ラブドールのカスタマイズとメイク chii の場合 1

TPEラブドールの修正




 新しいお友達が加わりました。 でも今までとはぜんぜん違います。いわゆるラブドールです。
 自分としてはいろいろな分野のリアル系のお人形達とお付き合いしてきたわけで、今も小さい方は1/150から、大きい方は1/3のものまでが自分の手元にあります。
そしてここにきてついにというか、やっぱりというか1/1が加わったわけです。まあ、ある意味リアル系ドールの最高峰であることには間違いないと思いますし。
 これまで高価だったことと等身大だと手に入れたあと置いとく場所がないという現実があって購入せずにいたのですが、それがここにきて、100cmサイズだとアマゾン
でも3万円ぐらいから買えて、そこそこ品質が良いらしい・・・。そんなことが分かってきて今回の決心に至ったわけです。

 

 注文した翌日に到着。長さ120cmの巨大な箱に収められていたのですが、これがまたものすごく重い。2Fに運ぶだけで腰が痛くなりそうです。ちなみにお人形の
大きさは100cm、13kgで、等身大ラブドールとしては最も小型のものなのですが、本来の使用目的を行使しようと考えたらとても体力が必要な商品だと思います。

 こういった格安のラブドールの多くは中国製ですが、アマゾンのプライム商品(早朝に注文すると当日商品が届く)になっているぐらいなので、国内に在庫があり、
それなりに売れているということだと思います。
 昨年、とある画廊で名画の衣装を着たオリエント工業の製品が展示されるというイベントがあり、たくさん入場者でにぎわったとも聞いています。ものがものだけに
あまりこういったものが表舞台に出てくることはないのですが、もしかしたら水面下でブームのようなものが起こっているのではないでしょうか。

 ちなみに今回は自分が外出中に配達が完了していて、これを受け取ったのは連れでした。(普通の家庭なら大事件に発展するかも)
「なんかものすごく大きいもの届いたよ。アマゾンで何注文したの?」
「うーん、いわゆるラブドール。」   (ふつうに答えた。玄関に置かれたままだったので、当然、聞かれるだろうと思った)
「ふーん・・・。」          (反応がうすい)
「・・・で今度の個展かなんかに持ってくの?」
「うーん、ものがものだけに厳しいかも。」 (これを利用するアイディアはある)
 みたいな会話がありました。自分の趣味に寛容な連れで良かったです。(というか、あきらめてるかも)



    1 事前に購入してあったベビーパウダーを、全身にぱふぱふ
     してあげます。
    

 こちらのドールは医療用素材のTPEでできています。このTPEやシリコンでできたドールは独特の粘着性があって、何もしないと汚れや埃がぺたぺたとついてしまいます。
ということで汚れ防止のためにも、このベビーパウダーは必需品です。ベビーパウダーの選択肢はいくつかありますが、TPEの材質劣化の可能性を考えれば、人のための
いろいろな成分が含まれている高価なものより、これまでの実績もあるベーシックなタイプのものの方が良いように思います。



    2 ボディにヘッドをつなぎ、ウイッグをかぶせて組み立てます。ウイッグに関しては
     後日別な色のものに交換、色移り帽子のためウイッグキャップもかぶせました。
     




 とりあえず全身を観察します。普段いろんなものを見ている立場からすると問題があるように思えました。
1 ヘッドとボディのバランスが良くない。(ヘッドが大きすぎる)
2 ブロンドのヘアーの質が良くなく、しかも色合いの関係でヘッドが更に大きく見えてしまう。(上の説明にあるように、即刻、ブラウンのウイッグに交換した)
3 ボディラインの表現があまい、リアルでない。(こればっかりはいじれない)
4 フェイスの造形が今一つ、特にアイホールが大きすぎて黒目がすべて見えている。
5 フェイスメイクで、口元の表現がシャープでない、眉毛の傾きが左右で異なる。



 商品画像の見栄えが良く、実際の商品がそれに劣るということはよくあることですが、特に格安のラブドールだとそれが多いみたいです。一見して自分の目には
こちらが完成品というより、素体に近いもののように見えました。(もっとずっと良くなるのに・・・)
 すぐに何とかなりそうなのはアイホールの縮小とメイクのやりなおしだと判断し、すぐに作業開始です。

3 睫毛とアクリルアイを取り外します。ご覧のように
 眉毛とかアイラインが左右で違っている。
4 薄め液などでアイラインを消し、傾いた眉毛の
 輪郭を修正します。
 

 とりあえずメイクに使われている塗料はラッカー系のようで、Mr.カラーの薄め液なら少しずつ、ツールクリーナーなら一気に剥がれ落ちました。

 次にアイホールの縮小を試みます。アイホールを小さくするためにはTPE素材に良くなじんで密着する素材が必要です。そこで容易に入手できる
3つの接着剤でテストを行ってみました。

