情景のなかの人形たち

Dolls in the scene 2019




*) こちらの記録はブログ「瞳に四角い鰯雲」に記録してきた2回目の個展の記録に加筆、再編集したものです。


<12ヶ月前>

 昨年に初子展「情景の中の人形たち」をやってみて思ったのは、率直に自分のイメージしている世界をスペースの制限なしに再現できる
という楽しさでした。確かに大変ではありますがドールやフィギュアをつくり、3Dの情景の中においてみたり、あるいは写真のなかで思う
イメージを再現することがいかに楽しいか、もうこれしかないって感じです。
 ということで個展が終了してすぐに、次の制作物の準備を始めました。
 計画では新作の球体関節人形1、旧作品のリメイク1、ジオラマ3、鉄道模型1ぐらいでしょうか。それにあわせていくつかキットも購入しました。
やるからには制作物を新規にどんと用意したいところですが、とりあえずはこのあたりが限界かも。



 ジオラマについては新規に1:24のスケールを選びました。このスケールはドールハウスのスタンダード1:12のハーフサイズで市販品が多いこと、
自動車を中心にこのスケールのプラモも多いことから、次に展開するならやりやすいなって思っていたサイズです。とりあえず3作品の製作を計画
しています。



 こちらは1:6スケール、 TBLeague の新製品です。このスーパーフレキシブルのシリーズは他の追随を許さない完成度の高さを誇るアクション
フィギュアです。
 このほどやや小さめのボディ4種が発売されたので、さっそくこのうち PLMB2018-S24 と PLMB2018-S26 を購入しました。ネット上でもこのボディ
についてポチポチと書き込みがあるようですが、間違った認識もあるみたいです。とりあえずあちこちのヘッドやら洋服を着せて試してみる予定です。
 とりあえず現時点で明確に言えることは、PLMB2018-S26 の方はオビツの植毛ヘッドと組み合わせるのであればベストな選択であるということ、
PLMB2018-S24 の方は従来のマッスルタイプボディとS26の中間的な存在であるということです。



 あと鉄道模型の方は五能線になるかな? 新作の球体関節人形はパール塗装をさりげなく行ってみようかと。あとリメイクするお人形も選ばなきゃ。
 もういっぺん個展をやるつもりで、ごくごく自然に再スタートきってます。
● とりあえず展示するものをつくらなきゃ、どうしようもない。



<10ヶ月前>

 来年も個展をやるつもりで平塚市美術館の市民ギャラリーの利用申し込みをしたのですが、希望が重複し、先日その抽選会がありました。結果、
来年はお盆のどまんなか、8月14日(水)~18日(日)ということになりました。
 イメージとしては展示品の1/3は新規、あるいは従来のものもリメイクして完成度を高め、再度お越し下さる方の期待を裏切らないようにしたいと
思っています。



 最初の個展の時には、これまでイベントなどで最大180cm×90cmの与えられたスペースでしか自分の作品を発表してこなかったのに、いきなり
148m^2の会場を作品で埋めることができるか不安ではありましたが、結果として自分の思う世界を再現するには、このぐらいのスペースは必要
なんだなと思うようになりました。
 自分のつくるDOLLって、DOLLそのものができあがってもそれじゃ完成じゃない、それに相応しい情景をつくってそこに置いたり、現実の風景の
なかで撮影をしてはじめて完成する、それが確信できるようになったのは大きな成果でした。
 けっこう良いものをつくっているつもりだけど、自分の作品を発表する機会などなかなかないって思っている人は多いと思いますが(自分もそうだった)、
意外と決意さえすればハードルは低かったです。
 ちなみにギャラリーの利用料は1日4000円(平塚とその周辺の市民の場合)、5日間フルに利用させていただいても2万円なので、他のイベントと
比較しても高くはないです。(但し販売はできない)
 あとこちらはメインの企画展を当然開催しているので、それを見に来た方がついでに立ち寄ってくださるのも大きなメリットです。
● 自分の作品を展示するにふさわしい会場選びは大きなポイントです。



