ドール&フィギュアの撮影


フォトレタッチの基本です



2020.06.25


 今回のお話はフォトレタッチです。
 これまでの撮影講座はおもにカメラの選び方や撮影方法の話でしたが、ここから先は撮影した写真をもっときれいにするとか、インパクトのあるもの
にするといった類の話になります。


ikumi (オリジナルヘッド+TBLeagues24Aボディ  27cm 2019 )

 これは桜の下で撮影した1/6オリジナルドールの写真です。別にこれで何が悪いわでもないのですが、こういう写真に手を加えると、もっと良くなる。
 そのためには何らかの道具が必要なのですが、ここではパソコンで使用されるGIMPという画像処理ソフトを使って説明したいと思います。
 GIMPはけっこう長い歴史のある画像処理ソフトで、フリーで使用できるものでありながら、有料ソフトウエアに負けない機能を持ち、おそらくはアマチュアの
90%ぐらいの人はこれだけで充分に満足できると思います。
 自分もサイト上にUPする画像から、個展などに持ち込む画像まで、すべてこちらで処理したものを使っています。
 ではいったいどういった機能がついているのか、よく使うものから順に説明してゆきたいと思います。
 但し、ただ読むだけだと分かりにくい部分もありますので、できればGIMPのインストールを完了させ、実際に手持ちの画像を取り込んだ状態で操作していただく
方が分かりやすいかと思います。



1 いらないものを消す A
 最初のお話は、画像には写っているんだけど、これはない方がいいよなと思った時の対応です。画像からきれいに消し去る方法の解説です。



 こちらがRAWで撮影し、現像を終えた段階の元画像です。(.jpg)
 気になるのはウイッグの乱れ、まずはこれをきれいに修正します。




 GIMPを起動させ画像をドロップします。
 ここから先、操作方法はいろいろあるのですが、とりあえずメインウインドウに表示されるものだけで解説をしてゆきます。ウイッグの修正ですので、
まずはその部分を拡大した方が良いでしょう。

   表示>表示倍率50%




  ツール>描画ツール>スタンプで描画

 ctrlを押しながら左クリックすると、まずはその部分が指定されます。この部分をコピーしたいところにポインタを移動させて、更に左クリックするとコピーが完了します。
 そうやって何回か繰り返して髪のあった部分に木目をコピーしたのが上の状態です。
 指定範囲は拡大も縮小も可能です(ツールオプションのウインドウにあり)。また左ボタンを押し続ければ連続してコピーすることもできます。




  これだけだと画像にスムースなつながりがないので、更に修正を加えます。

   ツール>描画ツール>にじみ

 これは指でこするようにまわりの色をなじませる機能です。左ボタンを押しながら木目に合わせてポインターを移動させると、こんな感じできれいに
髪の乱れがなくなりました。



2 いらないものを消す B



 ダムの上で撮影しました。奥の方に人影があるのでこれを消しましょう。




 先ほどの、

   ツール>描画ツール>スタンプで描画 および
   ツール>描画ツール>にじみ

  でここまで修正できました。ただ手すりの影があまりきれいになっていないので、ここはぼかしでごまかしてしまいます。




  ツール>選択ツール>自由選択

 ここで左クリックで人のいた部分を囲んでゆきます。 (この操作をすると囲まれた部分だけが、それ以降変化するようになる)

  選択>境界をぼかす

  範囲は50px程度、効果の及ぶ範囲がぼやけます。

   フィルター>ぼかし>ガウスぼかし

  x、yとも15ぐらいにしてOKを押します。そえれが上の状態です。これで違和感がなくなりました。



3 いらないものを消す C



 こちらも髪を整え、加えて背景の地下道をやや暗めに調整しています。暗くすることでも余分なものを目立たなくすることができます。

 余分なものを消すという操作の基本はこんなところかな。数値的なものはその場その場で変わってきますので、いろいろと試してみて下さい。
 修正の基本は「スタンプで描画」「にじみ」「ぼかし」の順で行うのが一番自然です、あとは練習あるのみです。



4 明暗のコントロール A
 主人公のお人形が目立っていない、顔に暗い影が落ちている。こういったときの修正方法の解説です。



 こちらがRAWで撮影し、現像を終えた段階の元画像です。




 気になるのはウイッグの乱れ、まずはこれをきれいに修正します。
 こちらは前回と同様の操作を行って処理しました。

   ツール>描画ツール>スタンプで描画
   ツール>描画ツール>にじみ




 顔がちょっと暗く写っているのでこちらを次に修正します。

   ツール>選択ツール>自由選択

 上の画像は明るくしようとしている部分を指定したところです。(あえてモノトーンにして分かりやすくしてあります)
 ポイントは明るくしたいところは少し小さめに選択するところです。もしぴったりと選択すると周囲まで明るくなって変な感じになっちゃいます。

