってゆきますが、あと1週間ぐらいで完成に至る予定です。











2017.08.17
 今回は実際にあるシーンを表現するために、いろいろな問題が生じます。架空のものであればないモノはない、適当にアレンジして
済ませることもできますが、タイトルに「曲沢駅」とつける以上、そのシーンをそれなりに忠実に再現する必要があります。でも完璧な
表現は無理なことは分かっているので、常にどこに妥協点をおくかを考えています。



2 彩色と仕上げ
 順番としてはまず線路の表現を行い、次に田んぼの稲やあぜ道にある草花を植えてゆきます。
 ここはできるだけたくさんの素材を集めておいてから作業を開始したいところです。ふさわしい素材を用意できるかどうかが、リアルな
仕上がりになるかどうかを決めてしまいます。





 では線路の表現から。
 最初は線路にバラスト(砂利)をまいて、ローカル線にふさわしい感じに仕上げてゆきます。

25 9mm幅のレールの内外にバラストをまいてゆき
 ます。今回は最も目の細かいものを選びました。
26 柔らかい筆でバラストをならしたあと、霧吹きで
 全体を軽く湿らせます。
 
  27 水で3倍ぐらいに薄めた木工ボンドをスポイトで
 滴下してゆきます。

28 バラストがレールに張り付くと列車の走行に支障
 が出るので取り除いて乾燥させます。
29 線路脇に架線柱を立てます。ベースは接着しま
 すが、柱自体は取り外しができるようにします。

 由利高原鉄道は基本的にディーゼル走行なので架線柱はいらないのですが、たとえば他の路線の電車
を走らせる場合もあるかと思って脱着式にしています。

30 つや消しのブラウン系塗料を吹き付けて、線路から
 出たサビを表現します。
31 乾燥させた後、レールの上面に残っている塗料
 をカッターの背などでそぎ落とします。





 駅のまわりや線路脇、あぜ道といったところには、背の低い植物が良く育ち、可憐な花を咲かせていました。
次はこういった植物と田んぼを表現します。

32 水で3倍ぐらいに薄めた木工ボンドをあぜ道に
 塗っているところです。
33 この上から緑色のパウダーをまき、筆でかたちを
 整えてゆきます。
 

 これはあぜ道の例ですが、背の低い雑草を表現するために、ほぼ全面にわたってこの作業をしています。また使用した
パウダーは緑色を中心に黄緑や茶系のものなど、4種類ぐらい混ぜて使っています。

 次はレールにそって流れる水路の表現です。

34 タミヤのテクスチュアペイント・グリーンで水路に
 育つ水草を表現します。
35 これが乾いたところでジェルメディウムを置いて
  ゆきます。メディウムは乾くと透明になります。
 
 

     36 時間をおいて、今度はわざと筆を立てて、波立つような感じで
      メディウムをおいてゆきます。
    

 メディウムは乾燥に時間がかかります。湿度が高いと透明になるまで1週間ぐらいかかったりします。

 次は田んぼの表現をします。Nゲージのレイアウト集などを見ていると、人工芝を使った制作例が多く
出ていますが、自分は普通に販売している黄緑の情景シートを使うことにしました。人工芝は葉っぱの
幅が2mmぐらいあって、1:150スケールでいうと30cmに相当します。稲の葉の幅は1~2cm程度なので、
いくらなんでもオーバースケールだと思ったわけです。

36 ベースに紙をあてて田んぼの形状を写し取り、
 型紙をつくります。
37 芝を表現した情景シートの裏側にのりスプレーを
 吹き付けます。
  38 これに先ほどの型紙を裏返して貼り付け、はさみ
 で切り取ってゆきます。
 

39 ベースに少し水でのばした木工ボンドを塗り、シ
 ートを貼り付けてゆきます。
     


 田んぼを表現すると、一気にリアルな感じになります。







 このあとは田んぼまわりや線路周辺の草花を表現してゆきます。ポイントはより低く小さなもの
から順に層をつくるように貼り付けてゆくことです。

40 ターフ(細かな色つきスポンジ)をブレンドした
 ものを用意します。
41 雑草の生えていそうなところに、たっぷりと水で
 薄めた木工ボンドを塗ります。
 
  42 この上に混合したターフをまき、過剰な分は軽く
 たたいて落とします。.

43 コースターフ(ターフより粒が粗い)を混ぜ合わせ
 たものを用意します。
44 低木や大きく育った雑草のありそうなところに
 木工ボンドを塗り、これを貼り付けてゆきます。
 
  45 変化を持たせるために、さらに大きなスポンジを
  貼り付けてゆきます
 







 なかなか良い感じに仕上がってきたのですが、更に手を加えて、曲沢駅が田んぼに浮かぶお花畑の
島みたいな感じにしてみましょう。

    46 用意したのはミニネーチャーシリーズの花やノッホ社の草むらなど。こういったものを適宜配置
     してそれらしく仕上げてゆきます。
    



 いつも思うんだけど、作業としてはこの段階がいちばん楽しいね。







 電飾関係は今回は街灯が1本だけ。本当は待合室にも蛍光灯があったらしいんだけど、この段階
で組み込むのは難しいので、今回は省略です。

47 ベースに穴を開けて街灯のパーツを万能ボンド
 で固定します。
48 この段階で一応、点灯テストを行います。大丈夫
  ならハンダで接合。
  49 裏側の配線を整理しておきます。むき出しのまま
  だとトラブルの原因になります。