<3ヶ月前>
 8月の個展に向けていろいろと準備をすすめていいるわけですが、完成までに時間がかかるものということでは新作の球体関節人形と1/3スケール
のジオラマの2点が制作進行中です。
 もうこれ以上は大きな作品は多分無理なので、ここから先は短期集中で仕上げられる情景やドールフォトの編集などに注力してゆこうかと思って
います。ということで手元にある20数体のオリジナルドールのなかから、展示をするものを選んで着せ替えたり、またそれを写真に撮って展示用
プリントにする作業を開始しました。
 個展のコンセプトは「人形やフィギュアを主人公にして、自分のイメージした空間をジオラマや写真で表現する」です。



 こちらはプリンターで仕上げたDM、チーム・コヤーラの会報に同梱していただく予定のものです。昨年はたまたまメインの企画展が「平成しんちう屋」
(深堀隆介展)で美術館始まって以来の大当たり、おかげで自分では大したPRもしていないのに1000人以上もの入場者がありました。けど毎年そう
うまくもゆくはずもありません。
少しでも効果があるのならと思って今回は準備しました。
 いろいろと手間もお金もかかります。販売目的の展覧会ではないので収入もありません。
 それでもなぜやるのかと聞かれたら、結局やりたいことを形として表現したいからだけなんだろうな。
● PRできるのならその手段は最大限に活用したい。



<2ヶ月前>
 この時期になると出展できそうな作品がだいたい見えてくる。今回は個展に向けて手間のかかる制作物2つをつくり終えたところで、展示物の最終的な
リストアップを始めました。
 1/3オリジナル球体関節人形は6体3セット、1/3または1/6オリジナルドールの大きなジオラマが6セット、1/12~1/24の小さなジオラマが4セット、
1/150のNゲージレイアウト・ジオラマが8セット、内容的には昨年のものを引き継ぎ、その1/3は新作またはリメイクしたものになる予定です。また
ドールをモデルにした写真を150枚ほど展示する予定です。



 現在そのリストをもとにして会場のレイアウトを検討中です。これをやっておかないと美術館の方に配置図の提出もできないし、最終的に必要な
物品までリストアップできないという、とても大切な作業です。しかも搬入が軽自動車1台なので荷室の大きさも配慮しなくちゃいけない、まるでパズル
です。
 誰か手伝ってくれる人いないかな? 見落としがないか点検してくれるだけでもいいです。こういうときって。決まってお人形さんは何もしないでただ
見ているだけ・・・。(あたりまえですが)
● 当たり前ですが出展作品のリストアップと会場配置計画は絶対に必要です、ここはきっちりと。



<1ヶ月前>
 ただ作品をつくれば良いってものじゃなく、破損することなく持ち運べる、一つ一つの作品にあわせた専用の箱も必要です。作品の完成は専用の
箱づくりが完成したときだと思っています。自分の場合にはアマゾン箱をストックしておいて、作品にあわせた箱づくりをしています。



 あとここで気になるのは148m²の会場に展開する作品を、自分の運転する軽自動車1台に詰めなくちゃいけないということ。その荷室のスペースはわずか
114cm×90cm×122cmです。
 ということで、リビングの一角にその大きさのスペースを設け、梱包の終わった作品や備品を少しずつ積み重ねています。パズルみたいに箱を組み
合わせてゆきますが、とりあえず今のところは大丈夫、小さな作品ならもう少し追加できそうです。
● 保管移動用の箱造りと、搬入の計画も忘れずに。



<2週間前>
 この時期までに、連れてゆくお人形のセレクションと着付け作業を完了させます。何か直前みたいな感じですが、あんまりこの作業を早く行ってきますと
色写りが怖いから。濃い色の服を着せるお人形は肌をラップで覆ったり、着せないままにしておきます。



 こちらは賽の河原をイメージしたジオラマに登場させる予定のドールです。メイクしなおして、背景に合うOFに着替えました。




 お人形は神社のジオラマに登場する予定のもの。魔女のような雰囲気のあるOFとメイクで仕上げてみました。 
 そしてその仕上がりを確認する撮影テストを兼ねて、お散歩に連れて行ったりもしました。こちら1/6スケールのドールはジオラマやドールハウス
の主役として8体持ち込みました。



