chiko



Portrait d'Irène Cahen d'Anvers
(3D表現したイレーヌ・カーン・ダンヴェール




chiko(TPEエストラマー 100cm 2018)



















camera:Panasonic LUMIX GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm + 50mm macro / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

 有名なルノワールの作品を3Dで表現してみました。絵に比べると(自分が模写した油絵)、やっぱりそっくりというわけにはゆきませんでした。
この3か月の間にTPEエストラマーでできた顔の造形をいじるのは難しいことが分かってきたので、今回はとりあえず雰囲気だけでもと思って製作
してみました。そういうわけで自己採点は完成度80%、リアル度60%のトータル70点ぐらいです。
 ですが、けっこう今回の試みは面白かったです。蝋人形館のようなものは昔からあるので、試みとしては新しくはないのかもしれませんが、もともと
2Dだったものを3Dにするってことは、想像して作り上げなければいけないところも多く、創作の楽しみがあります。満足度は90%ぐらいです。
 こちらのイレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢は8月の個展に持ち込むつもりで準備しています。車で移動する際にはちゃんとシートベルトさせなきゃね。



準備編 こんな感じで作品をつくりました。

 我が家の chico ちゃんをなんとかイレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢になってもらうため、1月ほどの時間をかけて準備してみました。まずはヘアーと
ヘアアクセサリーからです。

1 コサージュ、リボン、ヘアクリップなど、使えそうな
 ものをあちこちから集めてきました。
2 ウイッグは乱れやすいので、まずはウイッグオイル
 を全体に吹き付けてすり込みます。
 

 こちらのウイッグですが、ソバージュ、ライトブラウンで注文したつもりだったのにのに、届いたのは商品説明より暗い色で、ほとんどウエーブもかかっていない・・・。
1260円だからこんなもんか。

    3 適当に材料を組み合わせて、ちょっと大きめのヘアアクセサリーをつくり、
     ウイッグに取り付けます。
    

 ルノワールの絵は単なるリボンなのかもしれないけど、はっきりとした描写がないので、少し大げさにアレンジしてみました。
 次はドレスです。一からつくると大変だしお金もかかるので、ここは海外サイトの通販を利用します。(Aliexpress) こちらは子供用のドレスで、お値段は1860円でした。

 

 一番小さな4歳児用(120cm)なんだけど、やっぱり chico ちゃん(100cm)には少し大きめでした。クリップで余った部分をつめ、しばらくはこれでよしとします。ベースの生地は
水色だけど、本物の方はもう少し色が濃く、上半身にもこの生地が使われています。生地の取り換えは大変なので、薄い青の生地でインナーをつくります。

4 生地をカットしているところです。薄手で伸縮性が
 あるので切るのが難しい。
5 縫うのは難しそうなので、布用接着剤を使って
 つなげてゆきます。
 

6 大体の形が出来上がったら、実際に着せてみて
 調整します。
7  統一感を出すために、同じ生地でペチコートの
 ようなものもつくりました。
 

 あと胸元には白い大きなコサージュも追加です。
 靴の方は描かれていないので適当なものを履かせます。これでお洋服の準備はOKです。

 次は背景の製作にとりかかります。

8 白いラダーのようなものを組み立てます。これは
 観葉植物の棚になります。
9 こんな感じて固定し、このフレームの下に造花を
 吊り下げてゆきます。
 

    10 組みあがったら、茶色の布をバックにしてセッティングします。ライトは
     左前方から。
    

 撮影後に気づいたのですが、実物の絵はもう少し葉っぱの密度が高いです。(個展までに植物を追加しなくっちゃね)
 ルノワールは背景の植物をはっきりと描いているわではないので、その種類は分かりませんが、白っぽい花が咲いているようにも見えます。
ここも想像力をはたらかせて再現することにします。



 次はお人形のメイクです。



 根本的にTPEエストラマーでできたDOLLの造形を変えることはできないので、お人形本体にできることといえば、メイクを施して本物に雰囲気を
近づけることぐらいです。我が家の chico ちゃんはマスクがアジア系なので、これを彫りの深いヨーロッパ系の顔立ちに仕上げる必要があるのですが、
これにはかなり無理があるかな。

11 コピックの黒でアイラインを強調します。目尻は
 少し下げ気味で。
12 頬と目頭あたりに暗いチークを塗って陰影をつくり
 ます。立体的に見える工夫です。
 

13 ローズ系のルージュで唇の輪郭を描きます。
 モデルのイレーヌちゃんもしっかりお化粧してるね。
14 口元の修正です。頬に向かって少し跳ね上げる
 ように描きます。
 

 でも結局、これまでのメイクで少しだけコントラスト上げただけになっちゃいました。
 正面からはともかくとして、横からみたときの彫りの深さはお化粧だけではどうしても修正できません。根本的に chico ちゃん鼻が低いので、これ以上は無理。
セロハンテープ使っても無理!



 学生時代にルノワールの画集を見て一目惚れし、最初に描いた油絵が上の作品です。
 この絵画、今年の2月に国立新美術館に実際に見に行ってきました。(今、ビュールレコレクションは九州で開催されているみたいです。) やっぱり歴史に残る美しい
作品だと思います。でも生で見ることができるなんてついこの間まで全く考えもしなかったなあ。

 こちらの絵がルノワールによって描かれたのは1880年、モデルになっているのはベルギー出身のルイ・カーン・ダンヴェール伯爵の長女イレーヌで当時8歳だったそうです。
きっと花が咲き出す春、テラスにできた木陰に椅子を置いて描いたんだろうと想像します。
 ユダヤ系のカーン・ダンヴェール家はパリの銀行を経営する裕福な家庭でしたが、彼女の私生活はそれほど幸せなものではなかったようです。二度の結婚も結局破綻し、
彼女の娘や孫はナチスによって強制連行され、アウシュビッツで死亡しているとのことです。
 この絵自体はナチスドイツに接収されていましたが、戦後本人に返還されました。そしてその後はオークションにかけられ、落札したのがドイツからスイスに帰化した実業家
エミール・ゲオルク・ビュールレというわけです。
 ちなみにこのビュールレ家というのは第二次世界大戦中、武器商人としてナチスドイツと取引を行い、巨万の富を得ていたとか、ナチスが接収した絵画を大量に購入していた
とか、いろいろとあるみたいです。
 こちらの絵、ただ印象派の肖像画として最も美しい1枚というだけでなく、歴史的な重みもかなりありますね。



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