50 丸いコルク片を4等分してベースの裏側に取り付
 けました。
51 壁にかけて保管するつもりなのので、フックがわ
 りのクリップを取り付けます
   

52 金属製の街灯にメタルプライマーを塗り、乾燥さ
 せます。
53 ホワイトに少量のフレッシュとつや消し材を混ぜ
 て色を塗ります。
  54 サビを表現するために茶系のパステルを用意
  します。

55 これをナイフで削り、その粉を綿棒にとって街灯
 にこすりつけてゆきます。
56 つや消しスプレーでパステルを固着します。色が
 薄ければこれを繰り返します。
  57 街灯があるのに電柱がないのは不自然なので
 そばに立てました。



 さてベースが仕上がったので、駅そのものの仕上げに入ります。手持ちの写真のほか、ネット上にも
何枚かUPされているので参考にします。

58 ホームは全体をきわめて薄いグレーで塗った
 後、マスキングテープで点線を描いてゆきます。
59 この上からニュートラルグレーを吹き付け、乾い
 マスキングテープを剥がします。
 
  60 フェンスを0.5mm径のプラ棒からつくります。適当
 な長さに切って模型用接着剤でつなぎます。
 

61 万能ボンドでこのフェンスと階段をホームに接着
 します。
62 写真を参考にホームに至る通路をつくります。
 サンケイのキットを流用しました。
 

    63 これらを万能ボンドでベースに接着します。ここまでくると完成まであとちょっと。
    



 次に脇を通る道路にも手を加えます。道路には延々と白い柵が張り巡らされているのですが、もし表現
してしまうと、あまりに目立ちすぎるので省略しました。ただ橋の部分のフェンスだけは再現することにし
ました。

64 ジャンクパーツのてすりと3mm厚のスチレンボード
 でフェンスをつくります。
65 色を塗り、フェンスの両端に赤い反射板をつけて
 みました。この辺は想像力でそれらしまとめます。
 
 

66 市販品の遮断機のバーは直径2mm、スケールサ
 イズ30cmにもなります。ここは迷いなく切断します。
67 0.5mmの真鍮線を切断し、プライマーを塗ります。
 乾いたら黄色と黒の縞模様に塗ります。
  68 ベースにピンバイスで穴をあけて固定。最後に
 艶消しスプレーを吹き付けて完成です。

    69 取り付けてみたら高さに違和感があったので、黒いベース部分を削って
     高さを調整してみました。
    

 ちなみにこの作品では駅と道路はすぐそばにありますが、実際には50mぐらいの距離がありますし、
その間に線路は若干左にカーブしています。(下の写真参照)
 でもこれを表現するにはとても大きなベースが必要になるので、今回は事実の方を曲げて表現して
います。





 最後に駅周辺の小物類を取り付けて完成です。まずはプランターをつくります。

70 3mm厚のスチレンボードと厚紙を組み合わせて
 プランターをつくりました。
71 ミニネーチャーシリーズの紫色の花壇を貼り付
 けます。ミニネーチャーは本当に便利で簡単。
 





 駅名表示などを作ります。

72 上の画像などを取り込んで加工し、艶消しの
 ポストカードにプリントアウトします。
73 0.5mm厚のプラ板に貼り付けた後、その形に切り
 取ります。支柱は0.5mm角のプラ棒でつくりました。
 
   

74 それぞれ決められた位置に接着。これでやっと
 「曲沢駅」になりました。
   

 あとで分かったんだけど、駅名表示は地面に立っているんじゃなくって、ホームに据え付けられる
形で取り付けられていました。何かの機会に直したいと思います。

    75 フィギュアのコレクションから2体を選択、デイパックを背負わせ、すべて塗りなおして
     から、ホームに接着しました。今回の登場人物は2人だけ。
    

 このあと、若干の修正やらウエザリングを施しました。
 前回の街中を再現したジオラマは費用13000円、製作期間2か月だったのですが、こちらは2倍のサイズ
ながら、費用3000円以内、実質2週間ぐらいで完成しました。お金も時間もリーズナブルな制作でした。





 ということで上の画像と見比べながら、完成したレイアウトをご覧ください。
 ちなみに由利高原鉄動はラッピングされた車両が有名なのですが、残念ながら写真にある現行のものは
発売されておらず、手持ちの旧塗装のものだけでシーンを再現しています。



2016.08.21
羽後本庄発 10:37 の由利高原鉄道 YR3002
途中駅の曲沢で下りました。



まわりはいちめんの田んぼ、周辺にはお店や民家どころか自動販売機すらありません。









青い空と緑、そして遠くに鳥海山が見えます。
とても暑い日でしたが、通り抜けてゆく風が心地よいです。
聞こえるのは揺れてざわめく稲穂の音だけ。





7分後、隣の前沢駅で先ほどの車両とタブレット交換を終えたばかりの YR3003 がやってきました。





この列車で再び羽後本庄に戻ります。
たった7分間だったけど、なんかとても貴重な体験をしたように思えました。



 いろいろ思い出しちゃいました。参考までに動画を2本UPしておきます。(昨年の旅の記録で公開済み)
ただし
データ量が多いのでご注意ください。また別枠で開きます

▲ 曲沢1
▲ 曲沢2


 やっぱりローカル線のレイアウトもいいなあ・・・。
 次は季節的に秋の風景かな? 紅葉の谷あいを列車が走るシーンの再現かなあ・・・。



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