  選択>境界をぼかす

 縁をぼかす量は300pixぐらいです。
 選択ツールには様々な機能がついていて、これらを使いこなしてゆくのが修正の基本になります。こればっかりは知識と経験が必要なので、
いろいろと試してみて下さい。




  色>トーンカーブ

 顔の部分を少し明るく修正しました。




 後ろからあたっている光が美しいので、今度はこれを強調してみようと思います。

   ツール>選択ツール>自由選択
   選択>境界をぼかす
   色>トーンカーブ

 顔の明るさを調整したのと同じ手順で肩から頭頂部分に輝きを加えました。
 ここまでの操作はおおむね10分ほど、ちょっと工夫するだけでこれだけ写真は変わります。





 この画像では道に落ちている落ち葉の背景を白トビしない程度にぎりぎりまで明るくしてみました。



5 明暗のコントロール B



 こちらがRAWで撮影し、現像を終えた段階の元画像です。
 気になるのはウイッグの乱れ、それからお人形の顔が暗く写りすぎているので、この2点を修正したいと思います。




  最初にウイッグの乱れですが、これは前回と同様、次のような操作を行います。

    ツール>描画ツール>スタンプで描画
   ツール>描画ツール>にじみ

 次に人形自体を明るく修正します。

  ツール>選択ツール>自由選択

 上の画像は明るくしようとしている部分を指定したところです。(あえてモノトーンにして分かりやすくしてあります)
 ポイントは明るくしたいところは少し小さめに選択するところです。もしぴったりと選択すると周囲まで明るくなって変な感じになっちゃいます。

  選択>境界をぼかす

 縁をぼかす量は300pixぐらいです。
 選択ツールには様々な機能がついていて、これらを使いこなしてゆくのが修正の基本になります。




 人形部分を少し明るく修正します。

  色>トーンカーブ

 続いて背景部分の明るいところを暗めにして、お人形自体が目立つように修正します。

  ツール>選択ツール>領域の反転
  色>トーンカーブ

 これらの操作によって、写真のなかでのお人形の存在感が増します。ポイントになるのは主人公の明るさ調整はあくまでも適正値に、
そのうえで背景は暗めに調整して、主人公を浮き上がらせるということです。



6 明暗のコントロール C



 今度は逆光条件での画像です。もともと背景が明るいのでこれを暗くするというのは無理がある。(違和感ありありになる)
 こういうときには全く逆の操作を行います。




 人形部分を適正な明るさに修正するところまでは同じです。ここから先、背景の明るさを調整します。

  ツール>選択ツール>領域の反転
  色>トーンカーブ

 トーンカーブの調整で背景を逆に明るく修正すると、背景そのものの存在感が薄くなって、お人形の存在感が増します。
 ポイントは主人公の明るさは適正値、そのうえで背景は明るくとばして主人公を目立たせるということです。逆光のときにはこの方法が効果的です。



7 明暗のコントロール D



 細かいんだけど、キャッチ来としているアイにトーンコントロールを加えて輝かせています。



8 シャープとぼかし A
 シャープとぼかしをつかって、同じようにお人形を目立たせたいと思います。基本的にはシャープツールでお人形を強調し、ぼかしツールで背景の
ピントを外してゆくという作業になります。



 こちらがRAWで撮影し、現像を終えた段階の元画像です。
 ごく普通の写真ですが、背景がちょっとうるさく、暗い感じなのでこれを修正してゆきます。




 まずはお人形を目立たせるためにシャープをかけてゆきます。

  ツール>選択ツール>自由選択

 上の画像は強調したい部分を指定したところです。(あえてモノトーンにして分かりやすくしてあります)

  選択>境界をぼかす (縁をぼかす量は300pixぐらい)
  フィルター>強調>シャープ ( 今回は Radius 2.0, Amount 0.50 )

 シャープをかける量は状況によって異なります。またかけなければいけないということでもありません。むしろかけ過ぎると不自然になってしまうので
注意が必要です。




続けて背景の方のぼかしと明度調整を行います。

  ツール>選択ツール>領域の反転 (これが上の画像)
     選択>境界をぼかす (縁をぼかす量は300pixぐらい)
  色>トーンカーブ  (今回は暗かった空を明るく調整した)
   フィルター>ぼかし>ガウスぼかし (x、yそれぞれ15ぐらい)




 仕上がった写真がこれです。背景をぼかしたことでお人形の存在感が増しました。
 ポイントは背景を適度にぼかすこと、必要に応じてお人形にシャープをかけることです。スマホなどで撮影するとどうしても全体にピントが合ってしまうので、
ぜひ身に着けたい調整方法です。
 もっとも背景のぼかしってスマホのアプリやカメラの機能としてついているものもあるけど、不自然になることが多いので、自分は基本的に普通に撮影して
おいてあとで大きな画面で確認しながら作業をしています。



