eye4工房番外編
LAST WALTZ
さて8月の個展に向けて、オリジナル球体関節人形を配置するための背景づくりを始めました。
過去に撮影した画像のなかから、参考になりそうなものを探していたらこんなものが見つかった。
こちらは横浜駅東口に実在するバーで、店内には70~80年代あたりのアメリカンロックが流れていると聞いています。もちろんお店の名前は
ザ・バンドの1976年解散コンサートのアルバム名からとったものに違いないです。
いいねこれ、イメージぴったりです。
ちなみに自分はここに入ったことはないです。興味はあるんだけど何せ家が遠方なので、帰りの電車のなかで寝過ごしてしまいそうだから・・・。
1 人形2体を配置することを考えながら、背景パネルのスケッチをしています。
建物をまるまる一つ作るわけにもゆかないので、LAST WALTZのロゴの入った壁だけを少しアレンジして切り取るつもりです。
全体の大きさは90cm×75cm×50cmぐらい、これまででも最大級の大きさです。あと移動・収納を考えると、少々面倒でも作品自体を分割式に
する必要がありそうです。
2 5mm厚のスチレンボードと角材を組んで、背景
パネルを組み立てます。
3 大きさの制約から、このパネルは分割式としてい
ます。こちらは下半分です。
4 こちらは地面となる部分で、角材で段差をつけてい
ます。
プランが出来上がったところで製作を開始しました。軽量化するために、基本はスチレンボードの組み合わせで必要に応じて角材で補強する
という感じになります。
とりあえずベースが出来上がったので組んでみた。これまでのなかでも一番大きなジオラマになるね。
5 別に用意した2mm厚のスチレンボードに切込みを入れます。
今回の制作のポイントは壁だなと最初に思った。年季の入った感じを出すためにあえてヒビを入れる加工をしようと思います。
そのために壁の上から貼り付ける2mm厚のスチレンボードを用意しました。
6 入れた切込みの部分に、わざといったん紙粘土を
詰めて乾かします。
7 紙粘土部分にカッターナイフで傷を入れる。力を
入れると簡単に割れる仕組みです。
これは思ったような形でヒビを入れるための工夫です。きっとこういうことをしないと思うようなヒビは入らないと思った。
8 モデリングペーストをペインティングナイフで塗り
付けて凹凸を出します。
9 オレンジに着色したモデリングペーストに細かな
砂と水を混ぜたものを全体に塗ります。
これでコンクリートを手塗りしたような感じやざらっとした質感が再現できる、もう得意技になっちゃった感じです。
乾かすときには我家の chico ちゃんにお手伝いしてもらう。お願いすると乾くまで何時間でも支えていてくれます。chico ちゃんありがとう!
10 リキテックスを調合して、この上から塗り付けるグレー
とオレンジベースの塗料をつくりました。
11 グレーとオレンジを何度も塗りかえしながら、微妙なグラデーションをつけてゆきます。
モデルになったバーの壁は経年劣化していて、塗料もだいぶ落ちてしまっている。まずは壁を下部をオレンジに近い色で塗り、
少しずつグレーを混ぜながら塗料が落ちかかっている上部まで塗りひろげる。上の画像は全体を3回ぐらい塗り重ねたところです。
だいぶスチレンボードがたわんできたので、この段階でこれを壁パネルに貼り付けることにします。
12 あと板の裏側から力を入れて、仕組んであった
「ヒビ」の仕掛けを作動させました。
13 最初につくった壁の部分にこの2mm厚のスチレン
ボードを貼り付けてゆく。
14 貼り付けながらヒビの断面部分にグレーを塗って
ゆきます。
15 画像をプリントアウトして型紙をつくり、その輪郭
を写し取って文字を描いてゆきます。
16 雨風て塗料が落ちかけている感じなので、絵の具
は薄めたものを少しずつのせてゆきます。
17 最後に壁の塗料に白と艶消し材を混ぜて、全体
にドライブラシをかけてゆきます。
これでとりあえず壁の上部が仕上がりました!