 

 
mirai (ラドールプレミックスとプルミエの混合粘土 55cm 2017 )             iria (ラドールプレミックスとプルミエの混合粘土 58cm 2019 )

 こちら2体のドールは2種類の粘土をブレンドするところから制作している手づくりの1点ものです。これら1:3 スケールのドールは全部で3組6体を持ち
込みました。



 着付けやメイクが終わったら、今度は人形やフィギュアの見せ方を工夫することに時間を割きます。単独のお人形であれば、雰囲気を高める背景を
つけてあげた方が良いと思います。

 

 こちらは90cm×60cm、厚さ5mmのスチレンボードにシルバーのアクリル板を貼り付けたものです。時計キットはは480円ほどで、Aliexpress から購入しました。

 

 こちらは nanami、つくったのは6年ほど前です。
 最初の頃は1体つくるのに1年近くかかっていたけど、こちらの娘は何か天から降りてきたようにするするっと出来上がってしまったのを覚えています。
OFは Jetrunnner;D のみけ様の作品を着せてみました。メイクは極力シンプルに仕上げています。

 

こちらは akane 、昨年つくったものです。
 こちらの娘も何かが降りてきた感じで仕上がりました。こういうことって本当にたまにある。最近では1/3のジオラマでただの岩をつくっていたときかな。
ここしばらくはこういう感覚を持ったことはないけれど、それをきっかけに可能性がぐっとひろがって、何か物の見方もがらっと変わる感じもする・・・、
分かるかなあ?
 ちなみにこちらのOFも Jetrunnner;D製です。創作人形なのにOFがぴったりなのは、自分のDOLLを苫小牧に送ってつくっていただいたものだからです。
自分も裁縫はするのですが、なかなかこうはゆかない。お人形で遊ぶために、いろいろな方にお世話になってきたことを今更ながら感じて準備をすすめています。
●ドールメイクや着付けをするときは、必ず背景とともに撮影して最終確認する。



<10日前>
 個展まであと10日、但しお盆とかでいろいろやらなきゃいけないことがあるので、まとまって何かやれるのはあと3日ぐらいしかない!
 この段階で取り組んだのは今回の個展でメインキャラを務めてもらうつもりの akane の写真です。
 基本、自分のつくるDOLLは1/3も1/6もちょっとリアルな方向にふった、ある意味スタンダードなお人形なので、正直、単独の存在感のようなものは
大きくなく、どちらかというとあるシーンのなかに登場人物としておいてあげた方がしっくりとくるように思います。

  

 これは静岡県の磐田市にある明治時代の小学校を背景にして、akane の画像と合成したものです。
 今回の展示する作品は基本的に3パターンがあります。
A 旅やお散歩、あるいは日常の生活の中でDOLLを撮影したもの。
B 自分のイメージしたシーンをジオラマとして再現したもの。
C 画像合成あるいはCGを用いて、あたかもDOLLがそこにいたかのように二次元の作品として完成させたもの。
 だからドールやフィギュアをつくること自体はやりたいことの入り口で、どちらかというとイメージした空間をつくるというのが目的に
なっています。



<1週間前>
 画像作品もひととおり完成したのでDOLL写真のプリントアウトにとりかかります。



 基本的にはこれまでに撮りだめたものからセレクトするだけなのですが、モニター上のイメージとプリントは必ずしも一致しないので調整が必要です。
自分の場合には次のような画像の調整をGIMPで行いました。もちろんカラーバラス等のプリンターの調整は事前にすませておきます。
1 暗部がつぶれない程度にトーンカーブの暗い部分だけを引き締める(下げる)
2 彩度を5~10程度上げる。
 ちなみにこれは自分の I-O DATA のモニターと EPSON のプリンターの組み合わせだとこうなるという話なので、実際には機種によって違うと思います。
本当はA3でプリントアウトしたかったけど、お金が・・・。A4でも実質、純正インクと高画質用紙の組み合わせで1枚150円になります。
 今回は40枚ほどをプリント、全部で120枚ほどを展示する予定です。