9 シャープとぼかし B (トイフォト)



次は、この調整に慣れてきたらこういったこともできます、というお話です。
 上は小田急線の写真、全体にピントが合っています。




 ここで電車の写っている領域を指定 続けて背景の方のぼかしと明度調整を行います。

   ツール>選択ツール>領域の反転 (これが上の画像)
   選択>境界をぼかす (縁をぼかす量は300pixぐらい)
   色>トーンカーブ  (今回は暗かった空を明るく調整した)




   フィルター>ぼかし>ガウスぼかし (x、yそれぞれ15ぐらい)

 まるでミニチュアやNゲージを撮影したような感じになります。これもよくあるテクニックですね。



10 明暗のコントロール C



 こちらは少しだけ背景のピントを外し、そのうえでキャッチライトしているアイと輝くウインドウの明るさを調整しています。

 写真ていうのは見えているものが全部しっかり写っちゃうと、だいたいうるさすぎて疲れちゃう。だからいろいろな方法で写したいものだけ残してゆくって
作業をしているわけです。



11 彩度調整 A
 今回は彩度を変化させてお人形を目立たせる方法を解説したいと思います。よりアーティスティックな効果を加えることができます。



  こちらがRAWで撮影し、現像を終えた段階の元画像です。
 田舎道で撮影したごく普通の写真です。




 まずはお人形部分を選択します。

  ツール>選択ツール>自由選択  及び  ファジー選択 (これが上の画像)

 2つの選択方法を駆使して、境界ぴったりに切り取ります。
  選択>境界をぼかす (縁をぼかす量は10pixぐらい)
  色>トーンカーブ  これでお人形部分を適正な明るさに調整します。




 今度は背景の彩度を変えてゆきます。

  ツール>選択ツール>領域の反転    色>色相・彩度

 ここで出てきた彩度のバーをいちばん左まで移動させます。背景がモノトーンに変化して、お人形が前面に出てくるような画像になりました。

  色>トーンカーブ

 最後に背景の明暗をコントロールして完了です。(これが上の画像)



12 彩度調整 B



次の写真はこちらです。今度はこの写真からファッション誌によく出てくるような画像をつくってみたいと思います。




 領域を反転して背景を選択するまでは同じ操作です。

   色>色相・彩度

 ここでウインドウの上部に出ている基準色のうち、M、R、Y、Gをそれぞれ選択し、彩度のバーをいちばん左まで移動させます。(C,Bはそのまま)
 すると背景の青っぽい部分だけが残り、あとはモノトーンに変化して、ちょっとおしゃれな画像が出来上がります。

  色>トーンカーブ

 最後に背景の明暗をコントロールして完了です。(これが上の画像)



13 彩度調整 C



 ここまでは背景をモノトーンにしたり、色数を減らしたりしましたが、逆に彩度を高める方法も利用価値があります。
 この画像、もっと空が濃く蒼いといいですね。



 背景を選択するまでは同じ操作です。

   色>色相・彩度

 ウインドウの上部に出ている基準色のうち、C、Bの彩度バーを少し右に移動させます。(ほかはそのまま)

     色>トーンカーブ

 背景をやや暗めに調整して完了です。(これが上の画像)



14 彩度調整 D



 こちらは背景の色合いをセピア調に変えたものです。

   色>色相・彩度

 ここでウインドウの上部に出ている基準色のうち、Yはそのまま、RとGは50%程度、そのほかは0%に調整しています。



15 彩度調整 E


sayaka (オリジナルヘッド+TBLeagues26Aボディ 26cm 2018 )

 こちらは背景の彩度を全体として40%程度に下げています。ちょっとノスタルジックな感じに仕上がります。



16 彩度調整 F


nano (オリジナルヘッド+TBLeagues26Aボディ 26cm 2018 )

 こちらは逆に背景の彩度を上げて、春の華やかな雰囲気を出しています。シャープやぼかし、明度調整、いろいろと手を加えて仕上げています。

 写真て撮った段階で終わりじゃなくって、まだまだそこからいろいろ変化させることができます。
 自分のカメラやスマホでは良い写真が撮れないと思っている人は、現像作業やレタッチを経験すると良いと思います。ほとんどのプロカメラマンも
PCを使って、撮影した画像を自分のイメージした作品に作り上げています。



2020.06
camera: Canon PowerShot G7X、 Panasonic GX8 ほか/ graphic tool: SILKYPIX Developer Studio Pro.7 + GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10

                   サイトのトップページにとびます