割合うまくいったね、ヒビや塗料の落ちた感じが時間経過を感じさせる仕上がりになってます。
ここから先、分割した壁の下部分を塗装します。
18 あえて明度の違うグレーを数回に分けて塗り、
水が上から下に流れたような感じに仕上げます。
19 リキテックスのダークグレーを水性ホビーカラー
の薄め液で希釈し、それをスポンジで押し付けます。
こちらは壁の下部の完成したところです。
濃淡のあるグレーを塗り分けて雨だれしたような感じを、更にダークグレーを押し付けて油汚れや黒カビといったところを表現
しました。
このあたりは実際の画像を見ることなく作業を続けています。100%同じものをつくることが目的でなく、自分のイメージした
空間を再現することの方が大切なので。
次は軒先と路面部分の工作になります。
20 一段上の軒先部分はモデリングペーストを塗って
凹凸をつけます。
21 モデリングペーストをグレーに着色し、更に砂を
混ぜたものを塗って、ざらざらの質感を出します。
22 全体に荒い感じを出すために、キリでつついて
無数のこまかな穴をあけます。
23 ダークグレーやダークブラウンでシミや油汚れなどを表現しています。
コンクリートって、その製造方法や材質によって見かけはかなり違います。
手前は砂が多く含まれ型抜きされた白っぽい縁石のコンクリート、つるつるなので砂を混ぜないで厚紙をそのままライトグレーで着色した。
上で解説したのは砂利混ぜて流し込んだコンクリート、滑らないように荒くざらっとしている。
次はアスファルト部分です。
30 鉄道模型用のグレーのパウダーに少量のブラウン
を混ぜたものをつくります。
31 黒の水性ペイントを全体に塗り、この上から先ほど
のパウダーをぱらぱらとまく。
32 半乾きぐらいのときに、パイプを転がして塗料と
パウダーを圧着させる。これを2回繰り返す。
33 乾燥後、全体にグレーを吹き付けて調子を整え、適度にシミや汚れなどをの汚れをつけます。
この路面の作り方って、実際にアスファルトを流し込むときの状況から考えた方法です。ちょうど塗料がアスファルト、パウダーが砂利という感じです。
そして実際と同様、パイプで圧延かけてます。これでけっこうリアルに仕上がる。
34 縁や縁石部分にグリーンのパウダーをつけて
苔の表現を加えます。
これで基本的な工作は完了です。
このあと細かな部分の工作を行います。まずは窓から。
35 2mm厚のスチレンペーパーと0.5mm厚のプラ板から
窓枠をつくります。
36 それをMr.カラーのグレーで着色し、リキテックスのダークグレーで汚しを入れる。
36 塩ビ版につや消しクリアーを吹き付けてすりガラス
をつくり、それを窓枠にはめ込む。
37 表側(塗装面の反対側)に艶消しのタンを吹き
付け、中央部分を薄め液でふき取る
。
38 ヒビの入った壁にはあえて荒く補修した跡を加え
ます。
39 内側に薄めた黒い塗料を少量垂らして、油汚れのようなものを表現しました。
とこかくこういうものって説得力のようなものがすべてのような気がする。時間経過とか生活感とか、そういうところからくるリアルさです。
「きっとオーナーはもうちょっとキレイにしたいって思っているけど、なかなか手が回らないんだろうな・・・。」 そんな感じです。
ここでもっとリアルにしようと思って、電飾に手を出してしまいました。
40 100均で見つけた乾電池で作動するLED電球を
窓の裏側に仕組みます。
41 実際の店舗の電飾をもとにして下絵をつくり、文字
以外の部分を黒く塗りつぶす。
42 光が漏れないように、また少しでも明るくなるように
アルミホイルで内側を覆う。
43 この箱を窓枠に取り付けて、窓部分が出来上がりました。
LEDを点灯させると、文字部分だけから光だ漏れて「OPEN」が浮かび上がる仕組みです。
実際のBARにも電飾されたサインボードが設置されていて、今回はそれを真似してみたのですが、実際に点灯させてみると
光っていることすらわからないほどのパワー不足でした。ちょっと残念。
電飾はあともう一つあります。1/6のブーツを加工して welcome の案内をつくります。
44 真鍮線をペンチで加工して、はんだで組み立てる。
この工作はけっこう難しい。
45 エポキシパテで文字とブーツ、LEDを組み立てる。
図はやすりがけしているところ。
46 磨き終わったら着色して壁に取り付ける。
壁の反対側がちょっと寂しい感じなので welcome の案内板をつくってみた。
実際のお店にもこれに似たものがあるのですが、手元にヒビの入ったmomoko用のブーツがあったのでこれを使ってみた。でもさすがに1/3スケールの
ジオラマに1/6スケールのブーツではちょっと小さすぎた感じです。
