岳南電車



2019.01.02
 先日、静岡県東部の岳南電車(岳南電車岳南線)に乗ってきました。JR東海道線に乗り換えできる吉原駅を起点として、
終点岳南江尾駅を結ぶ9.2kmのほんとうに小さなローカル線です。でも沿線は見どころたくさんで楽しかったです。



1.02(水)
9:15
 旅のスタートはJR東海道線の吉原駅です。駅前の駐車場に車を止めて岳南電車の乗り場を探します。
 あれ? ないな。

 

 岳南電車の乗り場はJR吉原駅からはちょっと離れていて、JRの駅の裏側、およそ200mほどのところにありました。




 吉原駅の改札です。このあふれるレトロ感、まるでこの入り口そのものがタイムトンネルのようです。なんかわくわくどきどきしちゃう。




 1日券700円を購入してこの改札をくぐります。1日券はお正月記念の特別な硬券でした! 基本、終点までの往復が720円なので、
切符が手元にも残るしお買い得だと思います。




 ドラマや映画、CMなどでこの岳南電車が使用されることも多いようで、各駅のホームにはその解説もあります。





9:48
 最初に乗るのは岳南電車9000系、いきなりですが終点の岳南江尾駅まで移動します。



 電車自体は日中でも30分間隔で運行しているので、乗り放題の旅には都合が良いです。




 岳南電車のウリはどこからでも富士山が見えるところ。





 どの駅もレトロ感でいっぱい。

 もう一つの見どころは岳南原田駅を通り過ぎたあたりの風景。工場地帯を電車は抜けてゆくのですが、パイプラインをくぐったりして
なかなか迫力があったりする。
 毎日じゃないけど、岳南電車では夜間ライトアップした工場地帯を、室内消灯した特別列車も運行しているみたいです。


 ▲こちらの画像をクリックすると、岳南原田駅から比奈駅間の風景を動画でご覧いただくことができます。(データサイズ大きいです)



10:10
 岳南電車の終点になる岳南江尾駅に着きました。

 

 岳南電車はどの駅のホームからからも富士山が見えるのですが、そのベストスポットがこんなふうにマークされている。
 あれ? たまたま雲がかかっていて見えない・・・。



 この向こうの高架橋は新幹線の走っている線路です。だからうまくゆくとこのあたりから、旧式の岳南電車+最新鋭の新幹線+世界遺産の富士山
という組み合わせの写真が撮れます。だからここはカメラマン多いです。
 この画像右側の緑色の車両は今日はお休みみたいです。あとで調べたら、もともとは井の頭線を走っていたらしいです。多くのローカル線がそうで
あるように、この岳南電車でも払い下げを受けた車両が運行の中心になっています。
 写真が小さいので分かりづらいかもしれませんが、「かぐや姫」のヘッドマークがついています。でも何でだろう?




 ここから先は岳南電車を乗ったり下りたりしながら、吉原まで戻ることにします。



 各駅にはこんな感じで近隣の観光スポットなどが紹介されているので、これを撮影しておくと良いかな。




 県道を吉原方面に向かって歩く、とりあえずお隣の神谷駅まで。このあたりは別にどうってことない風景だね。




 そう思っていたらいきなり湧水、ものすごく澄んでいる。もしかして富士山の伏流水?



 そして屋根にはサル。



10:45
 神谷駅から再び電車に乗って岳南岳南富士岡駅に着きました。ここには車両基地があって岳南電車の中心的なところ。



 ここもまたレトロな景観です。Nゲージのレイアウトをつくりたくなりそうな感じだったので、ここではいっぱい写真を撮りました。
でもこの駅舎とプラットフォームの屋根はつくりがいがありそうだなあ・・・。





 でもここで目を引くのは、今は使われなくなった501とかEDといった貨物を引いていた機関車です。
 そもそも岳南電車(旧岳南鉄道)は富士周辺の工場群と東海道線を結ぶ貨物輸送を行うための路線として整備されたという歴史があります。