 昨年の展示の時に時間をとったのが、このプリントを整然と貼り付けて行く作業です。
 今年用意したのは、180cmの長さの物差しと印をつけた270cmのナイロンの紐、これで同じ高さでまっすぐに並ぶはず。こういうのって経験だね。



<前日>

 車の荷台に詰め込むというシミュレーションもほぼ完了。あとはうちの chico ちゃんに衣装を着せたらだいたい作業が終わる。
 問題は台風だな・・・。どうも台風10号が絶妙のタイミングでやってくる。搬入の14日あたりから天候に影響が出始めるみたい、これって最悪・・・。



 ということで、ちょっと雨に降られながらも積み込みは前日に終了させました。

 

 あと少し時間的な余裕があったので、隙間埋めの作品をいくつかつくってみました。ま、こちらも作品というほどのものでもないけれど・・・。
● 残り1週間を切ったらばたばたしない、最終チェックは慎重に。



<1日目>
 さていよいよ今日から2回目の個展「情景のなかの人形たち」を平塚市美術館で開催します。9:30より搬入開始です。
 台風10号の影響を受けて、前日ばたばたと積み込みを行ったせいか、作品の一部に破損がありちょっと焦る。 (すぐに修復できたけど)





 会場はこんな感じで設営が完了しました。
 でもこの風景が撮影できたのは午後2時半、予定ではお昼ぐらいにスタートするつもりだったので、かなり手間取りました。昨年よりは段取りが良かった
はずだけど、展示物が多くなった分、設営時間が増えた感じです。
 ともかく148m^2の会場を2人だけで設営するのはたいへん、エアコンは効いているけど、もう汗だくの準備でした。
(準備途中の段階でご来場いただいた方々には、不十分な内容で大変申し訳なかったです。)

 時間的余裕がまだあったので、隙間埋めの作品をまた2つ追加です。





 こちらピコニーモボディにオリジナルヘッドを組み合わせたオリジナルドールなんだけど、ヘッドそのものは何年か前のドールイベントで販売する目的で
制作したものです。しばらく箱の隅っこにあったものを引っ張り出してきました。
 こういう軽い作品にはぴったりだね。

 初日の入場者数は125名で、だいたい昨年の半分ぐらい。けっこう静かな幕開けでした。
 ご来場時の注意ですが、会場は反時計回り(入場して左折)していただくと、分かりやすいよう展示してあります。あと撮影は全面的にOKですが、何分、
小さな作品もありますのでマクロ撮影ができる撮影機材、スマホがあると良いかと思います。



<2日目>
 2日目、ちょっとだけ手を加えることはあったけど、今日はちゃんと9:30にはオープン。余裕があったので一通り会場内を撮影します。



 今年もうちの chico ちゃんにお着換えしてもらって、イレーヌ・カーン・ダンウェール嬢になりきってもらいました。顔はあんまり似てないけど、それなりに
衣装とかアクセサリーとか、背景は整えたつもりです。やはり皆さんここで立ち止まられて、注目度はNo.1。



 この娘はいわゆる「看板娘」。通りに面した窓を開け、通りからも見えるようにして入場者数を増やす作戦なのですが、今日は台風の影響もあって、表を
歩く人はほとんどいない・・・。
 とりあえず各コーナーの代表的な作品を一通りご紹介します。



「賽の河原」
 1/6のジオラマです。昨年の作品に手を加えたものです。迫力が出たな・・・と自分では思っています。



「最後の冬」
 Nゲージレイアウトを撮影し、会津田島の雪景色と合成した写真です。この写真の下に実際の模型を置いたので、皆さん両方を見比べていました。
 こちらのレイアウトを撮影したもう1枚の写真は「N」という鉄道模型の雑誌のフォトコンテストで最優秀賞をいただいています。



「Kittyの部屋」
 1/24スケールのドールハウスキット(2500円ぐらい)にいろいろ手を加え、マスターボックスのフィギュアを配置したものです。自分としては植物の表現が
見どころだと思っています。



「akane」
 昨年制作した56cmサイズの球体関節人形です。手づくりであることを知って驚かれる方も多いです。自分ではその様を見るのがちょっと嬉しかったりする。



