春のお散歩旅 4

日向



2020.04.19
 今日のお散歩は日向薬師で知られる伊勢原市の日向地区です。ここもまた以前にご紹介した蓑毛地区同様、大山を中心とした
多くの仏教遺産を今に伝える場所の一つです。 



4.19(日)
8:45
 ここ日向地区は小田急線の伊勢原駅からバスで20分ぐらいのところにあります。また観光もしくは登山客用の駐車場(無料)も
いくつかあって比較的にアクセスは良いところです。



 山間に開けた風景は日本の原風景そのもの。
 秋になると黄金色の稲穂のまわりに、真っ赤な彼岸花がたくさん咲くところです。



 家々を結ぶ古道は「日陰道」と呼ばれ、鎌倉時代には源頼朝や北条政子もこの道を通って日向薬師に参拝に向かったという話です。(かながわの古道50選)




 「動物に注意」の標識、そして動物の潜入を防ぐための電線です。
 このあたりの山中ではごく普通にシカを見かけるし、イノシシやクマの目撃情報もあったりします。




 最初にこの地区でいちばん有名な日向薬師こ向かいます。
 その旧参道の入り口付近にあるのがこちらの白髭神社です。小さな神社なのだけれど木彫がものすごく凝っている。あとで調べてみたら、
行基が日向薬師を開山する際に協力した渡来人、高麗若光を活躍を讃えて8世紀に創建したという古社でした。





 

 山門は江戸時代に起きた火災で焼失し、その後復元されたものです。

 

9:05
 こちらが日向薬師(日向山霊山寺)、716年に行基によって開創されたと伝えられる日本三薬師の一つです。薬師堂は近年に大修理を終えたばかりです。
ここでいつも思うのは本堂の茅葺屋根の見事さ、ものすごくきれいに整えられていて輝いて見える。遠目には何か別のもので葺かれているように見える
ぐらいです。(葺き替えにいったいいくらかかったんだろ?)
 こちらではご本尊の薬師如来像ほか25点の国の重要文化財があり、その多くは宝物殿で拝見することができます。



 樹齢800年と言われる境内の幡かけ杉です。(県の重要文化財)  圧倒される迫力、眺めていて首が痛くなる




 今回初めてここから更に奥に入ることにします。数々の僧が修行した霊場が山中にも残っていて、観光マップ上には尾根を歩くコースもある。
ちょっと面白そうなので行ってみようーっと! (この軽い判断はあとで失敗だったことが分かる)



 それから20分、尾根上に登り切ってしまえば、明るいなだらかな稜線が続くと思っていたのですが、そのほとんどが林に囲まれていて眺望が良くない。
しかも道は整備されているのですが、けっこう厳しいアップダウンの繰り返しで、これじゃまるでインターバルトレーニングです。
(お散歩は好きだけど、きついのや暑いのは嫌い)


nano ( オリジナルヘッド+オビツSBHボディ  26cm 2018 )


 

  樹木が岩をつかみ一体化して尾根をつくっている。ところどころに巨大な奇岩もあって目を引きます。何か普通の山と違う感じです。
この風景はなかなか見られないと思う。
 昔はここをたくさんの修行僧が歩いていたのかもしれません。でも少なくとも自分たちがやってきたときには、ここに足を踏みいれる人は
ほとんどいませんでした。




 足元を見ると年輪のような層を持つ石が埋まっている。これ確か「玉ねぎ石」って言って、凝灰岩が風化してできるののだと聞いたような気がする。



10:45
 歩くこと1時間20分で浄発願寺の奥ノ院にたどり着きます。
(観光ガイドだと50分の計算になるけど、とてもその時間じゃ無理、あとこれからのシーズンだとヤマビルが出るので要注意です)



 ここには弾誓上人が修業したという岩屋があり、まわりには尾張徳川家や佐竹氏、藤堂氏の墓石や仏塔が並んでいます。



 こちらがその岩屋。なかはとても暗く(怖い)、水がたまっていて(濡れる)ちょっと入る気にはなれませんでした。
 江戸時代という比較的新しいものなので、特に文化財として指定されていないのでしょうが、こんな感じでふつうに覗きこめちゃうところが、
ちょっとすごいことかもしれません。時代を経て重要文化財に指定されるような場所であることは間違いないと思います。



 こんな山奥までこれだけの墓石や仏塔を運んだという、まずはその事実に驚くべきでしょう。
 まわりから威圧されているような感じはないのだけれど、ここは何かの存在が重く感じられるような場所です。その言い方は難しいのだけれど・・・。




  沢筋のぽっかりと開いた空間に弾誓上人が開山したという浄発願寺の旧本堂跡がありました。(1608年建立、今は礎石が残るのみ)
 こちらのお寺は江戸時代には男の駆け込み寺としても有名だったそうで、殺人と放火以外の犯人はこの寺に逃げ込めば助けられたといいます。



 お寺に駆け込んだ53人の罪人が1つ1つ積み重ねていってつくったという階段です。


 

 こちらのお寺は1938年秋の台風による山津波による甚大な被害を受け、この一の沢という地からもっと下流に再建されることになります。
 浄発願寺奥之院のことはあまり知らなかったし、観光名所でもないのですが、行ってみる価値は間違いなくあるところです。
(自分たちは稜線から下ったけど、旧本堂に行くだけなら下の舗装道路からの方が近いし楽です)





11:10
 やっと下の舗装道路まで下りてきた。このあたりは川沿いにキャンプ場や釣りの施設のあるところ。自分たちが降りてきたときにも、
少しだけですがバーベキューを楽しんでいる家族連れがいました。

 

 こちらは石雲時。本堂は比較的新しいものですが、歴史で言えば日向薬師と同等に古く、718年に諸国行脚を続けていた華厳妙瑞法師が
亡き大友皇子の冥福を祈って建立したものと伝えられています。





11:30
 そして更に日向川を下ること10分ほどで再建された浄発願寺に到着です。 このあたりでは珍しい三重塔が目を引きます。



 何かその歴史の激しさの一方で、今の建物はとても落ち着いていて美しい。
 この写真を見せて「京都に行ってきたよ」といっても信じてもらえそうな感じです。



 近いので日向薬師には何回か来ていたのだけれど、そのちょっと奥には自分の全く知らない世界があったんだと、今回初めて気づきました。
やっぱり実際に訪れてみないとだめだね。
 皆さんも新型コロナの騒ぎが一段落したら、ぜひ訪れてみて下さい。



2020.04
camera: Canon Powershot G7X / graphic tool: SILKYPIX Developer Studio pro 7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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