 岳南電車に乗ったら、この駅は間違いなく立ち寄るべきポイント。




 駅舎の裏側にはかぐや姫の絵。




 改札前には箱庭。よく見るとこの水も湧き水みたい。
 何か岳南電車って、こういった手作り感が満載。もちろん経営的には厳しいんだろうけれど、お金がない分、いろんなところで頑張っている感じがする。
応援したくなるような鉄道路線です。


nano (オリジナルヘッド+オビツSBHボディ 28cm 2018 )

 岳南電車の各駅には近隣の観光スポットの紹介があります。その多くは山際に点在しているようなので、ここらで線路を離れ、
散策コースを歩いてみることにしました。

 

 富士岡駅の山側は海岸線に並行して古い町並みが続いているのですが、そこを歩いていて気付くのはこういった湧水があちこちから湧き出していること。
ものすごい透明度で量も多いです。清流と言われる柿田川と同様、富士山の伏流水以外に考えられません。




 龍水山医王寺、奈良時代に行基が建立したと伝えられる古寺。境内には山本勘助の供養碑があります。


11:40
 やってきたのは高台にある竹採公園です。(富士岡駅から歩いて30分ぐらい)

 

 この公園のなかに「竹採姫」と記された古い石碑が残っていました。
 一般にはかぐや姫は月に戻っていったとされていますが、このあたりでは富士に上っていったとされ、富士の祭神と考えられているそうです。
こういう古い伝承が残されていて、かぐや姫のヘッドマークだったり、壁の絵だったりしたわけですね。



 こんなマンホールもありました。
 町中ではほかにも姫伝説にまつわる神社や碑文などを見ることができます。


sayaka (オリジナルヘッド+オビツSBHボディ 28cm 2018 )



 昔の町並みから駿河湾を望むとこんな感じです。



 今でこそ海岸まで距離がありますが、昔はこのあたりが海岸線だったようです。街道沿いの宿場+漁村といった感じだったんでしょうね。



 その向こうの、現在工業地帯になっているところは、大量の伏流水の影響もあって、軟弱な地盤の干潟や沼地だったようです。そしてこの
ちょっと向こうには歌にも詠まれた田子の浦もある。
 そののちにこの海岸線を埋め立てて整地し、大量の水を必要とするパルプ産業やその他が発達してきたのは近年のこと。そして製品輸送の
ために岳南鉄道がつくられたわけだ。
 なるほど、これでつじつまが合いますね。ブラタモリじゃないけど、これで納得がゆきました。  



12:15
 一つ先の比奈駅に着きました。



 ここにやってきたのは、その名も501という鉄道模型店が駅舎で営業していると聞いたからですが、残念ながらお正月はお休み。
また今度の機会に訪れてみることにします。

 ここから先、岳南原田駅までの間は工業地帯のまんなかを岳南電車が突っ切るように走っているところ。帰りは歩いて通過しようと思います。





 お正月だというのに白煙が立ち上り、黒いシルエットが迫力十分。





12:40
 岳南原田駅から乗車し、吉原本町駅で下車します。どこかでお昼にしたい時間帯です。

 

 でも営業しているお店がほとんどない。
 なんとか韓国料理のお店に入って昼食にありつきました。



 ここからちょっと東京よりのところに三島があって、こちらは名前の知れた観光地です。同じように街中に清流が流れ、伝統的な建物もある。
 でも少なくとも100年ほど前までは富士の吉原地区も負けず劣らずの景観を持つ場所だったはずです。なんたって田子の浦は百人一首の歌にも
詠まれるほどだったんだから。



 今でこそきれいになったとは言われていますが、富士川の河口と田子の浦は公害で生物の住めるような場所でなくなっていた時代もあります。
もう時間を戻すことは到底できませんが、やはり産業最優先の反省はあった方が良いでしょうね。


 

 いろいろと複雑な思いはありますが、それでも岳南電車は応援してあげたい路線です。ちょっとだけお土産も買いました。
 少し昔の工場地帯風景なんだけど、どことなく近未来的な感じもある、そんないつもとは違う写真を撮りたいのであれば、吉原はおすすめの場所です。



2019.01
camera:Panasonic Canon Powershot G7X / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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