「5 hours after」
 スコットランドの風景、ドール、飛行機のプラモデル、アザミ、それらの画像を合成した写真です。この画像をつくったのは11年前で初期の傑作だと、
自分では思っていたりする。
 昨年も写真の評判は良かったので今年は展示写真をふやしました。(全部で120枚ほど)
 とまあこんな感じなのですが、2日目の入場者は少なかった。初日は準備に手間取って実質3時間で125名、今日は7時間半で151名。まあお盆と台風の
影響が重なってはどうしようもないか・・・。



<3日目>
 台風一過の3日目です。雨も朝方にやみ、ちょっと風は強いものの、お出かけにはあまり影響なさそう。



 ということで窓側のブラインドを完全に開けてしまいました。
 展示室がぱっと明るくなりました。自分のつくるお人形の鑑賞にはこのほうが向いています。というのも瞳がキャッチライトして輝くから・・・。
 でも結局、1日を通して曇りだったので、その効果は今一つ。



 まあこんな具合です。
 ただうちの chico ちゃんをあえて道路側に向かせて座らせているので、彼女と視線が合ってしまう人は必ずいます。
(昨年もこの娘に興味を持って展示室を訪れる人が何人かいた。)
 ここで昨日に続き、各コーナーのPRです。



「stratum」
 11年前に制作した sara という球体関節人形をパネルに埋め込み、あたかも恐竜の骨のように発掘されたばかりの状態を表現したもの。自分としては珍しく
art している作品です。



「腐海の尽きるところ」
 stratumとともに、この個展のために制作したものです。こちらも見入る人は多いです。ただこれ自体が腐海の深部に新しい世界が生まれつつあるという、
アニメーションで描かれた世界よりも後の時代をイメージしているので、単行本まで読み込んでいないと、そのシチュエーションをすぐに理解するのは難しい
かもしれません。(ちゃんとその場で説明してるけど)
 「stratum」とこの「腐海の尽きるところ」は光の演出があるともっと見栄えがするのですが・・・、これはまた今後の課題ということで。



「梅雨明け」
 1/150スケールのジオラマ、1cmのフィギュアがもちろん主人公です。この作品は20cm×20cmのとても小さなものですが、建物のなかもきっちりとつくり
(ラーメン屋さんにはお客がいてラーメンのどんぶりもある)、画像からは見えないですが、路地裏なんかにも手抜きなしに造り込んでいます。小さいですが、
ジオラマのなかではいちばん時間のかかった作品です。



 このつくり込みに気づくのは子供たち、だって大人の上からの目線では見えないんだもの。こちらの作品を見るときには、まずはジオラマのフィギュアの
目線まで下げて下さいね。



「nanami」
 6年前に制作した球体関節人形です。今回この娘の写真をポストカードにしてお土産にお渡ししています。(上の画像とは別の写真をプリントしてます)
 この娘がけっこう女の子に人気です。



「飯田市立追手町小学校」
 昭和4年に建てられた小学校の写真です。(有形登録文化財) この写真の前ではだれもが立ち止まる。写真の力って今更ながら強いね。今回は昨年より
多い120枚の写真を展示しています。
 3日目の話題としては「このお人形や作品は販売しているんですか」という質問を何人かに受けたこと。なかにはこういうお人形経ったら高く売れるよと
アドバイスして下さる方もいました。
 正直、現状では、ちょっと可愛いごくごくスタンダードなお人形では、元が取れるようなお値段はつかないので、もう売るのはやめちゃいました。高く売れる
ようなお人形にするには、人の目を引くような工夫とか、迫力や芸術性のようなものが必要だと思っているんですが、そういったものは自分はつくりたくない。
気軽に着せ替えができて、旅行に行ったり、写真を撮ったりする、そういう楽しみ方のできる、ちょっと可愛いお人形がやっぱりいいな。
 前にも話したけど、自分にとっての人形は芸術品でなくて、むしろ実用品。販売物というより自己表現のための同志のようなものです。
 ということで本日の入場者は168名。
 台風一過でもうちょっと人数的には増えるかと思ったんだけどな・・・。また今日もがんばります。



