eye4工房番外編

小さな丘 晩秋 そして



  この1年をかけて作り続けた小さな丘シリーズも、今回が最終回となる4作目「晩秋編 そして」です。実はこれ半年ぐらい前から
作り続けていたのですが、途中でイメージが破綻してストップしていた時期もありました。
 本当にやっとできたって感じです。それを含めてこの制作記録をご覧いただければと思います。
 スケールは今回も1/150、ジオラマサイズは20cm×25cmです。


   1 ベースは1作目の雪景色のジオラマから型どりしたものになります。
   

   2 前回とのつながりを保つために、住居や道などをこのベースに書き加えてゆきます。
   


3 小川や池の部分の粘土を削り取り、全体の形を整え
 ています。
4 タミヤのテクスチャーペイントを使って、ざっと地面
 部分を塗り分けます。
 

 もう少しこの着色の手順を詳しく言うと、 まずはアクリル絵の具で全体にさっと色を塗り、タミヤのテクスチャーペイント、
ダークアースと土ブラウンでざらっとした地面を表現します。このあと更に草カーキをまばらに塗って変化をつけます。
上の画像はその最終段階です。


5 まずは水で薄めたボンドを塗り、茶色のパウダーを
 全体に撒きます。
6 KATOのリアリスティックウオーターを使って、小川と
 池を表現します。
7 あらかじめ決めておいた位置に2mm厚のスチレン
 ペーパーで廃墟になった家をつくります。

 小川はリアリスティックウオーターのみで表現。池の方はKATOのさざ波を塗ったところに繊維質のテクスチュアを立て、乾いた
ところでリアリスティックウオーターを流しこんで水草を表現します。


 このあと地表の草を再現するのですが基本的にはパウダー類やターフ、そしてミニネイチャーシリーズなどの植物を
組み合わせてゆくことになります。

 

 今回は晩秋編なのでブラウン系のものが多くなります。ただ単色だと変化に乏しいので、茶色や緑のパウダーも少量混ぜ込む
のがポイント。単調にならないよう、こういったものはたくさん用意しておいて使い分けることが大切です。
 (数えたことはないけど、自分はダンボール箱1箱分ぐらいある)


8 パウダーやターフを4種類ほどブレンドして、枯れた
 草を再現します。
9 ミニネイチャーシリーズの草花は前作を参考にし
 ながら同じ位置に植えてゆきます。
10 家の方も少しずつ色をつけてゆく、馬小屋だった
 ところには、それらしく藁なんか置いてみた。


 ここでいったん前作と見比べる。



 全体的にあっさりとしすぎかな? 小川、池、下草や背の低い植物はもう少し付け加えた方が良さそうです。もちろん廃墟そのものにも
まだまだ手を加える必要がある。


11 家のまわりに井戸やパン焼きガマ、ブランコ、そう
 いったアイテムを付け加えます
12 家の中には家具の残骸や崩れ落ちた柱のような
 ものを追加します。
13 2mm厚のスチレンペーパーから、2mm×1mm×
 3mmの小片を切り出して着色いるところです。

 2mm厚のスチレンペーパーから切り出した小片は崩れた家の壁石、最終的には200個以上つくりました。大概、どんなジオラマづくりでも
律速段階と言えるようなものがあるのですが、今回はそれがこの作業です。



14 崩れた壁石を配置しました。ときおりテクスチャー
 ペイントで汚れた感じを付け加えます。
15 屋根は板葺きの雰囲気を出すために、紙紐をほぐ
 して広げたもの着色して使います。
16 屋根、しして再び柱と壁石、そして土汚れ、こう
 いった流れで作業は進みます。

 こういう作業は本当に少しずつすすめてゆく、家にはそれなりの歴史があるわけで、たとえ壊れたとしても、あっという間に出来上がる
わけはないです。ちょっとめんどうだけど、これが終わらない限り完成は見えてきません。今回はこういった地味な作業の繰り返しで、
少しずつ完成に近づけてゆきます


   17 家の中に散乱している小箱、桶や物干しなど、どこにでもありそうなものをつくりました。
   

 これを最終段階で崩れた石の壁などといっしょに家の中に配置してゆきます。これがなかなk良いアクセントになる。


 

 

 不自然にならないように、雑然としている状況を再現する・・・、なかなか難しい。最後は雰囲気重視で仕上げます。


   18 タミヤのテクスチャーペイント「粉雪」で晩秋の寒々しい感じを出してみました。
   

 この雪のつけ方にも注意が必要です。北西からの風によって雪が吹きつけ、斜面の南側はすでに太陽光で融けている、
そんなことをイメージしながらまばらに雪を置いてゆきます。


 さてどうしてこの丘の上の家は廃墟になってしまったのか、その原因となるものを最後に付け加えて完成となります。
 この丘の上で何かとんでもないことが起こったということは想像していただけたとは思います。
 当初の想定ではここが戦場そのものになってしまったことをイメージしていました。
 ところが実際に1/144の戦車やフギュアを置いてみたら、単なる戦場ジオラマになってしまって、丘の上の物語という意味
合いが消え失せてしまう・・・。

 

 では一切フィギュアは置かないようにして、破壊された1/144のモスキートのみを配置しては思いましたが、やはりこれもダメ。
視線がやっぱりモスキートに行っちゃう。
 この状態でおおよそ1月考えた。



19 直径5cmほどの穴を2つ開け、あらためて粘土で
 クレーターのような窪みをつくります。
20 この穴をタミヤのテクスチャーペイントで着色、更に
 リアリスティックウオーターで水たまり表現します。

   21 そして最後に丘の反対側にお墓を2つつくりました。
   

 最後に考えとしてまとまったアイディアがこれです。
 要するに爆撃によって破壊されてしまった丘の上の家を再現したわけです。作り終わってみてこれが最善の選択だった
というより唯一の選択だったような気がします。
 戦場や兵器という直接的な表現よりもかえって重い。












 でもやっぱりこれ単独だとちょっと話として分かりにくいので、他の3作品の画像を整理し、4作品のストーリーをこのサイトに
再掲したいと思います。
 ストーリーはこちら →  pageA0033


 これでまた8月の個展に向けて準備が一歩進みました。(もちろん予定通りやれるかどうかは見通しはきかないのだけど)
 すでに次のテーマも決まっていて、今その準備をすすめているところです。物事は常に前向きに考えます。



2020.05
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Panasonic GX8 + M.ZUIKO DIGITAL 12mm-50mm / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10



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