で実際に光らせてみたのはこちらの画像です。やっぱりちょっと暗すぎるので、この明るさだけで撮影するのは無理ですね。
ある程度組みあがったので、実際にお人形を置いてみます。
モデルドールは dollmore の Hayarn Cho 、何年か前に韓国のサイトで購入したものです。(当時確か54,800円)
自分が思うにこれだけ美形のキャストドールはなかなかない。研究用に入手したもののいくつかはヤフオクにかけて手放したけど、
多分このドールだけは最後まで手元に置いとくと思います。それだけ美形です。
もうちょっと何か変化があっても良いかなと思って、更に工作を加えます。
左側に配管を追加します。
47 配管自体は7mm径のプラパイプとエポキシパテで
つくります。
48 全体をMr.カラーのグレーで着色後、リキテックス
のグレーで汚しを入れる。
49 エポキシパテを加工して壁への取り付け部分を
つくります。
50 配置後、全体に薄くダークグレーをひいて、雨だれのような感じを表現として加えました。
あともう一つ、コロナビールの看板もつくります。
51 ネットから実際のコロナビールの看板を引っ張り
出してきて厚紙にプリントアウトします。
52 角に切込みを入れ、筆のお尻の方でぐりぐりして
縁に丸みを持たせる。
53 パステルを削ったものをプラモ用の溶剤で溶いて
塗り、錆を表現します。
54 乾いたところで艶消しクリアーを吹き付け、表面を保護すれば看板は完成です。
これでとりあえず予定の工作は終了です。
今回はお人形に動きのあるポーズをとらせるため、ドールスタンドを使うことにしました。今は外に出ていますが、土台になる部分は下に埋め込むことができます。
こちらが最初にお見せした実際のBARです。とりあえず自分が作れる範囲でそのイメージをいただいたという感じです。
さて予定の工作は終わったものの、ここから少しだけ作業をしなければなりません。
55 こちらは壁と地面を分解したときにばらばらになって
しまわないようにつくったクリップのようなものです。
56 壁パーツの下の部分はポケット状に加工して、
小物類が入るようにしました。
ジオラマをつくるうえで最も大切なのは、イメージ通りのリアルな空間を作りあげることではあるけれど、もしそれを個展のようなところに
持ってゆくのであれば、その強度や移動組み立てに手間がかからないことも考えなければなりません。どんなに良い作品でも自分の部屋
から出せないのではどうしようもないです。
背景は横浜駅西口に実在するバー LAST WALTZ をモチーフとして制作したものです。(残念ながら入ったことはない)
壁とお店のロゴはほぼ同じですが、窓や飾りつけはそのイメージだけいただいて、かなり変更しています。
お人形は nanami 、7年前につくったオリジナルの球体関節人形です。主な素材はラドールプレミックスとプルミエをブレンドした粘土で
リキテックスで着色、つや消しクリアーで仕上げました。ウイッグやアイは市販品、洋服は JETRUNNER;D のみけ様につくっていただいたものです。
7年も前につくったのですが、今でもリメイクをしようとは全く思わないよくできたDOLLです。このドールをつくったときって、天から何かが降りてきた
みたいに何の苦労もなく、するするっと出来上がってしまったのを覚えている。
いろいろとポーズをとらせてみて写真を撮る。これなんか決めポーズのひとつかな。
ジオラマって空間的に言えば3次元のもの。だから基本は主役がいて、その前景と背景になるものがある。
昨年までは、ちょっとデコレーションした背景パネルだけを置いてお人形を展示していたのだけど、そうすると2次元のパネルと
3次元のお人形がどうもしっくりとこない感じがした。はっきり言うと浮いている感じです。だからこの1年はお人形作りでなく、奥行きの
ある空間づくりに力を入れてきた。
この作品で言えば、窓と電飾サインボード、welcome の案内板、配管などを追加することで、壁という2次元のものに奥行きが出てきた。
そうすると最後に追加するDOLLという立体的なものが、その背景に馴染みやすくなる。それがこれまでの経験から得られた知識の一つかな。
こちらのセットは次の個展に持ち込む予定です。本来、この背景には現在リメイクしているドールを飾る予定でしたが、まだ完成に至って
いないのでこの nanami ちゃんを連れてゆくことにします。ただもう少し演出はしたいと思っています。
2020.07
camera: CASIO EXLIM EX-ZR4100 &Canon Powershot G7X / graphic tool: GIMP 2.8 + Ichikawa Daisy Collage 10
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