<4日目>
 台風が過ぎ去って晴れたものの、今度はむちゃくちゃ暑い。
 来年は本当にこんな暑い中でオリンピックやるんだね、大変だなあ。(自分はきっとどこか涼しいところでテレビ見てると思う)



 今日も順調に9:30にオープン。最初のお客様の入場は10:10ぐらい、あとははぽちぽちと。
 晴れたので展示室も明るくなり、開放的な感じになりました。



 毎日ちょっとずつ展示をいじっているのですが、今度は隙間うめでつくったミニジオラマにコメントを加えてみました。
 では例によって展示作品の一部をご紹介します。



「曲沢駅」
 秋田県の由利高原鉄道の曲沢駅を再現した1/150のNゲージレイアウトです。半径1kmぐらいの範囲で周囲は360°田んぼという、とても潔いというか、
見事な景観の駅です。昨年たまたまこの近くにお住まいだった方がいらっしゃって、この通りだとお墨付きをいただいた作品です。
 ちなみに主人公は1cmほどの大きさのフィギュアなので、こちらの作品をご覧になるときには視線を低くしてご覧ください。でないと、何も気づかないで
通り過ぎることになります。



「旅立ち」
 何年か前のドールイベントのために制作した1/3の情景です。アイルランド北西部のバス停を想定して旅立つ二人を配置しました。道標には実在する
アイルランド北西部の地名を取り付けています。このつくり込みに気づく方がいて、ちょっと嬉しかった。



「江ノ電藤沢駅」



「御前崎の海岸にて」
 展示の最後は合成写真のコーナーになるのですが、そのとき解説によく使うのがこの2枚の画像です。人形を配置した違和感のない風景をつくる方法
としては、単に人形の画像を貼り付けるだけでなく、影とぼかしのコントロール、そしてあえて背景画像に不自然な加工を加えるといったところがポイント
になります。



 今回持ち込んだ写真は120枚ですが、けっこう感心しておかえりになる方が多く、立体表現だけでなくこの路線も更に頑張ってゆきたいなと思いました。
 4日目の入場者は172名でした。



<5日目>
 個展「情景のなかの人形たち」もいよいよ最終日です。
 ちょっと暑いものの、雨の心配はなさそう。たくさんの人が見に来てくれるといいな。



 5日目ともなると、もう一度やって来られる人とか、お友達を連れてきてくれる人、それからブログ見てるよなんて人も来て下さって嬉しい限りです。
 普段は黙々と制作や撮影をしていて、こちらから一方的に情報を流しているだけなので、こういった形でリアクションがあるってことはたいへんな励みに
なります。情報を発信する側って、それがどういうふうに受け取られているかが気になるというか、ある意味本当に不安なんですよね。今回は皆さんが
好意的に受け止めてくれているってことが分かっただけで、とても嬉しい。それが正直な気持ちです。



「コンサート」
 1/6のオビツボディにオリジナルヘッドを組み合わせたドールでミニコンサートの風景を再現しました。なぜこのシリーズのドールをつくったかというと、
描き目ばかりだった1/6ドールの世界にあって、J-DOLLという入れ目のお人形が何年間か発売されていたことがありました。JーDOLLは一つ一つ世界の
通りの名前がつけられ、そのイメージに合ったOFをまとっているという、とても素敵なお人形でした。
 それが発売中止になり(多分ものすごい生産コストがかかっていたためだと思う)、その後は意を決して、自分で作り始めたというわけです。こちらのヘッドは
入れ目、睫毛つき、ウイッグ仕様ということで、小さくても球体関節人形と同等の構造になっています。(HP上での紹介は nano、sayaka、ikumi )



「電停のある風景」
 基本的には1/150のNゲージレイアウトなのですが、自分の場合には主人公はあくまでも1cmのフィギュアです。購入した状態のまま貼り付けて行くという
ことはほとんどなく、できる限りの修正を行いリペイントします。
 N-ゲージを実際に走らせるほど大きなレイアウトはつくらないの? とかコンテストには出さないの? みたいな質問を受けるのですがこれは厳しい。
自分の多くの作品は20cm×50cmほどですが、これでも2か月ぐらいかかっちゃう。もし90cm×60cmなんてものをつくろうとしたら1年がかりだね・・・。