 

 ヘッドの裏側にこの3種類を少量塗ってみたところ、信越シリコーンのRTVゴムがいちばん具合が良かったです。乾燥はやや遅いもののTPEによく密着
して剥がれない、ボリュームも簡単に出せる。スーパーX2は粘りが強くて塗るのには不向きだけど、睫毛などの接着には良さそう。スーパーXは少し引っ
張ると剥がれ落ちてしまいました。

 RTVゴムはレジンキャストのときに使うシリコンの型が破れてしまったときに、接着剤として使ったことはあるのですが、まさかこんな場面でも使えるとは
思いませんでした。あとこのRTVゴムはヘキサンが溶剤として使えるようなので、溶きパテのように薄く延ばして塗ることもできそうです。

    5 RTVゴムにリキテックスを混ぜて着色、ここにヘキサンを混ぜて溶きパテのような
     シリコンゴムをつくります。
    

6 これを少量つまようじや筆にとり、アイホールの
 内側に盛り付けてゆきます。
7 色を変えて上まぶた側にはブラウン系に染めた
 RTVゴムを塗ります。
  8 平らに仕上がらなかっったところには、無色のRTV
 ゴムをデザインナイフで平らにならしながら塗ります。

9 唇と口のなかは赤系に染めたRTVゴムで仕上げ
 ます。
10 余分なRTVゴムはキシレンで拭きとり、作業が
 終わったところで全体を中性洗剤で洗います。
 

 一見うまくいっているように見えますが、実はぜんぜん良くないです。キシレンの揮発性は以上に強く、容器から取り出して30秒もしないうちに蒸発して
消えてなくなってしまう感じです。だから塗りやすい濃度に調整しても、1cm塗った段階で筆が重くなり、筆目がしっかりと残ってしまう。さりとてキシレンを
多めにするとRTVゴム自体が完全に分解してしまって全く塗れない! 結果として平坦には程遠い仕上がりになりました。



11 アイをマスキングして肌の色に合わせたカラー
 を吹き付けます。
12 カラーをブラウン系に変えて目じり、目がしらに
 アクセントを加えます。
  13 アイラインと眉毛を引き直します。下地が平坦に
 仕上がっていないのでぼろぼろ。

14 全体のつやを整え、カラーの剥離を抑えるため
 に全体につや消しウレタンクリアーを塗ります。
15 最後に睫毛を取り付けて、基本的な工作は完了
 しました。
 





 遠目には問題なくきれいに仕上がりましたが、やっぱい近くに寄ってみると工作した部分の荒れが気になります。



 おまけにこれらの作業を膝の上でやっていたら、衣類の染料がヘッドに色移りしてました。慌てて購入してあったTPEドール用脱色剤やMr.カラーの薄め液を
使って色を落とすが、完全にはもとにもどりませんでした。







 結局どうしたかというと、このあと3日をかけてヘッドの完全清掃をおこない、眉毛や睫毛の復元をしました。ほぼ振り出しに戻った訳です。
それでもやっぱりアイホールの形だけはなんとかしたいな・・・。そこで今度は接着剤でアイホールを小さくする方法を試みることにします。



    16 目尻の部分を指でつまみ、ここにTPE用の接着剤を少量流し込みます。
     つまんだまま1~2分待つと接着は完了です。
     



 ほんのわずかな作業ですが、これで劇的に良くなった感じです。(なーんだ、最初からこうすればよかった・・・)



    20 あらためてアイラインと眉毛を微修正、軽くメイクを施して完成です。
    



 お洋服は100cmぐらいの既製品がぴったりでした。さすがにリアル系ドールです。
 とりあえず家の中をあちこち移動して撮影してみますが、金属骨格のボディはやっぱりものすごく重いです。重さは別にリアルでなくてよいので、
たとえばカーボンフレームとかアルミ合金なんかを使って軽量化できないものでしょうか。











 自分のいないときには、デスクで代わりに仕事をしてもらっています。(冗談)



 フェイスの仕上がりにはそこそこ満足しています。ただ根本的にこのヘッドは110~125cmぐらいのボディーに合っているような気がします。
100cmだとやや頭が重い感じです。
 そこで今度は交換用の小さなヘッドだけを別途購入することにしました。もしそちらの方がサイズ的にぴったりだったら、こちらのヘッドは久し
ぶりにヤフオクに出品してみようかと思います。さすがにここまでいじってしまうとジャンク品扱いになってしまうとは思いますが、それでも可愛
がっていただければ嬉しいことです。



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