ミニチュアと背景の合成

●広い範囲でピントのあった画像をつくる



 新しくミニチュア撮り用のカメラも買ったことだし、ここらでいっちょ、ミニチュアからリアルな風景をつくってみようかと思います。
 ミニチュアがミニチュアにしか見えないのは、カメラを接近させ拡大するとピントのあっている範囲がとても狭くなってしまうことが
いちばん大きな原因です。exilim EX-ZR70はピントの異なる写真を複数撮影し、カメラ内部でそれらを合成して広い範囲でピントが
あっている画像をつくりだす機能を持っています。





 現時点でパーフェクトとはいえないところもありますが、手軽にリアルな画像が撮影できるのは嬉しいことです。他のカメラでもそのような
ソフトウエアを導入すればできないことはないのですが、小さなレイアウトのなかで大きなカメラを振り回すのはなかなか難しいです。
(高さ1cmのフィギュアの目線で撮影するのはほとんど無理)

 

 では早速 exilim の全焦点マクロモードで撮影した画像と撮りだめた風景を合成してみます。作品制作にはGIMPという無料の
ソフトウエアを使います。



作例1 鳥海山と由利高原鉄道


A 写っているのは山形県側から見た鳥海山。由利高原鉄道は本当は反対側を走ってます。



B この画像に exilim の全焦点マクロモードで撮影した画像を
レイヤーとしてドロップします。そして背景部分の白いところを
 
ファジー選択 します。この選択はできるかぎり丁寧に行います。



C 
レイヤー>透明部分>アルファチャンネルの追加 を行ったあと、編集>消去 で選択範囲が消えます。その後、レイヤー移動
 で適切な位置に移動させます。



D 
色>色相-彩度色>トーンカーブ などで2つの画像の明度や色調を同じ感じに仕上げ、作業が終わったら、
 
レイヤー>下のレイヤーと統合 を行います。
  右側に余白ができてしまったので 
スタンプで描画 をクリックし、補修して仕上げます。








作例2
 宮川第10橋梁と高山本線


A 元になる宮川第10橋梁の画像です。



B 左右の方向に 
鏡像反転 。その後に 画像>キャンバスサイズの変更 で横長に修正します。



C  exilim の全焦点マクロモードで撮影した画像を
レイヤードロップします。そして先ほどと同様、背景部分の白いところを
 
ファジー選択。その後に レイヤー>透明部分>アルファチャンネルの追加 を行ったあと、編集>消去 で選択範囲を
消します。



D 
色>色相-彩度色>トーンカーブ などで2つの画像の明度や色調を同じ感じに仕上げ、 レイヤー>下のレイヤーと統合
  を行います。右側に余白と川の流れに違和感がある部分は 
スタンプで描画 で補修して仕上げます。








 ここまでは exilim の全焦点マクロモードで撮影した画像をベースに作品をつくりましたが、今度はより高画質なカメラを
使用して、ピントの異なる複数の画像をとり、これを合成して作品を完成させようと思います。マニュアルで作業するので手間
はかかりますが、より精度の高い作品づくりができると思います。


作例3 雪景色とわたらせ渓谷鉄道


A 30cm先にピントを合わせた画像です。カメラは canon の G7X です。



B 手前10cmにピントを合わせた画像です。この画像を先ほどの画像の上に
レイヤードロップします。



C ピントが合っている部分は手前のみなので、それ以外の部分は消去します。まずは丁寧に 
自由選択、 そして レイヤー>
 透明部分>アルファチャンネルの追加
を行ったあと、編集>消去 で選択範囲を消します。



D こちらがその作業を終えたところ。この作品は2枚だけですが、必要があれば3枚、4枚と合成します。



E ピントの合いかたに違いがあれば、レイヤーごとに 
フィルター>強調>アンシャープマスク で調整を行います。作業が
 終わったら、 
レイヤー>下のレイヤーと統合 を行います。
  このあとは背景となる風景を 
レイヤードロップ>レイヤー最下段に移動 その後に先ほどと同じ作業を行って作品を完成
させます。







 手間はかかりますが、自分で思うような作品づくりをしたければ、こちらの方が良いですね。コンパクトで高画質なカメラを
お持ちでしたら試してみる価値ありです。



以降、18.04.22追記



 Nという鉄道模型関連の雑誌があるのですが、こちらはその雑誌の主催する鉄道模型フォトコンテストで最優秀賞をいただいた
作品です。本来はご覧いただくとお分かりのとおり4枚組の写真のラストシーンだったのですが、未公開作品の制限があったので、
あえてこちらの作品だけ公開せずにコンテストの方に応募しました。作品タイトルは「最後の冬」です。

 冬の早朝、母親の運転する軽トラックで、一人の女子高生がとあるローカル線の無人駅に送ってもらいます。
 乗降客はこの3年間彼女一人。そしてその彼女もこの3月には卒業し、この駅は本当に静かな春を迎えることになります。

 そんなストーリーを込めてつくった作品です。





 こちらもコンテストに応募した作品。「宮川第10橋梁」のシーンを角度を変えて撮影、合成した作品です。「最後の冬」の方がやはり印象深い
作品だとは思いますが、こちらもゆったりとした流れや静かな時間の経過のようなものが感じられる作品になっているのではないかと思います。

 作品作りを通じて大切にしているのは、たとえ存在は小さくても、情景の主人公はやはりドールやフィギュアだということ。今回も鉄道模型フォト
コンテストではありましたが、視点はあくまでも身長1cmのフィギュアに置きました。ドールやフィギュアをとおして、寒さや静けさ、空間の広さや
空気感のようなものが伝わる良いなと思っていたのですが、幸い今回はうまくいったみたいです。
 また作品によっては、フィギュアを置くという直接的な表現でなく、人のいた痕跡のようなものを残すことでも作品としての奥行を出せるような気が
します。
 これは何も模型についてだけ言えることではないと思います。もし飯田線の「小和田駅」がもし最初から誰も住まない場所につくられていたなら、
きっと誰も興味を持たないと思います。でも以前は確かにそこに人々の暮らしがあった。だからこそ人は想像力をかきたてられ、そこに魅力を感じる
のだと思います。





 ここでちょっとPRです。
 8月の個展では人形のいる情景をテーマにしたいと考えているので、小さいものは1:150から、大きいものはもしかして1:1まで、様々なスケールの
情景作品を持ち込もうと思っています。1:150は今回、最優秀賞をいただいた作品を含め、7作品を会場に持ち込む予定です。
(基本一人での展示なので、数多い作品を今から準備してパッキングしています。)
 ただ自分の作品は撮影してナンボのものが多いので、情景作品をプリントアウトしたものも多数展示する予定です。
(どちらかというとこちらがメインかも)



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