「sayaka」と「nano」
 旅行やお散歩に行くときにはいつも連れて行く、モデルとしてよく登場する前述の1/6オリジナルドールです。今回は会場にさりげなく置いてみました。
今では自分のやりたいことを表現する同志のようなものです。



「akane」(消えゆく記憶)
 昨年つくった粘土製のオリジナル球体関節人形です。今のところ自分のつくった1/3のDOLLでは最もよくできた作品だと思っています。
 上の画像はパネルにした合成写真です。今回はこの合成写真のコーナーに立ち止まって見入る人が多かったのに少々驚いた。
(今回は特にこの合成写真の枚数を増やした)
 人形を使ってこういうことをする人ってあまりいないから、おそらく新鮮に見えたのだと思います。反応が良かったので、とりあえずHP上で「簡単な合成写真の
作り方」みたいな特集をやっても良いのではないかと、ただ今検討中です。
 といことで最終日の入場者は138名(3時過ぎには撤収作業を開始したので、それ以降にご来場された方には申し訳ない)。5日間のトータルで754名でした。
 撤収作業は連れと二人、148m^2に広げられたものを箱に納め、再び軽自動車の荷台へ。暑さの中の1時間20分は実に厳しかった。





 家に帰ってシャワーを浴び、その後は近所の居酒屋で打ち上げです。(さすがに疲れた)
 入場者は昨年の半分に満たない程度でした。昨年こちらの平塚市美術館のメインの展示は、大ブレイクした深堀隆介氏の「平成しんちう屋」だったので、
これはこれで別にショックなことではないです。もともとメインの作品展から流れてくる方をねらった「他人のふんどし」みたいなものなので、むしろ当たり前。
 昨年は混雑時には子供がはしゃいで、それにヒヤヒヤするような状態だったので、今年の方がむしろ落ち着いて説明できたような気がします。
 だからなんとなく入ってきて、ここが人形関係の展示だと分かり、ふと目に留まったものがあって立ち止まる。そこでちょっとこちらで説明を加えると、なるほどと
いった感じで、今度はじっくりと展示を見直してゆく、そんな流れができたように思う。

 たとえ1万人の入場するドールイベントがあっても、自分のブースの前に1万人が立ち止まるわけじゃない。そう考えると少なくとも自分のやっていることを
700名以上の方に見ていただき、おそらくは200名以上の方とお話しできたことは数字としては悪くないと思います。
 人形を作り、またそれを主人公として自分のイメージした空間を情景や写真で表現してゆくという、ちょっとレアな世界があることを知っていただくという目的も、
それなりに果たせたかなと思います。
 今回もたくさんの方々にご来場いただきありがとうございました。来年もこういった企画はぜひやりたいと思っていますので、ご期待ください。
 あとこういった自己表現をしてみたいと思っている方がいれば、ぜひぜひチャレンジしてみて下さい。応援します。



<その後>
 まだ時期も場所も決まっていないけど、次回の個展に向けて再始動しました。コンセプトは自分のイメージした世界をオリジナルドールやフィギュアをつかって
3Dの情景や2Dの画像で表現すること。これはこれまでと変わらないんだけど、より夢のある作品をつくってゆきたいという方向性のようなものはあります。



 で最初に考えたのは1/150のジオラマで、20cm×25cmの空間に樹が1本という作品。広い原っぱにもし樹が1本だけあったら、それを目印にいろんな生き物が
集まってくるんじゃないかな? そんなイメージです。



 こちらは13年前に制作した sakura という粘土でできた球体関節人形です。制作を始めて3体目という
本当に初期の作品です。当時は造形的にも満足していたのですが、今の人形と並べるとやっぱり見劣りがする。これを今の自分の技術で再生してゆきたいと
思っています。
 お人形って古くなったからとか、あまりきれいじゃないからって理由で捨てらんない。気になるところがあれば手を加えて、何が何でも可愛くする。だから自分の
つくるお人形に本当の意味での「完成」ってことはないのかもしれない、と思ったりもします。
 創作の世界ってやっぱりエンドレス、自分がやめてしまわない限りは。



2019.09
camera: Canon PowerShot G7X / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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