ラブドールのカスタマイズとメイク chico の場合 2

TPEラブドールの修正




 1ヶ月ほど前にご紹介した身長100cmの新しいお友達なのですが、ヘッドとボディのバランスがやや悪かったのと、ヘッドの造形がイメージ通りでなかったことから、
今回、新しくヘッドだけ買いなおしました。
(格安の中華製ドールの場合、ヘッドはねじ込み式でボディと結合するタイプが主流で、製造元が異なっていても基本的な互換性は保たれています。)
 ボディを含めて新しいドールを購入するという選択肢はあったのですが、そうなるとただでさえ狭い四畳半がまた更に狭くなってしまいます。モノがモノだけにリビングに
座らせておくわけにもゆかないし・・・。



 このヘッドはgillianという名前でamazonで売られているのですが、かなり人気のあるヘッドのようで、思ったより入手できるまでに時間がかかりました。(1ヶ月)
この画像は素のままですが、とても可愛く造形されていて、ボディとのバランスもとても良いです。こちらは最初から100cmボディとの組み合わせを前提につくられた
小顔ヘッドなんだろうと思います。
 素材は医療用素材のTPEなのですが、シリコンと同様にかなりの粘着性がるので、何もしないと汚れや埃がぺたぺたとついてしまいます。そこでまずは全体に
ベビーパウダーをパフパフとまぶし、軽くメイクしてみることにしました。





 こんな感じです。平面的な感じはなくなって、きりりとした美人さんになりました。
 ヘッドの基本的な造形は良いのですが、こうやってみると問題がないわけではないです。こうすればもっと良くなるのに・・・、という目ですぐに見てしまうのは、
もう完全に癖になっていますね。

1 アイホールの大きさが左右で違う。また目尻がちょっとつり上がりすぎ。(メイクでごまかせる程度ではない)
2 アイラインの描き方が雑。
3 眉毛の傾きが違う。
4 下の睫毛がない。
5 鼻孔の表現がない。唇の表現も平坦な感じ。

 等々で、2,3はメイクで何とかなりそうなものの、1、4、5は何か別の手立てを施す必要がありそうです。
 chii ちゃんのときには、「気に入らない部分は全部修正してやる。」みたいな勢いがあったのですが、TPEドールの場合には手を加えられる場所が限られていると
いうことが分かってきたので、ここからの作業はリメイクというより微修正といった方が良いかもしれません。実際、ここから先は、1日あればすべての作業を終わらせる
ことができると思います。





 今何をしているかというと、目尻や目頭をつまんで、アイホールをどういう形に修正すればよいか検討しているところです。
 向かって右側の目はサイズは良いのですが、つり上がりすぎている。だから上瞼を下げつつ左に寄せるのが良いだろうな、みたいなことを考えています。一方左側の目は
根本的に大きすぎるので、まずは縮小させることを第一とします。

 でもアイホールの変形はどうして起こってしまうのでしょう?
 そもそもTPEとは液体に近い性質を持ったゴムの一種で、比較的低い温度でも溶けてしまう性質があるということです。ドールは原型に加熱したTPE素材を流し込んで
整形するものと思いますが、おそらくは完全に冷え切るのを待たずに型から取り出してしまうため、最もデリケートなアイホールが変形してしまうのではないかと推測します。



1 睫毛を取り外しています。少しぐらい強く引っ張って
 もTPEは破れません。
2 溶剤でアイホールの輪郭部分の塗装を落とします。
 (忘れてましたがアイは外しておいた方が良いです)
 

 このとき使った溶剤なのですが、最初に使ったMr。カラーの薄め液は、あまりよく塗料が落ちませんでした。そこで用具洗いのためのクリーナー(下)に変えたら、きっちりと
下地塗料まで落ちたのは良いけれど、TPE自体まで少し溶けてしまいました。



 前回の chii ちゃんのときにはそんなことなかったのになあ・・・。やっぱり基本は目に付かないところで、まずはテストすべきですね。



3 縮小したい部分にTPE専用の接着剤を流し込み、
 リハーサルどおりに指でつまみます。
4 アイ自体も大きすぎて位置調整ができなかった
 ので少し削りました。
 

5 再び上の睫を取り付けて、ムラになった部分を、
 コピックの黒で修正します。
6 二重まぶたを描き直しているところです。Mr.カラー
 の赤褐色を使っています。
 

 このあたりはメイクの段階でもOKですが、半永久的な処理をしたかったので、ラッカー系の塗料を使っていると言うことです。


7 アイホールの下は何も塗られていなかったので、
 ブラウンで輪郭を描き、内側をピンクで着色します。
8 ドール用の睫から適当なサイズのものを選んで
 取り付けます。
 

 睫の取り付けにはシリコン用の接着剤が必要で、手持ちの接着剤のなかで試したところ、十分な接着力を得ているのは信越シリコーンのRTVゴム、それからセメダインの
スーパーX2の2種類でした。ここは少量使用なら、一般的なスーパーX2の方が良いでしょう。


    9 唇に赤みを加えているところです。使用しているのは
     RTVゴムをベースにした塗料です。
     


 この塗料の作り方と使い方です。



 信越シリコーンのRTVゴムにはヘキサンが溶剤として使用できます。まずはRTVゴムにリキテックスで色付けしたあと、このヘキサンで薄く延ばします。これを鼻孔や唇、
あるいはバストトップなどに塗ってゆくのですが、これがけっこう難しいです。まずはヘキサンの揮発性が尋常でないほど早く、塗っている最中に筆の進みが抵抗で遅くなる
ぐらいです。それならば最初から極度に薄めればよいかというと、薄めすぎると今度はRTVゴム自体が分離してしまう。平坦にきれいに塗るのはとっても難しいです。
 あとこれを塗ってしまうと、その部分はお化粧ののりがあまりよくなくなるので、口紅できっちりとメイクしたいという人は、唇は塗らないでおく方が良いと思います。


    10 デフォルトの爪があまりに長いので切りました。
      爪切りが普通に使えます。
    

 爪は普通に接着剤でTPEに張り付けてあるだけなので、引っかけると取れてしまうことがあります。また爪が長いこと自体、トラブルの原因ともなるので、通常の
長さに切りそろえるのが無難です。





 ここまでの作業が完了したところです。まだメイクは行っていません。





 使用する化粧品です。基本的に人間用のものがそのまま使えます。ヒアルロン酸とか栄養剤、保湿剤などの特別な配合物はもちろん必要ないので、
安価なものでも十分です。ただできれるだけ安全性が高く、発色の良いものを選んだ方が良いと思います。



11 フェイスから首にかけてファンデーションを
 パフパフと塗ってゆきます。
12 ダークブラウンのアイシャドウを筆にとって睫毛
 の傾きを修正します。
 

13 同様に目尻にもブラウンをのせて、釣り目の修正
 を行います。
14 暗めのチークカラーを目頭周辺にのせて、立体感
 を出します。
 

15 ピンク系のチークをおきます。濃くすると人形みた
 いになっちゃうので(?)、ごくうすく自然に。
16 あごから頬にかけてブラウンをおき、やや暗め
 にして小顔に仕上げます。
  17 顔だけ浮き上がる感じになるとおかしいので、ぼかし
 ながら首筋までチークをおいて自然にまとめます。

 なんか普通にメイクしているんだけど(もちろん自分ではやったことないけど)、メイクってたぶんこんな感じですすめるのではないでしょうか。
というかメイクの勉強はしたことないけど、何十体とお人形をつくってきたなかで、自分としてはこういうメイク方法が自然と身につきました。


18 筆にとったカラーをリップにおきます。ただすでに
 赤みが入っているので、口元を整える程度です。
19 最後にウイッグキャップとウイッグをかぶせ、前髪
 を整えれば完了です。
 



 確認のための撮影を行いました。撮影することで、それまで気づかなかった問題点を発見できたりすることもあるからです。
 今回もメイクが左右で微妙に違っていたのに気づいて修正しました。

  

 再確認をして作業は完了です。とりあえず amazon の商品見本になったモデルドールのレベルにはなったかな?
 透明感のある肌なので、もしかしたら自然の光の方が良いかなと思って、今度は窓際まで持って行って撮影します。(体重13kgはやっぱり重い。筋トレになる)




 完全に化けましたね。格安の中国製ラブドールですが、少し手を加えたら、ここまで可愛くリアルになりました。やっぱりラブドールはリアル系ドールの最高峰
であることに間違いはないです。
 さてここであらためて、何で自分がラブドールをいじり始めたかというと、8月の個展で何か人目を引くものを会場入口に置きたかったというのが直接的な動機
でした。がしかし、こちらは現時点でちょっと厳しい。
 最初はうちは顔の造形までいじって、別なお人形に仕上げようと思っていたのですが、実際にはかなり困難で、現時点ではアイホールの修正やRTVゴムで
多少色味を追加するぐらいが精いっぱいだということが分かりました。でもこれだとちょっとメイクしたラブドールをなんで美術館に置くの? みたいな話になっ
ちゃうので、見直しが必要でしょう。
 ただとりあえず納得のゆく仕上がりにはなったので、何枚か写真を撮って、こちらのサイトにUPしたいとは思っています。



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